>100 Views
August 02, 26
スライド概要
2026年8月1日(土)に開催されたセミナー「AIをめぐる変化の諸相:オープンなデータ、知識、シビックテック関連領域から」、別名「夏のオープンデータまつり2026」での発表資料です。
https://od-talk-ai.peatix.com
伊藤昌毅 東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 准教授。ITによる交通の高度化を研究しています。標準的なバス情報フォーマット広め隊/日本バス情報協会
2026年8月1日 東京都港区 国際大学GLOCOM 夏のオープンデータまつり AIをめぐる変化の諸相:オープンなデータ、知識、シビックテック関連領域から By オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン(OKJP) 生成AIは公共交通オープンデータに 何をもたらすか 東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 日本バス情報協会 伊藤昌毅
GTFS形式による公共交通オープンデータ • 世界で広く使われる形式(GTFS-JPも同等) • 乗換案内に必要な情報(バス停・駅+路線+時刻表+運賃)をまとめて格納 したファイル形式 • リアルタイム情報を表すGTFS-RT バス停/駅+路線 時刻 運賃
17年7月 17年9月 17年11月 18年1月 18年3月 18年5月 18年7月 18年9月 18年11月 19年1月 19年3月 19年5月 19年7月 19年9月 19年11月 20年1月 20年3月 20年5月 20年7月 20年9月 20年11月 21年1月 21年3月 21年5月 21年7月 21年9月 21年11月 22年1月 22年3月 22年5月 22年7月 22年9月 22年11月 23年1月 23年3月 23年5月 23年7月 23年9月 23年11月 24年1月 24年3月 24年5月 24年7月 24年9月 24年11月 25年1月 25年3月 25年5月 25年7月 25年9月 25年11月 オープンデータ提供事業者数の推移 (2017〜) オープンデータ提供事業者数 800 700 600 500 400 300 200 100 0
シビックテックが支える公共交通オープンデータ 〜公共交通オープンデータ最前線2026 〜 • ITとGTFS/公共交通に関する 様々な取り組みを集める恒例 のイベント • GTFS活用など先進事例を共有 – バス会社職員がバイブコーディング で可視化 – 学生によるデジタルサイネージ – 乗車ミッションラリー『公共交通に GO!』 • 次回は2027年3月? – まだ先ですが、応募作品があればぜ ひご登壇ください https://www.busdata.or.jp/odd2026_shiryo/
GTFS形式の公共交通オープンデータ整備・活用が進行中 バス業界において「標準化」「オープン化」が同時に進行 路線 時刻 運賃 リアルタイム GTFS: 国際的な標準フォーマット(標準的なバス情報フォーマット・GTFS-JPと互換) 乗換案内・MaaS サイネージ・印刷物等 交通分析・計画 6
ここ10年でいちばん便利になった公共交通はバス by 勝間和代氏 • バスそのものは変わってないが、Google Maps+交 通系ICカードで迷わず緊張せず乗れるようになった – これまではバス停がわからない、時刻表が分からない、お金の用 意が大変だった • Google Mapsで検索するとバス路線がけっこう出て くる。バスがある限りバスを選んでいる – – – – 遅れても、バス停に表示があるしスマホで時間を潰せる どこで降りるかもGoogle Mapsではっきりわかる 完璧な冷暖房がある 都内の駐車場代は高い • タクシーや地下鉄に乗る人にはバスも乗って欲しい • • 徹底的な合理的思考で知られる勝間氏がバス推し! バスの利便性に気付いていない人が多いとの認識 https://www.youtube.com/watch?v=S9PIYSZMn3Y
公共交通オープンデータのインパクト 交通事業者 自身の 業務効率化・高度化 利用者 の利便性 都市・地域 の交通政策 国(運輸局)の業務効率化 加藤博和先生資料 http://orient.genv.nagoya-u.ac.jp/kurashi1810-HirokazuKato-l.pdf
生成AIのインパクト 4. 交通事業者 の現場はどう なる? 5. オープンデー タ・オープンコ ミュニティはどう なる? 交通事業者 自身の 業務効率化・高度化 利用者 の利便性 都市・地域 の交通政策 国(運輸局)の業務効率化 1. 公共交通 利用者はど う変わる? 2. 地域におけ る公共交通の 形はどう変わ る? 3. 交通政策・ 公共の関わり 方はどう変わ る? 加藤博和先生資料 http://orient.genv.nagoya-u.ac.jp/kurashi1810-HirokazuKato-l.pdf
