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February 26, 25
スライド概要
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
DebaTube: 競技ディベートの 試合動画探索を支援する 大局的な反論構造可視化手法の提案 明治大学 福井雅弘 明治大学 中村聡史
競技ディベートとは? ⚫ 2〜3名の肯定側と否定側がターン制で論戦 - 消費税は廃止すべき?タバコは禁止すべき?等 ⚫ 互いに噛み合った建設的なコミュニケーションが重要 2
背景 ⚫ 試合展開に応じた対応力を身に付けたい! - 味方に反論が集中した時どうカバーする? - 味方がうまく話せなかったときどう立て直す? - 議論をどう比較する? ⚫ 他者の試合動画が参考にできるが... - 論題や大会名しか使えず試合の特徴が掴みにくい 3
背景 ⚫ 試合展開に応じた対応力を身に付けたい! - 味方に反論が集中した時どうカバーする? - 味方がうまく話せなかったときどう立て直す? 議論の大まかな構造を把握したい - 4番手のとき議論をどう比較する? → 誰が誰に反論したか, ⚫味方の発言が少ないとき3番手はどう反論したか等 他者の試合動画が参考にできるが... - 論題や大会名しか使えず試合の特徴が掴みにくい 4
議論構造の可視化 議論の構造理解にはグラフによる可視化が有効 論述文の支持関係を可視化, 説得力のある文章力を支援 [Wambsganss+ 2020] 政治討論での反論関係を可視化, 各候補者の政策理解を支援 [South+ 2020] 参考文献: Thiemo Wambsganss, Christina Niklaus, Matthias Cetto, Matthias Söllner, Siegfried Handschuh, and Jan Marco Leimeister. 2020. AL: An Adaptive Learning Support System for Argumentation Skills. In Proceedings of the 2020 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI '20). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 1–14. Xia, M., Zhu, Q., Wang, X., Nie, F., Qu, H., & Ma, X. (2022). Persua: A Visual Interactive System to Enhance the Persuasiveness of Arguments in Online Discussion. 5
目的 ⚫ 試合の特徴を俯瞰的に把握可能とする 動画探索システムの実現 - 反論構造の推定・可視化手法の構築 ⚫ 利用実験による探索行動の調査 - 反論構造の可視化は試合動画探索において - どのような役割を担うか? 6
反論構造の推定 ⚫ 可視化に向け反論構造をグラフ化する - 文字起こし / Argument Unitへの分割 / 反論判定 ⚫ 前回の研究の人力手法ではスケーラビリティに課題 → 自然言語の対話に強いLLMで自動化 7
① 文字起こし 動画から文字起こししたのち 話者分離からスピーチ(ターン)ごとに分割 - 文字起こしはWhisper,話者分類はpyannote.audio 8
② Argument Unitへの分割 各スピーチをArgument Unit(主張や理由づけなどの 議論の最小単位)に分割 - 論点ごとに区切る - 同じ論点でも新たな深掘りや着眼点の切替で区切る 分割 宿題は生徒に負担なので廃止すべきだ。第一に、 メンタルの負担が大きく... 第二に睡眠時間がへ り肉体的負担が... これが原因で勉強が嫌いにな り、将来に悪影響が... 宿題は生徒に負担なので廃止すべきだ。第 一に、メンタルの負担が大きく... 第二に睡眠時間がへり肉体的負担が... これが原因で勉強が嫌いになり、将来に悪 影響が... 9
③ 反論関係の判定 ⚫ 反論を相手の論に言及した反対意見と定義 ⚫ どのArgument Unitの間に反論関係があるかLLMが判定 肯定 否定 宿題は生徒に負担なので廃止すべきだ。第 一に、メンタルの負担が大きく... 第二に睡眠時間がへり肉体的負担が... これが原因で勉強が嫌いになり、将来に悪 影響が... 肯定側の1点目に反論する。まず精神的負 担については... また、睡眠時間をへらす必要はなく... 宿題がなくなれば,参考書などを買えない 貧しい生徒との格差が... 10
DebaTube 肯定側1人目 否定側1人目 肯定側2人目 否定側2人目 肯定側3人目 否定側3人目 否定側4人目 肯定側4人目 大局的な反論構造の可視化で試合の特徴を俯瞰 11
