ペンさく:ペンギン描画型観察支援システムの実地検証とその行動分析

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January 14, 26

スライド概要

水族館や動物園において,ペンギンは数十羽規模で飼育されることが多く,来訪者が個体に着目して観察することは容易ではない.来訪者の興味関心や観察効果を高めるため,我々はペンギンの腹部模様を描画することで個体情報を検索できる観察支援システム「ペンさく」を開発し,その有用性を検証してきた.水族館の一般来訪者を対象とした実証実験より,システムの利用が個体への関心や会話促進などにつながる可能性が明らになった.しかし,これらの知見は実験者による行動観察記録に基づくものであり,利用行動の定量的な分析は十分ではなかった.そこで本研究では,ログデータを取得する機能追加や外国語対応などの改良したうえで,水族館において新たに1週間の実地実験を実施し,システムから収集したログデータに基づいて利用者の行動を詳細に分析した.その結果,同一日の展示前への再来や,複数日にわたる再訪といった行動が観察され,ペンギン個体への継続的な関心が示唆された.

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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各ページのテキスト
1.

ペンさく:ペンギン描画型観察支援システムの 実地検証とその行動分析 2026.1.14-15|HCI216|宮古島未来創造センター 中川由貴 中村聡史 (明治大学) 芦刈治将 板東恵理子 與倉陵太 渡邉果南 岩永七海 (サンシャイン水族館)

2.

背景 02 動物園・水族館は4つの役割を担う 娯楽 • • 動物園への訪問が保全知識や自己効力感, 行動意欲の向上につながる [1][2] 教育 研究 • 動物園体験が自然とのつながりを促進する [3] 個体を識別することがその個体の 保全 共感や保全行動につながる [4] [1] Clayton, S. et al. Public Support for Biodiversity After a Zoo Visit: Environmental Concern, Conservation Knowledge, and Self-Efficacy. Curator, 60(1), 87–100 (2017). [2] McNally, X. et al. A meta-analysis of the effect of visiting zoos and aquariums on visitors’ conservation knowledge, beliefs, and behavior. Conserv. Biol., 39(1), e14237 (2025). [3] Bruni, C. M. et al. The value of zoo experiences for connecting people with nature. Visitor Stud., 11(2), 139–150 (2008). [4] Smith, P., Mann, J. and Marsh, A.: Empathy for wildlife: The importance of the individual, Ambio, Vol. 53, No. 9, pp. 1269–1280 (2024).

3.

ペンさく 腹部模様を 描画 描画から 検索 Nakagawa, Y. and Nakamura, S.: A Drawing-type Observation and Retrieval Method Focusing on the Abdominal Pattern of Penguins, Proceedings of the 35th Australian Computer-Human Interaction Conference, OzCHI ’23, p. 24–32 (2024).

4.

ペンさく 腹部模様を 描画 描画から 検索

5.

先行研究 05 AVI2024, EC2024 WISS2025 大学生を対象とした 水族館での利用実験 水族館の一般来訪者を 対象とした実証実験 多様な ペンギンの記憶 個体の特徴の 同行者との 認識・関心 会話促進 滞在時間の増加

6.

先行研究 06 AVI2024, EC2024 WISS2025 大学生を対象とした 水族館での利用実験 水族館の一般来訪者を 対象とした実証実験 多様な ペンギンの記憶 個体の特徴の 同行者との 認識・関心 会話促進 滞在時間の増加

7.

先行研究 07 AVI2024, EC2024 WISS2025 大学生を対象とした 水族館での利用実験 水族館の一般来訪者を 対象とした実証実験 多様な ペンギンの記憶 個体の特徴の 同行者との 認識・関心 会話促進 滞在時間の増加

8.

先行研究 01 実験者による目視での行動観察の限界 02 システムに興味を示す外国人来訪者 08

9.

先行研究 01 実験者による目視での行動観察の限界 ログデータの取得 02 システムに興味を示す外国人来訪者 多言語対応 09

10.

実験 10 描画 図鑑 アルバム 腹部模様を描画→検索 個体を一覧形式で閲覧 検索した個体を記録・見返す

11.

実験 池袋・サンシャイン水族館での実証実験 期間:2025/10/9-15 (1週間) 方法: • ペンさくの説明とQRコードを記載した掲示を 展示エリアに設置 • 一般来訪者が利用している様子を実験者3人で 観察し,行動メモに記録 11

12.

結果・考察 利用者概要 • 期間中合計 340名 がシステムにアクセス • 23名 が 複数日 にわたり使用 • 122名 が 同日に複数回 アクセス また後で戻ってこよう! 12

13.