1. AIエージェントの時代の 「交通」はどのような サービスになるか?
現状: 経路検索アプリとの対話で意思決定 • 明確な目的地や日時があるとは限らない(交通は派生需要) – ○○を買いたいけどどこに行けばいい? – 休日のレジャーは? • 選択肢となる交通手段: これらを組み合わせる – 飛行機、鉄道、バス、タクシー、自家用車、自転車、キックボード、徒歩。。。 • 多くの場合、当初から明確な目的や評価軸があったわけではな く、候補や条件が示されることで自分の「希望」が遡及的に形 成される、というプロセス – 学術、行政で「交通」を考える人とサービスとして交通を考える人の違い
交通手段の決定要因は実は多様 → AIがより 豊富なコンテクストを把握し移動計画に反映 • 現在の経路検索エンジンで選べる基準 – 早い、安い、乗換が少ない – 会社支給の定期券が使える • これ以外にも – 窓から外が見える、景色がいい – 乗換の時に歩きが少ない、階段がない – 途中いつでも休める – 会員になっている、ポイントがたまる – 午前中も地下鉄で移動しており一日乗車券が使える
交通アプリを操作するのは人からAIエージェントへ • x
乗換案内アプリの存在意義 • 正確なデータに基づく決定論的な経路検索を高速に行う • → AIに選択肢と判断材料を提供 – おそらくLLMベースのAI自身が最短経路検索を行うのは技術的に難しい • 交通とのタッチポイントが更に移るか – 事業者が提供する施設や情報→交通アプリ→AI • 下火になったMaaSをAIに向けて再始動出来るか?
2. AIの時代における 公共交通の意味や形
公共交通の在り方 Before/After • 複数人が乗車出来る車両を用意し(電車・バス・タクシー) • 予め定めた路線や時刻で走らせる(定時定路線) • これを地域に根付いた企業や組織が担う • 道路や車両を最大限活かすために、複数人が「乗合」で効率よ く移動する世界は変わらないはず • IT & AIによってより柔軟なシェアの形を探る
公共交通とは: モビリティ提供に必要な車両・ エネルギー・空間などを共有し有効活用 • 多くの人の要求をマッチングして限られたリソースを有効に活用す るのは、シェアリングエコノミーと同じ • ITを使えばもっとうまく出来るはず 出典: i-SUSTAIN https://www.i-sustain.com/projects
「定時定路線」はどのように残るか? • バス・鉄道がAIベースの自動運行になった時に、時刻表は予め 定めるものではなく、需要に応じて動的に生成するものになる だろう • 定時定路線とオンデマンドの役割分担 – 幹線部分: 当面は定時定路線 – 末端: デマンドへの移行 • どこに境があるかはコストや技術制約などにより試行錯誤が必 要
日本の公共交通事業者は変わるのか? • 当面必要なのは運行管理の高度化・自動化 – AIに見つけてもらうための情報提供の強化 • 労務管理中心の組織から情報中心に変われるか – とはいえ安全な運行を実現するための高品質な現場オペレーションは常に最重要 • 自動運転を導入し、定時定路線からデマンド主体の運行に切り 替わることが出来るか
3. 「交通政策」はどうな る?
需要と供給をマッチングするメカニズムの変化 • 歴史的: 長期視点で供給の調整 – 交通政策として、地域の交通需要をアンケート調査などでデータ化、道路建設などの根拠に していた(パーソントリップ調査、4段階推定法など) • 現在: その場その時のマッチングの高度化 – カーナビ、スマホアプリなどが最適な移動を案内 – Uber・カーシェアリング: 車両、ドライバも含めたマッチング • AIの時代: – AIエージェントによりブラックボックス化 – 個人のAIエージェントだけでなく、エージェント同士が話し合う世界もありうるかも • 例: 道路公団エージェントに通行権を要求、しかし救急車が通るため「15分後に」との返答、あえてそれを ユーザに伝えず「最適経路」を案内 • 交通データの多くは、需給に関わるデータ – GTFS: 公共交通サービスの供給データ
政策(政府・行政・政治)の機能はどこに残るか • 許認可、安全の担保 • 市場の補完、過剰供給の制限 • 地域交通のビジョン策定・共有 • 地域の縮退、路線廃止のインパクトの緩和 • 都市計画、コンパクトシティなど長期計画
データに基づいた政策という方向性の到達点? オペレーションを改善 • オペレーションのIT – 自動運転・MaaS・AIオンデマンド交通・配車アプリ – 地域交通サービスの運行を効率化、高度化し信頼性を高める ために使われるIT – 主に交通事業者の現場に導入され、従業員や利用者が日常的 に触れることになる • 課題発見・解決のIT データを利用 – データ分析・EBPM – 地域交通が直面している課題を発見し、適切な解決方法を導 くためのIT – 為政者、行政官、研究者などが扱い、適切な施策立案や実施 結果の評価に繋げる
Claude Code による 交通データ分析の実例 • パーソントリップ調査データにAI がアクセスできる環境を構築し (MCP)、「論文になりそうな交 通現象を見つけて」と指示 • 5つのテーマを提案してきたので、 その1つ目について土木学会形式 で論文を書くよう指示
• x
4. 交通事業者の現場は どうなる?
