利き手・非利き手の平均手書き文字における類似性の検証

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February 28, 18

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第176回 SIGHCI研究会 発表資料(佐藤大輔)

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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各ページのテキスト
1.

利き手・非利き手の平均手書き文字 における類似性の検証 佐藤 大輔(明治大学総合数理学部2年) 新納 真次郎 中村 聡史 鈴木 正明

2.

研究背景  利き手と非利き手,書きやすいのは? - 非利き手ではなかなか うまく書くことが出来ない

3.

研究背景 非利き手を使う場面もある  左利きの人が右利きへと矯正 - 右利き:9割 左利き:1割 [菊地 1965] 矯正  利き手を怪我したとき

4.

研究背景 非利き手で書いたらブレる 理想の文字 利き手で書いてもブレる さとう

5.

先行研究 平均文字は美しい [中村 2014] - 手書き文字を数式化することで,複数の文字を平均化 - 平均した文字は美しい

6.

先行研究 平均図形も美しい [新納 2015] - 個人の平均図形は,実際描いた図形よりも美しい - 利き手と非利き手の平均図形は類似する 平均文字については類似するかは 明らかになっていない 主観的評価だけで定量的な評価は 行なっていない

7.

研究背景 平均化してブレを無くせば, 利き手の文字と非利き手の文字は 同じものになる?

8.

本研究の目的 利き手,非利き手の違いについて 平均手書き文字の観点から定量的に検証  利き手・非利き手それぞれ書く文字に 違いがあるのか?  矯正は本当にするべきなのか?

9.

関連研究 書字等の動作における利き手の差に 関する基礎的研究 [大西 2015] - 右利き者,左利き者のそれぞれの利き手に 対しての書字実験 - ストロークの向き,傾き,筆順,筆圧などの 書字動作に着目 - 書きやすさを分析し, 右利きと左利きの差を明らかに

10.

関連研究 非利き手の書字行為における運動解析 に関する研究[高島 2004] - 加速度センサデバイスを用いて書字動作を解析 - 非利き手の書字動作には,ポインティング動作 における位置決めと角度調整を行う特徴がある ことを明らかに 本研究では書かれた文字そのものに着目

11.

仮説 1. 手書きに個性が存在し,ユーザごとに利き手と 非利き手の平均手書き文字は類似する ≒ 利き手平均文字 非利き手平均文字 2. 文字によって利き手と非利き手の 平均文字に類似性の違いが表れる

12.

検証内容 1. ユーザごとに利き手と非利き手の 平均文字同士の類似度を分析 2. 何回分書いたものを平均化すれば 十分な類似性が見られるか 3. 文字ごとに利き手・非利き手の 平均文字における違いの分析

13.

平均文字生成手法 1.筆跡を点列 として取得 2.スプライン 補完 3.フーリエ級数展開 による数式化 𝑋 = 𝑓𝑡 + +⋯+ + 𝑡 平均文字 𝑛個の「あ」 + 𝑌=𝑔 + = 𝑛 平均文字は美しい[中村 2014]

14.

定量的評価手法 利き手平均文字 非利き手平均文字 ⋮ ⋮ 利き手文字 非利き手文字 差分を求める

15.

文字間の差分計算方法 各ストロークの距離を 100等分するような点を決定する 𝑙 𝑙 100 ストローク

16.

文字間の差分計算方法 それぞれ対応する2点間のユークリッド距離を 求め,距離を総和して平均する ストロークA 𝑑98𝑑99 𝑑100 𝑑0 𝑑1 𝑑2 ストロークB 𝑑0 から𝑑100 までを総和して平均する

17.

文字データセット構築 利き手と非利き手 の違いを明らかに するため,手書き 文字データセット 構築を実施

18.

文字データセット構築  大学生(19〜22歳) - 右利き 5名:A~E - 男性 6名 10名 左利き 5名:F~J 女性4名  ひらがな 46文字(濁音,半濁音を除く)  筆記回数 利き手/非利き手 10回ずつ  46 文字× 2(両手) × 10回 × 10人 = 9200字 1人あたり920文字

19.

検証内容 1. ユーザごとに利き手と非利き手の 平均文字同士の類似度を分析 2. 何回分書いたものを平均化すれば 十分な類似性が見られるか 3. 文字ごとに利き手・非利き手の 平均文字における違いの分析

20.

検証内容 1.ユーザごとに利き手と非利き手の平均 文字同士の類似度を分析 他のユーザと利き手と非利き手の 平均文字同士を比較する 自身の平均文字同士が他ユーザより 類似度が高いか検証する

21.

結果1:ユーザ同士の比較 それぞれ10個分の平均文字を, ユーザごとに比較した時の平均値

22.

結果1:表の見方 ユーザDの利き手平均文字と ユーザBの非利き手平均文字を比較したとき, ユークリッド距離が25.97ピクセル

23.

結果1:ユーザ同士の比較 各ユーザの非利き手平均文字に対して 最も類似度の高いものを 橙色セル で示す.

24.

結果1:ユーザ同士の比較 各ユーザの利き手平均文字に対して 最も類似度の高いものを 黄色セル で示す.

25.

結果1:ユーザ同士の比較 どちらの平均文字にも自分の手書きの 利き手・非利き手どちらも他のユーザより 個性が反映され,自分自身の文字は他 赤色セル で示す. 類似度が高いものを のユーザより類似する!

26.

