特許調査における特許文書の読み方~侵害予防調査を中心に~

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November 27, 25

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特許の読み方ウェビナー第1回
https://www.youtube.com/live/0Z_alFkD8ig?si=6MDOT4J_OU9dR4sq

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弁理士・博士(理学)/弁理士法人レクシード・テックパートナー

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パテント・インテグレーション様 サマリアユーザ向けウェビナー 特許調査における特許文書の読み方 ~侵害予防調査を中心に~ 2024年3月14日 弁理士法人レクシード・テック パ ート ナ ー 角渕 由英 弁 理士 ・ 博士 ( 理学 ) ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 1

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つの ぶち よし ひで 自己紹介(角渕 由英) [email protected] <経歴> 2008年03月 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻 修士課程 修了(橋本和仁教授) 2008年04月 日本学術振興会特別研究員(DC1)採用(大越慎一教授) 2011年04月 株式会社技術トランスファーサービス 入社 登録調査機関部門 2014年03月 博士(理学) 東京大学 2016年03月 弁理士登録 2016年04月 秋山国際特許商標事務所 入所 2017年12月 特許検索競技大会2017 最優秀賞・ゴールド認定(化学・医薬分野) 2018年01月 特定侵害訴訟代理業務付記登録 2019年06月 AIPE認定知的財産アナリスト(特許) 2023年11月 弁理士法人レクシード・テック 入所 社員弁理士 デジタル名刺 <委員など> 2020年~ 特許検索競技大会実行委員会 副委員長(現任) 2021年 特許庁IPAS事業 アソシエイトメンター 2022年~ 知財実務情報Lab.®専門家チーム 2022年~ 知財塾 侵害予防調査ゼミ ファシリテーター 2023年~ 経済産業庁九州経済産業局 チーム伴走型知財経営モデル支援・広報事業 支援チーム専門家(現任) <著作(主なもの)> ・「侵害予防調査についての一考察 」(パテント, 2024.2) ・「第三者特許の無効資料調査の留意点」(知財管理,2023.9) ・「特許調査における先行技術資料および無効資料の変化」(知財管理,2022.9) ・「改訂版 侵害予防調査と無効資料調査のノウハウ~特許調査のセオリー~」 (経済産業調査会, 2022.6) ・「弁理士のための特許調査の知識」(パテント, 2022.5) ・「侵害予防調査と無効資料調査のノウハウ~特許調査のセオリー~」 (知財ぷりずむ 新春特別寄稿, 2020.1) ・「プロダクト・バイ・プロセス・クレームにおける「不可能・非実際的事情」の主張・立証についての考察」(パテント, 2016.7) ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 2

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弁理士法人レクシード・テック(概要) ➢ 社員パートナー ➢ 組織 ※2024年3月1日時点 資格者: 弁護士・弁理士1名、弁理士5名 学 位: 博士4名、修士1名、学士2名(医薬・バイオテクノロジー、化学が中心) 所員数: 10名 拠 点: 東京・京都 創 業: 2022年7月1日 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. https://lexceed.or.jp/ 3

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弁理士法人レクシード・テック(概要) ➢ 技術系専門家の有機的な協働によってシナジーを発揮 ➢ 事業のあらゆるステージにおけるバックアップ 高い技術力 博士4名、修士1名、学士2名 (特に医薬・バイオテクノロジー、化学) 知的財産・法律 特許調査・分析 弁護士・弁理士1名、弁理士5名 特許検索競技大会 最優秀賞 ワンストップサービス 出願・権利化、契約、鑑定、係争、 特許調査・分析、ベンチャー、国際業務 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 4

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弁理士法人レクシード・テック(概要) https://note.com/tsunobuchi/n/n95161887d3ee ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 5

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本日の内容 1.特許文書を読むとは 2.特許調査の流れと特許文書の読み方 3.侵害予防調査における特許文書の読み方 4.サマリアを用いた侵害予防調査の スクリーニング ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 6

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1.特許文書を読むとは “特許文書”とは? 特許文書を“読む”とは? ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 7

