入試問題解説 第 16 回:複素数の方程式と図形 2017 東 北 大 理 系 前 期 大 問 5
入試問題解説 問題 ®; ¯; ° を複素数とし, zz + ®z + ¯z + ° = 0 ÝÝ(¤) を満たす複素数 z を考える。以下の問いに答えよ。 (1) z は (® ¡ ¯)z ¡ (® ¡ ¯)z + ° ¡ ° = 0 を満たすことを示せ。 (2) j®j = j¯j Ë 0 と仮定し,また ° は負の実数であると仮定する。このとき,(¤) を満たす z がちょうど 2 個あるための必要十分条件を ®; ¯ を用いて表せ。 (2017 東北大学・前期理系 大問 5) ■ 本問の学習テーマ・目的 共役をとった式と比較して条件を整理し,円と直線の共有点として解の個数を調べます。 係数が 0 になる場合を区別し,変形後の条件が元の方程式と同値であることまで確認し ます。解を具体的に求めずに個数を決めるため,式変形と図形の性質をどう組み合わせ るかを学びます。 指針 / アプローチ ▼ 共役をとって差を作る ▼ 係数が消える場合を分ける ▼ 円と直線で個数を決める zz は実数です。共役をとった式 との差から,この項を消して (1) ® = ¯ なら平方完成します。そ れ以外では (1) と絶対値の条件で の式を導きます。 一次の項を消します。 原点中心の円と原点を通る直線 に帰着させます。逆も確認し,共 有点の個数を解の個数に結び付け ます。 (1) の式に共役が現れることから,(¤) の共役をとって差を作り,zz を消します。(2) では ° が実数なので,(1) の定数項も消えます。 そこで ± = ® ¡ ¯ とおきます。± = 0 では (1) は z を制限しないので,元の式に戻ります。 ± Ë 0 では,(1) と j®j = j¯j から ®z + ¯z = 0 を示すことを目指します。 一次の項が消えると,(¤) は原点中心の円を表します。一方, Im (1) の ±z = ±z は実数条件であり,原点を通る直線を表し z0 ます。 ° < 0 より円の半径は正なので,共有点は 2 個です。ただし, (1) は必要条件として導いた式であり,この 2 点が (¤) を満 たすことも確かめます。 Re O ¡z0 ± Ë 0 の場合の概形 --- 1 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 解答 (1) (¤) の両辺の共役をとると, zz + ¯z + ® z + ° = 0 である。(¤) からこの式を引くと, (® ¡ ¯)z ¡ (® ¡ ¯)z + ° ¡ ° = 0 となるので,示された。(*1) (*1) 積の共役は,各因 数の共役の積です。 (2) zz = zz = zz を使い ± = ® ¡ ¯ とおく。° は実数なので,(1) より ±z = ± z ます。 ÝÝ ① である。まず,± = 0 のときは ¯ = ® であるから,(¤) は jz + ®j2 = j®j2 ¡ ° と同値である。j®j2 ¡ ° > 0 より,これは中心が ¡®,半径が D は無数にある。(*2) j®j2 ¡ ° の円を表すので,解 (*2) 平方完成では jz + ®j2 = (z + ®)(z + ®) と展開 次に,± Ë 0 のときを考える。①と j®j = j¯j より, ±(®z + ¯z) = (®± + ¯±)z = (j®j2 ¡ j¯j2 )z = 0 して係数を確かめます。 であり,®z + ¯z = 0 となる。したがって,(¤) より jzj2 = ¡° ÝÝ ② である。逆に,①,②を満たす z に対しても上の計算が成り立ち,®z + ¯z = 0 となるので, (¤) を満たす。よって,(¤) は①,②の連立と同値である。(*3) (*3) 必要条件を満たす ここで,± = u + vi,z = x + yi(u; v; x; y は実数)とおくと,①は vx + uy = 0 と同値 だけでは,元の方程式 の解とは限りません。 逆向きにも一次の項が 0 になることを確認し ます。 である。± Ë 0 より u; v は同時に 0 ではないので,これは原点を通る直線を表す。また,② は原点を中心とする半径 うど 2 個である。 C ¡ ° > 0 の円を表す。直線は円の中心を通るので,共有点はちょ 以上より,求める必要十分条件は ® Ë ¯ である。 答案記載上の注意点 ▼ ポイント 1:係数が 0 になる場合を,割り算の前に分ける ® ¡ ¯ で割る前に,その値が 0 の場合を調べます。この場合,(1) の式は 0 = 0 となります が,元の方程式まで恒等的に成り立つわけではありません。(¤) に戻って平方完成し,正の半 径を持つ円を表すことから解が無数にあると述べます。 ▼ ポイント 2:二つの条件が元の方程式と同値であることを書く (¤) から直線と円の条件を導いただけでは,解が高々 2 個であることまでしか示せません。逆 に,その共有点では一次の項が 0 になり,zz + ° = 0 も成り立つことを確認します。同値性 を述べてから,共有点の個数で結論を出します。 --- 2 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 ▼ ポイント 3:直線と円が,必ず 2 点で交わる根拠を添える 一般の直線と円の共有点は 0 個や 1 個の場合もあります。