2024卒業論文 _鈴木聡美

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February 19, 25

スライド概要

本研究では、コロナ禍における夫婦間の無償労働分担の変化を実証的に分析します。特に、コロナ禍前後での夫の無償労働時間や比率の変化、女性の無償労働負担がどのように改善されたかを検討します。また、男女双方の生活満足度や社会的地位に与えた影響についても言及し、先行研究との関連性を確認します。

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慶應義塾大学商学部商学科山本勲研究会 ホームページ: https://www.yamazemi.info Instagram: https://www.instagram.com/yamazemi2024

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

卒論最終発表 山本勲研究会17期 鈴木聡美 1

2.

テーマ コロナ禍における夫婦間無償労働分担に 関する実証分析

3.

アウトライン 01 背景・問題意識 02 先行研究 03 データ・予備的分析 04 分析結果 05 懸念点 3

4.

アウトライン 01 背景・問題意識 02 先行研究 03 分析アプローチ 04 分析結果 05 懸念点 4

5.

背景・問題意識 日本の男性の家事・育児参加の現状 論文p4 日本は他国に比べ、女性と比較した際の男性の家事・育児時間が少ない。 出典:左右ともに内閣府男女共同参画局 5

6.

背景・問題意識 日本の男性の家事・育児参加の現状 日本は他国に比べ、女性と比較した際の男性の家事・育児時間が少ない。 家庭内での家事・育児の多くが女性に偏っている 女性の社会的地位向上の妨げに 出典:左右ともに内閣府男女共同参画局 6

7.

背景・問題意識 女性に偏る家事・育児負担と女性の社会的地位の関係 論文p4 中野(2014) 岩間(2008) 出産後の女性が夫と無償労働を分 担できず、退職を余儀なくされる ことが多いことを指摘。 日本は他の先進国と異なり女性に対する ケア役割の期待が高く、女性が子どもを 産み育てることと就業が競合関係にある。 家事・育児が女性の就業に負の影響を与え、 女性活躍を阻んでいることが伺える。 7

8.

背景・問題意識 男性の家庭参加とその影響について 論文p4 男性の家庭進出を促進するメリット 女性活躍を促すだけでなく、出生率の改善につながる。(東京都生活文化スポーツ局 2023) 男性の幸福感の上昇につながる。(下坂ほか 2023) 夫婦間で家事・育児を平等に分担し、家庭内における男女格差を縮小する ことは女性活躍推進や男性のウェルビーイング向上の観点からも重要 8

9.

背景・問題意識 コロナ禍での男女の家事・育児時間の変化 論文p4 家庭内での男性の無償労働(家事・育児など)は女性に比べ非常に少ないという現状があったが、、、、 2020年初頭から流行した新型コロナウイルス感染症によって男性 の家事・育児時間が増加したことが明らかになっている (石橋ほか2021, 臼井ほか 2022, 内閣府 2021, 高見 2022, 柳田ほか 2023) 時間制約仮説 ニーズ仮説 在宅勤務や休業・失業による 子どもの保育園・学校の休園・休校による 男性の可処分時間の増加 育児を担う人手の需要増加 9

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背景・問題意識 コロナ禍での男女の家事・育児時間の変化 家庭内での男性の無償労働(家事・育児など)は女性に比べ非常に少ないという現状があったが、、、、 男性の無償労働時間の増加によって、 2020年初頭から流行した新型コロナウイルス感染症によって男性 夫婦間の無償労働負担格差が是正さ の家事・育児時間が増加したことが明らかになっている れたかを分析した研究はない (石橋ほか2021, 臼井ほか 2022, 内閣府 2021, 高見 2022, 柳田ほか 2023) 時間制約仮説 ニーズ仮説 在宅勤務や休業・失業による 子どもの保育園・学校の休園・休校による 男性の可処分時間の増加 育児を担う人手の需要増加 10

11.

背景・問題意識 本研究の独自性 論文p4 コロナ禍での配偶者の女性の無償労働時間の変化を考慮 • コロナ禍前後で夫婦間の無償労働分担比率がどのように変化したか • 妻の無償労働負担が改善されたか • コロナ禍において無償労働量を増加させた男性の特徴や各特徴が増加量に どのように影響したか コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担割合に焦点を当てて分析する 11

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背景・問題意識 コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担割合に着目する意義 論文p4-5 コロナ禍前の夫の無償労働負担割合は夫婦の性別役割分業意識を反映している可能性があり、コロ ナ禍における夫の無償労働負担割合にも影響を与えると考えられる なぜか? 理論的背景 愛情規範仮説 性役割イデオロギー仮説 女性が「母親は子供とたくさんの時間を 過ごし愛情を注ぐべき」という愛情規範 を重視する傾向があることを指摘する研 究(大和 1995) 妻が家事・育児を行うその行為自 体が男性の家庭参加を制約してい る(中川 2011) 12

13.

背景・問題意識 仮説1:コロナ禍前の夫の無償労働量がコロナ禍における夫の無償労働量に影響を与える 論文p4-5 コロナ禍前に妻が多くの無償労働を 担っていた家庭 夫婦間で無償労働を平等に分担してい た家庭 夫の可処分時間が増加し ても、夫の相対的な無償 労働量は増加しない可能 性が高い。 夫の無償労働量が増加し、 妻の労働量が減少する結 果、夫の相対的な無償労 働量が増加する。 13

14.

背景・問題意識 コロナ禍における男女のウェルビーイング 論文p5 臼井ほか(2022)、高見(2023) 下坂・小塩(2023) コロナ禍における男女の 生活満足度を分析 男性の無償労働参加が男女 双方の満足度を高める • • 世帯における夫の無償労働割合の変化が夫・妻それぞれの生活満足度や家 族関係に与えた影響についての分析はなされていない。 コロナ禍という特殊な社会状況下でもその傾向が維持されたのか、明らか にすることに意義がある。 14

15.

背景・問題意識 仮説2:コロナ禍の夫の無償労働量の増加が男女のウェルビーイングを向上させる 先行研究 ・育児期の男性において、育児の頻度が高 いほど男性の幸福度が高く、家族との関係 が良い。(蟹江 2005、下坂・小塩 2023、 Cabrera et. al. 2013) →コロナ禍においても、同様の可能性。 ・世帯における夫の無償労働割合の増加は 女性の生活満足度を高める(佐藤 2020) →育児と同様に家庭内での活動である家事 の増加は男性自身の生活満足度にも寄与す る可能性。 論文p5 仮説2 世帯における夫の無償労働 負担割合、家事負担割合、 育児負担割合が高い、もし くはコロナ禍前後で割合が 増加した家庭の男女の生活 満足度は高く、家族との衝 突頻度は少ない。 15

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先行研究 本研究で分析すること 論文p5 分析内容 コロナ禍前の夫の無償労働負担割合を用いた、コロナ禍前後に おける夫婦間の無償労働分担比率の変化の分析 コロナ禍前後の夫の無償労働負担の変化が、生活満足度や家族 との関係に与えた影響の分析 16

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先行研究 独自性・意義 論文p5 コロナ禍前の夫の無償労働負担割合を用いた、コロナ禍前後に おける夫婦間の無償労働分担比率の変化の分析 独自性 コロナ禍前後の夫婦間の無償労働分担比率の変化を見ることで、妻の無償労働 負担が軽減されたかを分析している点。 意義 新型コロナの流行で在宅勤務等の新しい働き方が普及し、男性の可処分時間は 増えたが、家庭内の男女格差が是正されたのかを検証する点。 17

18.

先行研究 独自性・意義 論文p5 コロナ禍前後の夫の無償労働負担の変化が、生活満足度や家族 との関係に与えた影響の分析 独自性 コロナ禍における夫の無償労働負担の変化が夫・妻それぞれの生活満足度や家族との衝突頻度に 与えた影響を分析する。 意義 男性のコロナ禍での無償労働時間の増加が本人や家庭に与えた影響を明らかに する点。 18

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アウトライン 01 背景・問題意識 02 先行研究 03 分析アプローチ 04 分析結果 05 懸念点 19

20.

先行研究 先行研究の分類 男性の無償労働の 参加規定要因 論文p6 コロナ禍における男性の無償 労働時間の変化 男性の家事・育児時間が男 女の幸福度や家族に与える 影響について 20

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先行研究 ①男性の無償労働の参加規定要因 ①時間制約仮説 ③相対的資源仮説 論文p6 ②ニーズ仮説 ④性別役割分業仮説 (性役割イデオロギー 仮説) ➄愛情規範仮説 21

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先行研究 ①男性の無償労働の参加規定要因 論文p6 ①時間制約仮説: 夫婦のうち時間資源の多いほうがより多くの家事を行うという説。 Coverman(1985), Ross (1987), Kamo (1988) 福田(2005) 労働時間が長いほど家事・育児を担 う割合が縮小する。 父親の仕事・通勤時間の増加が家 事育児時間を減少させる。 22

23.