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“特許文書”とは? 特許公報、主に2種類 ・公開特許公報(公開公報) (出願公開) 第六十四条 特許庁長官は、特許出願の日から一年六 月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたもの を除き、その特許出願について出願公開をしなければ ならない。次条第一項に規定する出願公開の請求があ つたときも、同様とする。 2 出願公開は、次に掲げる事項を特許公報に掲載す ることにより行う。ただし、第四号から第六号までに 掲げる事項については、当該事項を特許公報に掲載す ることが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあ ると特許庁長官が認めるときは、この限りでない。 一 特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所 二 特許出願の番号及び年月日 三 発明者の氏名及び住所又は居所 四 願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載 した事項並びに図面の内容 五 願書に添付した要約書に記載した事項 六 外国語書面出願にあつては、外国語書面及び外国 語要約書面に記載した事項 七 出願公開の番号及び年月日 八 前各号に掲げるもののほか、必要な事項 ・特許掲載公報(登録公報) (特許権の設定の登録) 第六十六条 特許権は、設定の登録により発生する。 2 第百七条第一項の規定による第一年から第三年ま での各年分の特許料の納付又はその納付の免除若しく は猶予があつたときは、特許権の設定の登録をする。 3 前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を特 許公報に掲載しなければならない。ただし、第五号に 掲げる事項については、その特許出願について出願公 開がされているときは、この限りでない。 一 二 三 四 特許権者の氏名又は名称及び住所又は居所 特許出願の番号及び年月日 発明者の氏名及び住所又は居所 願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載 した事項並びに図面の内容 五 願書に添付した要約書に記載した事項 六 特許番号及び設定の登録の年月日 七 前各号に掲げるもののほか、必要な事項 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 8

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特許文書を“読む”とは? https://www.weblio.jp/content/読む 1000件の特許をノイズ落としするために“読む” 小説を“読む” 本件特許発明と主引用発明を対比するために“読む” メールを“読む” 侵害鑑定のために1件の特許を“読む” 特許文書を“読む” “読む”にも様々、その目的は? 特許文書を“読む”目的は? 特許文書自体の目的は? ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 9

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特許制度の目的 特許法第1条(目的) この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、 もつて産業の発達に寄与することを目的とする。 ○発明の保護及び利用 発明の保護=審査で認められた内容に権利を与え、独占することを認める (独占禁止法の考え方とは相反) 発明の利用=公開制度(出願から18か月後に公開公報発行)により、 技術内容を広く開示 登録公報 公開公報 出典: 2023年度 知的財産権制度入門テキスト https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/document/2023_nyumon/all.pdf ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 10

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保護(権利書面)と利用(技術書面)の2つの側面 公開公報 (技術書面) 利用 保護 登録公報 (権利書面) 出典:大阪工業大学HP https://www.oit.ac.jp/ip/faculty/whatsip/patent.html ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 11

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特許公報 特許公報は2種類 ①公開特許公報(公開公報)=技術書面 「このような内容が出願された」ことを公にする。 公開公報に記載されている内容=権利ではなく、 権利になる可能性がある内容、出願から1年6月で発行 例:特開2020-123456 ②特許掲載公報(登録公報)=権利書面 「このような内容が権利になった」ことを公にする。 登録公報の「特許請求の範囲」に記述されている内容が、権利 範囲を定める、登録後に発行 例:特許6123456 ※一般的には公開公報⇒登録公報の順に発行されるが、 審査が早い場合に登録公報の方が先に発行される場合もある。 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 12

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公開公報と登録公報について ①公開特許公報(公開公報) ②特許公報(登録公報) どこを“読み”ましたか? 参考:特許庁、特許情報の利用 表2 現行の日米欧・WO 公報の主な種別コード ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 13

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特許情報について 特許 情報 技術情報 権利情報 書誌情報 特許 文書 公開公報 =技術書面 登録公報 =権利書面 公開公報=技術書面 登録公報=権利書面 記載 内容 技術の内容 権利の内容 書誌の内容 要約書 図面 明細書 特許請求の範囲 明細書 国や地域の情報(Where) 読む 箇所 技術分野 背景技術 先行技術文献 課題、手段、効果 図面の簡単な説明 実施形態、実施例 産業上の利用可能性 符号の説明 特許請求の範囲 実施形態、実施例 技術分野 課題、手段、効果 背景技術 先行技術文献 産業上の利用可能性 図面の簡単な説明 符号の説明 図面 要約書 発行主体 人の情報(Who) 発明者 出願人・権利者 審査官 日付の情報(When) 出願日・優先日・公開日・発行日 番号の情報(What) 出願番号・公開番号・登録番号 特許分類の情報 IPC・FI・FT・CPC ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 14

