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February 21, 19
スライド概要
2018/12/04~05 第180回HCI研究会
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
一点注視型タスクにおける 周辺視野への視覚刺激提示が 集中度に及ぼす影響 桑原樹蘭(明治大学 総合数理学部 3年) 高橋拓 明治大学 総合数理学部 中村聡史 先端メディアサイエンス学科
背景 • 仕事や課題、論文執筆、スライド作成… • タスクを行う際、集中することは重要 • 自力での集中促進は困難 自力ではなく、 外部刺激から集中をコントロール
背景 • 仕事や課題、論文執筆、スライド作成… • タスクを行う際、集中することは重要 • 自力での集中促進は困難 自力ではなく、 外部刺激から集中をコントロール
関連研究 • 外部から集中をコントロールする研究 • 嗅覚刺激提示 [阪野 2008] • 聴覚刺激提示 [阿部 2010] ⇒集中力向上が可能だった 【Think Lab】
関連研究 • 外部から集中をコントロールする研究 • 嗅覚刺激提示 [阪野 2008] • 聴覚刺激提示 [阿部 2010] 環境に左右されやすい (周りの刺激と混ざりやすい) 特別な装置や環境がないと 個人へ提示ができない
関連研究 • 外部から集中をコントロールする研究 • 嗅覚刺激提示 [阪野 2008] • 聴覚刺激提示 [阿部 2010] 環境に左右されやすい (周りの刺激と混ざりやすい) 視覚刺激ならば、 ディスプレイにタスクと共に提示すればいい ため、これらの問題は生じない!
関連研究 視覚刺激による視線誘導で集中力向上[橘 2012]
関連研究 視覚刺激による視線誘導で集中力向上[橘 2012]
関連研究 視覚刺激による視線誘導で集中力向上[橘 2012] 汎用性に欠ける 視界で捉える情報量が多い
関連研究 視覚刺激による視線誘導で集中力向上[橘 2012] 無意識的に集中操作したい 視野特性に着目!
視野特性 • 中心視野 • 対象をはっきりと知覚 • 色の認知に優れる • 周辺視野 • 対象をぼんやりと知覚 • 光、動きの認知に敏感 中心視野 周辺視野 周辺視野では無意識の操作が可能 周辺視野
周辺視野の特性を用いた研究 周辺視野への視覚刺激提示により時間感覚を操作 ⇒体感時間の操作が可能 [松井ら 2016]
周辺視野を利用した研究 周辺視野の中の有効視野とよばれる範囲は 複雑な課題時に狭窄 [三浦 1998] この現象を再現することで 集中時の感覚も再現され、 集中できるのでは? [高橋 2018]
前回の研究 周辺視野の刺激を徐々に減衰させることで 集中状態を疑似的に再現[高橋 2018]
前回の実験の問題点 • 提示する刺激が強すぎたため疲労感が 感覚変化を上回ってしまった • 計算タスクの難易度が一定でなかった • タスク中に視線が移動して周辺視野に 入ってしまっていた
前回の実験の問題点 • 提示する刺激が強すぎたため疲労感が 感覚変化を上回ってしまった ⇒刺激を強すぎないものに変える • 計算タスクの難易度が一定でなかった ⇒タスクの難易度が一定なものにする • タスク中に視線が移動して周辺視野に 入ってしまっていた ⇒タスク中の視線移動が少ないものにする
前回の実験の結果 刺激の減衰に関わらず 集中力の向上に有効な刺激は 個人によって異なる可能性が示唆された
本研究の目的 減衰しない単純な視覚刺激数パターン を用いて実験を行い、各刺激が集中に どう影響を及ぼすかを調査する
今回のタスク設計 中央の矢印と同じ向きの方向キーを100個入力 画面の中心を注視すればいい ⇒視線移動が少なくて済む 周辺視野に限定した視覚刺激の提示が可能
提示する視覚刺激 • 事前に20種の刺激を設計し、プロトタイプの実 験システムを用いて4人でプレテストを実施 • 周辺視野に膨大な情報提示を行ってその情報を遮断するもの • 周辺視野でパターンが大きく変化するもの • 中心視野と周辺視野の境界をあいまいにするもの etc. • 無刺激以外に、6種類に絞る • タスクパフォーマンス(時間と主観疲労度)の 良かったもの3つと悪かったもの3つ
選定された視覚刺激 • 良かったもの 数字刺激 輝度変化刺激 境界膨張刺激 • 悪かったもの 図形上昇刺激 暗転明転刺激 瞬間的円形刺激
数字刺激(数字) 0~9の数字を位置固定で無作為に入れ替える
輝度変化刺激(輝度) ○△□を組み合わせた図形の輝度値を変化
境界膨張刺激(境界) 中心視野と周辺視野の境界が膨張する
図形上昇刺激(上昇) 一列に並んだ白丸が下から上に移動
暗転明転刺激(暗転) 画面が左から右へ黒と白で交互に塗りつぶされる
瞬間的円形刺激(円形) 無作為な位置と大きさの円が瞬間的に出現
実験設計 • 実験協力者は20代の大学生10名(男6名、女4名) • システムはProcessingで実装 • 回答の正誤に関わらず100問正解するまでが1試行 • できるだけ速く、正確に(集中して)回答するよう指示 • 7つの刺激(無刺激+6種類)を3回ずつ、1人21回試行 • 合間の休憩時間でアンケートに答えてもらう • 順序効果を考慮し、無作為の順番で行う
