選択インタフェースにおけるアイテムの遅延表示が選択に及ぼす影響

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November 09, 22

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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1.

選択インタフェースにおける アイテムの遅延表示が 選択に及ぼす影響 木下裕一朗(明治大学3年) 関口祐豊 植木里帆 横山幸大 中村聡史(明治大学) 1

2.

問題 Web上でダークパターンが多く見られる ユーザが意図しない 有害な行動を導くUIデザイン 2

3.

関連研究 • ダークパターンは人気のある Webサイトに多い [Mathurら 2019] • 日本経済新聞の調査で 国内主要100サイト中62サイトで ダークパターンが確認されている Mathur, A., Acar, G., Friedman, J. M., Lucherini, E., Mayer, J., Chetty, M., Narayanan, A.. Dark patterns at scale: Findings from a crawl of 11K shopping websites. 2019, Proceedings of the ACM on Human-Computer Interaction 3, CSCW (2019), p. 1–32. 日本経済新聞, 消費者操る「ダークパターン」 国内サイト 6 割該当, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD0859R0Y1 A100C2000000/, (参照 2022-04-08). 3

4.

ダークパターンの例 ご覧の商品の在庫は 残りわずかです! ユーザに在庫数が少ないことを 知らせて購買を煽る ダークパターン 4

5.

ダークパターンの例 Accept Decline オプションの選択場面において 片方を目立たせて選択を誘導する ダークパターン 5

6.

問題 選択を誘導していないように見える インタフェースによって無意識に 選択行動が誘導されている場合がある 6

7.

研究目的 公平であるように見えるが 選択を誘導するUIの存在と その特性を明らかにする 7

8.

関連研究 文字フォントが選択行動を誘導する [川島ら 2019] 川島拓也, 築舘多藍, 細谷美月, 山浦祐明, 中村聡史. 商品 選択においてフォントがユーザの選択行動に 及ぼす影響の調査. 電子情報通信学会 ヒューマンコミュニケーション基礎 研究会 (HCS). 2019, HCS-23. 8

9.

関連研究 選択肢提示前にプログレスバーを 提示すると選択傾向に偏りが生じる [Yokoyamaら 2021] Yokoyama, K.,Nakamura, S., Yamanaka, S.. Do Animation Direction and Position of Progress Bar Affect Selections?. 18th IFIP TC 13 International Conference on Human-Computer Interaction (INTERACT 2021), 2021, vol. 12936, p. 395-399. 9

10.

背景 • ダークパターンの1つである 誘導型の視覚的干渉に着目 • ネットワークやシステムの問題で 画像が遅れて表示されることが あることに着目 10

11.

背景 11

12.

背景 複数選択肢の中から1つを わずかに遅らせて表示すると ひとの選択行動は誘導される? 12

13.

遅延表示のイメージ 13

14.

仮説 複数選択肢において 1つの選択肢のみ遅延表示したとき 遅延表示したものが選ばれやすい 14

15.

実験概要 • Yahoo!クラウドソーシングを利用 • 15問の質問を提示 • 各質問に対して6択の選択肢から 1つ回答を選んでもらった 15

16.

実験概要 キャベツ キュウリ タマネギ カボチャ ダイコン 16

17.

実験概要 キャベツ キュウリ タマネギ ニンジン カボチャ ダイコン 17

18.

実験概要 • 質問の提示順序,各選択肢の表示位置, 遅延表示する位置はランダム • 遅延表示は15問中5問行った • 遅延時間は0.1,0.2,0.3秒の3つを用意 18

19.

実験概要 遅延時間0.1秒(左上を遅延表示) 19

20.

実験概要 遅延時間0.2秒(左上を遅延表示) 20

21.

実験概要 遅延時間0.3秒(左上を遅延表示) 21

22.

実験手順 ①実験ページにアクセス ②手順と注意事項の確認 ③実験開始 ④15問の質問に回答 ⑤実験終了 22

23.

実験協力者 • 実験は2度実施 1度目:2022年 7月 7~8日 2度目:2022年 9月 28~29日 • 2回ともそれぞれ 男女500名ずつの回答を得た 23

24.

実験協力者 • 不適切回答者を除外 1度目:89名(女性55名,男性34名) 2度目:101名(女性56名,男性45名) • 分析対象 1810名(女性889名,男性921名) 24

25.

分析 選択率・遅延位置 に関して分析を行う 25

26.

