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May 14, 24
スライド概要
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
画像選択肢の逐次的表示における 視覚誘導型遅延が選択に及ぼす影響 徳原眞彩(明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科) 木下裕一朗 髙久拓海 中村聡史
背景 ダークパターン →Webやスマートフォンアプリなどでのサービス提供の場 においてユーザの意図しない行動を引き起こすデザイン https://darkpatterns.jp 1
背景 https://www.agoda.com/ 2
背景 https://www.amazon.co.jp 3
先行研究 • 約11,000のショッピングサイトから53,000の商品ページを分析 したところ、1,818のダークパターンを発見[Mathurら, 2019] • 人気のある200個のモバイルアプリを分析し、ほとんどの アプリにダークパターンを発見し、1つあたり平均3.9個発見 [Hidakaら, 2023] Mathur, G. Acar, M. J. Friedman, E. Lucherini, J. Mayer, M. Chetty, and A. Narayanan, “Dark Patterns at Scale: Findings from a Crawl of 11K Shopping Websites,” Proceedings of the ACM on Human Computer Interaction, vol.3, no.CSCW, pp.1-32, 2019 S. Hidaka, S. Kobuki, M. Watanabe, K. Seaborn “Linguistic Dead-Ends and Alphabet Soup: Finding DarkPatterns in Japanese Apps,” CHI '23: Proceedings of the 2023 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems, no.3, pp.1-13, 2023 4
先行研究 • ダークパターンの種類を分類しダークパターンの検出を行った。 検出精度は66%となった[Mansurら, 2023] S. Hidaka, S. Kobuki, M. Watanabe, K. Seaborn, “Linguistic Dead-Ends and Alphabet Soup: Finding DarkPatterns in Japanese Apps,” Proceedings of the 2023 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems, no.3, pp.1-13, 2023. 5
背景 問題となるデザインの多くは指摘することが容易 → 気付きづらく、指摘が難しいインタフェースも存在 気付きづらいデザインであると… • ユーザに気づかれないまま誘導を起こせる • デザイン作成者が気付かない誘導が起こる 6
先行研究 • 選択画面前に表示されたプログレスバーが選択行動に影響を 与える事を発見 [Yokoyamaら, 2021] • 6択の選択肢の中から1つだけ先行表示を行うと、その先行表示 を行った選択肢の選択率が高くなる [木下ら, 2023] K. Yokoyama, S. Nakamura, and S. Yamanaka, “Do Animation Direction and Position of Progress Bar Affect Selections?,” 18th IFIP TC 13 International Conference on Human-Computer Interaction - INTERACT 2021, vol.12936, pp.395-399, 2021. 木下裕一朗, 関口祐豊, 植木里帆, 横山幸大, 中村聡史. “選択肢の時間差表示が選択行動に及ぼす影響, ” 信学技報 ヒューマンコミュニケーション基礎研究会(HCS), HCS2023-39,vol.123, no.24, pp.194199, 2023. 7
背景 • サイトやアプリケーションの作成者が注意を払い 作成しなければならない • 通信遅延や動作遅延による意図しない選択誘導が 起こる可能性がある 8
目的 選択肢の表示の違いが人々の選択行動に 及ぼす影響を明らかにする 9
逐次表示 10
前回の研究 仮説 (1) 6つの選択肢の逐次表示を行うと、始めの方に表示された 選択肢は選ばれやすくなる (2) 表示に遅延を加えると遅延された一つ前の選択肢 が選ばれやすくなる 徳原眞彩, 木下裕一朗, 髙久拓海, 小松原達哉, 中村聡史,“選択肢の逐次的表示における遅延が 選択 に及ぼす影響,” 信学技報 ヒューマンコミュニケーション基礎研究会(HCS), HCS2023-68, vol.123, no.188, HCS2023-68, pp.65-70, 2023. 11