先行研究 ①男性の無償労働の参加規定要因 論文p6 ②ニーズ仮説: 家事・育児の量が多くなるほど家事・育児を行う必要性が高くなるため、 夫が無償労働に参加するようになるという説。 Coverman(1985) 永井・石原(1994) 子どもの数が多いほどニーズが高 まり夫の家庭参加が増加する。 乳幼児のいるライフステージでは、参加の程度 はあれ、多くの夫が子育てに参加する。 23

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先行研究 ①男性の無償労働の参加規定要因 論文p6 ③相対的資源仮説: 収入や教育、職業威信などの社会経済的資源を多く持つほうが家事の負 担を免れるという説。 Blood and Wolfe(1960) Kamo(1988) 前提として家事とは単調でつまらないもの とされており、より社会経済的資源を持つ ほうが家事分担での交渉における勢力を 持ち家事を負担することから逃れるとする。 夫と妻の稼ぎが平等に近づくほど 夫の無償労働分担割合が増加する。 24

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先行研究 ①男性の無償労働の参加規定要因 論文p6-7 ④性別役割分業仮説(性役割イデオロギー仮説): 「男性は外で働き、女性は家を守るべき」という意識が夫婦間での家事・育 児分担を規定するという説。 乾(2011) 正規就業の妻を持つ家庭で は、妻の性別役割分業意識 が高いほど妻の家事頻度が 高くなる。 永井(2001)、石井クンツ(2004) 男性の性別役割分業意識が育 児・家事参加に影響を与える。 25

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先行研究 ①男性の無償労働の参加規定要因 論文p7 ➄愛情規範仮説: 女性自身が家事や育児をすることに家族への愛情という意味を付与し、そ の意識によって家事・育児を行うという説。 大和(1995) 小笠原(2009) 性別という論理に役割分業が判 断されるいわゆる狭義の性別役 割分業意識とは異なる次元で、 母親を家事や育児に向かわせる。 一般的に男女の平等に賛同し、職業 に関して男女が平等の機会を与えら れるべきと考える人も、愛情規範を 肯定する意識が高ければ女性の家 事・育児を当然視する。 26

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先行研究 ②コロナ禍における男性の無償労働時間の変化 論文p7 山本ほか(2023) 高見・山本(2021) コロナ禍前後で約4割の雇用者の家事時間が増加し、女性、 非正規雇用者、サービス職、飲食・宿泊業従事者、中小 企業労働者において無償労働時間の増加が顕著だった。 また、育児時間に関しては全体で約13%%増加し、特に 大卒者、正規雇用者、専門・管理職、大企業勤務者など、 労働時間が減少したグループで増加傾向がみられた。 在宅勤務を行っていた人は家事育児 時間がコロナ前より増加したが2020 年12月時点では減少した。 武田ほか(2021) 石橋ほか(2021) 宣言期間は在宅勤務をし、宣言解除後は出勤していた人 は、宣言中は睡眠時間や家族の世話にあてる時間が増加 したが、宣言解除後は減少しほぼ流行前の状況に戻った。 一方で宣言以降ずっと在宅勤務をしている人は宣言以降、 睡眠時間や家族の世話にあてる時間が増加し、宣言解除 後もそれらの時間は維持された。 男性はコロナ禍において在宅時間が長くなった結 果、在宅勤務に限らず流行前まではあまり行って こなかった自宅での家事や育児等の活動が増えた。 また第一回目の緊急事態宣言後も男性の家事・育 児の活動は女性に比べて流行前の状態に戻らな かった。 27

28.

先行研究 ②コロナ禍における男性の無償労働時間の変化 論文p7 Inoue et al(2024) 高見(2023) 在宅勤務は男性が家事や家族と 過ごす時間を増やし、仕事より も生活を重視する男性との割合 を増加させる。 男性の生活時間はテレワーク実施有無による違いがあり、 テレワークを行っている男性はコロナ前と比べて家事時 間が増加していた。コロナ禍発生から約2年が経過した 同時点でテレワークを続けている男性は、家事等に多く の時間をかけるといった、新しいワーク・ライフ・バラ ンスを形作っていると考察している。 柳田ほか(2023) Shafer et al(2020) コロナ1年目で男女ともに家事頻度が増加した。2年目 では男性のみ減少、男性の家事頻度の増加傾向は持続し ていない。コロナ1年目でのみ労働時間と家事頻度との 関連が見られたが影響は小さく、同居子がいることで男 性で家事頻度がコロナ禍1年目のみ増加したが女性はい ずれの年も影響が見られなかった。 男性はコロナ禍初期で家事・育児の参加を多 少増加させ、その要因としてニーズ仮説が支 持された。失業をした男性はより家事・育児 に参加したことが明らかになった。 28

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先行研究 ②コロナ禍における男性の無償労働時間の変化 • コロナ禍において、子どもの学校の休校による家事・育児 高見(2023) Inoue et al(2024) の需要増加を原因とするニーズ仮説や在宅勤務による可処 男性の生活時間はテレワーク実施有無による違いがあり、 在宅勤務は男性が家事や家族と 分時間の増加を原因とする時間制約説に基づき、男性の家 テレワークを行っている男性はコロナ前と比べて家事時 間が増加していた。コロナ禍発生から約2年が経過した 過ごす時間を増やし、仕事より 事・育児時間が増加した。 同時点でテレワークを続けている男性は、家事等に多く も生活を重視する男性との割合 の時間をかけるといった、新しいワーク・ライフ・バラ • 緊急事態宣言終了後に家事・育児時間が減少、もしくはコ ンスを形作っていると考察している。 を増加させる。 ロナ禍以前の状態に戻り影響が持続しなかったことを示す 研究と緊急事態宣言終了後も在宅勤務を継続した男性にお 柳田ほか(2023) いて増加した家事・育児時間が維持されたことを示す研究 コロナ1年目で男女ともに家事頻度が増加した。2年目 では男性のみ減少、男性の家事頻度の増加傾向は持続し が両方存在。 ていない。コロナ1年目でのみ労働時間と家事頻度との 関連が見られたが影響は小さく、同居子がいることで男 性で家事頻度がコロナ禍1年目のみ増加したが女性はい ずれの年も影響が見られなかった。 29

30.

先行研究 ②コロナ禍における男性の無償労働時間の変化 論文p7-8 Del Boca(2020) Yamamura et al(2021) 女性の家事量の変化はパートナーの仕事調整に依存しない。 従来の勤務場所で働き続けた女性以外、女性はコロナ前よ りも多くの時間を家事にあてていた。一方で男性の家事量 の変化はパートナーの仕事調整に依存していた。男性の パートナーが従来の勤務場所で働き続けた場合、男性はコ ロナ前よりもより多くの時間を家事にあてていた。 子どもが小さい場合、母親の方が在宅勤務を 選択し子供のケアを行う一方で、父親はオ フィス勤務をし子どもとの時間が少なくなる。 フルタイム勤務か否かに関わらず女性の負担 が増えた。 Costoya et al(2022) Zamarro(2021) アルゼンチンにおける、コロナ禍での夫婦間 の時間配分の変化についてコロナ前とコロナ 禍中で分析。有給労働の負担は男女間でより 均等になったものの、女性は追加された家事 や子育ての割合をより多く引き受けた。 アメリカの18歳以上65歳以上を対象に男女 それぞれがコロナ禍における育児の分担にど のように対処しているかを分析し、女性はど のような勤務体制であっても男性よりも多く の育児負担を担ったことを明らかにしている。 30

31.

先行研究 ②コロナ禍における男性の無償労働時間の変化 Del Boca(2020) Yamamura et al(2021) 女性においても家事・育児時間の 増加が観測されており、その原因 として在宅勤務があげられている。 女性の家事量の変化はパートナーの仕事調整に依存しない。 従来の勤務場所で働き続けた女性以外、女性はコロナ前よ りも多くの時間を家事にあてていた。一方で男性の家事量 の変化はパートナーの仕事調整に依存していた。男性の パートナーが従来の勤務場所で働き続けた場合、男性はコ ロナ前よりもより多くの時間を家事にあてていた。 子どもが小さい場合、母親の方が在宅勤務を 選択し子供のケアを行う一方で、父親はオ フィス勤務をし子どもとの時間が少なくなる。 フルタイム勤務か否かに関わらず女性の負担 が増えた。 Costoya et al(2022) アルゼンチンにおける、コロナ禍での夫婦間 の時間配分の変化についてコロナ前とコロナ 禍中で分析。有給労働の負担は男女間でより 均等になったものの、女性は追加された家事 や子育ての割合をより多く引き受けた。 31

32.

先行研究 ③男性の家事・育児時間が男女の幸福度や家族に与える影響について 論文p8 下坂・小塩(2023) 大野(2008) 未就学児を持つ男性を対象に、男性の育児関与が 男性自身の主観的幸福感に与える影響を調査し、 育児関与が高いほど主観的幸福感が高まる。 仕事と、家庭内での家事・育児にバランスよくエ ネルギーを注ぐ男性は、仕事や家庭に対する満足 度が高い。 蟹江(2005) Eggebeen et al.(2013) 育児に頻繁に関与する男性ほど、夫婦双方の主 観的健康が向上する。 育児に積極的に関与する男性が、主観的幸福感や 家族関係を含むウェルビーイングを向上させる。 臼井ほか(2022) 高見(2023) コロナ禍において在宅勤務を行った男性は、そう でない男性に比べ生活の楽しさや満足度が高い。 在宅勤務を行った男性の配偶者は、在宅勤務を行 わなかった男性の配偶者に比べ、生活満足度が高 い。 32

33.

先行研究 ③男性の家事・育児時間が男女の幸福度や家族に与える影響について • 育児に積極的に関与する男性が、主観的幸 未就学児を持つ男性を対象に、男性の育児関与が 仕事と、家庭内での家事・育児にバランスよくエ 男性自身の主観的幸福感に与える影響を調査し、 福感や家族関係を含むウェルビーイングを ネルギーを注ぐ男性は、仕事や家庭に対する満足 育児関与が高いほど主観的幸福感が高まる。 度が高い。 向上させる。 。 蟹江(2005) Eggebeen et al.(2013) • コロナ禍において在宅勤務を行った男性や 育児に積極的に関与する男性が、主観的幸福感や 育児に頻繁に関与する男性ほど、夫婦双方の主 家族関係を含むウェルビーイングを向上させる。 観的健康が向上する。 その配偶者の生活満足度が向上したことが 示唆された。 高見(2023) 臼井ほか(2022) 下坂・小塩(2023) 大野(2008) コロナ禍において在宅勤務を行った男性は、そう でない男性に比べ生活の楽しさや満足度が高い。 在宅勤務を行った男性の配偶者は、在宅勤務を行 わなかった男性の配偶者に比べ、生活満足度が高 い。 33

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先行研究 先行研究まとめ 明らかになっていること 明らかになっていないこと ・コロナ禍で、ニーズ仮説と時間制約仮説に基づ き、男性の家事・育児時間が増加した。 ・コロナ禍で男性の無償労働時間が増加した ・コロナ禍で、在宅勤務の増加によって女性の家 事・育児時間が増加した。 ことによって、夫婦間の無償労働分担格差が 是正されたかは明らかになっていない。 ・育児期の男性の無償労働への関与は男性本人や 配偶者のウェルビーイングを向上させる。 ・コロナ禍において男性の家事・育児の変化 ・コロナ禍で在宅勤務を行った男性やその配偶者 の生活満足度は高かった。 与えた研究はなされていない。 が夫・妻それぞれの生活満足度や家族関係に 34

35.

