フリーランス保護新法_法律施行直前のおさらい

506 Views

October 01, 24

スライド概要

2024年11月1日施行の「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス保護新法)について、作成者が法律と施行令、施行規則(公取委規則と厚労省規則)、解釈GL、QA等の公的資料を斜め読みして、制度概要と11月からの準備事項をまとめたものです。 フリーランスの人も、フリーランスに仕事を発注する人も一読しとくといいですよ。

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

フリーランス保護新法 ~法律施行直前のおさらい~ (施行令や施行規則、解釈GL含めた解説) 2024年10月 光雲法律事務所 弁護士 後藤 大輔

2.

自己紹介 弁護士 後藤大輔([email protected]) 光雲法律事務所 共同代表 福岡県弁護士会所属 (その他所属団体) 福岡県中小企業家同友会中央支部/IT部会 九州IT法研究会(QIT) 福岡県情報サービス産業協会(FISA) 情報ネットワーク法学会 2

3.

本日のお題 “フリーランス保護新法”施行直前の再おさらいをします。 正式名称 「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」 (令和5年法律第25号)→本年11月1日施行 3

4.

フリーランス保護新法の具体化 厚生労働省ウェブサイト内「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務 を委託する事業者の方等へ」 ◎ ①施行令 https://www.mhlw.go.jp/content/001262130.pdf ◎ ②公取委規則 https://www.mhlw.go.jp/content/001259277.pdf ◎ ③厚労省規則 https://www.mhlw.go.jp/content/001259278.pdf ◎ ④指針 https://www.mhlw.go.jp/content/00125927.pdf ◎ ⑤解釈ガイドライン https://www.mhlw.go.jp/content/001259281.pdf ⑥執行ガイドライン https://www.mhlw.go.jp/content/001259282.pdf ⑦通達 https://www.mhlw.go.jp/content/001259297.pdf ◎ ⑧Q&A https://www.mhlw.go.jp/content/001179815.pdf 4

5.

前提としての話(おさらい) 企業⇔フリーランス間の関係性 委託者と受託者との間の力関係 …業務委託なので雇用関係ではない(労働法の適用無し) 理屈上は同等だが、受託者が不利に扱われる実情あり →この関係を規律する法律は「下請法」があった ⇔適用場面は限定的(取引内容や資本金要件など) 5

6.

フリーランス保護新法の趣旨 「我が国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定 的に従事することができる環境を整備するため、特定受託事業者に係る取引の適正化及び 特定受託業務従事者の就業環境の整備を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与するこ とを目的として、特定受託事業者に業務委託をする事業者について、特定受託事業者の給 付の内容その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講ずる。」 → 特定受託事業者に係る取引の適正化(下請法と同様の規制を課す) …公取委規則で詳細を規定 特定受託業務従事者の就業環境の整備(労働者類似の保護を与える) …厚労省規則で詳細を規定 ※特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法) の概要(新規)」(https://www.mhlw.go.jp/content/001101551.pdf)より。 6

7.

新法での登場人物 ●受託者(フリーランス) 「特定受託事業者」(法2条1項) …業務委託の相手方となる、以下のいずれかの事業者 ① 個人であって従業員を使用しないもの ② 法人であって一の代表者以外に他の役員がなくかつ従業員を使用 しないもの ※個人のフリーランスに限られない(「法人成り」でも該当し得る) ”業務委託の相手方である事業者であって、従業員を使用しないもの” 7

8.

新法での登場人物 ■委託者(発注事業者) 「特定業務委託事業者」(法2条6項) …業務委託事業者であって、次の各号のいずれかに該当するもの ① 個人であって従業員を使用するもの ② 法人であって二以上の役員があり又は従業員を使用するもの “フリーランスに業務委託をする事業者であって従業員を使用するもの” ※下請法のような取引の種類や資本金要件は無し。 「従業員を使用」していれば、個人法人問わず規制対象になる 8

9.

新法での登場人物 ◎POINT 「特定業務委託事業者」 (発注事業者) “フリーランスに業務委託を する事業者であって従業員を 使用するもの” 【規制を受ける側】 「特定受託事業者」 (フリーランス) 業務委託契約 “業務委託の相手方である事 業者であって、従業員を使用 しないもの” 【守られる側】 ・ 製造(加工)委託 ◎ 情報成果物委託 ◎ 役務の提供(修理委託もここ) 9

10.