デモ ユースケース:肯定側3番手として,味方が上手く行って ないときどうカバーするか知りたい! → 競技では穴のない反論が理想だが,立て直しも重要 肯定1 肯定2 肯定3 否定1 否定2 … … 12
既存システム 大会名 論題のカテゴリ 論題 13
DebaTube 効率的な探索のための各種機能 ⚫ ピン留め機能 ⚫ ノードクリック機能 デモ 14
実験設計 4つの状況×2つの質問に回答するタスク - 参加者個人の考え方に影響されないよう,後輩の悩みに対処するタ スクとしてデザイン - 参加者5名のうち3名に指示を誤解したと思われる回答があり除外 状況1: 後輩が,味方と似た話を繰り返してしまいうまく深掘りできないと悩んでいます. 状況2: 後輩が,一貫性のある主張を行う方法について悩んでいます. 状況3: 後輩が,最初のスピーチに集中して反論することが多いが,問題ないか悩んでいます. 状況4: 後輩が,否定側3番手を練習しており,議論を比較する方法について悩んでいます. 質問1: 後輩にどの動画を勧めますか?良い動画と悪い動画を一つずつ選んでください. 質問2: 後輩にどの動画を勧めますか?特に良いと思われる動画を一つ選んでください. 15
分析:操作ログ 参加者Aのピン留め(青)と ノードクリック(赤)のタイミング 動 画 の ID 経過時間(秒) 参加者Aにも別の試合の同じスピーチを見比べる傾向 - 60と41を選択 16
分析:操作ログ 参加者Aのピン留め(青)と ノードクリック(赤)のタイミング 動 画 の ID 経過時間(秒) 参加者Aにも別の試合の同じスピーチを見比べる傾向 - 60と41を選択 17
分析:操作ログ 参加者Aのピン留め(青)と ノードクリック(赤)のタイミング 動 画 の ID 経過時間(秒) 両参加者に別の試合の同じスピーチを見比べる傾向 - 60と41を選択 18
分析:操作ログ 参加者Bのピン留め(青)と ノードクリック(赤)のタイミング 動 画 の ID 経過時間(秒) 両参加者に別の試合の同じスピーチを見比べる傾向 19
分析:操作ログ 参加者Bのピン留め(青)と ノードクリック(赤)のタイミング 動 画 の ID 経過時間(秒) 参加者Bに別の試合の同じスピーチを見比べる傾向 20
分析:操作ログ 参加者Bのピン留め(青)と ノードクリック(赤)のタイミング 動 画 の ID 経過時間(秒) 参加者Bに別の試合の同じスピーチを見比べる傾向 21
分析:選択理由 両参加者が右の試合を良い動画として選択 - 後輩が否定側3番手を練習しており,議論を 比較する方法について悩んでいるタスク - Aは反論の網羅度, Bは明確な比較基準を評価 結論が同じでも根拠や着眼点に違い 22
展望 ⚫ スピーチ傾向の個人差の反映 - ユーザの反論構造の履歴を基に動画をソート ⚫ 反論構造推定のリアルタイム対応 - 現在の可視化は試合終了後に行われている - 試合中に反論構造を可視化するとどんな効果があるか 23
まとめ 背景 競技ディベートの試合探索には構造的観点が必要 提案システム 試合の反論構造の可視化で動画の特徴を俯瞰可能とする 目的 試合動画探索における反論の可視化の役割を調査 結果 異なる試合の同じスピーチを見比べる傾向 システムを debatube.nkmr.io で公開中! 24
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考察:可視化の役割 参加者Dの選択理由 「自分たちが上回る理由を明確に 示そうとしていた。比較軸を具体 的に狭めることによって、前半ま での抽象的な比較を抜け出してい た。 」 → 視聴する範囲を絞る判断材料 として可視化を利用 26
考察:可視化の役割 参加者Eの選択理由 「特に肯定側3番手に触れられて いることを評価。否定側3番手の 役割として欠かすと勝敗に直結す る点であり、参考になる。」 → 予め結論を定め,それに沿う試 合を探すための手掛かりとして可 視化を利用 27
考察:可視化の役割 <参加者D> 「自分たちが上回る理由を明確に示そう としていた。比較軸を具体的に狭めるこ とによって、前半までの抽象的な比較を 抜け出していた 」 → 視聴する対象を大まかに絞る 判断材料として可視化を利用 <参加者E> 「特に肯定側3番手に触れられており、 否定側3番手の役割として欠かすと勝敗 に直結する点であるため、参考になる」 → 予め結論を定め,それに沿う試合を → 探す手掛かりとして可視化を利用 28
考察:可視化の役割 参加者Dの選択理由 「自分たちが上回る理由を明確に 示そうとしていた。比較軸を具体 的に狭めることによって、前半ま での抽象的な比較を抜け出してい た。 」 → 視聴する範囲を絞る判断材料と して可視化を利用 29
