イマジンカード(2024年、学会発表)石井力重

141 Views

November 30, 24

スライド概要

創造性の学会である日本創造学会で発表したスライドを掲載します。
イマジネーションを刺激するユニークな身体動作を生み出す指示カードを作成しました。その使い方と効果についての研究発表です。

profile-image

アイデアプラント代表、早稲田大学非常勤講師です。 創造工学の研究者です。その知見をベースに、ブレストツールの企画開発や、創造研修やアイデアワークショップ、アイデアソンの設計やファシリテーションをしています。

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

教育目的であれば、ご自由にお使いください (予稿集の石井のページには、20枚のカードの印刷用データが掲載されています) Imagine Card 変な動きで想像力を刺激する! 20の指示カード 石井力重 (アイデアプラント 代表 / 早稲田大学 非常勤講師) 1

2.

発表の概要 先行研究『文献1』では、「全くの自由な動き」が創造性を高めると報告されています。 しかし、日本人の多くは、「全くの自由な動き」を求められた際に、かえって動作の幅が狭 まる傾向があります。これに対処するために、 「変わった動きを引き出すための抽象的な指示カード」(Imagine Card) を開発し、 比較実験を行いました(2022年 石井の研究発表、文献2)。 その結果、「創造的になったと感じた」人数割合は、次の通りでした。 1位:「抽象的な指示カード」を使った動き 2位:「指示なしの自由」な動き 3位:「静かに座って」いる また、その定性データから、効果の要因と思われる「3つの要素」が明らかになりました。 (2022年の石井の学会発表の内容『文献2』です) この知見を基に、指示カードの種類を従来の8枚から20枚に増やし、実践を通じて改良 を重ねてきました。本発表では、カードの詳細な内容と使用方法(個人版、グループ版)の 紹介と、被験者からのアンケート結果の分析を紹介します。(肯定的なものが多いですが、 利用上の工夫や考慮すべき点もありました。教材としてご利用の際にご留意ください。) 2

3.

使い方 ❶ 【一人で使う】 手順 1.カードを選ぶ カードセットから一枚を選びます。 2.全身で実行する 選んだカードの内容を全身を使っ て表現します。目安は約10秒間。 3.繰り返す 時間があれば、他のカードも次々 と選んで実行してみてください。 ポイント ⚫ 自由に楽しむ 手順とカードの意味づけは自分流 にアレンジし、楽しんでください。 活用シーン A.発想に詰まった時に B.創造的作業に取り掛かる前に C.ちょっと体が凝ってきた時に 注意点 周囲に人がいると、恥ずかしさや ストレスを感じることがあります。 自室や、自分が安心できる空間な どで、全身を使って思い切り取り 組むことが大切です。 3

4.

使い方 ❷ 【グループで使う】 手順 1.遊び方を考える グループでカードを使った遊び方を 話し合います。 【遊び方の例】 次頁に。 2.実施する 話し合って決めた遊び方を実際に行 います。必要に応じてルールを調整 し楽しんでください。 活用シーン ⚫ ブレストを始める前に ブレストやクリエイティブなワーク ショップ、企画会議の前に、想像力を 高める雰囲気作りに最適です。 ⚫ チームビルディングに 新しいメンバー同士の親睦を深める アイスブレイクとして活用できます。 ポイント 注意点 ⚫ コミュニケーションを深める カードを通じて、メンバー同士の交 流やチームワークを促進しましょう。 ⚫ 全員が参加できるように ルールや進行を工夫して、誰もが楽 しめる環境を作りましょう。 ⚫ リラックスした雰囲気で プレッシャーを感じずに、楽しむ姿勢 で取り組ください。 ⚫ 自由な発想で 固定観念にとらわれず、柔軟な考え 方で取り組んでください。 4

5.

遊び方の例 a.ジェスチャー当てゲーム: 一人がカードを引き、書かれている内 容をジェスチャーで表現します。他の メンバーはカード一覧表を見て、それ が何かを当てます。 b.ジェスチャー当てゲーム2: 一人がカードを見ないように引き、お でこにあて、他のメンバーに見せます。 メンバーはカードの内容をジェス チャーで表現します。カード一覧表を みて、それが何かを当てます。 c.連想ゲーム: 一人がカードを引き、その内容から連 想される言葉を一つ言います。次の人 は前の人の言葉からさらに連想され る言葉を続けていきます。 d. お絵かき伝言ゲーム: 一人がカードを引き、その内容を絵に 描きます。その絵を次の人に見せ、次 の人はその絵から内容を推測して新 たに絵を描きます。これを数人で繰り 返し、最後に最初の内容と合っている か確認します。 e.リレー物語作り: 順番にカードを引き、そのカードの内 容を取り入れて一文ずつ物語をつな げていきます。 f. アイデアスケッチ: 全員で同時にカードを引き、その内容 を絵に描いて発表し合います。 g.即興劇: グループをいくつかのチームに分け、 各チームが引いたカードの内容を基に 短い劇を即興で演じます。 5

6.