アウトライン 01 背景・問題意識 02 先行研究 03 分析アプローチ 04 分析結果 05 懸念点 35

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分析アプローチ 仮説1の理論的背景 性別役割分業仮説 男性の「男性は外で働き稼ぐべき」 という考え方や女性の家庭責任意識 論文p8-9 愛情規範仮説 女性の「母親は子供とたくさんの時間を過 ごし愛情を注ぐべき」という愛情規範を重 視する傾向 仮説1:コロナ禍前の夫の無償労働量がコロナ禍における夫の無償労働量に影響を与える コロナ禍前に妻が多くの無償労働を担っていた家庭では夫の可処分時間が増加しても、 夫の負担する相対的な無償労働量は増加しない。夫婦間で無償労働を平等に分担して いた家庭では、夫の無償労働量が増加し、妻の労働量が減少する結果、夫の相対的な無 償労働量が増加する。 36

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背景・問題意識 仮説2の理論的背景(再掲) 先行研究 ・育児期の男性において、育児の頻度が高 いほど男性の幸福度が高く、家族との関係 が良い。(蟹江 2005、下坂・小塩 2023、 Cabrera et. al. 2013) →コロナ禍においても、同様の可能性。 ・世帯における夫の無償労働割合の増加は 女性の生活満足度を高める(佐藤 2020) →育児と同様に家庭内での活動である家事 の増加は男性自身の生活満足度にも寄与す る可能性。 論文p9 仮説2:コロナ禍の夫の相対的な無償労働量の増 加が男女のウェルビーイングを向上させる 世帯における夫の無償労働 割合、家事割合、育児割合 が高い、もしくはコロナ禍 前後で割合が増加した家庭 の男女の生活満足度は高く、 家族との衝突頻度は少ない。 37

38.

分析アプローチ 分析の流れ コロナ禍前における夫の無償労働負担割合に着目し、コロナ禍前後で夫婦間の無 償労働分担格差が是正されたかを明らかにする 無償労働負担割合を維持・増加・減少させた男性本人やその妻のウェルビーイン グを分析し、夫婦間無償労働分担比率の変化がコロナ禍の家庭に与えた影響を明 らかにする 38

39.

分析アプローチ 論文p9-10 推計1.コロナ禍前の夫の無償労働量がコロナ禍の夫の無償労働量に与える影響 仮説:コロナ禍前の夫の無償労働負担割合が高いほど、コロナ禍におけるその割合の増加が大きい 𝑃𝐺𝑖𝑡 = 𝛼0 + 𝛼1 𝐵𝑃𝑖2020 + 𝑋𝑖𝑡 + 𝑇𝑡 + 𝐹𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 変量効果モデル 𝑃𝐺𝑖𝑡 = 𝛼0 + (𝛼1 + 𝛼2 𝑊𝐹𝐻𝑖𝑡 )𝐵𝑃𝑖2020 + 𝛼3 𝑊𝐹𝐻𝑖𝑡 + 𝑋𝑖𝑡 + 𝑇𝑡 + 𝐹𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 𝑃𝐺𝑖𝑡 = 𝛼0 + (𝛼1 + 𝛼4 𝐶𝑜𝑚𝑚𝑢𝑡𝑒 𝑇𝑖𝑚𝑒𝑖𝑡 )𝐵𝑃𝑖2020 + 𝛼5 𝐶𝑜𝑚𝑚𝑢𝑡𝑒 𝑇𝑖𝑚𝑒𝑖𝑡 + 𝑋𝑖𝑡 + 𝑇𝑡 + 𝐹𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 固有効果 説明変数 被説明変数 コロナ禍前後の世帯 における夫の無償労 働・家事・育児負担 割合の差(𝑃𝐺𝑖𝑡 ) • • • コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担 割合/割合範囲別ダミー(𝐵𝑃𝑖𝑡 ) 夫・妻の在宅勤務ダミー(𝑊𝐹𝐻𝑖𝑡 ) 夫・妻の通勤時間(𝐶𝑜𝑚𝑚𝑢𝑡𝑒 𝑇𝑖𝑚𝑒𝑖𝑡 ) コントロール変数 • 年代ダミー • 大卒ダミー • 職種ダミー • 業種ダミー 時間によって変わらない 個々人の固有効果 時間効果 年ダミー 39

40.

分析アプローチ 論文p10 推計1.コロナ禍前の夫の無償労働量がコロナ禍の夫の無償労働量に与える影響 仮説:コロナ禍前の夫の無償労働負担割合が高いほど、コロナ禍におけるその割合の増加が大きい 𝑃𝐺𝑖𝑡 = 𝛼0 + 𝛼1 𝐵𝑃𝑖2020 + 𝑋𝑖𝑡 + 𝑇𝑡 + 𝐹𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 変量効果モデル 𝑃𝐺𝑖𝑡 = 𝛼0 + (𝛼1 + 𝛼2 𝑊𝐹𝐻𝑖𝑡 )𝐵𝑃𝑖2020 + 𝛼3 𝑊𝐹𝐻𝑖𝑡 + 𝑋𝑖𝑡 + 𝑇𝑡 + 𝐹𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 𝑃𝐺𝑖𝑡 = 𝛼0 + (𝛼1 + 𝛼4 𝐶𝑜𝑚𝑚𝑢𝑡𝑒 𝑇𝑖𝑚𝑒𝑖𝑡 )𝐵𝑃𝑖2020 + 𝛼5 𝐶𝑜𝑚𝑚𝑢𝑡𝑒 𝑇𝑖𝑚𝑒𝑖𝑡 + 𝑋𝑖𝑡 + 𝑇𝑡 + 𝐹𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 固有効果 説明変数 被説明変数 コロナ禍前後の世帯 における夫の無償労 働・家事・育児負担 割合の差(𝑃𝐺𝑖𝑡 ) 正 • • 負• コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担 割合/割合範囲別ダミー(𝐵𝑃𝑖𝑡 ) 夫・妻の在宅勤務ダミー(𝑊𝐹𝐻𝑖𝑡 ) 夫・妻の通勤時間(𝐶𝑜𝑚𝑚𝑢𝑡𝑒 𝑇𝑖𝑚𝑒𝑖𝑡 ) コントロール変数 • 年代ダミー • 大卒ダミー • 職種ダミー • 業種ダミー 時間によって変わらない 個々人の固有効果 時間効果 年ダミー 40

41.

分析アプローチ 論文p10-11 推計2.コロナ禍前後の夫の無償労働負担の変化が、男女のウェルビーイングに与えた影響の分析 仮説:コロナ禍前後の無償労働負担割合が大きい人ほど夫・妻の生活満足度が高く、家族との衝突頻度が低い 変量効果モデル/固定効果モデル 固有効果 𝑊𝐵𝑖𝑡 = 𝛼0 + 𝛼1 𝑃𝑖𝑡 + 𝛼2 𝑃𝐺𝑖𝑡 + 𝛼3 𝑍𝑖𝑡 +𝑇𝑡 +𝐹𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 時間効果 時間によって変わらな い個々人の固有効果 年ダミー 被説明変数 • 夫・妻の生活 満足度 • 夫・妻が考え る家族との衝 突頻度 説明変数 • コロナ禍の夫の無償労働・家事・育児負担 割合(𝑃𝑖𝑡 ) • 夫の無償労働・家事・育児負担割合のコロ ナ禍前後の差分(𝑃𝐺𝑖𝑡 ) コントロール変数 • 世帯収入、夫・妻それぞれの週平均労働時間 と週平均通勤時間、子供の有無ダミー、夫・ 妻それぞれの大卒ダミーと雇用形態ダミー • 年齢 • 大卒ダミー • 職種ダミー • 業種ダミー 41

42.

分析アプローチ 論文p10-11 推計2.コロナ禍前後の夫の無償労働負担の変化が、男女のウェルビーイングに与えた影響の分析 仮説:コロナ禍前後の無償労働負担割合が大きい人ほど夫・妻の生活満足度が高く、家族との衝突頻度が低い 変量効果モデル/固定効果モデル 固有効果 𝑊𝐵𝑖𝑡 = 𝛼0 + 𝛼1 𝑃𝑖𝑡 + 𝛼2 𝑃𝐺𝑖𝑡 + 𝛼3 𝑍𝑖𝑡 +𝑇𝑡 +𝐹𝑖 + 𝜀𝑖𝑡 時間効果 時間によって変わらな い個々人の固有効果 年ダミー 被説明変数 • 夫・妻の生活 満足度 • 夫・妻が考え る家族との衝 突頻度 説明変数 正 • コロナ禍の夫の無償労働分担・家事・育児 の割合(𝑃𝑖𝑡 ) • 夫の無償労働分担・家事・育児の割合のコ ロナ禍前後の差分(𝑃𝐺𝑖𝑡 ) コントロール変数 • 世帯収入、夫・妻それぞれの週平均労働時間 と週平均通勤時間、子供の有無ダミー、夫・ 妻それぞれの大卒ダミーと雇用形態ダミー • 年齢 • 大卒ダミー • 職種ダミー • 業種ダミー 42

43.

分析アプローチ 使用データ 論文p11 日本家計パネル調査(JHPS/KHPS) 〈対象時期〉 KHPS:2021~2022年 JHPS:2021~2022年 〈調査対象〉 KHPS:20歳~69歳の男女 JHPS:20歳以上の男女 本稿では、配偶者を持つサンプルに限定して分析する。 43

44.

分析アプローチ 変数名 変数説明 論文p11-12 変数名 変数説明 コロナ禍前後の世帯における夫の無 詳細は後スライドで説明 償労働負担割合の差分 被 コロナ禍前後の世帯における夫の家 詳細は後スライドで説明 説 事負担割合の差分 明 変 数 コロナ禍前後の世帯における夫の育 詳細は後スライドで説明 児負担割合の差分 生活満足度 コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担割合 詳細は後スライドで説明 コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担割合別ダミー 詳細は後スライドで説明 在宅勤務ダミー 在宅勤務を行っている場合に1、それ以 外は0。 通勤時間 週平均通勤時間 夫の無償労働負担割合 夫の家事負担割合 夫の育児負担割合 詳細は後スライドで説明 詳細は後スライドで説明 詳細は後スライドで説明 労働時間 週平均労働時間 子どもの有無ダミー 説 明 変 数 変数説明 大卒ダミー 雇用形態別ダミー 年代ダミー 職種ダミー 詳細は後スライドで説明 業種ダミー 企業規模ダミー 18歳以下の子どもがいる場合=1、それ 以外は0。 最終学歴が大卒以上の場合=1、それ以 外は0。 正規雇用の場合=1、それ以外は0。 20代、30代、40代、50代、60代以上で それぞれでダミーを作成し、該当する場 合に1、それ以外は0。 農林漁業作業者、採掘作業者、販売、 サービス、管理的職種、運輸・通信、製 造・建築・保守・運搬、情報処理技術者、 専門的・技術的職業、保安、事務でそれ ぞれダミーを作成し、該当する場合に1、 それ以外は0。 漁業、工業、建築、卸、製造、飲食、金 融、運輸、情報、電気・ガス、医療・福 祉、教育・学習、サービス、公務でそれ ぞれダミーを作成し、該当する場合に1、 それ以外は0。 企業規模1~4人、5~29人、30~99人、 100~499人、500人以上、官公庁でそれ ぞれダミーを作成し、該当する場合に1、 それ以外は0。 44

45.

