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January 15, 26
スライド概要
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
利き手・非利き手での 手書き文字類似度判定手法と その検証 明治大学 総合数理学部3年 巻野大悟 能宗巧 瀬崎夕陽 関口祐豊 中村聡史
はじめに 健常と要介護の間の中間的な状態=「フレイル」 [日本老年医学会] フレイルが進行すると転倒のリスクが高まる 転倒をしやすい人には筋力の左右差があると言われている 認知機能の低下もフレイルの特徴の1つ [健康長寿ネット] 日本老年医学会: フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント,https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20140513_01_01.pdf (2025). 健康長寿ネット, https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/about.html 2
はじめに 健常と要介護の間の中間的な状態=「フレイル」 [日本老年医学会] フレイルが進行すると転倒のリスクが高まる 左右差+空間的認知を測れる非利き手の手書きに着目 転倒をしやすい人には筋力の左右差があると言われている 認知機能の低下もフレイルの特徴の1つ [健康長寿ネット] 日本老年医学会: フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント,https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20140513_01_01.pdf (2025). 健康長寿ネット, https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/about.html 3
先行研究 • 両利きの人の左右で書いた手書き文字が類似する [Sharmaら 2021] • 非利き手で筆記の練習をすると、非利き手の文字が 利き手の文字に近づく [Brady-Walkerら 2007] →条件付きで利き手と非利き手の類似性の存在が明らかに Sharma, R. et al: An Assessment of Ambidextrous Handwriting Characters: A Future Prospect for Forensic Document Examiners, Journal of Forensic Research, Vol. 12. 2021 Brady-Walker, L. and Henneberg, M.: Writing with the non-dominant hand: Cross-handedness trainability in adult individuals, Laterality, Vol. 12. 2007 4
先行研究 利き手と非利き手での平均化した文字や絵が類似する [佐藤ら 2018] [新納ら 2019] →文字のどの特徴が、どの程度利き手と非利き手で 類似するかはわかっていない 佐藤大輔. 他:利き手・非利き手の平均手書き文字における類似性の検証,情報処理学会研究報告,HCI-176 新納真次郎. 他:ひとの評価にあった手書き文字の類似度評価手法の提案,情報処理学会研究報告,HCI-181 5
目的 利き手と非利き手の平均文字において 1. 類似しやすい/類似しにくい文字の 幾何学的特徴を明らかにする 2. 平均文字間の類似度を判定する手法を構築する →将来的には、身体機能の左右差を定量的に 検出するための基礎的知見を確立する 6
仮説 利き手・非利き手の平均文字の比較 H1 →ストロークの分量により類似しやすい・しにくい特徴が存在する (縦ストロークの分量と横ストロークの分量) H2 →文字の形状により類似しやすい・しにくい特徴が存在する (縦横比、複雑さ、バランス維持の容易さ) H3 →利き手によって類似しやすい・しにくいカーブの向き 7