ツールの効果検証:2つの場でのアンケート結果 実施対象 アンケート内容 ⚫ 八尾市のビジネスパーソン 20名 ⚫ 他のアイスブレイクとの比較 ⚫ 早稲田大学の学生 165名 (八尾) 「カオヘン:顔を使う遊び」 (早大)「自己紹介&雑談」 実施方法( 実験で用いたImagine Card の遊び方) ⚫ ランダムに4人組を作成 ⚫ 1人がカードを引き、他のメンバー ⚫ どちらがよりアイスブレイク効果 があったかを回答 ⚫ 自由記述で感想を収集 に提示せず、他の3人がカードの 指示を10秒間実施 ⚫ 引いた本人が、何のカードだった かを当てる 実施時の様子 (早稲田大学) https://youtu.b e/rpEiI2mkNbs ⚫ 5分間で2巡実施。2巡目はカード の指示を真逆にするルールを追加 6

7.

Imagine Card と他アイスブレイク法の効果比較 八尾市 20名 早稲田大学 165名 「Imagine Card」のほうが、 非常に、効果がある。 「Imagine Card」のほうが、 やや、効果がある。 「Imagine Card」のほうが、 非常に、効果がある。 「Imagine Card」のほうが、 やや、効果がある。 どちらも同じ程度の効果であ る。 どちらも同じ程度の効果 楽しいのはイマジンカード、納 得度はカオヘン 「カオヘン」のほうが、やや、 効果がある。 「カオヘン」のほうが、非常 に、効果がある。 どちらも効果は感じない。 「自己紹介&雑談」のほうが、 やや、効果がある。 「自己紹介&雑談」のほうが、 非常に、効果がある。 0 2 4 6 8 10 0 10 20 30 40 50 60 「非常に」と「やや」をまとめた 「非常に」と「やや」をまとめた 16% 21% 63% Imagine Card どちらも同じ程度 カオヘン 38% 52% Imagine Card どちらも同じ程度 自己紹介&雑談 10% 7

8.

自由記述による参加者の反応 項目 八尾市 20人 早稲田大学 165名 参加者の 全体的な 感想や印象 ⚫ 頭が冴えた、思考が柔軟になった ⚫ リラックスでき、楽しかった ⚫ ストレス発散になった ⚫ 面白かった、楽しかった ⚫ 初対面でのジェスチャーに恥ずかしさ ⚫ 混乱や難しさを感じた人もいた 活動がもた らした主な 効果や影響 ⚫ チームワークが向上した ⚫ 脳の活性化や認知症予防に良さそう ⚫ 思考の幅が広がった ⚫ 想像力や思考力が鍛えられた ⚫ 脳が活性化したと感じた ⚫ アイスブレイクとして効果的だった 活動の難易 度に関する コメント ⚫ 難しかったが刺激的だった ⚫ 行動での表現が難しかった ⚫ 時間制限が厳しいと感じた ⚫ お題が抽象的で難しかった ⚫ 逆バージョンが特に難しかった ⚫ 10秒では理解が難しい場合があった チームワーク や雰囲気へ の影響 ⚫ チーム力が増したと感じた ⚫ 緊張がほぐれた ⚫ 仲間意識が生まれた ⚫ 一体感で盛り上がったが、 初対面では恥ずかしさもあった 改善点や 提案事項 ⚫ カードを厚くして透けないように ⚫ カードの上下が分かるデザインに ⚫ 時間制限の調整 ⚫ 活動前に自己紹介を行う ⚫ 難易度の調整(初級・中級など) ⚫ 親しい人と行う方が良いとの意見 ⚫ 購入希望の声 ⚫ 学校の授業に取り入れてほしい ⚫ 他のゲーム(「はぁって言うゲーム」)と 似た効果が期待できる ⚫ 思考が新鮮になったとの意見 ⚫ 活動に合わないと感じた人もいた その他の 特筆すべき 意見や観察 8

9.

コンテンツへのアクセス方法 この「発表スライド」や 「Imagine Card セット」(=予稿集の頁) は、私のブログに置いてあります。 アクセスURL: http://ishiirikie.jpn.org/article/191087900.html アクセスがうまくいかない場合は、 「イマジンカード(Imagine Card)学会発表」 で検索してみてください。 9

10.

