眉毛を左右対称に描くための矢印ガイド提示手法の再検証と左右対称性の定量的評価

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November 25, 25

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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1.

眉毛を左右対称に描くための矢印ガイド提示手法の 再検証と左右対称性の定量的評価 田中佑芽 中村聡史(明治大学) 2025.11.27|HCI215|淡路夢舞台国際会議場

2.

背景 • 性別・年齢を問わず多くの人が化粧をしている • 化粧を施すのは難しく、満足のいく化粧をすることは困難 • 特に眉毛は左右差が分かりやすく難しい部位の一つ 左右差がある例 2

3.

眉毛を描くことの難しさの要因 左右で手の動かし方が異なり、非利き手側が特に難しい 利き手側 非利き手側 【眉毛の描き方】基本をイチから徹底解説!誰でも綺麗に描けるようになる♡,兵藤小百合|さゆりメイク, 2024/05/08 3

4.

提案手法[HCI211] メイク済みの利き手側の眉毛と左右対称に描けるように、 非利き手側の眉毛を描くときの動きを矢印ガイドで直接支援 メイク済み システムイメージ図 田中佑芽,髙野沙也香,中村聡史: 左右対称の眉を描くための矢印ガイドシステムの提案,研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol. 2025, No. 30, pp. 1–8 (2025). 4

5.

提案手法[HCI211] 矢印ガイドシステム 利き手側の眉毛を認識 • 化粧済みの利き手側の眉毛の特徴点を 抽出し、顔上で左右反転 • 左右反転させた領域内にペンシルの先が あった場合、その場所に応じた矢印が 提示される ※ペンシル先に巻き付けたテープをペン先 として認識 矢印描画 田中佑芽,野沙也香,中村聡史: 左右対称の眉を描くための矢印ガイドシステムの提案,研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol. 2025, No. 30, pp. 1–8 (2025). 5

6.

HCI211|実験 ベースライン ガイドなし (ディスプレイ映像を見ながら眉毛を描く) 矢印ガイド (提案手法) アイテムを動かすべき方向・角度を 矢印で示したガイド 囲いガイド 描くべき範囲を線で囲ったガイド 女子大学生・大学院生12名に眉毛を描いてもらう実験を行った結果、 矢印ガイドで主観的な左右対称度合いが向上 田中佑芽,髙野沙也香,中村聡史: 左右対称の眉を描くための矢印ガイドシステムの提案,研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol. 2025, No. 30, pp. 1–8 (2025). 6

7.

HCI211|課題 利き手側の眉毛形状認識の不正確さ • システムの課題 矢印ガイドにおけるペン先認識の不安定さ 囲いガイドによる描画箇所の視認性の低さ • 参加者が限られていた • 左右対称性の評価が主観的なものだった 田中佑芽,髙野沙也香,中村聡史: 左右対称の眉を描くための矢印ガイドシステムの提案,研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), Vol. 2025, No. 30, pp. 1–8 (2025). 7

8.

システム改良 改善前 改善後 利き手側の眉毛形状 ペン先の認識精度 囲いガイド手法の視認性 8

9.

システム改良 改善前 改善後 利き手側の眉毛形状 ペン先の認識精度 ×特徴点数が少ない 眉山の位置がずれたり、眉山から眉尻にかけて 実際より狭い範囲になってしまっていた 囲いガイド手法の視認性 9

10.

システム改良 改善後 改善前 利き手側の眉毛形状 改善:特徴点数増加 ペン先の認識精度 眉山から眉尻にかけて正確に再現できるようになった 囲いガイド手法の視認性 10

11.

システム改良 改善前 改善後 利き手側の眉毛形状 ペン先の認識精度 囲いガイド手法の視認性 ペン先の認識が不安定 ペン先を映像の全範囲から探索していたため, 誤認識が多く、表示が不安定 11

12.

システム改良 改善前 改善後 利き手側の眉毛形状 ペン先の認識精度 囲いガイド手法の視認性 改善:眉毛領域のみ探索 安定してペン先を検出することが可能になった 12

13.

システム改良 改善前 改善後 利き手側の眉毛形状 ペン先の認識精度 ×描画箇所の視認性が悪い ガイド線にさえぎられて描いている箇所が 確認できなかった 囲いガイド手法の視認性 13

14.

システム改良 改善前 改善後 利き手側の眉毛形状 ペン先の認識精度 改善:線の透明度を上げる 線とペン先が重なっても容易に確認できる 囲いガイド手法の視認性 14

15.