前回の研究 12
前回の研究 結果 →各選択肢に若干の選択の偏りは見られたが、仮説通りの結果に はならず、逐次表示が大きな影響を与えている様子は 見られなかった 原因 • 文字を読まないといけない • 文字のみが表示されるため遅延の印象が薄く気付きづらい • 選択肢内容による誘導が行われてしまう 13
前回の研究との違い 仮説は同じままで同様の実験を行ったが 文字選択肢ではなく、画像選択肢を用いた 理由 • 選択肢の多くを絵が占めるため遅延に気づきやすい • 選択肢内容による偏りが小さくなりやすい 14
実験 嗜好を問う質問文とダミー質問を提示し、 提示した選択肢の中から1つ選んでもらう実験 15
実験 • 6つの選択肢を「Z」の字の順番に表示 • 各選択肢は一定時間間隔毎に表示 • 全ての質問、ダミー質問において逐次表示を行う 16
実際の実験ページ 17
実験 • 6つの選択肢を「Z」の字の順番に表示 • 各選択肢は一定時間間隔毎に表示 • 遅延が起こる質問では1つの選択肢のみ間隔時間を長く設定 18
実験 実験イメージ 19
実際の実験ページ 20
実験 • 嗜好を問う質問を15問 →うち、遅延が起こる質問は5問 ダミー質問を5問の計20問を回答する実験 • 遅延を起こす位置は左上を除く5つの位置の選択肢 21
実験 • Yahoo! クラウドソーシング上で実施 • 2,000名に実験を依頼 (男性1,000名、女性1,000名) • 回答選択肢は著者らでなるべく差の小さい画像を選定し、 選択率に偏りが出にくいようにした 22
実験結果 下記の回答者を分析から除外 • ダミー質問で1問以上誤答した回答者 • 選択誘導を検証する質問で同じ位置の選択肢のみを 選択し続けた回答者 • 最後まで正常に実験を行えていない回答者 → 結果1,662名(男性813名、女性849名)が分析対象 23
実験結果 選択肢の回答率の偏りの大きかった問題を除外 → 誘導が選択肢の内容により行われている可能性 遅延なし時の各質問の選択肢の選択率 24
仮説 (1) 6つの選択肢の逐次表示を行うと、始めの方に表示された 選択肢は選ばれやすくなる (2) 表示に遅延を加えると遅延された一つ前の選択肢 が選ばれやすくなる 25
遅延なし時の各位置の選択率(N = 11,070) 仮説通りの結果にはならなかった 15.82 16.00 14.78 16.62 18.04 18.74 26
引っ掛かり位置の選択率(N = 5,550) 仮説通りの結果にはならなかった 13.74 15.07 16.53 遅延無し 18.26 17.67 27
遅延時間ごとの引っ掛かり選択肢選択率(N = 5,550) 遅延時間が長い方が引っ掛かりに気付きやすいと考えられるが、 長い方が選択率が高くなるといった結果にはならなかった 引っ掛かり選択肢の 選択率(%) 引っ掛かり選択肢の 1つ後の選択率(%) 0.1秒 17.06 16.04 0.2秒 15.98 15.89 0.3秒 15.63 15.02 平均 16.23 15.68 遅延時間 28
仮説(1)に沿う結果にならなかった • 初頭効果が適用されなかった • 初めの目線は左上に向けていたものの、左上の選択肢を 注視すること無く、右上の選択肢まで視線を動かしていた 可能性がある →アイトラッカーを用いて視線の注視率等を 調査する必要がある 29
仮説(2)に沿う結果にならなかった • それまでに表示された画像選択肢を見比べていた可能性 • 最大で0.4秒の遅延には誘導効果をもたらすほどの視線誘導が 起こらないと考えられる →多くの画像が表示される場面ではより遅延が起こる状態が 多々ある。より遅延を長くした実験が必要 30
選択時間ごとの上下段選択率(N = 16,620) • 比較的直感的に選択していると思われる人たちが下の段を 選択しやすい傾向が見られた • 後に見たものが印象に残る親近効果が見られた 31
画像選択肢による偏り • 前回と同じく偏った質問 は5問だった • 標準偏差が 選択率が偏らなかった質問 前回が8.75 今回が11.32 選択率が左の画像に偏った質問 32
画像選択肢による偏り 6.70% 11.62% 12.06% 18.50% 45.31% 5.81% 33
今後 • 逐次表示の時間間隔を変更 • 引っ掛かりを生じさせる遅延時間を変更 • 画像選択肢の数を増やす • アイトラッカーを使用し、視線を計測 34
まとめ 背景:選択を誘導するダークパターンが存在する 目的:画像選択肢の逐次表示とその遅延が選択行動に与える 影響を明らかにする 実験:6択の画像選択肢から1つを選んでもらう実験を実施 結果:特定の選択肢への偏りは起きなかったが、後の方に表示 される下段選択肢への選択の偏りが見られた 考察:表示への慣れや選択肢への注視が起こせなかった可能性 35