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November 13, 24
スライド概要
オープンゼミ #4 の資料です。
ななーる訪問看護デベロップメントセンターでは、「看護研究を"楽しむ"のみんなのTIPS」と題して、定期的なオープンゼミを開催します。
このオープンゼミの目的は、看護師や若手研究者、看護系大学生・院生が看護分野の研究に対する理解を深め、知識を共有し、研究コミュニティの輪を広げることです。
〇参加できる方
・看護師
・保健師
・助産師
・看護系学生
・看護系研究に関わる研究職や教職員
いずれの方も、ゼミの参加者・発表者双方の役割を自由に担うことができます。
弊センターは訪問看護に関する研究施設ですが、オープンゼミは研究フィールド等を制限しません。
詳しくはゼミページへ:https://seminar-dc.peatix.com
訪問看護・在宅看護の研究施設「ななーる訪問看護デベロップメントセンター」のセンター長。「研究と実践をつなぐ」がミッション。 研究テーマ:神経難病支援、訪問看護データベース研究 etc
文献レビューとは? • 文献レビューとは…… ある研究テーマに関して,既存の文献情報をもとにまとめた研究 [大木ら,2013] • 一つの論文となる総説 (review article) と 論文の一部としての先行研究のレビューがある
文献レビューで何を目指すか ①その分野を俯瞰して捉え,研究を進める上での出発点が定められる ②何がすでに解明され,何がいまだ解明されていないかが明確になり,次に解決すべき 課題が明白になる ③ある問題解決のための各種アプローチを整理・比較し,その手法がどの程度まで 確立されているかなども確認できる ④調査論文自体には新しい事実や成果の発表はなくとも,とりあえず分野全体の概要を 把握できる ⑤文献の収集や整理の課程を通して,何らかしらの新規で統合的な洞察が得られる 赤居(2016)より
代表的な3つのレビュー方法 ナラティブレビュー • 従来のレビュー.検索方法やデータ抽出方法は著者に一任 システマティックレビュー (メタアナリシスを含む) • 厳格なプロトコルのもと実施.再現可能な形式で文献検索・選択. バイアスチェックをし統合する スコーピングレビュー • ナラティブレビューとシステマティックレビューの中間.プロトコルを作成するが, 途中で変更可.幅広い知見を網羅的に概観する
各レビュー方法の特徴 友利ら(2020)より
スコーピングレビューとは • 『その研究領域の基盤となる主要な概念,主な情報源,利用可能な文献や 情報 (エビデンス) の種類を素早くまとめること』 [Arksey et al. 2005] • 目的は…… ①研究活動の幅広さ,範囲,性質を調べる ②システマティックレビューを実施する価値があるか決定する ③研究結果の要約と普及 ④既存の知見から研究ギャップを特定する
スコーピングレビューの手順 • 『PRISMA-ScR: PRISMA extension for Scoping Reviews』 • 方法論的フレームワーク 1.研究疑問を特定する 2.重要な研究を特定する 3.研究を選ぶ 4.データを抽出する 5.結果の集約,要約,報告 6.結論
1.研究疑問を特定する • スコーピングレビューでは 『なぜ (What) 』 『どの程度 (How) 』 といった問いになる. (例) “身体障害のある子どもたちの社会参加が可能となるまで,親のニーズ,課題,行動に関して文献で分かっていることは何か?” “作業療法研究者が実施している脳卒中リハビリ テーションにおいてEBPsをどの程度実施しているか?” • システマティックレビューでよく使われるPICOのフレームワークではなく 「PCC」のフレームを使用する P (Patient): 参加者の特性や性別など C (Concept): 検索する範囲と幅.介入や現象,アウトカム,デザインなど C (Context): 文化や場所 (急性期,地域),領域など
2.重要な研究を特定する • プロトコルに基づき文献の検索式を作成する.スコーピングレビューは探索的 に行うため,プロトコルは途中で変更可 • 検索式はPCCや研究疑問に従って設定する • スコーピングレビューでは,ブログや文書,インタビュー記事なども含める場合 がある • 検索方法,期間,文献の種類などを設定していく 友利ら(2020)より
3.研究を選ぶ • 選抜 (Screening): タイトルと要旨で スクリーニング • 適格性 (Eligibility): 論文の内容か ら適格性を確認できたものを 「採用 (Included)」とする • PCCに加え,論文の種別 (研究論文 以外も含めるか),過去何年分など, プロトコルで決められた選択基準に 沿って機械的に進める. Peters M. et al. (2017) より
4.データを抽出する(Charting) • データ抽出フォームにデータを記録し,結果で用いる情報をまとめる • 抽出する情報例 著者,出版年,場所,国,目的,母集団およびサンプルサイズ,方法,介入の 種類,比較対象者,介入期間,成果と詳細
5. 結果の集約,要約,報告 Tricco A. et al. (2018) より
6.結論 • 結果を要約し,研究疑問や目的に答えているか,結果を使用する関係者 (医療者,患者など) のニーズに合っているか確認する • 研究のギャップなどの結果に基づき,今後の研究の必要性について述べる 今後の研究やシステマティックレビュー実施の示唆へ繋げる
プロトコル登録? • スコーピングレビューではプロトコル登録はマストではないが 推奨はされている • しかし,一般的にシステマティックレビュー等で登録される PROSPEROに登録できない • 登録にはthe Open Science FrameworkやFigshareなどが活用 できる • プロトコル論文を投稿・出版することも可能
OSF(プロトコル登録の一例) • 研究に関するプロトコルやデータセット,コード,研究計画書などを 無料で公開できるサービス • 公開日や修正日が記録されていく 計画に沿ったレビューであることが証明できる
引用・参考文献 • 大木秀一,彦聖美.研究方法論としての文献レビューー英米の書籍による検討-.石川看護雑誌.10.7-18. 2013. • 赤居正美.総説・文献レビューの書き方.国際医療福祉大学学会誌.21(2).7-12.2016. • 沖田勇帆,廣瀬卓哉,長志保ら.JBI Manual For Evidence Synthesis: Scoping Reviews 2020. スコー ピングレビューのため の最新版ガイドライン(日本語訳).日本臨床作業療法研究.8.38-42,2021. • 友利幸之介,澤田辰徳,大野勘太ら.スコーピングレビューのための報告ガイドライン日本語版:PRISMA-ScR. 日本臨床作業療法研究.7.70-76.2020. • Trico A., Lillie E., Zarin W., et al. PRISMA extension for scoping reviews (PRISMA-ScR): Checklist and explanation. Annals of Internal Medicine. 169(7). 467-473. 2018. • Peters M., Godfrey C., Khalil H., et al. 2017 Guidance for the Conduct of JBI Scoping Reviews Chapter 11 : Scoping Reviews Scoping Reviews chapter: 11 Scoping Reviews. Joanna Briggs Institute Reviewer's Manual. http://dx.doi.org/10.46658/JBIMES-20-12 • 内田太郎,他.日本におけるAI技術を用いた心理的介入の現状と課題:スコーピングレビューのためのプロトコ ル.OFS. https://osf.io/6ru9h