実験 • 実験参加者:女子大学生・大学院生30名 • 3つの条件でそれぞれ3回ずつ非利き手側の眉毛を描く ベースライン条件 矢印ガイド条件 囲いガイド条件 15

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実験 練習 システム利用 16

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実験 練習 システム利用 アイブロウペンシルに慣れるため鏡を見ながら両眉に化粧を施す 実験に用いたアイブロウペンシル(繰り出し式の斜めカット芯) 17

18.

実験 練習 システム利用 各条件で3回ずつ非利き手側の眉毛のみ描く(※ランダムな順序で実施) ベースライン条件 矢印ガイド条件 囲いガイド条件 描くごとに正面からの顔画像を取得・鏡を見て満足度を評価 条件間では休憩を挟みSUSアンケートに回答 18

19.

システムの使いやすさ SUS(System Usability Scale) [Brooke+ 1995](※一般的な平均:68) SUSスコア平均値 ベースライン 矢印ガイド 囲いガイド 67.3 65.1 77.5 SUSスコアが最も高い 描くべき箇所が明示されているため分かりやすい Brooke+ 1995John, B.: SUS: A ‘Quick and Dirty’ Usability Scale, Usability Evaluation In Industry, p. 207–212 (1996). 19

20.

システムの使いやすさ SUS(System Usability Scale) [Brooke+ 1995](※一般的な平均:68) SUSスコア平均値 ベースライン 矢印ガイド 囲いガイド 67.3 65.1 77.5 SUSスコアが低い→操作が難しい 矢印ガイドの難しさの要因 • 矢印の表示位置を探る必要性 • 動きが制限される Brooke+ 1995John, B.: SUS: A ‘Quick and Dirty’ Usability Scale, Usability Evaluation In Industry, p. 207–212 (1996). 20

21.

システムの使いやすさ ディスプレイを見ながら眉毛を描くことが難しい 上からの映像が表示され、鏡とは視覚的条件が異なる カメラ 鏡 ディスプレイ+Webカメラ 21

22.

満足度 満足度:1回描いてもらうごとに鏡を見て出来栄えを5段階で評価 (-2:全く満足していない~2:とても満足している) 満足度平均値 ベースライン 0.54 矢印ガイド 0.42 囲いガイド 0.12 ベースラインが最も高い 22

23.

満足度 満足度:1回描いてもらうごとに鏡を見て出来栄えを5段階で評価 (-2:全く満足していない~2:とても満足している) 満足度平均値 da ベースライン 矢印ガイド 囲いガイド 0.54 0.42 0.12 囲いガイドは最も使いやすいと 評価されていたが、満足度が最も低い 23

24.

満足度 満足度:1回描いてもらうごとに鏡を見て出来栄えを5段階で評価 (-2:全く満足していない~2:とても満足している) 満足度平均値 da ベースライン 矢印ガイド 囲いガイド 0.54 0.42 0.12 満足度の基準(アンケートより) 普段通り描くことができているか 元の眉毛に馴染んでいるか 囲いガイドは最も使いやすいと 評価されていたが、満足度が最も低い 元の眉毛に左右差がある場合、 現状のガイドだと不自然に見えてしまう 24

25.

満足度 回数ごとの平均満足度 1 • 矢印ガイドと囲いガイドは 回数を重ねるごとに上昇傾向にあった 0.5 • 特に囲いガイドでは上昇幅大きい 0 システムに慣れていくことで より満足度が上がる可能性がある -0.5 -1 1回目 ベースライン 2回目 矢印ガイド 3回目 囲いガイド 25

26.

矢印ガイドが有効である人の特徴 満足度から矢印ガイドが有効である人の特徴を分析 眉毛メイクの経験が浅い人 眉山がしっかりしている人 26

27.

満足度|眉毛化粧歴 眉毛化粧歴(眉毛の化粧を初めてからの年数)ごとの満足度平均 3年未満(N=13) 3年以上(N=17) ベースライン 0.36 0.69 矢印ガイド 0.51 0.35 囲いガイド -0.13 0.31 3年以上のグループでは ベースラインの満足度が 最も高かった 経験が豊富な人は自己流の描き方を確立している 27

28.

満足度|眉毛化粧歴 眉毛化粧歴(眉毛の化粧を初めてからの年数)ごとの満足度平均 3年未満(N=13) 3年以上(N=17) ベースライン 0.36 0.69 矢印ガイド 0.51 0.35 囲いガイド -0.13 0.31 3年未満のグループの 囲いガイドの 評価が最も低い 元の眉毛左右差が大きく,ガイドに忠実に描くと不自然に感じられた 28

29.