実験結果(全体の選択率) 遅延表示した選択肢が 選ばれやすい傾向は見られなかった 選択率(%) 0.1 0.2 0.3 平均 16.54 17.75 16.47 16.92 26

27.

実験結果(選択率) 選択時間が3秒未満のグループ, 3秒以上5秒未満のグループ, 5秒以上のグループに分類 3秒未満 データ数 平均選択時間(秒) 選択率(%) 3秒以上 5秒未満 5秒以上 7,947 10,684 8,519 2.20 3.90 7.66 17.10 16.41 17.41 27

28.

実験結果(選択率) いずれのグループにおいても 遅延表示した選択肢の選択率は 期待値と同程度であった 3秒未満 データ数 平均選択時間(秒) 選択率(%) 3秒以上 5秒未満 5秒以上 7,947 10,684 8,519 2.20 3.90 7.66 17.10 16.41 17.41 28

29.

実験結果(遅延なし) 29

30.

実験結果(遅延あり・3秒未満群) 遅延時間0.1秒 遅延時間0.2秒 遅延時間0.3秒 30

31.

実験結果(遅延あり・3秒未満群) 遅延時間0.1秒 遅延時間0.2秒 遅延時間0.3秒 31

32.

実験結果(遅延あり・3秒未満群) 遅延時間0.1秒のときは 左の列の上が選ばれやすい 32

33.

実験結果(遅延あり・3秒未満群) 遅延時間0.1秒 遅延時間0.2秒 遅延時間0.3秒 33

34.

実験結果(遅延あり・3秒未満群) 遅延時間0.1秒 遅延時間0.2秒 遅延時間0.3秒 34

35.

実験結果(遅延あり・3秒以上5秒未満群) 遅延時間0.1秒 遅延時間0.2秒 遅延時間0.3秒 35

36.

実験結果(遅延あり・5秒以上群) 遅延時間0.1秒 遅延時間0.2秒 遅延時間0.3秒 36

37.

実験結果(遅延あり・5秒以上群) 遅延時間0.1秒 遅延時間0.2秒 遅延時間0.3秒 37

38.

実験結果(遅延あり・5秒以上群) 遅延時間0.1秒のときは 左の列の下が選ばれやすい 左の列の下を遅延表示 38

39.

実験結果(遅延あり・5秒以上群) 遅延時間0.1秒 遅延時間0.2秒 遅延時間0.3秒 39

40.

実験結果(遅延あり・5秒以上群) 遅延時間0.2秒のときは 真ん中の列が選ばれやすい 真ん中の列の下を遅延表示 40

41.

実験結果(遅延あり・5秒以上群) 遅延時間0.1秒 遅延時間0.2秒 遅延時間0.3秒 41

42.

考察(選択率) 全体での遅延表示した選択肢の 選択率は16.92% 「遅れて表示された選択肢が 選ばれやすい」という仮説は 支持されなかった 42

43.

考察(選択率) 選択率が上がるとき 遅延対象の位置に目を向けたときに ちょうど選択肢が表示された 選択率が下がるとき 遅延対象の位置に目を向けたときに 選択肢が表示されていなかった 43

44.

考察(3秒未満群) 短い遅延時間で上のものを遅延表示すると 選択行動が誘導される 遅延時間0.1秒 遅延時間0.2秒 遅延時間0.3秒 44

45.

考察(3秒以上5秒未満群) 遅延表示によって選択行動が 誘導される可能性は低い 遅延時間0.1秒 遅延時間0.2秒 遅延時間0.3秒 45

46.

考察(5秒以上群) 遅延時間に応じて遅延させる位置を変えると 選択行動が誘導できてしまう 遅延時間0.1秒 遅延時間0.2秒 遅延時間0.3秒 46

47.

今後の展望 質問や選択肢の内容,選択肢の数を 再検討して再実験を実施 アイトラッカーを用いた 対面の実験を実施 47

48.

まとめ 研究の目的 • 公平に見えて選択を誘導するUIの存在を明らかにする 背景 • Web上でダークパターンが多く確認されている 実験の目的 • 選択肢の遅延表示が選択行動に及ぼす影響の調査 仮説 • 遅れて表示された選択肢は選ばれやすい 結果 • 全体では遅延表示したものが選ばれやすい傾向はない • 選択時間に応じて遅延させる時間や位置を変えると 選択誘導の効果がある 48