実験環境 • ノイズキャンセリングヘッドホンを装着 ⇒聴覚刺激による変化を防ぐため • メガネ型デバイス(JINS MEME)を装着 瞬目数の計測 (集中すると瞬目数は少なくなる [小川ら 2015]) • 視野範囲を考慮したタスク設計
各刺激の評価方法 • 所要時間 • 瞬目数 • 主観集中度(1項目のアンケート(5段階)) • 主観疲労度 (SSQから引用した7項目のアンケート(4段階))
分析の処理 • 初回は除外 ほぼ全員が初回(3回の試行のうちの1回目)に 余計に時間をかけていた ⇒初回は慣れるためのものとして除外
分析の処理 • エラーは除外 200 ミリ秒以下のものが90%以上で、 その大半は100 ミリ秒以下 知覚プロセッサ+認知プロセッサ+運動プロセッサ =平均310ミリ秒 [Cardら 1986] ⇒200ミリ秒以下の操作は2回連続してキー入力して しまった操作ミスとして除外 • 正答でも速すぎる操作(200ミリ秒以下)は 除外
分析の処理 0.3秒以下の操作はほとんど行われていない
分析の処理 • エラーは除外 200 ミリ秒以下のものが90%以上で、 その大半は100 ミリ秒以下 知覚プロセッサ+認知プロセッサ+運動プロセッサ =平均310ミリ秒 [Cardら 1986] ⇒200ミリ秒以下の操作は2回連続してキー入力して しまった操作ミスとして除外 • 正答でも速すぎる操作(200ミリ秒以下)は 除外
結果(各項目の平均値) 【時間】 数字,境界,上昇,暗転が無刺激より早い 【主観集中度】 無刺激、境界が高く、円形、上昇が低い 【主観疲労度】 無刺激が最も低く、上昇が最も高い
1問ごとの回答時間の推移 0.48 0.46 1 問 ご と の 時 間 0.44 0.42 0.4 0.38 1~20問 無刺激 数字 21~40問 図形 41~60問 境界 上昇 61~80問 81~100問 明暗 円形 平均
1問ごとの回答時間の推移 0.445 0.44 0.435 0.43 0.425 時 間 0.42 0.415 0.41 0.405 0.4 1~20問 21~40問 無刺激 41~60問 数字 境界 61~80問 81~100問 平均 • 数字と境界の回答時間が全体的に無刺激より短い
タスク回答時間の平均(正規化) 7人 0人 5人 5人 3人 0人 • 無刺激より早い人数が多いのは数字刺激
実験協力者・刺激ごとの主観疲労度 7人 4人 4人 7人 3人 3人 2人 • 無刺激と境界は疲労度が低い人数が多かった
実験協力者・刺激ごとの主観疲労度 0.3 7人 4人 4人 7人 3人 3人 2人 • 無刺激と境界は疲労度が低い人数が多かった
実験協力者・刺激ごとの主観疲労度 7人 4人 4人 7人 3人 3人 2人 • 無刺激と境界は疲労度が低い人数が多かった
瞬目数の平均 少 多 個人差が大きく表れている
瞬目数の平均(正規化の平均) • 無刺激が最も少なく、輝度が最も多い
考察 • 数字刺激と輝度変化刺激は場所固定で似た刺激だ が、数字の結果は良く、輝度変化は悪かった ⇒輝度変化刺激は、図形が移動しているよう に見えてしまい、意識が移ってしまった? ⇒数字刺激は、膨大な情報を浴びせられることで、 ブーストされたような感覚になった?
主観疲労度が低い協力者の平均 • 主観疲労度や回答時間の平均から、数字刺激は 人により向き不向きがある可能性が示唆された ⇒主観疲労度0.3以下の協力者の回答時間の推移 0.5 1 問 ご と の 時 間 0.48 0.46 0.44 0.42 0.4 0.38 1~20問 無刺激 21~40問 41~60問 61~80問 81~100問 数字 図形 境界 上昇 明暗 円形
主観疲労度が低い協力者の平均 • 主観疲労度や回答時間の平均から、数字刺激は 人により向き不向きがある可能性が示唆された ⇒主観疲労度0.3以下の協力者の回答時間の推移 0.5 1 問 ご と の 時 間 0.48 0.46 数字刺激 (緩やか) 0.44 0.42 0.4 0.38 1~20問 無刺激 21~40問 41~60問 61~80問 81~100問 数字 図形 境界 上昇 明暗 円形
主観疲労度が低い協力者の平均 • 主観疲労度や回答時間の平均から、数字刺激は 人により向き不向きがある可能性が示唆された ⇒主観疲労度0.3以下の協力者の回答時間の推移 0.5 1 問 ご と の 時 間 0.48 0.46 0.44 0.42 0.4 主観だけでなく客観的にも 疲労していない可能性がある 0.38 1~20問 無刺激 21~40問 41~60問 61~80問 81~100問 数字 図形 境界 上昇 明暗 円形 数字刺激 (緩やか)
考察 • 境界膨張刺激も数字刺激と同様に集中力が向上す る可能性が示唆された ⇒追加実験で明らかにする予定
まとめ • 結果が無刺激を上回るものがいくつか観察され た。 • 数字刺激や境界膨張刺激は良い結果を出してい た。 • 刺激の主観疲労度が低いユーザには客観的にも 集中度の向上に有効である可能性が示唆された。
今後の展望 • 特に効果があった刺激を派生させて追加実験 • JINS MEMEで集計するデータを増やす (瞬目の強さ、頭の傾き等) • 長時間のタスク(問題数を増やすなど)での実験 • 実際に日常のタスクに使えるシステム化
応用イメージ図
応用イメージ図 フレーム × 画面