【論文紹介】キラキラネームとは何か:キラキラネームの定義とその構成要素(荻原, 2022, 人間環境学研究)

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September 17, 23

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本稿は、academist Journalに2023年9月5日付で掲載された寄稿記事(https://academist-cf.com/journal/?p=16840)を電子ファイル形式にしたもので、内容は同一です。

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青山学院大学 教育人間科学部 心理学科 個人ウェブサイト:https://sites.google.com/site/yujiogiharaweb/home Google Scholar:https://scholar.google.co.jp/citations?user=QOX4MokAAAAJ&hl=ja&oi=ao

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Academist Journal 1 / 4 キラキラネームとは何か:キラキラネームの定義とその構成要素 1 荻原祐二(青山学院大学) 本稿では、キラキラネームの定義とその構成要素を概観した論文(荻原, 2022, 人間環境学研究, https://doi.org/10.4189/shes.20.71)を、当該領域外の方にも理解していただけるように紹介していま す。紹介している論文はオープンアクセスですので、どなたでもお読みいただけます。本稿では、 「名前」と表記した際には、氏名の「名」(ファーストネーム)を意味しています。 概要 「キラキラネーム」という言葉が、広く一般的に用いられていますが、言葉の定義が曖昧であ り、具体的に何を意味しているのか明らかではありません。キラキラネームの定義が曖昧である ことが、世間でも学術界においても、誤解や不十分な理解、不要な論争を招いたり、適切なコミ ュニケーションや生産的な議論、科学的知見の蓄積を妨げたりしていました。そこで本論文では、 キラキラネームの定義とその構成要素について、主要な辞典・事典を用いて整理しました。その 結果、一貫して見られた要素は、 「頻度が低い名前」のみでした。さらに、すべてではありません が複数の定義に共通して見られた要素は、 「伝統から逸脱した名前」と「読むことが難しい名前」 、 「肯定的または中立的な文脈で用いられる名前」でした。本論文は、これまで曖昧に理解され、 散逸的に議論されていた概念を明確化し、共有可能な基礎的知見を提供しています。 本稿は、academist Journal に 2023 年 9 月 5 日付で掲載された寄稿記事(https://academistcf.com/journal/?p=16840)を電子ファイル形式にしたもので、内容は同一です。 1 🄫 2023 荻原祐二

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Academist Journal 2 / 4 研究の背景:キラキラネームの定義の曖昧さ 「キラキラネーム(きらきらネーム)」という言葉が、広く用いられています。新聞や雑誌、テ レビやラジオなどのマスメディアや、SNS やブログ、ニュースサイトなどのインターネットメデ ィアにおいて、しばしば使用されています。個性的な名前が増加している( https://academistcf.com/journal/?p=16475; Ogihara & Ito, 2022)こともあり、そうした個性的な名前をおおよそ意味 するものとして使用されているようです(個性的な名前の特徴やその経時的変化などについては、 荻原, 2023 を参照)。 しかし、キラキラネームという言葉の定義が曖昧であり、具体的に何を意味しているのか明ら かではありません。定義は状況や個人によって異なっており、想定している具体的な名前も異な っています。例えば、広く「個性的な名前」として用いている人もいれば、 「正しく読むことが難 しい珍しい名前」、 「人名としては不適切な非常識な珍名」、 「当て字を使った非常に個性的な名前」 といったニュアンスで用いている人もいます。キラキラネームの定義が曖昧であることが、世間 でも学術界においても、誤解や不十分な理解、不要な論争を招いたり、適切なコミュニケーショ ンや生産的な議論、科学的知見の蓄積を妨げたりしていました。そこで本論文では、キラキラネ ームの定義とその構成要素について、整理しました。 方法:主要な辞典・事典を分析 キラキラネームの定義とその構成要素について検討するため、既に定義を与えている主要な辞 典・事典を調査しました。国語辞典・現代用語辞典(事典) ・辞典(事典)データベース・インタ ーネットメディアなど、さまざまな辞典・事典を調査し、定義を収集して、その構成概念を検討 しました。最終的に、大辞林・大辞泉・イミダスなど、掲載が確認された 6 つの媒体における定 義を分析しました。 類似概念(「DQN ネーム」)と表記の違い(例: 「きらきらネーム」)についても検討しましたが、 その結果については、論文をご覧ください。 結果:キラキラネームの定義とその構成要素 その結果、掲載が確認された 6 つの定義の内、すべてに一貫して見られた要素は、 「頻度が低い 名前」のみでした。よってキラキラネームの広義は、 「頻度が低い名前」と言えます。キラキラネ ームであるためには、低頻度な名前であることが必須の条件であることが明らかとなりました。 さらに、すべてではないが複数の定義に共通して見られた要素は、 「伝統から逸脱した名前」と 「読むことが難しい名前」、 「肯定的または中立的な文脈で用いられる名前」の 3 つでした。キラ キラネームは低頻度で珍しい名前であることは広く共有されているようですが、それがどのよう に低頻度であるのか、そしてその名前が与えうる影響や周囲からの評価をどのように想定してい るかという使用文脈については、認識が共有されている訳ではないと言えます。 これらの要素をすべて含めた場合の狭義は、 「漢字が用いられている場合に読むことが難しく、 伝統から逸脱した、頻度が低い名前で、肯定的または中立的な文脈で用いられる名前」となりま す。 🄫 2023 荻原祐二