分析アプローチ 変数説明(家事時間・育児時間) 論文p11 左のJHPSの質問項目を使用。 週当たりの夫・妻それぞ れの家事時間・育児時 間を作成 45

46.

分析アプローチ 変数説明(世帯における夫の無償労働負担割合) 無償労働 世帯における 夫の無償労働負担割合 論文p11 家事、育児などの家庭内労働 = 夫の週当たりの無償労働時間 夫婦の週当たりの無償労働時間合計 値が0.5に近づくほど夫婦間での無償労働分担が平等であることを示す。 コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担割合は2020年のものを使用。 46

47.

分析アプローチ 論文p11 変数説明(コロナ禍前後の夫の無償労働・家事・育児負担割合の変化) コロナ禍前後の世帯における夫の 無償労働負担割合の差分 コロナ禍前後の世帯における夫の 家事負担割合の差分 コロナ禍前後の世帯における夫の 育児負担割合の差分 = コロナ禍の世帯における夫の無償労働負担割合 コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担割合 − = = コロナ禍の世帯における夫の家事負担割合 − コロナ禍前の世帯における夫の家事負担割合 コロナ禍の世帯における夫の育児負担割合 − コロナ禍前の世帯における夫の育児負担割合 47

48.

分析アプローチ 論文p13 変数説明(コロナ禍前の夫の無償労働負担割合分位ダミー・予備的分析で使用) 世帯におけ る夫の無償 労働負担 割合 ダミー変数 基準割合 左の基準に該当したら1をとる 0%以上40%未満 負担割合下位層ダミー 40%以上70%未満 負担割合中位層ダミー 70%以上100%以下 負担割合上位層ダミー 48

49.

分析アプローチ 論文p12 変数説明(コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担割合範囲別ダミー) 基準割合 世帯におけ る夫の無償 労働負担 割合 ダミー変数 左の基準に該当したら1をとる 0%以上5%未満 0%以上5%未満ダミー 5%以上10%未満 5%以上10%未満ダミー 45%以上50%未満 45%以上50%未満ダミー 50%以上100%未満 50%以上100%未満ダミー 49

50.

データ・推計 変数説明(生活満足度指標) 論文p11 生活満足度 左のJHPSの質問項目を使用。 この質問項目のうち、 「生活全般」に関しての回答を変数化する。 0~10の値をとり、値が大きいほど生活 満足度が高いことを示す。 50

51.

データ・推計 変数説明(家族との衝突頻度) 論文p11 家族との衝突頻度 上のJHPSの質問項目を使用。 この質問項目のうち、 「家族との衝突や口論、いさかい」に関して の回答を変数化する。0~6の値をとり、値 が大きいほど家族との衝突頻度が少な いことを示す。 51

52.

分析アプローチ 基本統計量 論文p12-13 平均値 標準偏差 平均値 標準偏差 コロナ禍前後の世帯における夫の無償労働負担割合の差分 0.011028 0.188304 在宅勤務ダミー(夫) 0.15397 0.360939 コロナ禍前後の世帯における夫の家事負担割合の差分 0.020356 0.177488 在宅勤務ダミー(妻) 0.078539 0.269032 コロナ禍前後の世帯における夫の育児負担割合の差分 0.02118 0.183463 通勤時間(夫) 4.3602 4.81932 生活満足度(夫) 6.352144 1.906258 通勤時間(妻) 2.026411 3.104457 生活満足度(妻) 6.360183 1.961878 夫の無償労働負担割合 0.134781 0.203275 家族との衝突頻度(夫) 3.309498 1.074775 夫の家事負担割合 0.211748 0.190221 家族との衝突頻度(妻) 3.332251 1.131262 夫の育児負担割合 0.247069 0.184923 コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担割合 コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担割合別ダミー (ベース:0%以上5%未満) 0.122108 0.198308 労働時間(夫) 14.51955 21.68137 労働時間(妻) 6.904977 14.11904 5%以上10%未満 0.069753 0.254743 10%以上15%未満 0.053145 0.224334 15%以上20%未満 0.029894 0.170304 20%以上25%未満 0.029144 0.168219 25%以上30%未満 0.026358 0.160206 30%以上35%未満 0.02593 0.158934 35%以上40%未満 0.006107 0.077915 40%以上45%未満 0.013929 0.117203 45%以上50%未満 0.002893 0.053711 50%以上100%未満 0.048216 0.214234 (注)標本数はすべて6,261である • コロナ禍前後で世帯におけ る夫の無償労働負担割合は 全体で0.1%増加 • 生活満足度は夫・妻両者に おいて6.3程度であり両者 に差がほとんどない • 家族との衝突頻度指標につ いても夫が約3.30、妻が約 3.33と妻の方がやや高いが 両者に大きな違いはなかっ た 52

53.

分析アプローチ 基本統計量(コントロール変数) 論文p13 平均値 標準偏差 子どもの有無ダミー 0.180971 0.385015 大卒ダミー(夫) 0.288225 0.45296 漁業 大卒ダミー(妻) 0.12729 0.333316 工業 0 0 雇用形態別ダミー(夫) 0.357549 0.479304 建築 0.074618 0.262794 雇用形態別ダミー(妻) 0.111861 0.315212 卸 0.162538 0.368972 飲食 0.041284 0.198962 年代ダミー(ベース:20代) 平均値 標準偏差 0.002294 0.04784 業種ダミー(ベース:製造) 30代 0.129219 0.33546 金融 0.034862 0.183445 40代 0.191257 0.393312 運輸 0.051835 0.221711 0.202936 0.402207 0.021254 0.14424 0.427301 0.494713 電気・ガス 0.006422 0.079886 医療・福祉 0.144648 0.351773 教育・学習 0.064067 0.244892 他サービス 0.151376 0.358443 公務 0.048471 0.214776 50代 60代以上 情報 職種ダミー(ベース:事務) 農林漁業作業者 採掘作業者 0.017572 0.131397 販売 0.104897 0.306437 サービス 0.124933 0.330661 管理的職種 0.029358 0.168818 1~4人 0.188928 0.391482 運輸・通信 0.030108 0.170894 5~29人 0.174973 0.379973 製造・建築・保守・運搬 0.111754 0.31508 30~99人 0.153504 0.3605 情報処理技術者 0.015429 0.123259 100~499人 0.176047 0.380889 専門的・技術的職業 0.125897 0.331751 官公庁 0.049992 0.217946 保安 0.010393 0.101422 (注)標本数はすべて6,261である 企業規模ダミー(ベース:500人以上) 53

54.

アウトライン 01 背景・問題意識 02 先行研究 03 分析アプローチ 04 分析結果 05 懸念点 54

55.

分析結果 論文p13-14 推計1:予備的分析 コロナ禍前後の世帯における夫の無償労働・家事・育児割合の差分(三分位別) 夫の無償労働負担割合の差分 夫の家事割合負担の差分 夫の育児負担割合の差分 夫の無償労働・家事・育児負担割合 下位層→増加。 中位層→やや減少。 上位層→大幅減少。 10 5 割 0 合 の 差 分 -5 -10 ( ) % -15 -20 -25 コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担割合 下位層(0%以上20%未満) 中位層(20%以上40%未満) 上位層(40%以上) 「コロナ禍前の世帯における夫の無 償労働負担割合が高いほど、コロナ 禍で世帯における夫の無償労働負担 割合が増加する」という仮説1とは異 なる結果となった。 55

56.

分析結果 論文p14 推計1:コロナ禍前後の夫の無償労働・家事・育児負担割合の差:変量効果モデル 被説明変数:コロナ禍前後の無償労働・家事・育児負担割合の差 無償労働負担割合の差 (1) コロナ禍前無償労働負担割合 (2) 家事負担割合の差 (3) (4) 育児負担割合の差 (5) -0.472*** -0.382*** -0.492*** (-0.027) (-0.0292) (-0.0576) (6) コロナ禍前の無償労働負担割合範囲別ダミー(ベース:0%以上5%未満) 5%以上10%未満 0.0075 0.00117 -0.0401** (-0.00908) (-0.0124) (-0.0201) -0.014 -0.0350*** -0.00944 (-0.0108) (-0.0122) (-0.0233) -0.021 -0.0346** -0.0459* (-0.0147) (-0.0171) (-0.027) -0.0505*** -0.0306* -0.106*** (-0.0144) (-0.0163) (-0.0359) 25%以上30%未満 -0.117*** -0.114*** -0.105*** (-0.0149) (-0.0183) (-0.0346) 30%以上35%未満 -0.117*** -0.112*** -0.191*** (-0.0167) (-0.0199) (-0.0297) 35%以上40%未満 -0.0922*** -0.106*** -0.124*** (-0.034) (-0.0341) (-0.0433) 40%以上45%未満 -0.192*** -0.165*** -0.148*** (-0.025) (-0.0227) (-0.04) 45%以上50%未満 -0.253*** -0.200*** -0.234*** (-0.0357) (-0.0518) (-0.0562) 50%以上100%未満 -0.318*** -0.206*** -0.269*** 10%以上15%未満 15%以上20%未満 20%以上25%未満 (-0.0229) 定数項 (-0.0209) (-0.0418) 0.0853* 0.06 0.125* 0.109* 0.237* 0.203 (-0.0449) (-0.0462) (-0.0645) (-0.065) (-0.142) (-0.137) 標本数 4,395 4,395 1,975 1,975 681 681 ID数 2,430 2,430 1,180 1,180 428 428 • (1)列において、コロナ禍前の世帯における夫 の無償労働負担割合の係数が-0.472で統計的に負 に有意[(3)・(5)列も似た傾向] コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担割 合が1%あがると、コロナ禍で約0.5%減少する (家事負担や育児負担でも似た傾向)。 • コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担割合 は、コロナ禍の世帯における夫の無償労働・家 事・育児負担割合に負の影響を与え、仮説1と異 なった。 • また減少度合いは育児分担において最も大きかっ たことが明らかになった。 (注1) 括弧内はロバスト変数を示す。 (注2) ***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%で有意であることを示す。 (注3)雇用形態ダミーでは正規雇用者を1、非正規雇用者を0としてダミー変数を作成している。 (注4)その他の変数として子供の有無ダミー、大卒ダミー、年代ダミー、職種ダミー、業種ダミー、年ダミーを含めている。 56

57.

