EHRの現在(いま)

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May 14, 24

スライド概要

2018年のSeagaia meetingでの基調講演です。
次世代型電子カルテ、未来の電子カルテ、EHRの話題はよく出ていましたが、今のEHRはどうなのか。問題はどこにあるのか、向かうべき未来はどこか。
こうした問題を一つ一つ解決した先に次世代があり、未来があると思っております。

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1970年生まれ。マイコン少年として育ち、1995年に医師免許取得。以後、血液内科で修練すると同時にインターネット、情報システムに興味を持ち医療情報学の研究を始める。 医療分野のオープンソースソフトウェア、医療情報標準規格について研究、医療DX教育にも携わってきた。

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各ページのテキスト
1.

EHRの現在(いま) 京都大学EHR共同研究講座 特定准教授 小林 慎治

2.

Agenda ● EHRをとりまく医療と技術の現在 ● 医療の現在 ● 情報技術の現在 ● EHRの現在 ● 国内のEHRの現在 ● 海外のEHRの現在 ● 現在の諸問題 2

3.

医療の現在 ● 医療上の問題点 ● 対策としての薬剤開発 ● Precision medicine –個別の患者の病態に合わせた医療 –Personalized medicine, tailor-made medicine –がんゲノム医療 3

4.

死因別統計 4

5.

薬品別売上(2000 → 2016) 2016年 2000年 商品名 1 2 3 4 5 5 薬効分類 商品名 薬効分類 オメプラー 抗潰瘍薬 ル 1 ヒュミラ 抗リウマチ薬 2 ハーボニー C型肝炎治療薬 リポバス 3 エンブレル 抗リウマチ薬 4 リツキサン 抗悪性腫瘍薬 5 レブラミド 抗悪性腫瘍薬 6 レミケード 抗リウマチ薬 7 ハーセプチン 抗悪性腫瘍薬 8 アバスチン 抗悪性腫瘍薬 9 ランタス インスリン製剤 10 プレベナー13 肺炎球菌ワクチン 高脂血症 薬 リピトール 高脂血症 薬 ノルバスク 降圧剤 メバロチン 高脂血症 薬 6 クラリチン 抗アレル ギ薬 7 タケプロン 抗潰瘍薬

6.

分子標的療法 低分子医薬品 ● – イマチニブ 抗体医薬品 ● – リツキシマブ – レミケード – オプジーボ 6

7.

Imatinib A Hocchaus, et. al., Long-Term Outcomes of Imatinib Treatment for Chronic M 7

8.

Pembrolizmab Gandhi L, et. al., Pembrolizumab plus Chemotherapy in Metastatic Non–Small-Cell Lun 8

9.

がんゲノム医療 分子標的薬剤を中心とした医療 ● 従来薬と比較して高い効果と安全性 ● – ただし高額医療 全切除不能がん患者のうちメリットのある 患者は現時点では4.8% ● Marquart J, et. al., Estimation of The Percentage of US Patients With Cancer Who Benefit From Genome-Driven Oncology. JAMA Oncol. Published online April 17, 2018. doi:10.1001/jamaoncol.2018.1660 ● 日本でも拠点整備が進行中 ● 9

10.

情報技術の現在 ● クラウド ● ブロックチェーン ● 機械学習 10

11.

技術の変化は振り子のように見えるが実は螺旋 和田卓人、技術選定の審美眼 / Understanding the Spiral of Technologies、Developers’ summit 2018 ● ● 同じことを繰り返しているようで、実際は進歩している。 ● その差分と可能にした技術を見極めるのが大事 11

12.

クライアント・サーバモデル ● 大型計算機、ダム端末 –強力な計算能力の分配 ● Unixサーバ、TSS –コスト低減、汎用ネットワーク ● Webサーバ、ブラウザ –汎用プロトコル、高速ネットワーク ● クラウド、携帯端末 –抽象化、並列技術、多重化技術、仮想化技術 12

13.

クラウド ● 特徴:抽象化 –サービスを提供(SaaS, PaaS) ● 背景技術 –ソフトウェア設計、仮想化技術 ● 可能としたもの –物理的制約からの開放、必要に応じてのサービス展開 ● 制約 –ネットワーク依存 13

14.

ブロックチェーン ● 特徴:分散環境での真正性の保証 ● 背景技術 –P2P、暗号化 ● 可能としたもの –信頼性の高いデータの分散管理 ● 制約 –ビザンチン将軍問題 –計算爆発:アイスランドの電力消費で全家庭の消費電力を上回る 14

15.