結果1:自他ユーザとの比較 比較した 異なるユーザの平均 ユーザが異なる 30.62[pixel]

27.

結果1:右利きと左利きの比較 比較した 同一ユーザの平均 ユーザが同一 15.62[pixel]

28.

結果1:右利きと左利きの比較 左利き 右利き 右利き平均 17.31[pixel] 左利き平均 13.93[pixel]

29.

結果1:ユーザ同士の比較  他のユーザと比べて自分自身の 平均文字同士は類似度は高い  左利きの方が全体的に類似度が高い → 非利き手使う機会が少しでもあった ため慣れていた?

30.

結果1:各文字における一致率 自身の平均文字同士が最も類似度が 高かった人数の割合

31.

結果1:各文字における一致率 自身の平均文字同士が最も類似度が 高かった人数の割合

32.

結果1:各文字における一致率 自身の平均文字同士が最も類似度が 高かった人数の割合 手書きの個性が残りやすい文字 であることが考えられる

33.

検証内容 2. 何回分書いたものを平均化すれば 十分な類似性が見られるか それぞれ平均した文字数ごとに比較し, 平均文字同士の差分の変化量をみる 利き手と非利き手それぞれにおいて 収束するような点を求める

34.

結果2: 利き手が安定するまで 利き手のN,N+1回分の平均文字の変化量の推移 ユークリッド距離の変化量 [ピクセル] 12 10 8 6 4 2 0 1_2 2_3 3_4 4_5 5_6 6_7 7_8 8_9 9_10

35.

結果2:差分がどれくらいか 1-2 2-3 21.46 1 3-4 3.69 2 4-5 3.39 3 5-6 2.77 4 5 6-7 4.25 6 2.75 7 7-8 8-9 1.81 8 2.58 9 2ピクセルは微小であり、 人が気づかないぐらいの誤差 1.81px 9-10 1.37 10

36.

結果2: 利き手が安定するまで 利き手のN,N+1回分の平均文字の変化量の推移 ユークリッド距離の変化量 [ピクセル] 12 10 8 6 利き手文字に関しては,大体7回分の データがあれば十分綺麗になる 4 2 0 1_2 2_3 3_4 4_5 5_6 6_7 7_8 8_9 9_10

37.

結果2:非利き手が安定するまで 非利き手のN,N+1回分の平均文字の変化量の推移 ユークリッド距離の変化量 [ピクセル] 14 12 10 8 非利き手文字に関しては,大体8回分の データがあれば十分綺麗になる 6 4 2 0 1_2 2_3 3_4 4_5 5_6 6_7 7_8 8_9 9_10

38.

結果2: 利き手と非利き手の類似 各ユーザにおける書いた回数ごとの 類似度の変化量の推移 ユークリッド距離の平均値 [pixel] 40 35 30 25 20 15 10 5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 平均した個数 [個] A B C D E F G H I J 平均 10

39.

結果2:文字数ごとの比較 ≒ 結果2:標本数ごとの比較 利き手文字 非利き手文字 7個 8個 これ以上標本数を増やしても 変化量が小さいことから十分な 類似性が見られる

40.

検証内容 3. 文字ごとに利き手・非利き手の 平均文字における違いを分析 文字ごとに比較を行い,類似度が 高かった文字と低かった文字に 対して分析を行う

41.

結果3:文字ごとの比較 差分をユーザ全員で平均し,類似度が高 い文字から並べる 文字によって類似度にばらつきがある

42.

結果3:類似度が高かった文字  10ピクセル台 -「い」「う」  11ピクセル台 -「ほ」「り」  12ピクセル台 -「お」「け」「た」「や」 縦方向のストロークは 非利き手でも書きやすい?

43.

結果3:類似度が低かった文字 「ひ」21.97ピクセル 「そ」22.62ピクセル 「の」22.89ピクセル 「ろ」22.97ピクセル 「る」23.64ピクセル 横方向のストロークや急な折り返し, 1ストロークの長さが長い文字は 非利き手だと書きにくい?

44.

解析手法の問題 文字の位置と大きさによる大幅なズレ 位置 大きさ

45.

今後の対応策 正規化処理 大きさの統一 500 300 300 500 位置の統一

46.

仮説の検証 1. 手書きに個性が存在し,ユーザごとの利き手 と非利き手の平均手書き文字は類似する 非利き手平均文字にも利き手と 同様な個性が表れた 自分自身の利き手平均文字と 非利き手平均文字は, 他のユーザより類似する

47.

仮説の検証 2. 文字によって利き手と非利き手の文字 に類似性の違いが表れる  類似度が高い文字の特徴 - 縦方向のストロークがある  類似度が低い文字の特徴 - 横方向のストロークがある - 急な折り返し部分がある - 1ストロークあたりの長さが長い

48.

考察  矯正はするべきか? →利き手と非利き手の文字に違いがないため 矯正することは重要ではない? - 幼い頃は矯正することよりも文字の形 を覚える方が大事 - 矯正をするならば,成長した後で

49.

考察  利き手に障害が生じた場合は? →非利き手でも利き手の代用が可能に? ≒ 非利き手 利き手

50.

まとめ  利き手・非利き手の平均文字は類似 することを明らかにした - 左利きの人の方がより類似!  文字のストロークの特徴によって 利き手と非利き手の書き方に違いが表れる 今後の課題  解析手法の改善  カタカナや漢字などでの検証