分析結果 論文p15-16 推計1:コロナ禍前後の夫の無償労働・家事・育児負担割合の差:変量効果モデル 被説明変数:コロナ禍前後の無償労働・家事・育児負担割合の差 無償労働負担割合の差 (1) コロナ禍前無償労働負担割合 (2) 家事負担割合の差 (3) (4) 育児負担割合の差 (5) -0.472*** -0.382*** -0.492*** (-0.027) (-0.0292) (-0.0576) (6) コロナ禍前の無償労働負担割合範囲別ダミー(ベース:0%以上5%未満) 5%以上10%未満 10%以上15%未満 15%以上20%未満 0.0075 0.00117 -0.0401** (-0.00908) (-0.0124) (-0.0201) -0.014 -0.0350*** -0.00944 (-0.0108) (-0.0122) (-0.0233) -0.0459* -0.021 -0.0346** (-0.0147) (-0.0171) (-0.027) 20%以上25%未満 -0.0505*** -0.0306* -0.106*** (-0.0144) (-0.0163) (-0.0359) 25%以上30%未満 -0.117*** -0.114*** -0.105*** (-0.0149) (-0.0183) (-0.0346) 30%以上35%未満 -0.117*** -0.112*** -0.191*** (-0.0167) (-0.0199) (-0.0297) -0.0922*** -0.106*** -0.124*** (-0.034) (-0.0341) (-0.0433) 40%以上45%未満 -0.192*** -0.165*** -0.148*** (-0.025) (-0.0227) (-0.04) 45%以上50%未満 -0.253*** -0.200*** -0.234*** (-0.0357) (-0.0518) (-0.0562) 50%以上100%未満 -0.318*** -0.206*** -0.269*** 35%以上40%未満 (-0.0229) 定数項 (-0.0209) (-0.0418) 0.0853* 0.06 0.125* 0.109* 0.237* 0.203 (-0.0449) (-0.0462) (-0.0645) (-0.065) (-0.142) (-0.137) 標本数 4,395 4,395 1,975 1,975 681 681 ID数 2,430 2,430 1,180 1,180 428 428 (注1) 括弧内はロバスト変数を示す。 (注2) ***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%で有意であることを示す。 • (2)・(4)・(6)列において、ほとんどの 割合範囲別ダミーの係数が統計的に負に有意。 • (2)列においてコロナ禍前後の減少幅が最も小 さいのは20%以上25%未満の世帯。一方、最も減 少幅が大きかったのは50%以上100%未満の世帯。 • 割合範囲と係数は、割合範囲が大きくなるほど係 数の値が比例するというような線形の関係性では なく、非線形の関係性である。 • 割合範囲が大きい世帯ほどコロナ禍前後で世帯に おける夫の無償労働負担割合が増加するという仮 説1とは反対の結果。 • 夫婦間の無償労働負担格差はコロナ禍前後で増大。 (4)・(6)列においても似た傾向が示された (注3)雇用形態ダミーでは正規雇用者を1、非正規雇用者を0としてダミー変数を作成している。 (注4)その他の変数として子供の有無ダミー、大卒ダミー、年代ダミー、職種ダミー、業種ダミー、年ダミーを含めている。 57

58.

分析結果 論文p18 推計1:コロナ禍前後の夫の無償労働・家事・育児負担割合の差:交差項を含む変量効果モデル 被説明変数:コロナ禍前後の無償労働・家事・育児・負担割合の差 無償労働負担割合の差 家事負担割合の差 育児負担割合の差 (1) (2) (3) (4) (5) (6) 在宅勤務ダミー(夫)とコロナ禍前の無償労働負担割合別ダ ミーの交差項 (ベース:0%以上5%未満) ×5%以上10%未満 ×10%以上15%未満 ×15%以上20%未満 ×20%以上25%未満 ×10%以上15%未満 0.0129 -0.0025 -0.0148 (-0.0175) (-0.0265) (-0.0382) -0.0213 0.00699 -0.0725 (-0.0241) (-0.026) (-0.0525) 0.0387 0.0101 0.143** (-0.0375) (-0.0378) (-0.0591) 0.0304 0.0286 -0.00217 (-0.0375) (-0.0493) (-0.0826) ×25%以上30%未満 -0.0145 0.0167 -0.068 (-0.029) (-0.0434) (-0.0658) ×30%以上35%未満 -0.00502 0.0245 0.0525 ×35%以上40%未満 ×40%以上45%未満 ×45%以上50%未満 ×50%以上100%未満 (-0.059) ×10%以上15%未満 ×15%以上20%未満 ×20%以上25%未満 ×25%以上30%未満 ×30%以上35%未満 ×35%以上40%未満 ×40%以上45%未満 ×45%以上50%未満 ×50%以上100%未満 ×15%以上20%未満 ×20%以上25%未満 ×25%以上30%未満 ×30%以上35%未満 ×35%以上40%未満 ×40%以上45%未満 ×45%以上50%未満 (-0.0385) (-0.0416) 0.126 0.194*** 0.0964 (-0.0902) (-0.0597) (-0.0659) 0.0772 -0.0849* 0.215*** (-0.0631) (-0.0465) (-0.074) 通勤時間(妻)とコロナ禍前の無償労働負担割合別ダミーの 交差項 (ベース:0%以上5%未満) ×5%以上10%未満 0.11 0.128 -0.0522 (-0.0909) (-0.103) (-0.0835) 0.0418 0.0333 0.175 (-0.0521) (-0.0485) (-0.107) 在宅勤務ダミー(妻)とコロナ禍前の無償労働負担割合別ダ ミーの交差項 (ベース:0%以上5%未満) ×5%以上10%未満 通勤時間(夫)とコロナ禍前の無償労働負担割合別ダミーの 交差項 (ベース:0%以上5%未満) ×5%以上10%未満 ×50%以上100%未満 ×10%以上15%未満 ×15%以上20%未満 ×20%以上25%未満 -0.0462** -0.0388 0.011 (-0.0195) (-0.0345) (-0.0541) -0.00793 -0.0297 0.00535 (-0.0243) (-0.0379) (-0.059) -0.0269 -0.0359 -0.0144 (-0.0392) (-0.055) (-0.0655) 0.0317 0.000759 0.0862 (-0.0476) (-0.0521) (-0.131) 0.0403 0.00387 0.0485 (-0.0337) (-0.053) (-0.0665) 0.011 -0.000536 -0.0518 (-0.0453) (-0.0527) (-0.0701) -0.153** -0.157*** -0.272*** (-0.0601) (-0.0487) (-0.066) -0.0557 0.0161 -0.136 (-0.0567) (-0.052) (-0.125) -0.137* -0.123** - (-0.0798) (-0.0585) 0.0228 0.0377 -0.118 (-0.0436) (-0.0437) (-0.0834) ×25%以上30%未満 ×30%以上35%未満 ×35%以上40%未満 ×40%以上45%未満 ×45%以上50%未満 ×50%以上100%未満 定数項 標本数 ID数 0.0595 (-0.04669 4,395 2,430 -0.00162 -0.00377 0.0047 (-0.00171) (-0.00235) (-0.00489) -0.00158 -0.000683 -0.000407 (-0.00193) (-0.00252) (-0.00406) -0.00253 -0.00345 -0.00701 (-0.00314) (-0.00328) (-0.00656) -0.000416 -0.00451 0.00269 (-0.00324) (-0.0028) (-0.00673) -0.00294 -0.00416 -0.000724 (-0.00246) (-0.0034) (-0.00632) -0.00217 -0.00217 -0.00948* (-0.00296) (-0.00407) (-0.00562) -0.00598 -0.0127 0.0124 (-0.00672) (-0.00793) (-0.0118) -0.00169 -0.00928*** 0.00855 (-0.0036) (-0.00348) (-0.00648) 0.00377 -0.00286 -0.00611 (-0.00717) (-0.00994) (-0.0117) -0.00698 0.00117 -0.00811 (-0.00515) (-0.00459) (-0.0111) 0.00384 -0.00138 -0.0146* (-0.00267) (-0.00485) (-0.0083) 0.00102 -0.00295 0.000575 (-0.00292) (-0.00475) (-0.00891) 0.00668 -0.00489 0.000321 (-0.00462) (-0.00598) (-0.0105) -0.00195 -0.00386 -0.00244 (-0.00399) (-0.00553) (-0.0119) 0.000555 -0.00355 -0.0197* (-0.00386) (-0.0056) (-0.0106) 0.00654** -0.00188 -0.00265 (-0.00312) (-0.00566) (-0.00929) 0.00981 0.00462 -0.0139 (-0.00723) (-0.00809) (-0.0116) 0.0125*** 0.00808 -0.00254 (-0.00485) (-0.00593) (-0.0125) -0.00645 -0.0519*** -0.0235 (-0.00558) (-0.0113) (-0.031) 0.0109** -0.00399 -0.0189 (-0.00536) 0.061 (-0.0485) 3,948 2,262 (-0.00625) 0.0855 (-0.0686) 1,778 1,091 (-0.0125) 0.133 (-0.14) 636 405 0.105 (-0.0651) 1,975 1,180 0.204 (-0.137) 681 428 (注1) 括弧内はロバスト変数を示す。 (注2) ***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%で有意であることを示す。 (注3)雇用形態ダミーでは正規雇用者を1、非正規雇用者を0としてダミー変数を作成している。 (注4)その他の変数としてコロナ禍前の無償労働分担割合範囲ダミー、子供の有無ダミー、大卒ダミー、年代ダミー、職種ダミー、業種ダミー、年ダミーを含めている。 58

59.