機械学習 ● 特徴:大規模データ処理 ● 背景技術 –高スループット演算、大規模ネットワーク、ストレージ ● 可能としたもの –画像処理、動画処理、自然言語処理 ● 制約 –相関関係、因果関係 –結果はデータの質と量に依存 15

16.

EHRの現在 ● EHRとは ● 国内のEHR ● 海外のEHR 16

17.

EHRの定義(ISO/TR 20514) 機械処理できる形式で保存される健康を対象とした情報レポジト リ。 ● 安全に保存され,複数の認証されたユーザーによりアクセスする ことができる。 ● システムに依存しない一般的に合意された論理モデルによって構 成される。 ● 統合的なケアの継続性や効率,そして質を向上させるために、過 去、現在そして未来にわたって情報を保持する。 ● 17

18.

EHRの機能要件(ISO 18308) 患者中心:EHRに記録される対象と診療の対象が一対一で対応す ること。 ● ● 長期的:誕生から死までの長期のケアを記録できること。 包括的:全ての医療従事者や医療機関が患者に対して行う診療イ ベントが包括的に記録されること。EHRに記録されない重要な診療 イベントがあってはならない。 ● 予見性:過去のイベントの記録だけではなく,計画,目的,指示, 評価に関する判断材料となりうるように予見できる情報を持つこ と。 ● 18

19.

日本のEHR(計画を含む) 全国共同利用型国際標準化健康・医療情報の収集及び利活用に関 する研究:千年カルテプロジェクト ● PeOPLe:厚生労働省、保健医療分野におけるICT活用推進懇談 会 ● MID-NET:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、電子 カルテ、レセプトデータを収集し、薬剤の安全性向上を進め る。 ● 東北メディカルメガバンク:東北大震災以後の被災民のデータ収 集、ゲノムを含めたデータを研究に活用している。 ● 19

20.

MID-NET ● 運用主体 –独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA) ● 目的 –医薬品の安全管理のため、投薬情報、副作用情報を収集 ● データソース –病院の電子カルテデータ、レセプト情報 20

21.

MID-NET協力医療機関 ● 国立大学法人 –東北大学病院、千葉大学医学部附属病院、東京大学医学部附属病 院、浜松医科大学医学部附属病病院 –香川大学医学部附属病院、九州大学病院、佐賀大学医学部附属病 院 ● 学校法人北里研究所(グループ) –北里大学北里研究所病院、北里大学東病院、北里大学病院、北里 大学メディカルセンター ● 徳洲会(グループ) –宇治徳洲会病院、岸和田徳洲会病院、札幌徳洲会病院、湘南藤沢 徳洲会病院、東京西徳洲会病院、名古屋徳洲会総合病院、野崎徳 洲会病院、福岡徳洲会病院、松原徳洲会病院、八尾徳洲会総合病 21 院

22.

東北メディカルデータバンク ● 運用主体 –東北大学東北メディカルメガバンク機構 ● 目的 –東日本大地震からの医療復興 –被災民の健康状態についてのコホート調査 ● データソース –コホート調査による健診データ、ゲノム情報を含む 22

23.

海外のEHR事例紹介 ● Finland Cancer registry ● EHR4CR ● DiscovEHR 23

25.

フィンランドがん登録とコホートの連携 25

26.

EHR4CR(EHR for Clinical Research) ● 運用主体 –ヨーロッパの製薬会社、研究機関、大学病院を含むコンソーシア ム ● 目的 –EUにおける薬剤治験に関するコストを低減させる –薬剤治験の各プロセスで15%程度の期間短縮、30%程度のコスト 圧縮効果が試算されている ● データソース –50医療機関および製薬会社 26

27.

DiscovEHR ● 運用主体 –Regeneron Genetics Center and Geisinger Health System ● 目的 –ゲノムデータと疾患感受性、治療反応性の関連性についての調査 –オープンデータとして誰もが二次利用可能 ● データソース –MyCodeプロジェクト参加者5,076人のゲノムデータおよび EHRデータ 27

28.

DiscovEHR study 28

29.

EHRにおける現在の問題点 ● 二次利用に向けて –法整備 ● 個人情報保護法、次世代医療基盤法 ● GDPR –データの充実 新規医薬品開発の主体は分子標的薬剤であり、臨床情報と合わせ た遺伝子情報は極めて重要 ● ● 運用上の問題点 –EHR間の相互接続 29

30.

質疑応答 30