本問では直線が円の中心を通り,円 の半径が正であることが決め手になります。また,vx + uy = 0 を直線と判断する際には, u; v が同時に 0 ではないことも明記します。 解説 1. 共役をとった式と比べると,何が分かるか zz は jzj2 なので実数です。したがって,(¤) の共役をとってもこの項は変わりません。共役 をとった式との差には一次の項と定数項だけが残ります。(1) は,二次の項を消して,解の満 たす条件を一つ取り出す誘導です。 さらに,(2) では ° が実数なので定数項も消えます。± = ® ¡ ¯ とおけば,残る条件は ±z = ±z,すなわち ±z が実数であることです。複素数がその共役と等しいという形は,実数 条件として読み替えると意味が明確になります。(*4) (*4) w = s + ti とお t とも表せます。実数 t が変化すると,点 z ± は原点を通る一定方向の直線全体を動きます。一方,± = 0 ではすべての z がこの条件を満 けば,w = w は t = 0 と同値です。基 ± Ë 0 のときは,±z = t(t は実数)より z = たします。式の見た目だけで直線と判断せず,係数によって条件の意味が変わることに注意し 本的な実数条件を利用 しています。 ましょう。 2. 絶対値が等しいという条件を,どこで使うか (1) で直線の条件が分かっても,元の方程式には ®z + ¯z が残ります。この部分を整理する ために j®j = j¯j を使います。±z = ± z に合わせて,一次の項全体に ± を掛けると,z の項 を z の項にそろえられます。 その係数は ®± + ¯± であり,± = ® ¡ ¯ を戻すと ®(® ¡ ¯) + ¯(® ¡ ¯) = j®j2 ¡ j¯j2 = 0 となります。この計算によって,± Ë 0 なら一次の項全体が 0 と分かります。絶対値が等しい という条件によって,元の式が原点中心の円を表す形になります。(*5) (*5) j®j = j¯j だけか ここで ®z + ¯z = 0 を最初から仮定してはいけません。(¤) と ° が実数であることから分か ら®=¯や®=¯と はいえません。積 ®® の形で利用します。 るのは,まずこの一次の項が実数であることまでです。(1) と絶対値の条件を組み合わせ,さ らに ± Ë 0 を使って初めて 0 に定まります。 3. 解の個数を求めるために,解そのものは必要か 本問では,円と直線の共有点を具体的に計算する必要はありません。直線は原点を通り,円は 原点を中心とする正の半径の円なので,共有点は直径の両端に当たる 2 点です。ただし,図形 を使わず,実数の方程式で個数を確かめることもできます。 ±z が実数であることから z = t (t は実数)とおくと,jzj2 = ¡° は ± t2 = ¡°; j±j2 すなわち t2 = ¡°j±j2 となります。右辺は正なので,t は異なる 2 値をとります。± Ë 0 だから,対応する z = t ± も異なる 2 個です。この確認は,図形を用いた解答の代わりにもなります。(*6) --- 3 --- (*6) 正負の二つの t © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止 に対する解は互いに符 号が反対になります。 図では,原点に関して 対称な 2 点に対応し
入試問題解説 ° < 0 という条件も,ここで役割がはっきりします。± Ë 0 の場合に ° = 0 なら円が原点 1 点になり,解は z = 0 の 1 個です。° > 0 なら jzj2 = ¡° を満たす複素数はありません。負 という条件は,異なる 2 個の解を保証しています。 4. 係数が消える場合は,元の方程式に戻る ® = ¯ の場合は,(1) から新たな制限が加わりません。このとき,元の式の一次の項は ®z + ® z となり,二つの項が互いに共役なので常に実数です。そこで,zz とまとめて平方完 成します。 jz + ®j2 = j®j2 ¡ ° は,中心が ¡® の円です。中心の符号だ Im けでなく,共役の有無も確認しましょう。jz + ®j2 とすると, z と z の係数が入れ替わってしまいます。 r 2 2 右図では,中心を P,半径を r としています。r = j®j ¡° > j®j2 なので,r > OP であり,原点は円の内部にあります。 P Re O したがって,円が 1 点に縮むことはなく,円周上のすべての P(¡®) D r = j®j2 ¡ ° 点が解となります。 本問の分岐は,直線が円に接するかどうかではありません。® = ¯ では直線の条件そのものが なくなり,解全体が円になります。この違いを押さえておきましょう。 ■ 復習のポイント 本問では,下記のポイントを重点的に復習しましょう。 ★★★★★ 共役の利用:共役をとった式との差から,実数である項を消します ★★★★★ 場合分け:係数が 0 になる場合を分けてから,割り算をします ★★★★★ 誘導と条件の併用:(1) と絶対値の条件で,一次の項を 0 にします ★★★★★ 同値性の確認:変形後の条件から元の方程式も成り立つと示します ★★★★☆ 個数の判断:円の半径と直線の位置関係から,共有点の個数を決めます --- 4 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止