分析結果 論文p17 推計1:コロナ禍前後の夫の無償労働・家事・育児負担割合の差:交差項を含む変量効果モデル 在宅勤務ダミー(妻)とコロナ禍前の無償労働負担割合別ダ ミーの交差項 (ベース:0%以上5%未満) ×5%以上10%未満 -0.0462** (-0.0195) 被説明変数:コロナ禍前後の無償労働・家事・育児・負担割合の差 無償労働負担割合の差 家事負担割合の差 育児負担割合の差 (1) (2) (3) (4) (5) (6) 在宅勤務ダミー(夫)とコロナ禍前の無償労働負担割合別ダ ミーの交差項 (ベース:0%以上5%未満) ×5%以上10%未満 ×10%以上15%未満 0.0129 -0.0025 -0.0148 (-0.0175) (-0.0265) (-0.0382) -0.0213 0.00699 -0.0725 (-0.026) (-0.0525) (-0.0241) ×15%以上20%未満 ×20%以上25%未満 0.0387 0.0101 0.143** (-0.0375) (-0.0378) (-0.0591) 0.0304 0.0286 -0.00217 (-0.0375) (-0.0493) (-0.0826) ×25%以上30%未満 -0.0145 0.0167 -0.068 (-0.029) (-0.0434) (-0.0658) ×30%以上35%未満 -0.00502 0.0245 0.0525 (-0.0385) (-0.0416) (-0.059) ×35%以上40%未満 ×40%以上45%未満 ×45%以上50%未満 0.126 0.194*** 0.0964 (-0.0902) (-0.0597) (-0.0659) 0.0772 -0.0849* 0.215*** (-0.0631) (-0.0465) (-0.074) 0.11 0.128 -0.0522 (-0.103) (-0.0835) (-0.0909) ×50%以上100%未満 0.0418 0.0333 0.175 (-0.0521) (-0.0485) (-0.107) ×10%以上15%未満 ×15%以上20%未満 ×5%以上10%未満 ×15%以上20%未満 ×20%以上25%未満 ×25%以上30%未満 ×30%以上35%未満 ×35%以上40%未満 ×40%以上45%未満 ×45%以上50%未満 ×50%以上100%未満 -0.0269 (-0.0392) ×20%以上25%未満 0.0317 (-0.0476) ×25%以上30%未満 0.0403 (-0.0337) ×30%以上35%未満 0.011 (-0.0453) ×35%以上40%未満 在宅勤務ダミー(妻)とコロナ禍前の無償労働負担割合別ダ ミーの交差項 (ベース:0%以上5%未満) ×10%以上15%未満 -0.00793 (-0.0243) -0.153** (-0.0601) -0.0462** -0.0388 0.011 (-0.0195) (-0.0345) (-0.0541) -0.00793 -0.0297 0.00535 (-0.0243) (-0.0379) (-0.059) -0.0359 -0.0144 (-0.0392) -0.0269 (-0.055) (-0.0655) 0.0317 0.000759 0.0862 (-0.0476) (-0.0521) (-0.131) 0.0403 0.00387 0.0485 (-0.0337) (-0.053) (-0.0665) 0.011 -0.000536 -0.0518 (-0.0453) (-0.0527) (-0.0701) -0.153** -0.157*** -0.272*** (-0.0601) (-0.0487) (-0.066) 0.0161 -0.136 (-0.0567) -0.0557 (-0.052) (-0.125) -0.137* -0.123** - (-0.0798) (-0.0585) 0.0228 0.0377 -0.118 (-0.0436) (-0.0437) (-0.0834) (1)列において、妻の在宅勤務ダミーと 割合範囲別ダミー5%以上10%未満、35% 以上40%未満、45%以上50%未満の交差項 の係数が統計的に負に有意。 ×40%以上45%未満 -0.0557 (-0.0567) ×45%以上50%未満 -0.137* (-0.0798) ×50%以上100%未満 0.0228 • 妻が在宅勤務をしている場合、していない 場合に比べて世帯における夫の無償労働負 担割合がコロナ禍前後で減少。 • 在宅勤務によって増加した妻の可処分時間 が無償労働に回され、妻の無償労働負担割 合が増加した可能性。 (-0.0436) 59

60.

分析結果 論文p17 推計1:コロナ禍前後の夫の無償労働・家事・育児負担割合の差:交差項を含む変量効果モデル (3) 在宅勤務ダミー(夫)とコロナ禍前の無償労働負担割合別ダミー の交差項 (ベース:0%以上5%未満) ×5%以上10%未満 -0.0025 (-0.0265) ×10%以上15%未満 0.00699 (-0.026) 被説明変数:コロナ禍前後の無償労働・家事・育児・負担割合の差 無償労働負担割合の差 家事負担割合の差 育児負担割合の差 (1) (2) (3) (4) (5) (6) ×15%以上20%未満 在宅勤務ダミー(夫)とコロナ禍前の無償労働負担割合別ダ ミーの交差項 (ベース:0%以上5%未満) ×5%以上10%未満 ×10%以上15%未満 ×15%以上20%未満 ×20%以上25%未満 (-0.0378) 0.0129 -0.0025 -0.0148 (-0.0175) (-0.0265) (-0.0382) -0.0213 0.00699 -0.0725 (-0.0241) (-0.026) (-0.0525) 0.0387 0.0101 0.143** (-0.0375) (-0.0378) (-0.0591) 0.0304 0.0286 -0.00217 (-0.0375) (-0.0493) (-0.0826) ×25%以上30%未満 -0.0145 0.0167 -0.068 (-0.029) (-0.0434) (-0.0658) ×30%以上35%未満 -0.00502 0.0245 0.0525 (-0.0385) (-0.0416) (-0.059) ×35%以上40%未満 ×40%以上45%未満 ×45%以上50%未満 ×50%以上100%未満 0.126 0.194*** 0.0964 (-0.0902) (-0.0597) (-0.0659) 0.0772 -0.0849* 0.215*** (-0.0631) (-0.0465) (-0.074) 0.11 0.128 -0.0522 (-0.0909) (-0.103) (-0.0835) 0.0418 0.0333 0.175 (-0.0521) (-0.0485) (-0.107) 在宅勤務ダミー(妻)とコロナ禍前の無償労働負担割合別ダ ミーの交差項 (ベース:0%以上5%未満) ×5%以上10%未満 ×10%以上15%未満 ×15%以上20%未満 ×20%以上25%未満 ×25%以上30%未満 ×30%以上35%未満 ×35%以上40%未満 ×40%以上45%未満 ×45%以上50%未満 ×50%以上100%未満 0.0101 (3)列において、夫の在宅勤務ダミーと 割合範囲別ダミー35%以上40%未満、 40%以上45%未満の交差項の係数が統計的 に正に有意。 -0.0462** -0.0388 0.011 (-0.0195) (-0.0345) (-0.0541) -0.00793 -0.0297 0.00535 (-0.0243) (-0.0379) (-0.059) -0.0269 -0.0359 -0.0144 (-0.0392) (-0.055) (-0.0655) 0.0317 0.000759 0.0862 (-0.0476) (-0.0521) (-0.131) 0.0403 0.00387 0.0485 (-0.0337) (-0.053) (-0.0665) 0.011 -0.000536 -0.0518 (-0.0453) (-0.0527) (-0.0701) -0.153** -0.157*** -0.272*** (-0.0601) (-0.0487) (-0.066) -0.0557 0.0161 -0.136 (-0.0567) (-0.052) (-0.125) -0.137* -0.123** (-0.0798) (-0.0585) 0.0228 0.0377 -0.118 (-0.0436) (-0.0437) (-0.0834) ×20%以上25%未満 0.0286 (-0.0493) ×25%以上30%未満 0.0167 (-0.0434) ×30%以上35%未満 0.0245 (-0.0416) ×35%以上40%未満 0.194*** (-0.0597) ×40%以上45%未満 -0.0849* (-0.0465) ×45%以上50%未満 0.128 (-0.103) ×50%以上100%未満 0.0333 (-0.0485) • 夫が在宅勤務をしている場合、していない 場合に比べて世帯における夫の家事負担割 合がコロナ禍前後で増加。 • (5)列においては、夫の在宅勤務ダミー と割合範囲別ダミー15%以上20%未満、 40%以上45%未満の交差項の係数が正に 有意となり、夫の育児負担割合についても 似た傾向が示された。(推計表は省略) - 60

61.

分析結果 論文p17 推計1:コロナ禍前後の夫の無償労働・家事・育児負担割合の差:交差項を含む変量効果モデル 通勤時間(妻)とコロナ禍前の無償労働負担割合別ダミーの 交差項 (ベース:0%以上5%未満) ×5%以上10%未満 ×10%以上15%未満 ×15%以上20%未満 ×20%以上25%未満 ×25%以上30%未満 ×30%以上35%未満 ×35%以上40%未満 ×40%以上45%未満 ×45%以上50%未満 ×50%以上100%未満 定数項 標本数 ID数 (注1) 括弧内はロバスト変数を示す。 0.0595 (-0.04669 4,395 2,430 0.00384 -0.00138 -0.0146* (-0.00267) (-0.00485) (-0.0083) 0.00102 -0.00295 0.000575 (-0.00292) (-0.00475) (-0.00891) 0.00668 -0.00489 0.000321 (-0.00462) (-0.00598) (-0.0105) -0.00195 -0.00386 -0.00244 (-0.00399) (-0.00553) (-0.0119) 0.000555 -0.00355 -0.0197* (-0.00386) (-0.0056) (-0.0106) 0.00654** -0.00188 -0.00265 (-0.00312) (-0.00566) (-0.00929) 0.00981 0.00462 -0.0139 (-0.00723) (-0.00809) (-0.0116) 0.0125*** 0.00808 -0.00254 (-0.00485) (-0.00593) (-0.0125) -0.00645 -0.0519*** -0.0235 (-0.00558) (-0.0113) (-0.031) 0.0109** -0.00399 -0.0189 (-0.00536) 0.061 (-0.0485) 3,948 2,262 (-0.00625) 0.0855 (-0.0686) 1,778 1,091 (-0.0125) 0.133 (-0.14) 636 405 0.105 (-0.0651) 1,975 1,180 0.204 (-0.137) 681 428 (6)列において、妻の週平均通勤時間と 割合範囲別ダミー5%以上10%未満、25% 以上30%未満の係数が統計的に負に有意。 • 妻の週平均時間が1時間長くなると、コロ ナ禍での世帯における夫の育児負担割合が 減少し妻の育児負担が増加する。 • 理由として、子どもを職場近くの保育所に 預けることで、子どもと共に通勤し、通勤 時間も育児時間と換算される可能性がある。 (注2) ***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%で有意であることを示す。 (注3)雇用形態ダミーでは正規雇用者を1、非正規雇用者を0としてダミー変数を作成している。 (注4)その他の変数としてコロナ禍前の無償労働分担割合範囲ダミー、子供の有無ダミー、大卒ダミー、年代ダミー、職種ダミー、業種ダミー、年ダミーを含めている。 61

62.