新法での登場人物 (参考)「従業員を使用」するとかしないとかの区別 … ① 1週間の所定労働時間が20時間以上 ② 継続して31日以上雇用されることが見込まれる 労働者(労基法第9条の「労働者」)を雇用するか否か ※ 派遣だけがいる場合? ※ 同居親族のみを使用している場合? ※ どの時点での「使用」? 10

11.

フリーランスに係る取引適正化 ~発注事業者への規制 11

12.

フリーランスに係る取引適正化 ①取引条件の明示義務(法3条) ・フリーランスに業務委託をした場合は、直ちに契約条件を 書面や電磁的方法で明示する義務を負う。 ・電磁的方法による明示の場合に、フリーランスから求めが あった場合は、書面を交付しなければならない。 ※フリーランスがフリーランスに業務委託する場合も含む。 12

13.

フリーランスに係る取引適正化 ①取引条件の明示義務(法3条) 「直ちに」(すぐに。一切の遅れを許さない)の例外: 内容が決まってないことについて正当な理由があるものは「未定 事項」としておき、それが定まったら直ちに定める方法も可能。 例)ソフトウェア開発委託において、委託をした時点では最終ユーザーが 求める仕様が確定しておらす、フリーランスに対して正確な委託内容を決 定できない場合 13

14.

フリーランスに係る取引適正化 ①取引条件の明示義務(法3条)の明示事項…? ・発注者及びフリーランスの商号、氏名若しくは名称…であって両者を識別できるもの ・業務委託をした日 ・フリーランスが発注者に給付する内容 ・発注者が給付を受領し又は役務の提供を受ける期日(期間) ・フリーランスからの給付を受領し、又は役務の提供を受ける場所 ・フリーランスからの給付の内容について検査をする場合は、その検査完了期日 ・報酬の額及び支払期日(額の明示が困難でやむを得ない場合は、算定方法) ・特定の支払方法を指定する場合は、その方法等。 14

15.

フリーランスに係る取引適正化 ①取引条件の明示義務(法3条)の明示事項…? ・「給付の内容」:品目、品種、数量、規格、仕様等を明確に記載する必要がある。 ・委託業務を通じて知的財産権が発生する場合で、それを含めて給付の目的物とする場合 は、当該知的財産権の譲渡・許諾の範囲を明確に記載する必要がある。 ・「給付を受領する場所等」:提出先として電子メールアドレス等を明示すれば足りる。 ・「算定方法」:報酬額の算定根拠が確定すれば、具体的な金額が自動的に確定するもの ・実費等(例えば材料費、交通費、通信費等)と報酬の峻別。 15

16.

フリーランスに係る取引適正化 ②報酬支払期日の設定・同日内の支払義務(法4条) ・フリーランスからの給付を受領した日から60日以内(かつ できるだけ短い期間)の報酬支払期日を設定+支払い (≠検収完了日)…検収未了を理由とした報酬不払は× ・再委託の場合には、元委託者から発注事業者が支払を受ける 期日から30日以内(かつ、できるだけ短い期間)の期日設定 +支払い 16

17.

フリーランスに係る取引適正化 ②報酬支払期日の設定・同日内の支払義務(法4条) ・報酬の支払期日を定めない→給付の受領日が支払日となる ・60日を超えた期日を定める→給付完了日から60日が期限とみ なされる ※遅延損害金請求との関係?(フリーランス側) 17

18.

フリーランスに係る取引適正化 ②報酬支払期日の設定・同日内の支払義務(法4条) ■再委託の場合の考え方 検収 元委託者 → 支払① 成果物受領 発 注 者→ フリーランス 支払② 支払①が支払②(成果物受領から60日以内)よりも後になる可能性がある →発注事業者にとっての負担が大きくなるおそれがある。∴支払①から30日以内に支払②をする ことで可とした 18

19.

フリーランスに係る取引適正化 ③禁止行為(法5条各号)@政令で定める期間以上の取引 順守事項 概要 受領拒否の禁止(5-1-1) 注文した物品又は情報成果物の受領を拒む 報酬減額の禁止(5-1-2) 予め定めた報酬を減額する 返品の禁止(5-1-3) 受け取った物品を返品する 買い叩き禁止(5-1-4) 類似品等の価格or市価に比して著しく低い報酬を不当に定める 購入・利用強制の禁止(5-1-5) 発注者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させる 不当な経済上の利益提供要請の フリーランスから金銭、労務の提供等をさせる 禁止(5-2-1) 不当な給付内容の変更及び不当 費用を負担せずに注文内容を変更し、又は受領後にやり直しさせる なやり直しの禁止(5-2-2) 19

20.