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特許文書は構造化文書である 公報には、 「INIDコード」 INID=Internationally agreed Numbers for the Identification of Data =書誌的事項の識別記号 が付与されており、言語 は分からなくても公報の 書誌事項を理解しやすく している。 海外の公報をチェックす るときの手掛かりに。 ※「INIDコード」の詳細は、 [INPIT](独)工業所有権情報・研修館 のHPにあるINIDコード一覧表を参照 https://www.inpit.go.jp/content/10002 9977.pdf ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 15

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外国の特許公報 国際特許分類 発行日 公報の番号 出願番号 出願日 優先権 優先日 代理人 国際出願番号・出願日 国際公開番号・公表日 出願人 発明者 35 発明の名称 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 16

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特許公報の構成 特許法36条 こ の 構 成 を 意 識 し て “ 読 む ” 参考文献 キャプション 将来展望・応用 カバーレター アブストラクト 出典: 2023年度 知的財産権制度入門テキスト https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/document/2023_nyumon/all.pdf ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 17

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2.特許調査の流れと特許文書の読み方 調査の目的を意識して“読む” ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 18

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製品開発の流れと特許調査 市場 調査 企画 立案 技術動向調査 <主な調査の種類> ・技術動向調査 研究 開発 設計 侵害予防調査 製造 特許出願 販売 改良 侵害予防調査 出願前先行技術調査 研究開発戦略や研究テーマの決定に際し、特定分野の動向を俯瞰的に分析 ・侵害予防調査 新製品を市場に投入する際に、第三者の特許権等を侵害しないか確認(権利書面) ・出願前先行技術調査 特許出願前の段階で、既に類似した発明が出願されていないかを確認(技術書面) ・無効資料調査 自社製品が他社の特許権等に抵触する場合や、自社の事業活動の障害となり得る他社の特許 権を無効化するための先行資料を探す(技術書面) ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 19

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特許調査の流れ 調査対象の特定 調査対象の特徴の把握 ポイントを一言に スクリーニング 段階的にスクリーニング 関連公報の抽出 関連公報の精読 検索式の作成 調査対象の構成の特定 予備検索 分類とキーワードの検討 検索式の組み立て ↑ “読む”は同じか? ↓ 報告書の作成 公報記載の技術の理解 報告書としてまとめる ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 20

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調査の目的を意識して“読む” ・全ては調査をして「知る」ことから始まる。 ただし、調査は万能ではなく、調査には限界がある コスト(時間や費用)の制約がある以上、100%の完璧な調査は不可能 様々な制約の中で、無効資料調査では有用な証拠の提示が求められ、 侵害予防調査ではリスクを可能な限り最小限にすることが求められる ・調査は「手段」であって目的ではない 調査だけで課題が解決する訳ではなく、調査結果、調査によって得られる 示唆に基づいて課題を解決するための「行動(Action)」が必要 調査の目的を 意識して “読む” ・調査は戦略がすべてである テクニック(戦術、タクティクス)を駆使するだけではなく、王道である 基本を忠実に守って調査戦略(ストラテジー)を立てることが重要 戦略論の定石「戦術の失敗は戦略で補うことが可能だが、戦略の失敗は 戦術で補うことはできない」 探し方のテクニック(戦術)よりも調査戦略が重要、間違った調査戦略に 基づいた調査に成功(勝利)はあり得ない。 ・ビジネスの観点が必要不可欠 特許調査だからと言って例外ではなく、常にビジネス的な視点を忘れない コストパフォーマンスを意識 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 21

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文書の構造を意識して“読む” 文書の構造を把握して、全体を理解する Why “読む”ことの目的は? 調査の目的を意識して“読む” What 何を知りたい? 知りたい情報は何なのか? Where それは文書のどこに記載? 公報のどの個所を“読む”のか? 全体を示してから、個別の構成が記載 →大から小へと段階的に記載されている(先を見通して“読む”) 例:食事道具セットは、(A)食事道具と、(B)保持具と、を含む。 (A)食事道具は、(a1)箸、(a2)… (a1)箸は第1反発手段を備える。 (a1)箸が備える反発手段としては、磁石、… (B)保持具は、(b1)箸置、(b2)… (b1)箸置は第2反発手段を備える。 (a1)箸の第1反発手段と(b1)箸置は第2反発手段の配置は、… 参考:河村 有希絵、思考の質を高める 構造を読み解く力 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 22