分析結果 論文p20 推計2:予備的分析 コロナ禍における生活満足度指標平均値(二分位別・男女別) • 世帯における夫の無償労働負担割 合が中央値以上(夫の負担がより 大きい世帯) →男女ともに生活満足度は中央値未 満よりも高い 6.9 6.8 6.7 6.6 6.5 6.4 6.3 6.2 6.1 6 5.9 5.8 中央値以上 中央値未満 無償労働負担割合 中央値以上 中央値未満 家事負担割合 中央値以上 育児負担割合 コロナ禍での世帯における夫の無償労働・家事・育児負担割合 男性 女性 中央値未満 • 世帯における夫の家事負担割合と 育児負担割合が中央値以上(夫の 負担がより大きい世帯) →男女ともに中央値未満よりも生活 満足度が低い 62

63.

分析結果 論文p20-21 推計2:予備的分析 コロナ禍における家族との衝突頻度平均値(二分位別・男女別) • 世帯における夫の無償労働負担割 合が中央値以上(夫の負担がより 大きい世帯) →女性の考える家族との衝突は、中 央値未満の場合に比べ減少。反対に 男性は家族との衝突が増加。 3.5 3.45 3.4 3.35 3.3 3.25 3.2 3.15 3.1 3.05 3 2.95 中央値以上 中央値未満 無償労働負担割合 中央値以上 中央値未満 家事負担割合 中央値以上 育児負担割合 コロナ禍での世帯における夫の無償労働・家事・育児負担割合 男性 女性 中央値未満 • 世帯における夫の家事負担割合と 育児負担割合が中央値以上(夫の 負担がより大きい世帯) →中央値未満の場合に比べ男女とも に家族との衝突が減少。 63

64.

分析結果 論文p21-22 推計2 生活満足度推計結果:変量効果モデル 被説明変数:生活満足度 女性(妻) 男性(夫) コロナ禍の夫の無償労働負担割合 (1) 0.155 (0.180) コロナ禍の夫の家事負担割合 (2) (3) 0.248 (0.263) -0.430 (0.551) 0.544 (0.528) コロナ禍の夫の育児負担割合 コロナ禍前後の夫の無償労働負担割合の差 労働時間(妻) 通勤時間(夫) 通勤時間(妻) 子どもの有無ダミー 雇用形態別ダミー(夫) 雇用形態別ダミー(妻) 定数項 大卒ダミー 年代ダミー 職種ダミー 業種ダミー 企業規模ダミー 年ダミー 標本数 ID数 (6) 4.19e-08*** (1.25e-08) -0.00136 (0.00197) 0.000411 (0.00240) -0.000435 (0.00762) -0.0345*** (0.0102) 0.0156 (0.0795) 0.100 (0.101) 0.0360 (0.0963) 5.817*** (0.269) Yes Yes Yes Yes Yes Yes 3,318 2,032 5.55e-08** (2.33e-08) -0.000994 (0.00474) 0.00362 (0.00536) -0.0233 (0.0180) -0.0384* (0.0198) -0.000739 (0.151) -0.0348 (0.309) 0.138 (0.212) 7.385*** (0.651) Yes Yes Yes Yes Yes Yes 581 418 4.06e-08*** (1.27e-08) -0.00108 (0.00199) 0.00104 (0.00243) -0.00108 (0.00760) -0.0395*** (0.0107) 0.0497 (0.0791) 0.108 (0.102) 0.0214 (0.1000) 5.836*** (0.271) Yes Yes Yes Yes Yes Yes 3,234 1,971 (7) 0.257 (0.251) -0.623 (0.468) -0.229 (0.441) 0.0281 (0.256) コロナ禍前後の夫の育児負担割合の差 労働時間(夫) (5) 0.198 (0.195) -0.951 (0.884) 1.047 (0.788) コロナ禍前後の夫の家事負担割合の差 世帯収入 (4) (8) -1.197 (0.851) 0.793 (0.786) -0.0719 (0.250) 1.389* (0.768) -0.764 (0.725) 3.56e-08 (2.76e-08) -0.00264 (0.00536) 0.00386 (0.00627) -0.0346 (0.0220) -0.00614 (0.0254) 0.00923 (0.175) 0.249 (0.391) 0.115 (0.265) 2.033* (1.106) Yes Yes Yes Yes Yes Yes 432 295 (注1) 括弧内はロバスト変数を示す。 (注2) ***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%で有意であることを示す。 (注3)雇用形態ダミーでは正規雇用者を1、非正規雇用者を0としてダミー変数を作成している。 4.28e-08*** (1.58e-08) -0.00155 (0.00186) -0.00213 (0.00250) 0.00512 (0.00803) -0.0182* (0.0108) 0.0228 (0.0809) -0.0917 (0.110) -0.0490 (0.101) 5.693*** (0.293) Yes Yes Yes Yes Yes Yes 3,318 2,032 1.71e-08 (3.36e-08) -0.00342 (0.00481) -0.000755 (0.00616) 0.0112 (0.0178) -0.0144 (0.0197) -0.0945 (0.156) 0.423 (0.267) 0.259 (0.211) 7.871*** (0.697) Yes Yes Yes Yes Yes Yes 581 418 3.96e-08** (1.59e-08) -0.00146 (0.00190) -0.00193 (0.00256) 0.00543 (0.00819) -0.0239** (0.0114) 0.0443 (0.0818) -0.0811 (0.111) -0.0387 (0.104) 5.696*** (0.294) Yes Yes Yes Yes Yes Yes 3,234 1,971 0.813 (0.824) -0.996 (0.767) -5.34e-09 (3.98e-08) -0.00383 (0.00508) -0.00371 (0.00698) 0.00947 (0.0234) -0.00513 (0.0263) -0.150 (0.184) 0.474 (0.343) 0.192 (0.263) 6.555*** (1.130) Yes Yes Yes Yes Yes Yes 432 295 コロナ禍での世帯における夫の無償労働・ 家事・育児負担割合やこれらのコロナ禍前 後の差分の係数はすべて統計的に有意とな らなかった。 • これらの変数はコロナ禍における男女生活 満足度に影響を与えておらず、仮説と異な る結果になった。 • 理由として、コロナ禍という特殊な状況下 においては、夫婦間の無償労働の分担より も別の要因(感染症に対する不安や社会情 勢)が生活の満足度に影響を与えていた可 能性がある。 64

65.

分析結果 論文p22-23 推計2 家族との衝突頻度推計結果:変量効果モデル 被説明変数:コロナ禍における家族との衝突頻度 女性(妻) 男性(夫) コロナ禍の夫の無償労働負担割合 FE (1) -0.269 (0.224) コロナ禍の夫の家事負担割合 FE (2) FE (3) コロナ禍前後の夫の無償労働負担割合の差 -0.222 (0.232) コロナ禍前後の夫の育児負担割合の差 労働時間(妻) 通勤時間(夫) 通勤時間(妻) 子どもの有無ダミー 雇用形態別ダミー(夫) 雇用形態別ダミー(妻) 定数項 大卒ダミー 年齢ダミー 職種ダミー 業種ダミー 企業規模ダミー 年ダミー 標本数 ID数 RE (6) -8.80e-09 (1.51e-08) 0.00146 (0.00304) -0.00338 (0.00303) -0.00250 (0.0107) 0.0175 (0.0141) -0.150 (0.108) -0.120 (0.163) 0.122 (0.213) 0.889 (1.789) No Yes Yes Yes Yes Yes 3,314 2,033 3.84e-08 (3.33e-08) 0.00401 (0.00893) -0.00156 (0.00631) 0.00414 (0.0210) 0.0622*** (0.0200) -0.299* (0.172) -0.183 (0.257) -0.625 (0.390) 2.949 (3.123) No Yes Yes Yes Yes Yes 579 416 RE (7) RE (8) -0.355 (0.298) 0.697** (0.319) コロナ禍前後の夫の家事負担割合の差 労働時間(夫) RE (5) 0.115 (0.124) 0.311 (0.614) -1.291* (0.706) コロナ禍の夫の育児負担割合 世帯収入 FE (4) -7.00e-09 (1.51e-08) 0.00145 (0.00306) -0.00278 (0.00305) 0.00131 (0.0107) 0.0184 (0.0150) -0.144 (0.109) -0.124 (0.165) 0.111 (0.216) 0.652 (1.808) No Yes Yes Yes Yes Yes 3,229 1,971 • -0.0371 (0.150) 0.214 (0.689) -1.784** (0.805) 5.02e-08 (3.92e-08) 0.00401 (0.00982) -0.000294 (0.00678) -0.000927 (0.0329) 0.0736** (0.0297) -0.268 (0.190) -0.250 (0.257) -0.899** (0.432) 5.198 (3.733) No Yes Yes Yes Yes Yes 431 294 (注1) 括弧内はロバスト変数を示す。 (注2) ***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%で有意であることを示す。 (注3)雇用形態ダミーでは正規雇用者を1、非正規雇用者を0としてダミー変数を作成している。 -1.08e-08 (7.14e-09) -0.00232** (0.00113) -0.00392*** (0.00143) 0.00124 (0.00487) 0.00630 (0.00761) -0.130*** (0.0476) 0.0928 (0.0591) 0.0340 (0.0578) 2.832*** (0.281) Yes Yes Yes Yes Yes Yes 3,346 2,041 1.18e-09 (2.46e-08) -0.00488* (0.00293) -0.00532 (0.00360) 0.00240 (0.0128) -0.00215 (0.0146) -0.285*** (0.103) 0.154 (0.234) -0.0682 (0.136) 5.108*** (0.712) Yes Yes Yes Yes Yes Yes 585 420 • -8.71e-09 (7.47e-09) -0.00265** (0.00115) -0.00399*** (0.00144) 0.000507 (0.00485) 0.00445 (0.00712) -0.128*** (0.0486) 0.0811 (0.0600) 0.0396 (0.0581) 2.889*** (0.284) Yes Yes Yes Yes Yes Yes 3,260 1,979 -0.175 (0.383) 0.496* (0.300) -2.06e-09 (2.46e-08) -0.00481 (0.00333) -0.00700* (0.00394) -0.00702 (0.0139) 0.0102 (0.0173) -0.140 (0.112) 0.364* (0.190) 0.0112 (0.138) 6.116*** (0.705) Yes Yes Yes Yes Yes Yes 435 296 • (4)列において、コロナ禍前後の夫の育児負 担割合の差の係数が統計的に負に有意。 (6)列において、コロナ禍の夫の育児負担割 合の係数が統計的に正に有意。 (8)列において、コロナ禍前後の夫の育児負 担割合の差の係数が統計的に正に有意。 • 男性の相対的な育児量が上昇することで、 男性は家族との衝突が増加していると感じ る一方、女性は衝突頻度が減少していると 感じることが明らかになり、男性において は仮説と反する結果となった。 • 男性が育児に積極的に関わることで子供と の口論の機会が増加したことや、反対に女 性は育児負担が減ったことで子供との口論 が減少した可能性。 65

66.

