1.5K Views
August 08, 23
スライド概要
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
ドレミハンドル: 操舵⾓に応じた⾳提⽰⼿法の AssettoCorsaを⽤いた 複合的なカーブにおける検証 明治⼤学⼤学院1年 松⽥さゆり 渡邉健⽃ 中村聡史 ⼩松孝徳 (明治⼤学) ⿃居武史 澄川瑠⼀ ⾼尾英⾏ (株式会社SUBARU) 1
背景 カーブ⾛⾏は難しい 400 350 334 300 250 200 199 179 213 150 運転が苦⼿な⼈はハンドル操作が 苦⼿と感じている 100 ハンドル操作が特に重要な 50 0 ハンドル ブレーキ アクセル その他 カーブは難しい 運転の苦⼿な項⽬アンケート Yahoo!クラウドソーシング 運転免許を保有する男⼥ 2000 ⼈対象 中川由貴, 松⽥さゆり, 船﨑友稀奈, 松⼭直⼈, 中村聡史, ⼩松孝徳, ⿃居武史, 澄川瑠⼀, ⾼尾英⾏. ⾃⼰決定に基づく内発的動機づけが運転に及ぼす影響, 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), 2022 vol.2022-HCI-196, no.9, pp.1-8. 2
⽬的 運転初⼼者がカーブ⾛⾏の際に できるだけ安定した操舵を習得 3
聴覚からの⽀援 • 運転中、報酬⾳が鳴る聴覚刺激により、⾞両⾏動を安定化 [澄川ら 2021] • メロディーロードの設置によって、平均速度を遅くさせた [芳野ら 2008] • 視覚を主に使⽤するタスクにおいて、 聴覚掲⽰によって認知的負荷を軽減[岩⽥ら 2009] • 澄川瑠⼀, ⿃居武史. 直線とカーブ⾛⾏時の⾞両挙動の変化を⽤いた聴覚刺激による運転⾏動の誘導に関する研究. ⾃動⾞技術学会誌, 2021, vol. 75, no. 6, pp. 112-117. • 芳野 幹⽣, 野⽥ 宏治, 荻野 弘.豊⽥市川⼿町におけるメロディーロードの評価. 豊⽥⼯業⾼等専⾨学校研究紀要 • 岩⽥貴裕, ⼭邉哲⽣, 中島達夫. マルチタスク環境下における認知負荷の測定と評価. 情報処理学会研究報告, 2009, p. 1. 4
ドレミハンドルの提案(HCI195) ドレ ミ ファ ソ ラ シ ド ハンドル⾓度に応じた⾳階の ドレミ⾳が鳴る ハンドル⾓度を 感覚的に伝えられる 5
ドレミハンドル使⽤映像 6
不得意な⼈の⾛⾏ 7
これまでに⾏ってきた実験(HCI200) 複数種のカーブを⽤意、フェーズ(ベース・練習・テスト)分け ベースを1としたときの テストでの修正舵回数 →修正舵が有意に減少した(p<.05) ハンドルの切り⾜し戻しにより、 ハンドル操作を微調整すること 8
これまで使⽤してきたシミュレータ 指定の条件のコースを繰り返し⾛⾏可能 短区間のコースを繰り返し⾛⾏する 特殊な状況 9
Assetto Corsa • よりリアルな⾛⾏が可能 • 複合的なカーブを有する 周回道路の⾛⾏が可能 • ドライバの⾏動のもととなる 脳の動きを明らかにするために、 Assetto Corsaを⽤いた実験を⾏った 画像:STEAM Assetto Corsa https://store.steampowered.com/app/244210/Assetto_Corsa/?l=Japanese(2023/08/07) Giovanni Vecchiato, Maria Del Vecchio, Jonas Ambeck-Madsen, Luca Ascari, Pietro Avanzini. Hybrid EEG-EMG system to detect steering actions in car driving settings, Cognitive Neurodynamics 16, 2022, pp.987-1002. 10
検証したいこと • リアルな運転に近く、 複合的なカーブが存在する周回道路における ドレミハンドルの効果 • ⾳提⽰を無くした場合の効果 11
仮説 複合的なカーブが存在するリアルに近い周回道路において ドレミハンドルを⽤いて運転練習を⾏うと、 操舵⾓に応じて⾳階が変わる意識により、 修正舵が少なくなる 12
使⽤コース • 全⻑1800m(⾛⾏時間約2~3分) • 実際にあるコースをレーザスキャンしたもの 13
ドレミハンドルの改良 • 無⾳区間の設定 • 最も多くのカーブで効果があると考えられる、 90度回すと1オクターブ⾳階が上がる設定 ミ ファ ソ ラ シ ド レ ド 無音 ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド 渡邉健⽃, 松⽥さゆり, ⼤⽯琉翔, 中川由貴, 中村聡史, ⼩松孝徳, ⿃居武史, 澄川瑠⼀, ⾼尾英⾏. ドレミハンドルにおける⼀⾳階に対する⾓度幅がカーブ⾛⾏の上達に与える影響の調査. 情報処理学会 研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション, 2023, vol.2023-HCI-201, no.36, pp.1-8. 14