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先を見通して“読む” “読む”順番の一例 【発明の名称】 →【要約】 →【背景技術】 →【発明が解決しようとする課題】 →【課題を解決するための手段】 →【発明の効果】 ①発明の名称、要約から何が記載されている か把握(前提、内容の大枠の把握) ↓ ↓この文献は食事道具に関するもの ↓ ②図面や請求項から、具体的内容を把握 ↓ ↓反発力でナイフや箸の先端を浮上 ↓ ③明細書、図面から、詳細な内容を把握 ↓ ↓磁石、磁力の大きさや配置を工夫 ↓ ④明細書の関連個所を精読 ↓ ↓磁極の配置、部材のサイズや重量を工夫 ↓ ⑤明細書を“読む”ことに成功 “解像度”を上げていく ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 23

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5W2Hを意識して“読む” 何を, なぜ, 誰が, 誰に, いつ, どこで, どのように, いくらで? 5W2H ビジネス 特許文書の読解 Why (なぜ) 意義・目的、動機、理由 狙い、背景、必要性 特許文書を読む目的は? What (何を) 内容、種類、性質、分量 “読む”対象の文書は? “読む”対象の項目は? Who (誰が) 組織、担当、グループ 誰が、どの立場の人が“読む” ? When (いつ) 着手時期(タイミング) 、」 期限、時間、納期 公開段階か、審査段階か、権利化後か? いつ迄に、どのくらいの時間で“読む”? Where (どこで) 場所、職場内、職場 外出先 どの国の特許文書を“読む”のか? How (どのように) 手段、方法、段取り テクニック、進め方 どのように“読む”? 適切かつ、効率的に“読めている”? 数量、予算、単価、範囲 どのくらいの件数を“読む”? どの程度まで深く“読む”? どのくらいのコストをかけて“読む”? How much (いくら) ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 24

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公報の読み方 目的を忘れず、構造を意識し、先を見通して“読む” 構成 :願書(書誌), 請求の範囲, 明細書, 図面 明細書:名称, 背景, 課題, 解決手段, 効果, 図説, 実施形態, 実施例 図面 :全体図、各構成の図、フロー図 調査種別 目的 対象 先行技術調査 類似技術 開示の程度 明細書・図面・表 要約・実施例 参考となりそうな 公報も抽出 無効資料調査 権利の無効化 権利の有効性 明細書・図面・表 実施例 非特許文献 進歩性(論理付け) 実施例・比較例 「イ号」を探す 侵害予防調査 障害となる 権利の把握 請求の範囲 +明細書・図面 設計変更を意識 訂正を意識 均等論 資料収集調査 技術動向調査 発明の主題 書誌事項、 要約・請求の範囲 技術者の想定する内容に 近いものを抽出 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. ポイント 25

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先行技術調査における公報の読み方 先行技術調査:技術書面として公報を“読む” 特許法29条1項3号 (新規性、刊行物公知)、 特許法29条2項(進歩性) 目的 類似技術 開示の程度 対象 明細書・要約・ 図面・表、実施例 出典:2020年度 知的財産権制度入門テキスト https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/2020_nyumon.html ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 26

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特許権の侵害とは ①実施行為 (特許法2条3項各号) この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。 一 物の発明:物の生産、使用、譲渡等、輸出、輸入、譲渡等の申出 二 方法の発明:その方法の使用 三 物を生産する方法の発明:その方法により生産した物の使用、 譲渡等、輸出、輸入、譲渡等の申出 ②権利の専有 (特許法68条) 特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。 ③発明の技術的範囲 (特許法70条) 1 特許発明の技術的範囲:特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。 2 特許請求の範囲の用語の意義解釈:明細書の記載及び図面を考慮 3 要約書の記載:前記二項において、考慮してはならない。 ○ 知財高裁 平成18年(ネ)第10007号 特許権侵害訴訟においては、特許請求の範囲の文言が一義的に明確であるか否か を問わず、発明の詳細な説明の記載等を考慮して特許請求の範囲の解釈をすべき 侵害論:文言侵害、均等論、間接侵害、利用・抵触関係、出願経過参酌も関係 クレームの解釈(読み方)、属否の判断は高難易度 調査担当者と、検討者(知財部員、弁理士・弁護士)が違うことが多い ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 27