今後の展望 : AI時代と創造性の二正面作戦 AI時代の進展に伴い、2つの重要な流れが同時に進行しています。 1.AIを高度に活用したブレインストーミング「ABS」 AIを積極的に活用し、発想力を強化する「ABS」を重視し、効率的で 革新的なアイデア創出する技法の開発をしてゆきます。 2.「 人間らしさ 」をより豊かにしていく活動 創造性には「 感性/イマジネーション/ 直観 」など、研究的には 未踏の闇が深い領域の「資質」を磨くことが、一層重要になります。 イマジネーションや直観力を養うためのツールの開発や、各地に滞在 しいろんなものを感じながら行う研修スタイル(ラーケーション型)の創造 性開発のプログラムの開発を、行ってゆきます。 この二正面作戦を進め、AI技術を活用しながら、一方で人間らしい創造 性を深めていく道を模索します。 10

11.

フィードバックをお寄せください ツールに関する感想、発表に対するアドバイス、 フィードバック、またはご要望など、 ぜひお気軽にお寄せください。 Sli.doのページからは、スマホ等で、 質問や感想を送れます。 (匿名でも実名でも結構です) https://app.sli.do/event/ciDW9T39 7Zz2XwK4rVR1BV 会場でお答えしきれないコメントには、 後日ブログなどでご紹介する予定です。 11

12.

文献1:先行研究 「動きの自由度も創造性を上げる要素になる」という研究 “Motor restrictions impair divergent thinking during walking and during sitting” (運動制限は歩行中および座位中の発散的思考を妨げる) 『Psychological Research』 2022年1月8日、 Supriya Murali(スープリヤ・ムラリ)、University of Würzburg(ドイツのヴュルツブルク大学) • この論文は、運動制限が発散的思考に与える影響を検討しています。この研究では、歩行や座位中におけ る発散的思考(特に流暢さと柔軟性)が、運動制限によってどのように変化するかを調査しています。 • 実験1では、自由歩行および自由座位の状態で行ったGuilfordの「オルタネート・ユーズ・タスク(AUT)」に おいて、歩行時のパフォーマンスが座位時よりも高いことが示されました。特に、流暢さと柔軟性のスコア に有意な差が見られました。 • 実験2と3では、制限付き歩行や座位でタスクを実施し、運動制限が発散的思考を抑制することが確認され ました。これにより、運動制限が発散的思考にネガティブな影響を与えることが示されています。 • 結論として、自由な身体活動が創造性を高める可能性があり、特に制約のない動きがアイデア生成に有効 であることが示唆されています。これにより、ビジネスシーンや創造的活動において自由な身体の動きを取 り入れることの有効性が考えられます。 12

13.

文献2: 石井の2022年の研究発表 創造的休憩 ~ブレインストーミングの休憩時に何をすると、 創造的思考にプラスになるのか~ 日本創造学会・44th研究大会 2022年11月12日~13日 アイデアプラント 石井力重 13

14.

文献2: 石井の2022年の研究発表 研究の狙い ダンス等の心得のない人にとって、全くの自由は、動きにくいのでは? 仮説 解釈に幅がある「抽象的な動きの指示」を数個提示し、それ実行してもらうほうが、 「全くの自由な動作」よりも多様な動作を実施でき、創造的な思考を促せるのでは? 結果 かなり、 出しやすく なった(5) 出しやすく なった(4) 3.90 3.54 3.23 変化なし(3) ③瞑目して過ごす (≒何もしない) ①自由に動く ②抽象的な「動きの指示」から 選び、そのように動く 14

15.

文献2: 石井の2022年の研究発表 アンケート分析から抽出された 「3つの要素」 [想像力を使う] 1. 「頭の中でイメージを作った状態で体を動かすことが発想の出やすさにつながるのではないか」 2. 「奇怪な動きをとっかかりにして連想することで発想が増えた」 3. 「自分が何かをしていると想像することで、新たな発想が得られた」 4. 「無理に言語化しない。擬音語などを用いて、より直感的な考えを表すことができる」 [一度離れる] 1. 「体を動かすことに夢中で、ブレストのテーマが頭から離れていたことも大きいかも」 2. 「リラックスをして題材から離れることもこの創造性を上げることの良いきっかけ」 3. 「全然関係ないことをすることで他の人のアイデアを促進やブラッシュアップができるような気がした。」 [枷を外せる] 1. 「普段と違う行動や、理屈ではあまり説明にならない行動をすることでより既成概念が、深層的に壊せた 気がした」 2. 「人目を気にせず思い切り演技をしたことで気が大きくなって大胆な考えにも目が向くようになったよう な気がした」 3. 「空バットでスケッチを叩き割ってくしゃくしゃにしたことで、元の概念に引っ張られないようになった気が する。」 15

16.

要因の機序を考察するに 更に、日常の動きを 離れた動きをする 思考により一時、 主題を忘れる 文献2: 石井の2022年の研究発表 枷を 外せる 一度 離れ る 想像力を 使う 想像することで 頭を使う 16

17.

文献2: 石井の2022年の研究発表 2022年の研究のまとめ 「全くの制限なしに自由に動くこと」や 「何もしないで座っている」ことよりも 「抽象的な動きの指示を 具現化するように体を動かす」 ことをすると、創造的になる。 17