フリーランスに係る取引適正化 「政令で定める期間」の考え方:「1か月」の始期終期 出典:「フリーランス・事業者間取引適正化等法の政令案・規則案・GL案の概要」(公正取引委員会) 20

21.

フリーランスに係る取引適正化 ③報酬減額の禁止(1項2号)@禁止行為 ・単価の引下げ合意後に旧単価で発注したものについて新単価を遡及適用する ・消費税・地方消費税額相当分を支払わないこと ◎振込手数料を合意なくフリーランスに負担させ報酬の額から差し引く ・所定の振込手数料以上に差し引く ◎必要な原材料等の支給の遅れ又は無理な納期指定によって生じた納期遅れ等を理由に、納期遅れに よる商品価値の低下分とする額を報酬の額から差し引くこと ・報酬の支払に際し、端数が生じた場合、端数を1円以上切り捨てて支払うこと ◎客先からのキャンセル、市況変化等により不要品となったことを理由に、不要品相当分差し引く ◎報酬の総額はそのままにしておいて、発注数量を増加させること etc… 21

22.

フリーランスに係る取引適正化 ③買い叩きの禁止(1項4号)@禁止行為 ◎継続的な委託を行い大量の発注をすることを前提として単価見積りをさせ、その見積価格の単価を 短期で少量の委託しかしない場合の単価として報酬の額を定めること ・見積りをさせた段階より給付又は提供すべき役務が増えたのにもかかわらず、報酬の額の見直しを せず、当初の見積価格を報酬の額として定めること ・一律に一定比率で単価を引き下げて報酬の額を定めること ・短納期発注を行う場合に、フリーランスに発生する費用増を考慮せずに通常支払われる対価より低 い報酬の額を定めること ・合理的な理由がないにもかかわらず、特定のフリーランスを差別的に取り扱うこと ・同種の給付について、特定の地域又は顧客向けであることを理由に、低い単価とすること 22

23.

フリーランスに係る取引適正化 ③買い叩きの禁止(1項4号)@禁止行為 ・情報成果物の作成委託において給付の内容に知的財産権が含まれている場合、当該知的財産権の対 価についてフリーランスと協議することなく一方的に通常支払われる対価より低い額を定める ◎労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコスト上昇分の取引価格への反映の必要性について、 価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに報酬を据え置くこと ・労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストが上昇したため、フリーランスが報酬の引上げ を求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面、電子メール等でに回答することなく、従来 どおりに報酬を据え置くこと ・委託内容に対応するため、フリーランスにおける品質改良等に伴う費用が増加したにもかかわらず、 一方的に通常支払われる対価より低い価格で報酬の額を定めること 23

24.

フリーランスに係る取引適正化 ③物品購入・利用強制の禁止(1項5号)@禁止行為 ・購買・外注担当者等、業務委託先の選定又は決定に影響を及ぼすこととなる者がフリーラ ンスに購入又は利用を要請する ・フリーランスごとに目標額又は目標量を定めて購入又は利用を要請する ・購入又は利用しなければ不利益な取扱いをする旨示唆して購入又は利用を要請すること ・購入若しくは利用する意思がないと表明したにもかかわらず、又はその表明がなくとも明 らかに購入若しくは利用する意思がないと認められるにもかかわらず、重ねて購入又は利用 を要請すること ・購入する旨の申出がないのに、一方的に物を送付すること 24

25.

フリーランスに係る取引適正化 ③不当な経済上の利益の提供要請の禁止(2項1号)@禁止行為 ・購買・外注担当者等、業務委託先の選定又は決定に影響を及ぼすこととなる者が金銭・労務等の提 供を要請すること ・フリーランスごとに目標額又は目標量を定めて金銭・労務等の提供を要請すること ・要請に応じなければ不利益な取扱いをする旨示唆して金銭・労務等の提供を要請すること ・提供する意思がないと表明したにもかかわらず、又はその表明がなくとも明らかに提供する意思が ないと認められるにもかかわらず、重ねて金銭・労務等の提供を要請すること ◎情報成果物等の作成に関し、フリーランスの知的財産権が発生する場合において、発注者が「給付の 内容」に知的財産権の譲渡・許諾が含まれる旨を記載していないにもかかわらず、当該情報成果物等 に加えて、無償で、作成の目的たる使用の範囲を超えて当該知的財産権を発注者に譲渡・許諾させる こと 25

26.