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侵害予防調査における公報の読み方 侵害予防調査:権利書面として公報を“読む” 目的 障害となる 権利の把握 対象 請求の範囲 +明細書・図面 特許請求の範囲の 用語の意義解釈 ↓ 明細書の記載 及び図面を考慮 出典:2020年度 知的財産権制度入門テキスト https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/2020_nyumon.html ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 28

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段階的なスクリーニング 1次スクリーニング ノイズ除去 スクリーニング=情報の篩掛け 篩目の粗さを徐々に細かくする 例:1000件→200件→30件→10件 2次スクリーニング 関連公報ピックアップ 種 別 Why (目的) What (対象) 1次 ノイズ除去 名称、請求 要約、図面 ~1分/件 2次 関連公報 ピックアップ 公報全体 ~10分/件 3次 精読 報告書作成 公報全体 ~完成まで 3次スクリーニング 精読 No 課題解決 Yes How much (どの程度) 1次or2次スクリーニング完了の段階 →ダブルチェック(社内、依頼者間) 作業履歴を残しておく 特に侵害予防調査で重要 終了 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 29

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ヒットリスト 母集団のリストとして重要 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 30

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1次スクリーニング 明らかなノイズを除去する ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 31

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2次スクリーニング 報告書に掲載する文献 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 32

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考える調査の流れとポイント 課題・目的を理解 予備 段階 6W2Hを意識 調査対象の本質の理解 アウトプットのイメージ 検索の戦略、検索式 情報の取捨選択 (仮説・想定した内容を意識) 段階的なスクリーニング 課題の解決、目的の達成 技術の流れと技術の本質 先行技術調査:資料の狙い打ち 侵害予防調査:何を探しているか ・見通しを立てる 準備 段階 仮説を立てる ・調査対象の本質を正確に理解 文献の想定 先行技術調査:新規性、進歩性 侵害予防調査:権利範囲の想定 ・アウトプットをイメージ 報告書を想定、結論は? 先行技術調査:拒絶理由の想定 侵害予防調査:侵害の判断 調査 ・想定力を最大限発揮する 段階 ・根性論に逃げない 取るべき対応 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 33

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正確な発明の理解~構成要件への分節と色塗り 文字よりも色彩 文字や図を視覚で認識 特許第5449597号 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 34

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調査対象の本質の正確な理解 カバー率(効果) 何を探さないか 情報量 集め過ぎない・知りすぎない 収集量 検索すべき範囲 発明の本質 ベースとなる公知資料 (検索報告書、経過情報) 予備検索、自由実施技術 実効的 情報量 検索範囲 検索時間 検索終了 情報収集の努力・手間 出典:安宅和人著『イシューからはじめよ』 英治出版, 2010年11月 情報コレクターになっても、調査の課題は解決しない 本質を理解するには、従来技術・公知資料を知る必要がある 従来技術(先行文献)=何がどこまで知られているのか ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 35

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法的判断を行うための証拠収集 証拠収集 事実認定 法的判断 無効資料 調査 引用発明等 に関する証拠 本件発明の認定 引用発明の認定 対比検討 進歩性判断 (論理付け) 侵害予防 調査 リスクとなる 特許権等 イ号製品等の認定 発明の技術的範囲 の認定 対比検討 属否の判断 侵害予防調査や無効資料調査 →法的判断(法律適用)を行うための証拠収集 調査設計の段階から考え抜き、最終的な法的判断を適切に行うことができる 使える証拠(資料)を逆算して仮説を立てる 調査ツール(人工知能など)の性能が向上していくにつれ、使える証拠(資料) をどう探すのかではなく何を探すのか(調査設計)、頭を使い「徹底的に考え 抜く」ことがより一層重要になる ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 36

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3.侵害予防調査における特許文書の読み方 侵害予防調査における留意点 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 37

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知財実務情報Lab. 侵害予防調査について ⑨特許権侵害の判断方法 特許権侵害の判断方法 オールエレメントルール(権利一体の原則) 全ての構成要件(エレメント)の充足・非充足をもって侵害の成否を判断 ① 請求項を各構成要素A~Cに分節 ② 構成要件A~Cに対応する要素a1~c1をイ号(実施品等)から抽出 ③ 各構成要件を対比、Aとa1、Bとb1、Cとc1 ④ 全て一致する場合、文言侵害となる ⑤ 相違点がある場合、均等論にも注意する 構成 要件 ① 特許権 請求項1 ② 実施品1 ③ 対比 実施品2 A 構成Aと、 構成a1と、 A=a1○ A=a2○ B 構成Bと、 構成b1と、 B=b1○ B≠b2× C を備えるC装置 を備えるc1装置 C=c1○ C=c2○ - - - ④ 文言侵害 非侵害 ⑤ 言うは易し 行うは難し 文言解釈、明細書・図面の参酌、出願経過、実施品の特定、対比 参考:角渕由英、改訂版 侵害予防調査と無効資料調査のノウハウ、111~121頁 特許検索競技大会2022、アドバンスコース、問1(1)~(3) ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 38