満足度|眉毛化粧歴 眉毛化粧歴(眉毛の化粧を初めてからの年数)ごとの満足度平均 3年未満(N=13) 3年以上(N=17) ベースライン 0.36 0.69 矢印ガイド 0.51 0.35 囲いガイド -0.13 0.31 3年未満のグループでは 矢印ガイドが最も高い ガイドが提示されているためそれが参考になる 目標が明示されているわけではないので自分の眉毛に沿いつつ描くことができた 29

30.

𝒄:眉山上 𝒂:眉頭上 満足度|眉山の曲率 𝒍 眉山の曲率(𝑙𝑚𝑎𝑥 )ごとの満足度平均 眉山の曲率:眉頭上(a)と眉尻(e)を結んだ直線( 曲率小(N=15) 曲率大(N=15) ベースライン 0.53 0.56 矢印ガイド 0.22 0.62 囲いガイド 0.00 0.24 𝒃 𝒍𝒎𝒂𝒙 𝒅 𝒆:眉尻 )から眉山上(c)までの距離 ベースラインの満足度は 曲率ごとに大きな変化なし 30

31.

𝒄:眉山上 𝒂:眉頭上 満足度|眉山の曲率 𝒍 眉山の曲率(𝑙𝑚𝑎𝑥 )ごとの満足度平均 眉山の曲率:眉頭上(a)と眉尻(e)を結んだ直線( 曲率小(N=15) 曲率大(N=15) ベースライン 0.53 0.56 矢印ガイド 0.22 0.62 囲いガイド 0.00 0.24 𝒃 𝒍𝒎𝒂𝒙 𝒅 𝒆:眉尻 )から眉山上(c)までの距離 曲率大グループでは 矢印ガイド条件が最も高い 矢印の角度の切り替わりが大きいため眉山の位置を意識しやすい 31

32.

非対称度|結果 非対称度:両眉の特徴点を二値化画像から抽出し,その座標差を利き手側の 眉毛の横幅で割って正規化した値 部位ごとの平均非対称度 眉頭上 眉頭下 眉山上 眉山下 眉尻 眉頭上 眉頭下 眉山上 眉山下 眉尻 ベースライン 0.080 0.079 0.099 0.097 0.065 矢印ガイド 0.080 0.081 0.075 0.080 0.070 囲いガイド 0.070 0.071 0.076 0.077 0.066 眉毛の特徴点 眉幅の6~10%の差であり,概ね左右対称に描けている 32

33.

非対称度|結果 非対称度:両眉の特徴点を二値化画像から抽出し,その座標差を利き手側の 眉毛幅で割って正規化した値 部位ごとの平均非対称度 眉頭上 眉頭下 眉山上 眉山下 眉尻 眉頭上 眉頭下 眉山上 眉山下 眉尻 ベースライン 0.080 0.079 0.099 0.097 0.065 矢印ガイド 0.080 0.081 0.075 0.080 0.070 囲いガイド 0.070 0.071 0.076 0.077 0.066 眉毛の特徴点 囲いガイドは全体を通して非対称度が小さい 33

34.

非対称度|結果 非対称度:両眉の特徴点を二値化画像から抽出し,その座標差を利き手側の 眉毛幅で割って正規化した値 部位ごとの平均非対称度 眉頭上 眉頭下 眉山上 眉山下 眉尻 眉頭上 眉頭下 眉山上 眉山下 眉尻 ベースライン 0.080 0.079 0.099 0.097 0.065 矢印ガイド 0.080 0.081 0.075 0.080 0.070 囲いガイド 0.070 0.071 0.076 0.077 0.066 眉毛の特徴点 ベースライン条件は大きい 矢印ガイド条件・囲いガイド条件は小さい →眉山は難しく,ガイドが有効に働いた 34

35.

展望 • 頭上に設置したカメラ映像を見ながら眉毛を描くことが難しい →ディスプレイ×ハーフミラーでの実装 3D-Mirrorcle[Liu+ 2024] Liu, Y., Xin, Q., Xiang, C., Zhang, Y., Nie, L. Y. and Xu,Y.: 3D-Mirrorcle: Bridging the Virtual and Real throughDepth Alignment in AR Mirror Systems, (online),available from ⟨https://arxiv.org/abs/2310.13617⟩(2024). 35

36.

展望 • 提示ガイドの改良 • 元の眉毛の特徴点の平均を用いてガイドを作成 • 矢印ガイド・囲いガイドの組み合わせ 例) 描く前や確認するときは囲いガイド 描いているときは矢印ガイド 36

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まとめ 背景|眉毛を左右対称に描くことが難しい 手法|矢印ガイドで動かすべき方向・角度を提示 実験|ベースライン・囲いガイドと比較 結果|眉メイク経験が浅い人や眉山がしっかりしている人に効果的 展望|ディスプレイ×ハーフミラーによる実装・より効果的なガイドの検討 37