考察:可視化の役割 参加者Eの選択理由 「特に肯定側3番手に触れられて いることを評価。否定側3番手の 役割として欠かすと勝敗に直結す る点であり、参考になる。」 → 予め結論を定め,それに沿う試 合を探すための手掛かりとして可 視化を利用 30
考察:可視化の役割 なぜ違いが生まれたか? → 可視化の役割は主に2パターン ① 視聴する範囲を絞る判断材料 -参加者D「自分たちが上回る理由を明確 に示そうとしていた。比較軸を具体的に狭 めることによって、前半までの抽象的な比 較を抜け出していた。」 31
考察:可視化の役割 なぜ違いが生まれたか? → 可視化の役割は主に2パターン 参加者E「特に肯定側3番手に触れられて いることを評価。否定側3番手の役割とし て欠かすと勝敗に直結する点であり、参考 になると判断。」 後輩に伝えたいメッセージに沿った 特徴を探すための手掛かりとして利 用 32
背景 ⚫ 試合展開に応じた対応力を身に付けたい! - 味方に反論が集中した時どうカバーする? - 味方がうまく話せなかったときどう立て直す? - 4番手のとき議論をどう比較する? ⚫ 他者の試合動画が参考にできるが... - 論題や大会名しか使えず試合の特徴が掴みにくい 議論の大まかな構造を把握した上で動画を探索したい - 誰が誰に反論したか,1•2番手が反論できていないとき3 番手はどこに反論しているか,など 33
既存システム デモ(動画も用意しておきます) 34
可視化の役割 なぜ違いが生まれたか? → 可視化の役割は主に2パターン ⚫ 視聴するシーンを絞るため,動画視聴を始める前に試合の特徴を ざっくりと俯瞰するための判断材料 -「自分たちが上回る理由を明確に示そうとしていた。比較軸を具体的に狭め ることによって、前半までの抽象的な比較を抜け出してVoting Issueになり うる比較軸を出せていた。」 ⚫ 思い描いた後輩に伝えるメッセージに合致する試合の特徴を探すた めの手掛かり - 「特に肯定側3番手に触れられていることを評価。否定側3番手の役割とし て欠かすと勝敗に直結する点であり、参考になると判断。」 37
提案システム ⚫ 要件 ⚫ 試合の全体像を俯瞰的に把握できる ⚫ 各発言が肯定側または否定側のどちらに属するか, さらに反論である場合はどの発言に対するものかを 時 系列順にわかりやすく提示 ⚫ 気になる試合が複数同時に見比べられる ⚫ 気になる発言や反論があるシーンがすぐに参照できる 39
提案システム ⚫ 要件 ⚫ 試合の全体像を俯瞰的に把握できる ⚫ 各発言が肯定側または否定側のどちらに属するか, さらに反論である場合はどの発言に対するものかを 時 系列順にわかりやすく提示 ⚫ 気になる試合が複数同時に見比べられる ⚫ 気になる発言や反論があるシーンがすぐに参照できる 40
提案システム ⚫ 要件 ⚫ 試合の全体像を俯瞰的に把握できる ⚫ 各発言が肯定側または否定側のどちらに属するか, さらに反論である場合はどの発言に対するものかを 時系列順にわかりやすく提示 ⚫ 気になる試合が複数同時に見比べられる ⚫ 気になる発言や反論があるシーンがすぐに参照できる 41
見出し ⚫ A ⚫ B 42
即興力の評価 ⚫ 既存の研究は反論の個別的分析が中心 - カテゴリ毎に分類し頻度から評価 [Hsiaoら 2022] - 反論文と被反論文の類似度から評価 [Wachmuthら 2018][Shiら 2023] → 個々の反論ではなく,全体的に見て判断したい 動画探索には大局的な観点が必要 参考文献: Hsiao, F. H., Yen, A. Z., Huang, H. H., & Chen, H. H. (2022). Modeling Inter Round Attack of Online Debaters for Winner Predi ction. In Proceedings of the ACM Web Conference 2022, pp. 2860-2869. Wachsmuth, H., Syed, S., & Stein, B. (2018). Retrieval of the best counterargument without prior topic knowledge. In Proceedings of the 56th Annual Meeting of the Association for Computational Linguistics, vol. 1, pp. 241-251. Shi, H., Cao, S., & Nguyen, C. T. (2023). Revisiting the Role of Similarity and Dissimilarity in Best Counter Argument Retrieval. arXiv preprint arXiv:2304.08807. 43