フリーランスに係る取引適正化 ③不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止(2項2号)@禁止行為 ・フリーランスからの給付の受領前に、フリーランスから給付の内容を明確にするよう求めがあった にもかかわらず、発注者が正当な理由なく給付の内容を明確にせずに継続して作業を行わせ、その後、 給付の内容が委託内容と適合しないとする場合 ・取引の過程において、委託内容についてフリーランスが提案し、確認を求めたところ、発注者が了承 したので、フリーランスが当該内容に基づき、製造等を行ったにもかかわらず、給付の内容が委託内 容と適合しないとする場合 ・業務委託後に検査基準を窓意的に厳しくし、給付の内容が委託内容と適合しないとする場合 ・通常の検査で委託内容と適合しないことを発見できないフリーランスの給付について、受領後1年を 経過した場合(ただし、発注者が、顧客等(一般消費者に限らない。)に1年を超えた契約不適合責任 期間を定めている場合に、特定業務委託事業者と特定受託事業者がそれに応じた契約不適合責任期間 をあらかじめ定めている場合は除く。) 26

27.

フリーランスの就業環境の整備 27

28.

フリーランスの就業環境の整備 ①募集情報の的確な表示(法12条) 広告等により募集情報を提供するときは、虚偽の表示等をして はならず、正確かつ最新の内容にしなければならない。 28

29.

フリーランスの就業環境の整備 ①募集情報の的確な表示(法12条:施行令) • 順守事項 表示内容 具体的な内容(解釈ガイドライン) 業務の内容 • 業務委託において求められる成果物の内容又は役務提供の内容、業務に 必要な能力又は資格、検収基準、不良品の取扱いに閲する定め、成果物の 知的財産権の許諾.譲渡の範囲、違約金に関する定め(中途解除の場合を 除く。)等 概要 業務に従事する場所、期間又は時 間に関する事項 業務を遂行する際に想定される場所、納期、期間、時間等 報酬に関する事項 支払期日、支払方法、交通費や材料費等の諸経費(報酬から控除されるも のも含む。)、成果物の知的財産権の譲渡・許諾の対価等 契約の解除…に関する事項 契約の解除事由、中途解除の際の費用、違約金に関する定め等 特定受託事業者の募集を行う者に 関する事項 特定業務委託事業者となる者の名称や業績等 29

30.

フリーランスの就業環境の整備 ①募集情報の的確な表示(法12条:施行令) • 順守事項 虚偽表示の具体的な内容(例) • 概要 ・実際に業務委託を行う事業者とは別の事業者の名称で業務委託に係る募集を行う場合 ・契約期間を記載しながら実際にはその期間とは大幅に異なる期間の契約期間を予定している場合 ・報酬額を表示しながら実際にはその金額よりも定額の報酬を予定している場合 ・実際には業務委託をする予定のない特定受託事業者の募集を出す場合 30

31.

フリーランスの就業環境の整備 ②妊娠、出産、育児介護に関する配慮(法13条)※6か月以上の継続 フリーランスが育児介護等と両立して業務委託(継続的業務委 託)に係る業務を行えるよう、申し出に応じて必要な配慮をしな ければならない(継続的業務委託以外の場合は、努力義務) 配慮の具体的な内容:①配慮の申出の内容等の把握/②配慮の内 容又は取り得る選択肢の検討/③配慮の内容の伝達および実施/ ④配慮の不実施の場合の伝達・理由の説明 31

32.

フリーランスの就業環境の整備 ②妊娠、出産、育児介護に関する配慮(法13条) (具体例) ・妊婦健診がある日について、打合せの時間を調整してほしいとの申出に対し、調整した上で特定受 託事業者が打合せに参加できるようにすること。 ・妊娠に起因する症状により急に業務に対応できなくなる場合について相談したいとの申出に対し、 そのような場合の対応についてあらかじめ取決めをしておくこと。 ・出産のため一時的に発注者の事業所から離れた地域に居住することとなったため、成果物の納入方 法を対面手渡しから郵送に切り替えてほしいとの申出に対し、納入方法を変更すること。 ・子の急病等により作業時間を予定どおり碓保することができなくなったことから、納期を短期間繰 り下げることが可能かとの申出に対し、納期を変更すること。 ・フリーランスから、介護のために特定の曜日についてはオンラインで就業したいとの申出に対し、 一部業務をオンラインに切り替えられるよう調整すること。 32

33.