文字の選定 先行研究やパイロットテストで得た知見から以下の文字を選定 カテゴリ 選定文字 ひらがな あ、い、え、す、そ、ち、つ、な、ぬ、の、ふ、む、ゆ、わ カタカナ キ、サ、シ、タ、チ、ニ、ヌ、ハ、ヒ、ホ、ミ、ヨ 漢字 肉、言、金、四、丈、以、永、米、明、治、林、年、川、三 数字・記号 01、23、45、67、89、$、¥、%、℃、? 佐藤大輔. 他:利き手・非利き手の平均手書き文字における類似性の検証,情報処理学会研究報告,HCI-176, 新納真次郎. 他:ひとの評価にあった手書き文字の類似度評価手法の提案,情報処理学会研究報告,HCI-181 8
データセット • 大学生・大学院生30名(右利き15名、左利き15名)を対象 • 50種類の文字を各手それぞれ5回ずつ筆記 →合計15,000個の筆記文字データを収集 • 同一者の利き手データのペアと他者の利き手データのペアを 用いて、そのペアが同一者によるものかを判定するための 類似度評価式を構築 9
手順 1. スライドを用いて説明する 2. 全文字をランダムな順序で提示し、 1文字につき利き手と非利き手で それぞれ連続で5回ずつ筆記を行う ※どちらの手から筆記を開始するかは 文字ごとにランダム 3. 終了後、筆順や筆記方向が 統一されていない文字は再収集する 10
類似度評価式の作成 ロジスティック回帰分析を行うことで類似度評価式を作成 • 目的変数: 同一者の利き手で筆記したペアを正例、 他者同士の利き手で筆記したペアを負例、としたデータセット • 説明変数:ストロークの類似度(ユークリッド距離、長さの比率、曲率 の類似度の和)、文字の縦横比、重心のコサイン類似度、 重心のユークリッド距離 11
類似度評価式の定義 Similarity = −𝟎. 𝟎𝟏𝟖𝑫𝒑𝒐𝒊𝒏𝒕 − 𝟏𝟓. 𝟖𝟏𝟐𝑫𝒍𝒆𝒏 − 𝟎. 𝟏𝟒𝟏𝑫𝒄𝒖𝒓𝒗 +𝟕. 𝟔𝟑𝟒𝑫𝒂𝒔𝒑𝒆𝒄𝒕 + 𝟏. 𝟐𝟎𝟗𝑫𝒃𝒂𝒍𝒂𝒏𝒄𝒆 − 𝟎. 𝟎𝟖𝟔𝑫𝒈𝒓𝒂𝒗𝒊𝒕𝒚 − 𝟒. 𝟓𝟎𝟕 Dpoint:各点列間のユークリッド距離、Dlen:ストローク長比率の類似度 Dcurv:ストローク曲率の類似度、Daspect:文字の縦横比の類似度 Dbalance:文字バランスの類似度 Dgravity:ストローク重心間距離の類似度 12
評価式の検証 非利き手で筆記 全利き手・非利き手 平均文字ペアの 類似度を算出 右図は、50種類の 文字の類似度の 平均をペア毎に 算出したもの • 緑が濃くなるほど 類似度が高い 利 " 手 ! 筆 記 13
評価式の検証 非利き手で筆記 全利き手・非利き手 平均文字ペアの 類似度を算出 右図は、50種類の 文字の類似度の 平均をペア毎に 算出したもの • 緑が濃くなるほど 類似度が高い 利 " 手 ! 筆 記 14
評価式の検証 非利き手で筆記 全利き手・非利き手 平均文字ペアの 類似度を算出 どの参加者も、自分とのペアが一番類似度が高い 利 →利き手と非利き手の平均文字は類似する 右図は、50種類の " 手 文字の類似度の ! 平均をペア毎に 筆 算出したもの 記 • 緑が濃くなるほど 類似度が高い 15
仮説の検証 本実験ではTop-k分析を使用 「横長の形状よりも、縦長の形状な方が文字が類似しやすい」という 点において有意差有り 横長:い, つ, ニ, ハ 縦長:$, %, ¥, あ, え, す, そ, ち, ゆ, キ, タ, チ, ヌ, ヒ, ミ, ヨ, 丈, 川, 年, 肉, 言,? 16
仮説の検証 以下の項目では有意差はなかったが、仮説通りの傾向あり • 横方向へのストロークよりも縦方向へのストロークを多く含む 文字の方が類似しやすい (例:「三」よりも「川」が類似しやすい) • 複雑な形状*よりも単純な形状の方が類似しやすい (例:「そ」よりも「キ」が類似しやすい) *方向転換を3回以上する文字 17
形状特徴による類似のしやすさ 非利き手の筆記:細かい筋肉制御が困難 →局所的な特徴を維持できない →カーブやストロークやカーブに関する評価指標は影響小 一方、文字全体の形状や重心といった大局的な特徴は、 微細な運動の制御を必要としない →縦横比や重心に関する評価指標は影響大 18
少数文字セットによる識別の可能性 実用的な類似度判定にはユーザの負担を抑えた設計が必要 →できるだけ少ない文字による推定 Top-1において5文字で正解率100%の識別が可能な文字を調査 →「す、な、ふ、む、川」 これらの文字により、実用レベルの識別精度の達成可能性有り 19
展望 • 考察で得られた5文字による類似度判定により、負担を抑えた フレイルの検出が可能であるのではないか • 2025年、米原市では高齢者を対象に、利き手と非利き手で文字を書 いてもらう、本研究に関連している測定会が行われた →今後、分析結果をフレイルの検出に応用していく予定 20