結果・考察 利用者概要 • 期間中合計 340名 がシステムにアクセス • 23名 が 複数日 にわたり使用 • 122名 が 同日に複数回 アクセス また後で戻ってこよう! 展示前に戻る・再訪する動機に 13

14.

結果・考察 利用行動 ホーム 描画 検索結果 個体詳細 図鑑 14 アルバム 350 300 250 ア 200 ク セ ス 150 数 100 50 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 (時)

15.

結果・考察 利用行動 ホーム 描画 ← 350 検索結果 営業時間 個体詳細 図鑑 15 アルバム → 300 250 水族館外での利用 ア 200 ク セ ス 150 数 100 50 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 (時)

16.

結果・考察 利用行動 ホーム 描画 検索結果 個体詳細 16 図鑑 アルバム 350 40 300 250 30 ア ク 200 セ ス 150 数 20 100 10 50 0 0 0 2 4 6 8 10 12 14 全ユーザ 16 18 20 22 (時) 0 2 4 6 8 10 12 14 16 複数日ユーザ 18 20 22 (時)

17.

結果・考察 利用行動 ホーム 描画 検索結果 個体詳細 17 図鑑 アルバム 350 40 300 250 30 ア ク 200 セ ス 150 数 20 100 10 50 0 0 0 2 4 6 8 10 12 14 全ユーザ 16 18 20 22 (時) 0 2 4 6 8 10 12 14 16 複数日ユーザ 18 20 22 (時)

18.

結果・考察 利用行動 ホーム 描画 検索結果 個体詳細 18 図鑑 アルバム 350 40 300 250 30 ア ク 200 セ ス 150 数 20 100 10 50 0 0 0 2 4 6 8 10 12 14 全ユーザ 16 18 20 22 (時) 0 2 4 6 8 10 12 14 16 複数日ユーザ 18 20 22 (時)

19.

結果・考察 利用行動 ホーム 描画 検索結果 個体詳細 19 図鑑 アルバム 350 40 300 250 30 ア ク 200 セ ス 150 数 20 100 10 50 0 0 0 2 4 6 8 10 12 14 全ユーザ 16 18 20 22 (時) 0 2 4 6 8 10 12 14 16 複数日ユーザ 18 20 22 (時)

20.

結果・考察 描画・検索行動 • 総検索数428回(平均14.8秒, 5.24 ストローク) • 検索から特定まで至った割合18.2% • 検索しても特定できなかった割合1.4% 20

21.

結果・考察 描画・検索行動 • 総検索数428回(平均14.8秒, 5.24 ストローク) • 検索から特定まで至った割合18.2% • 検索しても特定できなかった割合1.4% 低負荷な描画操作 21

22.

結果・考察 22 描画・検索行動 • 総検索数428回(平均14.8秒, 5.24 ストローク) 低負荷な描画操作 • 検索から特定まで至った割合18.2% 描画 • わからなかった1.4% 検索 特定 この子だった

23.

結果・考察 23 描画・検索行動 • 総検索数428回(平均14.8秒, 5.24 ストローク) 低負荷な描画操作 • 検索から特定まで至った割合18.2% • わからなかった 1.4% 25 検索結果の順位分布 件 数 88 44 1 1 6 4 22 1 11 1112 11 16 112 1 21 26 31 1 36 1 1 41 2 (位)

24.

結果・考察 描画・検索行動 • 総検索数428回(平均14.8秒, 5.24 ストローク) 低負荷な描画操作 • 検索から特定まで至った割合18.2% • 検索しても特定できなかった割合1.4% 正解の多くが1~3位に集中し,描画による識別が有効であった 検索結果画面中心の利用が多く,検索段階で個体特定を促すUI設計が必要 24

25.

結果・考察 行動メモ分析 01 個体に着目した観察 ・特定の個体に着目し,特徴を確認しようとする行動 02 コミュニケーション促進 ・数名で端末を共有して描画 03 ・写真を使った協調的な利用 常連層の利用 ・1年以上継続した利用 名前がわかるようになって嬉しい 25

26.

今後 課題・今後の展望 アクセスや 検索精度が低く 描画への障壁 正解がわからない UIの改善 検索アルゴリズム 常設端末 の改善 長期・複数施設 での実証実験 動物福祉や 教育への影響を調査 26

27.

まとめ 背景|水族館における個体に着目した観察の必要性 提案|ペンギンの模様を描画・検索する観察システム 実験|サンシャイン水族館で実証実験,ログデータ分析 結果|継続的な関心や再訪につながる可能性 今後|長期・複数施設での実証実験・動物福祉への貢献