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Academist Journal 3 / 4 考察:まとめと注意 本論文は、これまで曖昧に理解され、散逸的に議論されていた概念を明確化し、共有可能な基 礎的知見を提供した点で意義があります。本論文の目的は、あくまで定義を整理して理解するこ とであり、定義をひとつに制限して、それを強要することではありません。 キラキラネームは、広義では「頻度が低い名前」と定義されていました。ただし、キラキラネ ームを「頻度が低い名前」という広義でのみ使用し、既に説明したような構成要素を付加しない 場合、敢えてキラキラネームという抽象的なラベルを付けて呼ぶ必要があるのかは疑問です。 「頻 度が低い名前」や「珍しい名前」、 「個性的な名前」、 「一風変わった名前」などと直接意味を説明 した方が分かりやすく、誤解を与えることもありません。 狭義では「頻度が低い名前」に加えて「伝統から逸脱した名前」と「読むことが難しい名前」 、 「肯定的または中立的な文脈で用いられる名前」の 3 つの要素を含む名前として定義されていま した。同時に、代表的な辞典や事典においてさえ、定義に分散があり、含まれる構成要素にも違 いがあることを示していました。よって、キラキラネームに関して主張や議論を行う際には、キ ラキラネームの定義、少なくともキラキラネームが何を意味しているのかを簡潔にでも説明して から、論を進めるべきです。その際に、代表的な辞典・事典の定義をまとめ、どのような要素に よって構成されることが多いのかをまとめた本論文が役立てば幸いです。 参考文献 荻 原 祐 二 (2022). キ ラ キ ラ ネ ー ム の 定 義 と そ の 構 成 要 素 人 間 環 境 学 研 究 , 20, 71-79. https://doi.org/10.4189/shes.20.71 荻原祐二 (2023). 人名の読み方とその不確定性:実証研究の概観 日本語学, 42(2), 142-155. https://www.researchgate.net/publication/371159640_renmingnodumifangtosonobuquedingxingshizhe ngyanjiunogaiguan_Reading_of_names_and_its_uncertainty_A_review_of_empirical_studies Ogihara, Y., & Ito, A. (2022). Unique names increased in Japan over 40 years: Baby names published in municipality newsletters show a rise in individualism, 1979-2018. Current Research in Ecological and Social Psychology, 3, 100046. https://doi.org/10.1016/j.cresp.2022.100046 この記事を書いた人 荻原祐二 青山学院大学 教育人間科学部 准教授。京都大学 教育学研究科 博士 後期課程修了。博士(教育学)。日本学術振興会 特別研究員 PD、カリ フォルニア大学ロサンゼルス校 心理学部 研究員、東京理科大学 教養 教育研究院 助教を経て現職。専門は社会心理学・文化心理学だが、分 野横断的なアプローチを行っている。社会・文化と人間の相互構成過程 に興味があり、近年は社会・文化の維持と変容に関する研究を進めている。Society for Personality and Social Psychology(アメリカ人格社会心理学会) Student Poster Award 受賞(2015 年)、日本心 理学会 国際賞奨励賞 受賞(2022 年) 。 🄫 2023 荻原祐二

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Academist Journal 4 / 4 ウェブページ:https://sites.google.com/site/yujiogiharaweb/home 🄫 2023 荻原祐二