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May 14, 24
スライド概要
我々はこれまで,ペンギンの特徴的な腹部のスポット模様に着目して描画しつつ観察する手法を実現し,水族館での実験で本手法による観察が一部の実験参加者のペンギンへの記憶に効果的であることを明らかにしてきた.ここでペンギンのスポットの描画は,水族館で動くペンギンを見ながらと画像を見ながらとでは大きく異なると考えられる.そこで本研究では,観察環境による違いが描画順に及ぼす影響を分析し,スポットの描画順はいずれの環境でも上部から下部の順に描く傾向があるものの,水族館では観察方向により描画位置がばらつきやすいことが明らかになった.また,複数の水族館を訪問し,ペンギンの展示方法の工夫を基礎調査することで手法の応用可能性を明らかにした.
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
水族館における個に着目したペンギン展示の基礎調査と 腹部スポット描画型ペンギン観察手法の利用可能性の検証 2024.05.13-14|HCS24-05|沖縄産業支援センター 中川由貴 中村聡史 明治大学 先端数理科学研究科 先端メディアサイエンス専攻
背景 動物園・水族館は多くの人が訪れるレジャー施設 小中学校の課外学習など教育的役割も担う 生き物の中でも ペンギン は人気が高く, 多くの人を惹きつける Q. 好きな動物・生き物を教えてください(1000人) 1.ペンギン 2.イルカ 3.パンダ 84 59 44 4.犬 5.キリン 21 18 2
背景 ペンギンは数十羽単位での展示で, 俯瞰した観察になってしまう ただ眺めているだけでは記憶や興味にはつながりづらい • 観察学習効果の低下 • 再訪に繋がらない 参照)https://co-trip.jp/post/116127/ 3
関連研究 LINNÉ LENS スマホのカメラで生き物をかざすだけで 自動で認識し, 名前を表示するアプリ 能動性がなく記憶には残りづらい 参照)https://lens.linne.ai/ja/ 4
関連研究 能動性と興味・記憶 • ぬりえが大学生の 認知力の向上 に影響する [Holtら, 2019] • 能動的に話を聞くとその話題への 興味が増す [Funazakiら, 2022] • Holt, N. J., Furbert, L., and Sweetingham, E.. Cognitive and Affective Benefits of Coloring: Two Randomized Controlled Crossover Studies. Journal of the American Art Therapy Association, 2019, vol. 36, no. 4, p. 200-208. • Funazaki, F., and Nakamura, S.. A Method to Success of "Oshigatari" Recommendation Talk by Asking to Create Search Queries While Listening, KnowledgeBased and Intelligent Information & Engineering Systems, International Conference on Knowledge-Based and Intelligent Information & Engineering Systems. 2022, vol.207, p. 1812-1821. 5
提案手法 腹部模様を 描画 描画から 名前検索 6
システム • スマートフォン上で斑点を描画 • 類似度に基づいて推測されるペンギンを ランキング形式で提示 7
提案手法 腹部模様を 描画から 描画 名前検索 個体の特徴に注目できる 簡単に名前を対応づけ 描いた個体に愛着が湧く 記憶に残りやすい 8
過去の研究 ひとがどのように腹部模様を描くのか分析 [HCS2023年5月研究会] ・ 上→下, 左→右の順に描く傾向がある △ 分析データが限られていた △ 水族館で描いた場合の検証ができていない 9
目的 l ペンギンの腹部模様をひとがどのように描くのか, 実験室と水族館での描画にどのような違いがあるのかを明らかに l 水族館がどのような展示の工夫をしているのか調査し 提案手法の応用可能性を考察 10
実験 実験室&すみだ水族館で描画実験を実施 • 実験室:参加者 26名, ペンギン 19羽分 - ペンギンの画像を見ながら描画 • 水族館:参加者 9名, ペンギン 31羽分 - 水族館で任意のペンギンを描画 同じペンギンについて描かれた17羽分のデータを使用して描画順を分析 11
描画順分析 わらび : 水族館 : 実験室 12
描画順分析 わらび : 水族館 : 実験室 13
描画順分析 わらび : 水族館 : 実験室 14
描画順分析 ローズ : 水族館 : 実験室 15
描画順分析 ローズ : 水族館 : 実験室 16
描画順分析 ローズ : 水族館 : 実験室 17
描画順分析 ちょうちん : 水族館 : 実験室 18
描画順分析 ちょうちん : 水族館 : 実験室 19
描画順分析 ちょうちん : 水族館 : 実験室 20
描画順分析 ちょうちん : 水族館 : 実験室 ↕上下にずれ 21
考察 観察する方向の影響 • 同じペンギンの描画でも, 観察する方向によって中心が 上下左右にズレることがある 22
考察 • 実験室・水族館どちらにおいても上部の点から描く傾向 • 水族館では観察する方向により描きはじめの位置がばらつく • ライン付近などより詳細な点を描く参加者もいた 上下左右のブレを考慮した検索アルゴリズムや 観察する角度を指定できる描画インタフェースの工夫が必要 23
水族館調査 ペンギンを飼育する水族館がどのような展示をしているか訪問調査 • 期間:2022/6/1 ~ 2024/3/16 • 施設数:17(国内14, 海外3) 24
水族館調査 ペンギンを飼育する水族館がどのような展示をしているか訪問調査 • 期間:2022/6/1 ~ 2024/3/16 • 施設数:17(国内14, 海外3) 14 施設/17がポスターやSNSなどを使った展示 10 施設/17が個体に着目させる工夫 25
フリッパーバンドの紹介 ペンギン⼀覧リスト @⻑崎ペンギン⽔族館 @Sea Life Sydney 相関図による個体紹介 斑点による⾒分け紹介 @すみだ⽔族館 @京都⽔族館 26
フリッパーバンドの紹介 @⻑崎ペンギン⽔族館 27
ペンギン⼀覧リスト @Sea Life Sydney 28
相関図による個体紹介 @すみだ⽔族館 29
斑点による⾒分け紹介 @京都⽔族館 30
既存展示 顔写真とバンドの⾊のみ ライム, 緑, クリアグリーン 31
既存展示 顔やフリッパーバンドだけで名前を探し出すのは困難 顔写真とバンドの⾊のみ ライム, 緑, クリアグリーン 32
提案手法 ユーザの識別の負荷が少なく能動的な観察ができる 33
応用可能性 既存の展示との組みこむことで, 観察体験や記憶の向上につながる 水族館と協力し, 大規模な運用実験をしていく 34
課題と展望 実地観察でのブレ システムモチベーション 観察する方向による ブレを考慮した検索 アルゴリズムに改良 UI改善 使いやすさ・機能追加 により, モチベション を向上させる 35
まとめ 背景 | 興味や記憶につながる生き物の観察支援が必要 提案 | ペンギンの模様をぬりえ・名前検索する観察システム 実験 | 実験室・水族館での描画実験での描画傾向を比較分析 結果 | 分布や描画順に大きな違いはないが, 水族館ではブレが生じる 今後 | システムの修正・水族館での大規模運用実験 36