おわりに 論文p24 分析結果概要 推計1 • コロナ禍前の世帯における夫の無償労働負担割合が高い世帯、つまり夫婦間でほぼ平 等に無償労働を分担していた家庭では、コロナ禍において夫の相対的な無償労働量が 減少し妻の無償労働負担が増加した。 • 減少度合いは非線形である。 • 主に、コロナ禍前に夫婦間で中程度無償労働を平等に分担できていた家庭では、夫が 在宅勤務をすると夫の負担割合が増加する。 推計2 • コロナ禍の世帯における夫の無償労働負担割合等は男女の生活満足度に影響を与え ない。 • 家族との衝突頻度について、コロナ禍で夫の育児負担割合が増加すると男性の考える 家族との衝突頻度は増加した。反対に、女性の考える家族との衝突頻度は減少した。 66

67.

おわりに 論文p25 考察(推計1:コロナ禍前後の夫の無償労働負担割合の変化) • 分析結果は一部を除いて仮説とは異なった。 • 夫が増加させた無償労働時間よりも、妻の増加させた無償労 働時間が上回ったことで、コロナ禍前後で夫婦間の 無償労働分担格差が拡大した可能性がある。 • この理由として、妻の潜在的な家庭責任意識の強さや、夫と 妻の無償労働の質が異なり代替関係にないことがあるのでは ないか? 67

68.

おわりに 論文p25 考察(推計1:コロナ禍前後の夫の無償労働負担割合の変化) • コロナ禍前より妻の無償労働負担割合が高い世帯で、妻が在宅 勤務を行うとより妻の負担が大きくなったことから妻の在宅勤 務は家庭内の男女格差を拡大する傾向がある。 • 逆に、男性の在宅勤務の推奨は家庭内における無償労働格差の 一助になることが示された。 引き続き男性の在宅勤務を積極的に進めることや、本研究でその十分な解決案 を精査できていないものの、女性の家庭責任意識の緩和や、夫婦間での無償労 働の代替関係を成立しやすくすることで、家庭内の男女格差の是正が期待で きるだろう。 68

69.

おわりに 論文p25 考察(推計2:コロナ禍における夫の無償労働負担割合と夫婦のウェルビーイング) • コロナ禍における無償労働負担割合等は男女の生活満 足度に影響を与えないことが明らかになり、仮説と異 なった。 • この理由として、特殊な状況下において、夫婦間の無 償労働の分担よりも、感染症への不安や社会情勢等、 別の要因がより生活の満足度に影響を与えていた可能 性がある。 69

70.

おわりに 論文p25 考察(推計2:コロナ禍における夫の無償労働負担割合と夫婦のウェルビーイング) • 主観的な家族との衝突頻度については、相対的な夫の育児量が 増加した世帯ほど、男性の考える家族との衝突頻度は増加して おり、反対に女性の考える家族との衝突頻度は減少していた。 • この理由として、男性が育児に積極的に関わることで子供との 口論の機会が増加したことや、反対に女性は育児負担が減った ことで子供との口論が減少したことが考えられる。 夫が育児負担割合を増加させ、それによって子供との衝突頻度が 増えたと仮定するならば、男性に対する適切な育児支援が必要で ある。 70

71.

アウトライン 01 背景・問題意識 02 先行研究 03 分析アプローチ 04 分析結果 05 懸念点 71

72.

懸念点 論文p25 懸念点 • • • 推計1(コロナ禍前後の世帯における夫の無償労働負担の変 化を分析)において、コロナ禍における失業や休職、子どもの 保育所や学校の休園・休校といった要因を考慮できていない 点 推計2でコロナ禍における人々の生活満足度を分析するうえ で、コロナ禍における人々の健康不安や社会状況を十分に鑑 みられていない点 仮説の妥当性 72

73.

ご清聴ありがとうございました! 73

74.

補足 参考文献 Blood, R,O.,&Wolfe, D.M., 1960, Husbands and wives: The dynamics of married living. New York, NY:Free Press Costoya, V., L. Echeverría, M. Edo, A. Rocha and A. ailinger, 2022, “Gender gaps within couples: Evidence of time re-allocations during COVID-19 in Argentina”, Journals of Family and Economic Issues, 43:21326 Coverman,S., 1985, “Explaining Husbands’ Participation in Domestic Labor”, The Sociological Quarterly, 26(1):81-97. Del Boca, D., Oggero, N., and Rossi, M., 2020, “Women’s Work, Housework and Childcare, before and during COVID-19/” Eggebeen, D., McDaniel, B., T, and Knoester, C., 2013, “The implication of fatherhood for men”, Handbook of Father Involvement: Multidisciplinary Perspectives, Second Edition. Cabrera, N., TamisLeMonda, C. S, 74

75.

補足 参考文献 Inoue, C., Ishihata, Y., and Yamaguchi, S., 2024, “Working from Home Leads to More Family-Oriented Men”, Review of economics of the household: 22 783-829. Kamo, Y.,1988,” Determinants of Household Division of Labor: Resources, Power, and Ideology”, Journal of Family Issues, 9(2): 177-200. OECD, 2020, “Balancing paid work, unpaid work and leisure” Petts, R. J., K. Shafer and L. Essig. 2018. “Does Adherence to Masculine Norms Shape Fathering Behavior?” Journal of Marriage and Family, 80(3):704–20. Ross, C, E., 1987, “The Division of Labor at Home”, Social Forces, 65(3): 816-833. Shafer, K., C. Scheibling and M. Milkie, 2020, “The division of domestic labor before and during the COVID-19 pandemic in Canada: Stagnation versus shifts in fathers”, Canadian Review of Sociology, 57 (4): 523–49. 75

76.

補足 参考文献 Yamamura et al., 2021, “The impact of closing schools on working from home during the COVID-19 pandemic: evidence using panel data from Japan.” 石井クンツ昌子, 2004. 「共働き家庭における男性の家事参加」, 渡辺秀樹, 稲葉昭英, 嶋﨑尚子編『現代家族 の構造と変容:全国家族調査[NFRJ98]による計量分析』東大出版会, 201-214 石橋澄子・武田陸・谷口守, 2021, 「COVID-19が子育て有職者のジェンダー・ギャップに及ぼした影響―― 緊急事態宣言前・中・後3断面での家事・育児時間に着目して」, 『都市計画論文集』56(3): 641–8. 稲葉昭英, 1998, 「どんな男性が家事・育児をするのか?社会階層と男性の家事・育児参加」, 渡辺秀樹・志 田基与師編『階層と結婚・家族』(1995年SSM調査シリーズ vo;.15), 1-42. 乾順子, 2011, 「正規就業と性別役割分業意識が家事分担に与える影響:NFRJ08を用いた分析」, 『年報人 間科学』32: 21-28. 大野祥子, 2008, 「育児期男性の生活スタイルの多様化―“稼ぎ手役割”にこだわらない新しい男性の出現ー」, 『家族心理学研究』22:2 107~118. 76

77.

補足 参考文献 蟹江教子, 2005, 「父親の家事・育児と父親および母親の主観的健康」, 『季刊家計経済研究』68:62-71. 佐藤一磨, 2020, 「夫婦の家事・育児分担と妻の幸福度の関係 ―夫婦でどのように家事・育児を分担すると 妻が最も幸せとなるのか―」, PDRC Discussion Paper Series. 品田知美, 1996 , 「既婚女性の家事時間配分とライフスタイル」, 『家族社会学研究』8, 163-173. 下坂剛・小塩真司, 2023, “未就学児をもつ父親における妻へのサポートと育児関与,主観的幸福感との関連”, 『パーソナリティ研究』32:102-112, 高見具広・山本雄三, 2021, 「コロナ禍の在宅勤務による生活時間の変化――『新しい日常生活』」, 樋口美 雄/労働政策研究・研修機構[編], 159-174. 武田陸・小松﨑諒子・谷口守, 2021, 「COVID-19流行がもたらした有職者の生活時間変革――ダイアリー データに基づく緊急事態宣言 (2020年4月) の前・中・後の分析」, 『都市計画論文集』56(3): 1191–8. 高見具広, 2023,「新型コロナウイルス禍における男性のワーク・ライフ・バランス」, 『社会保障研究』8: 324-334. 77

78.

補足 参考文献 永井暁子, 2001, 「父親の家事・育児遂行の要因と子供の家事参加への影響」, 『季刊家計経済研究』49:4453 松田茂樹, 2006年, 「近年における父親の家事・育児参加の水準と規定要因の変化」, 『季刊家系経済研究』 71:45-54 柳田愛美・柳下実・不破麻紀子, 2023, 「コロナ禍1年目・2年目の家事労働――コロナ禍で増えた男性の家 事は維持されているのか―」, 『家族社会学研究』35:20-31. 大和礼子, 1995, 「性別役割分業意識の二つの次元」『ソシオロジ』40(1): 109-126. 総務省統計局. 2020, 労働力調査(詳細集計) 2019年(令和元年)平均(速報), https://www.stat.go.jp/data/roudou/rireki/nen/dt/pdf/2019.pdf 内閣府男女共同参画局, 2020, 「男女共同参画白書 令和2年版」, https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/honpen/b1_s02_01.html 78

79.

補足 参考文献 内閣府男女共同参画局, 2019, 『「共同参画」2019年12月号』, https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/201912/pdf/201912.pdf 東京都生活文化スポーツ局, 2023, 「男性の「家庭進出」は、家庭にも社会にもいいこと尽くめ!『「家族 の幸せ」の経済学』著者・山口慎太郎さんが解説」, https://team-kajiikuji.metro.tokyo.lg.jp/everyone/20230511-1/ 79

80.

質疑応答 質疑応答 80