フリーランスの就業環境の整備 ②妊娠、出産、育児介護に関する配慮(法13条) ※望ましくない取扱い ①フリーランスからの申出を阻害すること …申出に際して、膨大な書類提出させる等、煩雑又は過重な負担となるような手続を設ける/発注 者の役員又は労働者が、申出を行うことは周囲に迷惑がかかるといった申出をためらう要因となるよ うな言動をする ②フリーランスが申出をしたこと又は配慮を受けたことのみを理由に契約の解除その他の不利益な 取扱いを行うこと …契約の解除を行う/報酬を支払わないこと又は減額を行う/給付の内容を変更させる又は給付を 受領した後に給付をやり直させる/取引の数量の削減/取引の停止/就業環境を害する 33

34.

特定受託業務従事者の就業環境の整備 ③ハラスメント対策(法14条) フリーランスに対するハラスメント行為に係る相談対応等必要 な体制整備等の措置を講じなければならないものとする。 ⅰハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業員に対してその方針を周知・啓発 すること(対応例:社内報の配布、従業員に対する研修の実施) ⅱハラスメントを受けた者からの相談に適切に対応するために必要な体制の整備 (対応例:相談担当者を定める、外部機関に相談対応を委託する) ⅲハラスメントが発生した場合の事後の迅速かつ適切な対応 (対応例:事案の事実関係の把握、被害者に対する配慮措置) 34

35.

特定受託業務従事者の就業環境の整備 ③ハラスメント対策(法14条) (参考)セクシュアルハラスメント ・業務委託に関して行われる性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応により当該特 定受託業務従事者がその業務委託の条件につき不利益を受けるもの(以下「対価型セクシュ アルハラスメント」という。)と、当該性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境が 害されるもの(以下「環境型セクシュアルハラスメント」という。)がある。 ・なお、業務委託におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれる ものである。また、被害を受けた者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する業 務委託におけるセクシュアルハラスメントも対象となる。 35

36.

特定受託業務従事者の就業環境の整備 ③ハラスメント対策(法14条) (参考)パワーハラスメント ・身体的な攻撃(暴行・傷害) ・精神的な攻撃(脅迫、名誉毀損・侮辱・ひどい暴言・執拗な嫌がらせ) ・人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視) ・過大な要求(業務委託に係る契約上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害) ・過小な要求(合理的な理由なく契約内容とかけ離れた程度の低い仕事を命じる/仕事を与えない) ・個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること) 36

37.

特定受託業務従事者の就業環境の整備 ④契約解除の場合の予告義務(法16条) 継続的業務委託を中途解約する場合等には、原則として、中途 解約日等の30日前までにフリーランスに対して予告しなければな らない(1項)。 予告の日から契約満了日までの間に、理由の開示を請求された 場合はこれを開示しなければならない(2項)。 37

38.

特定受託業務従事者の就業環境の整備 ④契約解除の場合の予告義務(法16条) ・予告の方法…書面の交付/FAX/電子メール等の送付 ・発注者側からの解除の場合のみ、問題となる ※合意解除とされる場合…? ※無催告解除の規定を入れていた場合…? 38

39.

特定受託業務従事者の就業環境の整備 ④契約解除の場合の予告義務(法16条) 原則の例外…やむを得ない場合 ・業務委託に関連して盗取、横領、傷害等刑法犯等に該当する行為のあった場合(極めて軽微なものを除く) ・業務委託と関連なく盗取、横領、傷害等刑法犯等に該当する行為があった場合であっても、それが著しく発注 者の名誉もしくは信用を失墜するもの、取引関係に悪影響を与えるもの又は両者間の信頼関係を喪失させるもの と認められる場合 ・賭博、風紀素乱等により業務委託に係る契約上協力して業務を遂行する者等に悪影響を及ぼす場合(業務と関 連しない場合につき同上) ・業務委託の際に経歴・能力を詐称があると認められた場合 ・フリーランスが、契約に定められた給付及び役務を合理的な理由なく全く又はほとんど提供しない場合 ・フリーランスが、契約に定める業務内容から著しく逸脱した悪質な行為を故意に行い、当該行為の改善を求め ても全く改善が見られない場合 39

40.

