入試問題解説 第 15 回:正 八 面 体 の 切 断 2018 阪 大 理 系 大 問 4
入試問題解説 問題 A 座 標 空 間 に 6 点 A(0; 0; 1),B(1; 0; 0),C(0; 1; 0), D(¡1; 0; 0),E(0; ¡1; 0),F(0; 0; ¡1) を頂点とする正 八面体 ABCDEF がある。s; t を 0 < s < 1,0 < t < 1 を C D B 満たす実数とする。線分 AB,AC をそれぞれ 1 ¡ s : s に内 E 分する点を P,Q とし,線分 FD,FE をそれぞれ 1 ¡ t : t に内分する点を R,S とする。 F (1) 4 点 P,Q,R,S が同一平面上にあることを示せ。 (2) 線分 PQ の中点を L とし,線分 RS の中点を M とする。s; t が 0 < s < 1, 0 < t < 1 の範囲を動くとき,線分 LM の長さの最小値 m を求めよ。 (3) 正八面体 ABCDEF の 4 点 P,Q,R,S を通る平面による切り口の面積を X と する。線分 LM の長さが (2) の値 m となるとき,X を最大とするような s; t の値 と,そのときの X の値を求めよ。 (2018 大阪大学・前期理系 大問 4) ■ 本問の学習テーマ・目的 本問では,空間図形の条件を,平行関係,中点の動く範囲,切り口の形の順に整理しま す。座標計算で求めた条件が図形のどの性質を表しているかを確かめ,次の設問に利用 します。 指針 / アプローチ ▼ 平行な 2 直線を作る 内分比が等しいことから PQ Í RS を示し,4 点を含む平面を定 めます。 ▼ 最小となる条件を残す 2 LM を s + t の式に整理します。 最小値とともに,等号の成立条件 を求めます。 ▼ 切り口を台形に分ける 残る二つの頂点を確定します。平 面 z = 0 との交線で上下に分け, 平行な辺と高さを使います。 (1) では,異なる平行な 2 直線が一つの平面に含まれることを利用します。内分比が等しいの で,三角形 ABC,FDE の相似から PQ Í BC,RS Í DE です。これと BC Í DE を組み合 わせれば,4 点を通る平面の方程式を作らずに示せます。 A 原点を O,BC,DE の中点をそれぞれ G,H とします。相 似より,L は線分 AG 上,M は線分 FH 上を動きます。こ の 2 線分は平行で,同じ平面 x = y に含まれます。つまり, (2) は平面上の距離の問題としても考えられます。 座標計算では,距離の平方を s + t の式に整理します。(3) O H L G M に備え,最小値だけでなく,等号が成り立つ s; t の条件も残 F しておきましょう。 LM が最小となる場合の一例 --- 1 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 (3) では,四角形 PQRS を切り口全体と思い込まないことが大切です。(2) の条件を使って切 断面を表すと,辺 CD,BE とも交わることが分かります。その交点を U,V とすれば,切り 口は六角形 PQURSV です。PQ Í UV Í RS に着目し,UV で上下二つの台形に分けます。 底辺と高さが分かれば,6 頂点の座標から一度に面積を求める必要はありません。 解答 (1) AP : PB = AQ : QC = 1 ¡ s : s より,三角形 ABC において PQ Í BC である。同様 ¡! ¡! に,RS Í DE である。また,BC = (¡1; 1; 0),DE = (1; ¡1; 0) より BC Í DE なので, PQ Í RS である。(*1) (*1) 内分比は同じ頂点 直線 PQ 上では z = s > 0,直線 RS 上では z = ¡t < 0 であるから,これらは異なる平行 からの順序をそろえて 使います。2 本の直線 が異なることも確認し ます。 な直線である。よって,4 点 P,Q,R,S は同一平面上にある。 (2) 内分点の座標は P(1 ¡ s; 0; s),Q(0; 1 ¡ s; s),R(t ¡ 1; 0; ¡t),S(0; t ¡ 1; ¡t) である。 