実験設計 2分休憩 ↓ 5分休憩 ↓ 2分休憩 ↓ 慣れ ベース 練習1 練習2 試験1 試験2 3周 3周 3周 3周 3周 3周 ドレミ群 ドレミハンドル 通常ハンドル 通常ハンドル 通常群 通常ハンドル 15 ※明治⼤学の倫理指針に沿って倫理委員会の承認を得て実験を実施した
実験設計 2分休憩 ↓ 5分休憩 ↓ 2分休憩 ↓ 慣れ ベース 練習1 練習2 試験1 試験2 3周 3周 3周 3周 3周 3周 ドレミ群 ドレミハンドル 通常ハンドル 通常ハンドル ⾳がなくなった場合の 効果を検証 通常群 通常ハンドル 16 ※明治⼤学の倫理指針に沿って倫理委員会の承認を得て実験を実施した
実験における注意事項 ① 修正舵 に気をつけて。 ハンドルを余分に切り⾜したり、切り戻したりすること。 少ない⽅が良い。 ② 50km/hを⽬安に⾛⾏してください。 カーブでは、コースアウトしないように適切に減速してください。 17
分析対象 • 3以降のコース • 直線区間(6、18)は除いた ※慣れを考慮し、各フェーズの2、3周⽬を分析に使⽤ 18
結果:ドレミハンドルを使⽤する効果 2分休憩 ↓ 5分休憩 ↓ 2分休憩 ↓ 慣れ ベース 練習1 練習2 試験1 試験2 3周 3周 3周 3周 3周 3周 ドレミ群 ドレミハンドル 通常ハンドル 通常ハンドル 通常群 通常ハンドル 19
ベース⾛⾏(2、3周⽬)の平均を1 として正規化した時の 試験⾛⾏1(2、3周⽬)の平均の修正舵回数 試験⾛⾏1における修正舵回数 修正舵回数(カーブ区間) * ドレミハンドル群 通常ハンドル群 ドレミハンドルを使⽤すると、修正舵が有意に減少した(p<.05) 20
ベース⾛⾏(2、3周⽬)の平均を1 として正規化した時の 試験⾛⾏1(2、3周⽬)の平均の平均⾓速度 試験⾛⾏1における平均⾓速度 平均⾓速度(カーブ区間) ** ドレミハンドル群 通常ハンドル群 ドレミハンドルを使⽤すると、平均⾓速度も有意に減少した(p<.01) 21
結果:練習後、⾳提⽰を無くした場合 2分休憩 ↓ 5分休憩 ↓ 2分休憩 ↓ 慣れ ベース 練習1 練習2 試験1 試験2 3周 3周 3周 3周 3周 3周 ドレミ群 ドレミハンドル 通常ハンドル 通常ハンドル 通常群 通常ハンドル ※慣れを考慮し、各フェーズの2、3周⽬を分析に使⽤ 22
ベース⾛⾏(2、3周⽬)の平均を1 として正規化した時の 試験⾛⾏2(2、3周⽬)の平均の修正舵回数 修正舵回数(カーブ区間) ドレミハンドル群 通常ハンドル群 ベース⾛⾏(2、3周⽬)の平均を1 として正規化した時の 試験⾛⾏2(2、3周⽬)の平均の平均⾓速度 試験⾛⾏2における結果 平均⾓速度(カーブ区間) ドレミハンドル群 通常ハンドル群 ⾳をなくした場合にも、修正舵、平均⾓速度が減少する傾向 23
何を意識して⾛⾏していたか 試験⾛⾏1:ドレミハンドル群はハンドルを意識する⼈が多い 24
何を意識して⾛⾏していたか 試験⾛⾏1:ドレミハンドル群はハンドルを意識する⼈が多い 試験⾛⾏2:ハンドルを意識する⼈が減る 25
考察:ドレミハンドルを使⽤する効果 修正舵、平均⾓速度が有意に減り、ハンドル操作に意識が向く ドレミハンドルを使⽤すると、 ・ハンドル操作に意識が向いて修正舵を認識しやすくなり、 修正舵が減少する ・ハンドルをゆっくり回すようになる 複合的なカーブが存在する周回道路でも修正舵を減少させられる 26
考察:ドレミハンドルを使⽤する効果 回数 修正舵の⼤きさ ドレミハンドルを使⽤すると、 特に⼤きい修正舵が減少する傾向 27
考察:練習後、⾳提⽰を無くした場合 修正舵、平均⾓速度が減少する傾向が⾒られたが、有意な差はなかった ハンドル操作から意識が逸れてしまう⼈がいた ⾳階変化回数 回数 試験⾛⾏2における⾳階変化回数は、 ドレミハンドル群は通常ハンドル群 よりは少なかったため、 ⾳提⽰を無くした場合にも効果はある ベース 練習1 練習2 試験1 試験2 28
考察:⾳提⽰を無くした場合の効果 試験⾛⾏2において意識したこと 🚘 基本的には速度を意識したが、元々あったドレミの⾳がなくなったことで より強く操舵⾓が意識できているような気がした。 ⾛⾏中は操舵⾓に意識を向け、 ドレミの⾳があったときはこのような⾓度や曲げ⽅でいくとうまくいってた 気がする、という記憶を頼る場⾯がいくつか存在した 。 ドレミハンドルの⾳がハンドル操作の指標として記憶に残る⼈も →記憶⼒やその個⼈差を考慮した設計 29
今後 • ⾳提⽰を無くしても意識が逸れない⼯夫の検討 • 多くの場⾯に効果的なシステムを⽬指して • • ⾳の改善 ⻑期的な実験 • 実⾞での実験 30
まとめ ⽬的:カーブ⾛⾏における安定した操舵の習得 ⼿法:ドレミハンドル 実験:複合的なカーブが存在する周回道路での実験 ⾳がなくなった場合の検証 結果:修正舵、平均⾓速度が有意に減少 ⾳がなくなっても効果がある 今後:⾳提⽰を無くしても意識が逸れない⼯夫の検討 31