「症例報告のガイドライン『CARE Guidelines』を読もう」

511 Views

September 26, 24

スライド概要

オープンゼミ #2 の資料です。

ななーる訪問看護デベロップメントセンターでは、「看護研究を"楽しむ"のみんなのTIPS」と題して、定期的なオープンゼミを開催します。

このオープンゼミの目的は、看護師や若手研究者、看護系大学生・院生が看護分野の研究に対する理解を深め、知識を共有し、研究コミュニティの輪を広げることです。

〇参加できる方
・看護師
・保健師
・助産師
・看護系学生
・看護系研究に関わる研究職や教職員

いずれの方も、ゼミの参加者・発表者双方の役割を自由に担うことができます。
弊センターは訪問看護に関する研究施設ですが、オープンゼミは研究フィールド等を制限しません。
詳しくはゼミページへ:https://seminar-dc.peatix.com

profile-image

訪問看護・在宅看護の研究施設「ななーる訪問看護デベロップメントセンター」のセンター長。「研究と実践をつなぐ」がミッション。 研究テーマ:神経難病支援、訪問看護データベース研究 etc

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

(ダウンロード不可)

関連スライド

各ページのテキスト
1.

オープンゼミ #2 症例報告のガイドライン 『CARE Guidelines』を読もう 2024年9月23日 ななーる訪問看護デベロップメントセンター 石川武雅

2.

CARE Guidelinesとは? CAse REports Guidelines 症例報告の制度や透明性,有用性を向上させる目的 国際的専門家グループで作成 複数の医学雑誌で承認,9個の言語に翻訳 CARE Guidelines

3.

CARE Guidelinesが作られた背景 • 「優れた症例報告には明確な焦点が必要 なぜ特定の観察が既存の知識の中で重要であるかを 聴衆に明示する必要がある」 —Vandenbroucke (2001) • 症例報告は、新たな疾病や治療効果を早期に知る場になる • 臨床研究、診療ガイドライン、医学教育の基礎 • しかし、不完全な報告方法のために、有益な情報が制限されている ガイドラインにより、透明性のある症例報告を普及させる

4.

Case Reportの執筆手順 What • 何がおこったのか、タイムラインを図表などを使って示す • 臨床所見、診断評価、治療介入、フォローアップの詳細を記述 Why • なぜこの症例が重要なのか • どのようにして起こったのか • イントロダクションで症例の背景を簡潔にまとめ,最新のCARE論文を引用する • 結論では、主要な教訓を1段落でまとめる Composition • アブストラクト:要点を簡潔にまとめ、読者に全体像を • 参考文献:なるべく査読付き論文を • インフォームドコンセント:患者への同意と治療に対する意見を記載し、患者の視点も

5.

CARE Checklist • チェックリストはCARE Guidelinesの主要な部分 • 執筆者は,チェックリストに沿って 必要な項目が書かれているのかチェックしていく

6.

CARE Checklist CARE Guidelinesより

7.

CARE Checklist タイトル • 主要な診断や介入内容と「症例報告」であることがわかる言葉を キーワード • 診断名や介入内容を示すキーワードを設定(”症例報告”を含む) 抄録 • はじめに:何がその症例で独特で,新しい知見なのか • 主症状や臨床的に重要な発見は • 主診断と治療介入、その結果は • 結論:その症例から得られた最も重要なメッセージは

8.

CARE Checklist はじめに • 1-2段落で,なぜその症例が特別だったのかをまとめる 症例紹介 • 患者の主要な懸念事項や症状を述べる • 医学,家族,心理社会的背景,遺伝的情報を述べる • 過去の介入と結果を述べる 臨床的発見 • 身体診察や重要な臨床所見を記述 タイムライン • これまでの経過と現在の状況を図表で整理する

9.

CARE Checklist 診断評価 • 診断における検査結果 • 診断に向けた課題 • 診断名 • 必要に応じて進行状況(がんのステージなど) 治療介入 • 治療介入の種類 • 治療介入の管理(投与量や強さ,期間) • 治療介入の変更と理由 フォローアップと結果 • 臨床的および患者主観の結果 • 重要なフォローアップの診断や検査の結果 • 介入に対するアドヒアランスや忍容性 • 有害事象

10.

CARE Checklist 考察 • 症例に関する強みと限界についての科学的な議論 • 関連した文献との関連性(文献を引用して) • 結果に関する科学的根拠 • 症例から得られた主要なメッセージを1段落で(文献はなくていい) 患者の見解 • 受けた治療介入について1-2段落で自分の見解を共有する インフォームドコンセント • 患者はインフォームドコンセントしていたか(必要に応じて)

11.

臨床研究における症例報告の立ち位置 • 『人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針』 • (ここでいう)研究に該当しないもの 「他の医療従事者への情報共有を図るため、所属する機関内の症例検討会、 機関外の医療従事者同士の勉強会や関係学会、医療従事者向け専門誌等で 個別の症例を報告する(いわゆる症例報告)」 • 倫理審査は必須ではない(ただし審査を受けることは妨げない) 研究に該当するか不明,もしくは倫理的懸念事項がある場合は審査を • 最終的には機関の長の判断

12.

プライバシー保護:外科関連学会協議会の見解 患者個人の特定可能な氏名,入院番号,イニシャルまたは「呼び名」は記載しない。 患者の住所は記載しない。但し,疾患の発生場所が病態等に関与する場合は 区域までに限定して記載することを可とする。(神奈川県,横浜市など)。 日付は,臨床経過を知る上で必要となることが多いので,個人が特定できないと判断される場合は 年月までを記載してよい。 他の情報と診療科名を照合することにより患者が特定され得る場合,診療科名は記載しない。 既に他院などで診断・治療を受けている場合,その施設名ならびに所在地を記載しない。 但し,救急医療などで搬送元の記載が不可欠の場合はこの限りではない。 顔写真を提示する際には目を隠す。眼疾患の場合は,顔全体が分からないよう眼球のみの拡大写真とする。 症例を特定できる生検,剖検,画像情報に含まれる番号などは削除する。 以上の配慮をしても個人が特定化される可能性のある場合は,発表に関する同意を 患者自身(または遺族か代理人,小児では保護者)から得るか,倫理委員会の承認を得る。 遺伝性疾患やヒトゲノム・遺伝子解析を伴う症例報告では 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」による規定を遵守する。 「症例報告を含む医学論文及び学会研究会発表における患者プライバシー保護に関する指針」より

13.

Take Home Massages • CARE Guidelines チェックリストを用いて,必要項目がもれなく記載されているか確認 • 倫理指針 症例報告はいわゆる「人を対象とする研究」には該当しない 倫理審査は必須ではない • プライバシー保護(外科関連学会協議会) 必要十分な配慮を • 事例報告を書こう!

14.

事例報告専門誌:NCCJ

15.

参考文献 • CARE Guidelines: https://www.care-statement.org/ • Vandenbroucke JP. In defense of case reports and case series: https://doi.org/10.7326/0003-4819-134-4-200102200-00017 • 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針: https://www.mhlw.go.jp/content/000769923.pdf • 症例報告を含む医学論文及び学会研究会発表における患者プライバシー保護に関する 指針: https://doi.org/10.11164/jjsps.40.7_App8 • ナーシングケアコネクトジャーナル: https://www.jstage.jst.go.jp/browse/nccj/-char/ja