したがって,中点の座標は L # 1¡s 1¡s t¡1 t¡1 ; ; s;,M # ; ; ¡t; となるので,(*2) 2 2 2 2 (2 ¡ s ¡ t)2 LM = + (s + t)2 2 2 2 4 3 #s + t ¡ ; + = 2 3 3 4 2 2 よって,LM ≧ であり,等号は s + t = のときに成り立つ。この条件は,例えば 3 3 1 のときに満たされる。したがって, s=t= 3 B 2 3 2 m= ; LM = m となる条件は s + t = ÝÝ ① 3 3 2 である。(*3) (*2) x 座標の差と y 座標の差が等しいこと を利用します。展開す る前に s + t でまとめ ます。 (*3) 最小値の実現を確 かめるための一例であ り,s = t = (3) 以下,①が成り立つとする。このとき t = 座標はすべて 2 2 ¡ s,0 < s < である。4 点 P,Q,R,S の 3 3 x + y ¡ 2z = 1 ¡ 3s るという意味ではあり ません。 ÝÝ ② を満たすので,これが切断面の方程式である。(*4) (*4) R を代入した左 ¡1 < 1 ¡ 3s < 1 であり,各頂点における x + y ¡ 2z の値は次のとおりである。 頂点 A D; E B; C F x + y ¡ 2z ¡2 ¡1 1 2 交点をそれぞれ U,V とすると,切り口は六角形 PQURSV である。 辺 CD 上では z = 0,y ¡ x = 1,辺 BE 上では z = 0,x ¡ y = 1 である。これらと② より, 3s 3s ;1 ¡ ; 0; ; 2 2 3s 3s V #1 ¡ ;¡ ; 0; 2 2 B ¡! となる。よって,UV = (1; ¡1; 0) であり,UV = 2,PQ Í UV Í RS である。 --- 2 --- 辺は 3t ¡ 1 です。 s+t = 2 より右辺と 3 一致します。 したがって,切断面は辺 AB,AC,CD,DF,FE,EB のみと交わる。辺 CD,BE との U #¡ 1 に限 3 © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 線分 UV の中点を N とすると,N # 1 ¡ 3s 1 ¡ 3s ; ; 0; であるから,①も使って 2 2 ¡! NL = (s; s; s); ¡¡! NM = (¡t; ¡t; ¡t) ÝÝ ③ B B となる。したがって,L,N,M はこの順に一直線上にあり,LN = 3s,NM = 3t であ ¡! る。また,③と UV = (1; ¡1; 0) の内積は 0 なので,直線 LM は PQ,UV,RS と垂直で ある。(*5) (*5) LN,NM を台形 B B PQ = 2(1 ¡ s),RS = 2(1 ¡ t) なので,二つの台 Q L の高さとして使うため, 平行な辺との垂直を確 認します。 P 形の面積の和より B X= 2(2 ¡ s) B B 3s + 2(2 ¡ t) B 2 2 6 = f2(s + t) ¡ s2 ¡ t2 g 2 B 4 = 6 # + st; Ý ④ 9 3t U B である。 3s B 3t V N R B M S 切り口を正面から表した図 (s + t)2 ¡ (s ¡ t)2 (s ¡ t)2 1 1 = ¡ ≦ であり,等号は s = t のときに 4 9 4 9 限る。①より,求める値は B 5 6 1 s=t= ; X= 3 9 ここで,st = である。これらの s; t は 0 < s < 1,0 < t < 1 を満たす。 答案記載上の注意点 ▼ ポイント 1:最小値と,最小値をとる条件を分けて書く 2 1 を明記します。s = t = は最小値を実現する一例であ 3 3 り,(2) の段階でこれに限定すると,(3) で比較するべき切り口を除いてしまいます。 (2) では m とともに s + t = ▼ ポイント 2:切り口の頂点と,台形の高さの根拠を示す 4 点を結んだ図だけで面積を計算せず,残る交点 U,V を定めます。また,中点を結ぶ線分 が常に台形の高さになるわけではありません。ここでは座標と内積から垂直を示したうえで, LN,NM を高さとして使います。 --- 3 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 解説 1. 距離の平方に s + t だけが現れるのはなぜか ¡! 