特定受託業務従事者の就業環境の整備 ④契約解除の場合の予告義務(法16条) 原則の例外…やむを得ない場合のほか ・再委託のケースで、元委託業務に係る契約の全部又は一部が解除されたことでフリーランスへの再 委託業務の大部分が不要となった場合など ・基本契約に基づいて業務委託を行う場合又は契約の更新により継続して業務委託を行うこととなる 場合であって、契約期間が日以下である一の業務委託に係る契約の解除をしようとする場合 ・フリーランス側の責めに帰すべき事由により直ちに契約の解除をすることが必要と認められる場合 ・基本契約を締結している場合であって、フリーランス側の事情により、相当な期間、当該基本契約 に基づく業務委託をしていない場合 40

41.

まとめ ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ 書面等による取引条件の明示義務(法3) 報酬支払期日の設定・期日内の支払(法4) 禁止事項の順守(法5) 募集情報の的確表示(法12) 育児介護等と業務の両立に対する配慮(法13) ハラスメント対策に係る対策整備(法14) 中途解除等の事前予告・理由開示(法16) 41

42.

まとめ 類型 具体例 関連する義務項目 ・フリーランスに業務委託をする事業者 ・従業員を使用していない場合 個人事業主(従業員無し)/一人社 ①のみ 長/フリーランスに業務委託をする フリーランス ・フリーランスに業務委託をする事業者 ・従業員を使用している場合 大企業/中小企業/個人事業主 (従業員あり) ①・②・④・⑥ ・フリーランスに業務委託をする事業者 ・従業員を使用している場合で、かつ継 続的業務委託をしている場合 同上(継続的業務委託) ①・②・③・④・⑤・⑥・⑦ (③は1か月、⑤と⑦は6か月) 42

43.

違反した場合等の対応 公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣は、特定業務 委託事業者等に対し、違反行為について助言、指導、報告徴求・ 立入検査、勧告、公表、命令をすることが出来るものとする。 ※命令違反及び検査拒否等に対し、50万円以下の罰金に処する (法人両罰規定あり) 43

44.

国が行う相談対応等の取組 国は、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事 者の就業環境の整備に資するよう、相談対応などの必要な体制の 整備等の措置を講ずるものとする。 44

45.

国が行う相談対応等の取組 フリーランス・トラブル110番 (https://freelance110.jp/) →発注者側の相談先は…? 45

46.

11月以降、どうすればいい か? 46

47.

新法での登場人物(再掲) ◎POINT ※取引条件明示義務のみ注意 「特定業務委託事業者」 (発注事業者) “フリーランスに業務委託を する事業者であって従業員を 使用するもの” 【規制を受ける側】 「特定受託事業者」 (フリーランス) 業務委託契約 “業務委託の相手方である事 業者であって、従業員を使用 しないもの” 【守られる側】 ・ 製造(加工)委託 ◎ 情報成果物委託 ◎ 役務の提供(修理委託もここ) 47

48.

11月以降、どうすればいいか ・契約書を作成しないのはリスキー (口頭のみの運用は、もうええでしょう。) ・契約書はあるが取引条件の明示が不十分なケース →契約内容に関する項目を詳細化する 基本契約+個別契約で運用しているケースでは、 個別契約書の内容を詳細にすることで対応 ・そもそもフリーランスとの契約を…という方向性 48

49.

11月以降、どうすればいいか ・大幅な契約書改訂の必要はなさそう。 むしろ社内体制整備とか、求人情報の表示チェックか。 ・フリーランス該当性のチェック ・契約内容?継続的契約(特に6か月以上のもの)に該当す るかどうかは気を付けないといけない。 該当するケースの方が多いのでは? 49

50.

参考文献 ・渡辺正道ら「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の概 要」(ジュリスト No.1589-46) ・内田清人ら「フリーランスをめぐる法制度の解説」(法律のひろば Vol,77 No,4) ・松島淳也「IT系フリーランスをめぐる法律環境」(同上) ・小山紘一「クリエイティブ系フリーランスをめぐる法的対応」(同上) 50