非効率なまま疲弊する現場という構造が 根本的に解決されず • 「独立採算の民間企業が競争によってよい公共交通サービスを 提供」というフィクションを前提とした交通政策 – 「赤字補助」で事業者を延命 • 技術に対する投資が事業仕分け以降本格的・体系的には行われ ず、断片的に繰り返される一過性の予算 – MaaS、AIオンデマンド、DX、GTFS、グリスロ、交通空白、、、 • 公的支援も運賃値上げも出来ず、最低レベルの賃金と社会的な 敬意の欠如の結果としての運転手不足
日本の公共交通システムは2000年頃以降 ITシステムへの投資が十分に行われていない PTPS(公共車両優先システム) Bus Diagram Support System (BDSS) 構造計画研究所 バスICカード(山梨交通) 2000年〜 公共交通情報データ標準 (2001年〜2006年)
ITの本質が計算装置から知能へ変遷 • 認識のアップデートと立ち位置の再確認が必要 – 世の中的にはAIの時代の入口 – 公共交通業界の課題は最先端だけではない 1960〜 2000〜 2030〜 高速な計算装置 データとネットワーク AI・エージェント • 機械化、自動化、高機能化 • バッチ処理 • OA化・オフコン • モバイル・ユビキタス・スマホ • ビッグデータ • MaaS・DX • 制御可能な知能 • AGI・シンギュラリティ • ???
• x 生成AIを使って GTFS-JPを活用 するプログラム を考えてみた
5. オープンデータ・オープ ンコミュニティはどうなる?
これまでのオープンコミュニティの貢献 • 「標準的なバス情報フォーマット広め隊」など – データ整備のツール開発 – データ作成ノウハウの共有・深化 – データ整備の動機付け・全国行脚 – 行政・バス事業者などの支援 • 既存の事業者・自治体の人員・スキルセット・予算の隙間を埋 めて何とかする活動
ChatGPTでGTFSの作成・管理・活用が変わる • 最近のアップデートでChatGPTがGTFSを操作可能に • AIに頼むだけでGTFSの簡単な(複雑でも)操作が可能に – GTFSの編集: 言葉で伝えるだけで昨年版から今年版を作成 – データバリデーション: 型式だけでなく内容まで見たデータのチェック – 路線図作成: データから路線図の描写 • GTFSに基づいた公共交通案内を一瞬で – デジタルサイネージ、印刷用時刻表 • コミュニティでAI活用の方法をまさに探索中(ツール開発)
GTFS差分レポート • 新旧のGTFSから「ダイヤ 改正」の実態を人にわか り易い形で提示 • 伊藤によるバイブコー ディングの練習・・ – diff.gtfs.jp
データの標準形式は依然として必要か? • 標準形式: 本来複雑で非定型的な人間社会の制度や事象を特 定の機械処理可能な型式の中に押し込んだ知恵の結晶 – GTFSを見ていても、現実の複雑さを十分なレベルで汲み上げ誰でも解釈可能な 形に収める設計上の工夫が詰まっている • AIの力: – PDF、非定型な文書なども人と同等以上に解釈し読み取れる • 一般向け時刻表からGTFSと同等以上の情報を生成可能 – データに残らない文脈へも想像が働く • 盆暮れ正月、学校休業日、運転手不足による減便、などのデータの背景も同時に想像できる
みんなが自由に多様に作るためには 確かな土台が必要なのではないか? • 信頼出来るデータ基盤としてのGTFS • データ活用の方法論を共有する土台としてのGTFS • とはいえ、公共交通政策が十分に機能しておらず、イノベー ションがシビックテック的アプローチに依存しているのは問題 だと思います