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知財実務情報Lab. 侵害予防調査について ⑩オールエレメントルールの具体例 オールエレメントルール C:滑止め A:本体 D:食事道具 B:溝部 特許権 特許請求の範囲 A+B+C+D 実施品1 A+B+C+D 侵害 実施品2 A +C+D 非侵害 実施品3 A+B +D 非侵害 実施品4 A+B+C+D+E 侵害 実施品5 A+B +D+E 非侵害 A:長尺状の本体と、 B:前記本体の先端部に設けられた溝部と、 C:前記本体の後端部に設けられた滑り止めと、を備えた D:食事道具。 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 39

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オールエレメントルールの実際 特許権 a1:本体 d1:箸 b1:溝部 製品1 A a1 ○ B b1 ○ C 滑止めは無い × D d1 ○ Cを備えていない→非侵害 a1:長尺状の本体と、 b1:前記本体の先端部に設けられた溝部と、を備えた c1: ×(滑り止めは無い) d1:箸。 ←箸は食事道具の下位概念であり、食事道具に相当 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 40

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オールエレメントルールの実際 c2:滑止め 特許権 e2:磁石 a2:本体 d2:箸 b2:溝部 製品2 A a2 ○ B b2 ○ C c2 ○ D d2 ○ - e2 - A~Dを備えている→侵害 a2:長尺状の本体と、 b2:前記本体の先端部に設けられた溝部と、 c2:前記本体の後端部に設けられた滑り止めと、を備えた d2:箸であり、 e2 :前記本体に埋め込まれた磁石と、を備えている箸。 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 41

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オールエレメントルールの実際 c3:滑止め(樹脂製) 特許権 a3:本体(赤色) d3:箸 b3:溝部 製品3 A a3 ○ B b3 ○ C c3 ○ D d3 ○ a3、c3は下位概念、 A~Dを備えている→侵害 a3:赤色の長尺状の本体と、 b3:前記本体の先端部に設けられた溝部と、 c3:前記本体の後端部に設けられた樹脂製の滑り止めと、を備えた d3:食事道具。 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 42

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オールエレメントルールと検索式 権利一体の原則(オールエレメントルール)に基づけば、 構成要件が自社の実施製品等よりも少ない特許権も抽出 しなければならない。 具体的には、 実施製品が構成Aと、構成Bと、構成Cの3つの構成を備える場合 →構成A+構成Bや、構成A+構成Cや、構成B+構成Cのように 2つの構成を構成要件とする特許権も検索式でヒットさせる 必要がある 「A*B*C」と3つの構成をANDで掛合せてしまうと限定しすぎ →「(A+B)*C」や、「A*(B+C)」、 場合によっては、「A*B」や、「B*C」としたり、 必要に応じて「A+B+C」としたりすることが想定 箸*磁石*浮上 →「箸*(磁石+浮上)」、 場合によっては「箸*磁石」、 必要に応じて「箸*浮上」としたりする ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 43

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侵害予防調査では広く検索 先行技術調査 (箸+箸置)×(磁石+浮上+滑り止め+断面形状) 2つの構成 観点を少なくして 広くする リスクを検討 上位概念化 対象 技術 対象 発明 (箸+箸置) ×磁石 ×浮上 3つの構成 (箸+箸置) ×磁石 ×浮上 3つの構成 下位概念化 箸置における 反発用磁石の配置 箸置×磁石×配置×浮上 侵害予防調査 観点を限定して 4つの構成 特許性を検討 狭くする ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 44

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侵害予防調査では広く検索 先行技術調査 (箸+箸置)×(磁石+浮上+滑り止め+断面形状) 2つの構成 広くする 箸置×磁石×配置×浮上 侵害予防調査 観点を限定して 特許性を検討 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 4つの構成 狭くする 45