2¡s¡t 2¡s¡t L,M の位置は s; t で定まりますが,差は ML = # ; ; s + t; と表せま 2 2 す。s を増やした分だけ t を減らしても,この差は変わりません。平行な線分 AG,FH 上で 2 点を同じ方向に同じ距離だけ動かしているためです。したがって,s + t を定めても,2 点の 位置は一つには決まりません。 ¡! ¡! 2 2 2 2 1 1 のとき ML = # ; ; ; であり,AG = # ; ; ¡1; との内積は 0 3 3 3 3 2 2 です。平方完成で求めた最小条件は,平行な 2 線分を垂直に結ぶという図形の条件に対応して また,s + t = います。(*6) (*6) 2 直線間の距離を 使う場合は,垂線の両 端を指定された線分の 内部に取れることも確 かめます。 2. 最小条件で定まる切断面の傾き ②では,左辺 x + y ¡ 2z は変わらず,右辺 1 ¡ 3s だけが動きます。したがって,最小条件 を満たす切断面は互いに平行で,s によって位置が変わります。(3) は,その中から切り口の 面積が最大になる位置を選ぶ問題です。最小条件によって決まる量と,まだ変わる量を区別し ましょう。 A 最小条件で定まる量 残る変化 B 2 3 LM = 3 s; t の配分 切断面の傾き 切断面の位置 UV = B 2 Q C U P D V 上下の台形の高さ 切断面が通るのは,A; D; E 側と B; C; F 側の頂点を結 ぶ辺です。頂点における x + y ¡ 2z の値を整理すると, 図の見え方に頼らず六つの辺を確定できます。 B R E S F 切断面と各辺の交点 3. 六角形を分ける線は,平行関係から選ぶ 一つの頂点から三角形に分割する方法もありますが,本問では PQ,UV,RS が平行で,LM がそれらに垂直です。上下二つの台形に分ければ,既に求めた長さを底辺と高さに使えます。 分割する目的は,底辺と高さを求めやすくすることです。本問では平面 z = 0 で分けること で,切り口の確定と面積計算の両方に同じ交線を利用できます。 4. 四角形の面積が一定でも,切り口の面積は変わる (2) の最小条件の下では,四角形 PQRS は高さ LM の台形です。その面積は B B B 2(2 ¡ s ¡ t) 2 3 4 6 PQ + RS LM = ¢ = 2 2 3 9 --- 4 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 となり,s; t の配分によらず一定です。しかし,切り口にはその両側に三角形 QUR と SVP が付いています。④から,この 2 つの三角形の面積の和は B 6st です。四角形だけを計算する と,まさに (3) で最大化すべき部分を落としてしまうのです。(*7) 部分 台形 PQRS 三角形 QUR と SVP 切り口全体 面積 B 4 6 9 B 6st B 4 6 # + st; 9 (*7) これは解答後の比 s+t= 2 の下で 3 一定 s = t で最大 s=t= 1 で最大 3 5. 対称性で予想し,平方の項で最大を確かめる s; t を入れ替えると上下の役割が入れ替わるだけなので,面積は変わりません。この対称性か 2 ら s = t を候補にできますが,最大になることの証明は別に必要です。s + t = を使って 3 ④を書き直すと, B B 6 5 6 X= ¡ (s ¡ t)2 9 4 です。s; t の差が 0 から離れるほど面積は小さくなるので,s = t = 1 のときに限って最大 3 になります。このとき切断面は x + y ¡ 2z = 0 で,原点を通ります。中心を通ることだけで 最大と断定せず,面積の式で予想を確かめましょう。 ■ 復習のポイント 本問では,下記のポイントを重点的に復習しましょう。 ★★★★★ 同一平面:異なる平行な 2 直線を利用する ★★★★★ 最小条件:等号成立条件を次の設問に使う ★★★★★ 切り口:指定された 4 点以外の頂点も確かめる ★★★★★ 面積の分割:平行な辺と高さを利用する ★★★★☆ 最大の根拠:対称性による予想を式で確かめる --- 5 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止 較です。主解答では, 二つの三角形の高さを 個別に求めず,上下の 台形として計算しま した。