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4.サマリアを用いた侵害予防調査のスクリーニング 有用なツールの利活用 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 46

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サマリアを用いた侵害予防調査のスクリーニング 請求項などが色分け キーワード 各構成を色彩 で認識 AIアシスタントに質問 角渕由英、note記事、サマリア(Summaria)を用いた侵害予防調査のスクリーニング ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 47

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わかりやすく説明~要約~ 発明の要約、請求項1の説明、 課題・解決手段が端的かつ適切に、 わかりやすく説明 根拠となる記載箇所も示されている これらの情報を前提に“読む” ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 48

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構造化抄録 「構造化抄録」機能:複雑な操作なしに特許公報(明細書)の記載内容に基づいて 自動的に「技術分野」「用途」「課題」「解決手段」「効果」を抽出した「要約 (サマリ)」を生成する機能 記載箇所 必要な情報が端的かつ適切に、わかりやすく 要約されている 発明=課題+解決手段+効果 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 49

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用語の意味、構成の関係性を説明 「関係」 「要素」「属性」 参考:大瀬佳之、 「対象発明の理解を通じたクレーム作成方法の提案,そしてその応用」、 パテント、Vol.66、No.13、p.45‐60(2013年11月) Udemy講座、初心者でもわかる特許の書き方講座 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 50

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スクリーニング支援機能 「スクリーニング支援」の「クリアランス・被侵害 調査」を選択して、製品仕様を入力。 そして、「解析対象・解析処理の選択」として、 請求項1にチェックを入れて実行。 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 51

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関連度100で相違点がない場合の例 関連度は100、<理由>が当て嵌めと共に示され、 相違点は「ない」とされた 結果(関連度:100)の根拠となる 明細書の段落も記載されている →各段落クリックをして関連個所を1つ1つ チェックし、オールエレメントルールを適用 して侵害の判断を行う際に有用 特許文献の請求項1 →食事道具、保持具、作用手段など上位概念で各要件が特定 製品仕様 →箸、箸置き、磁石という下位概念の用語でしか記載されていない それにも関わらず、相違点はないと出力された、根拠の段落も的確 これらの結果は、人が特許文献を精読すればわかることではあるが、 非常に時間がかかる作業 ※担当者のスキルによっては間違った結論を出すこともあり得る ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 52

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関連度0で相違点がある文献の場合 相違点があることがわかっている他の文献 関連度は0、相違点があり、 具体的にどの構成要素が相違しているか出力 結果は、人が判断する場合と一致 その他の出力サンプル(ファイル) 特許文書ごとに対象製品の製品仕様との解析結果 について、「関連度」「理由」「相違点」が出力 <想定される活用例> 侵害予防調査で2段階目のノイズ除去に活用 人は関連度の低いもの、相違点を確認(人の目) ※最終的な内容は専門家の検証が必要 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 53

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まとめ 1.特許文書を読むとは 2.特許調査の流れと特許文書の読み方 3.侵害予防調査における特許文書の読み方 4.サマリアを用いた侵害予防調査の スクリーニング ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 54

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参考資料 大瀬 佳之、特許公報の読み方、まとめ方、伝え方 松本特許事務所HP、特許公報の読み方 ライトハウス国際特許事務所、5分でわかる特許明細書を読むコツ TechnoProducer HP、企業の技術を深く知るための「特許の請求項」の読み方 楠浦 崇央、新規事業を量産する知財戦略 野崎篤志、特許情報調査と検索テクニック入門 改訂版 野崎篤志、特許情報分析とパテントマップ作成入門 第3版 潮見坂綜合法律事務所・桜坂法律事務所編著、「初心者のための特許クレームの解釈」 角渕 由英、サマリア(Summaria)を用いた侵害予防調査のスクリーニング 大瀬 佳之、生成AI(ChatGPT)の特許実務における利活用 湯浅 竜、AI時代の新たな明細書作成法『スマートドラフティング』 河村 有希絵、思考の質を高める 構造を読み解く力 ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 55

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本日はセミナーにご参加いただき ありがとうございました。 弁理士法人レクシード・テック パ ート ナ ー 角渕 由英 弁 理士 ・ 博士 ( 理学 ) ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 56

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セミナーのご案内 https://chizai-jj-lab.com/2024/01/21/20240419/ ©2024 LEXCEED GROUP. ALL RIGHTS RESERVED. 57