世界のデジタルヘルス戦略

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June 25, 24

スライド概要

2024年現在、WHOに代表される国際機関およびその加盟国で行われているデジタルヘルス戦略について概説しています。
参考文献:
WHO Digital implementation investment guide (‎DIIG)‎: quick deployment guide, https://www.who.int/publications/i/item/9789240056572
WHO Global strategy on digital health 2020-2025, https://www.who.int/docs/default-source/documents/gs4dhdaa2a9f352b0445bafbc79ca799dce4d.pdf

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医療分野でのオープンソースソフトウェア活動を行ってきました。 医療DXについてのセミナーなども開催してきており、研究者としての実績を積んできました。 医療分野のDXは難しいところもありますが、なるだけわかりやすくなるようにつとめています。 Slideshareから徐々に移行しつつあります。

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各ページのテキスト
1.

世界のデジタルヘルス戦 略 小林慎治

2.

要旨 • WHOのデジタルヘルス戦略と実装ガイドライン • データやエビデンスに基づいて政策を立案し実行していくEvidence Based Policy Makingについて各国が取り組んでおり、デジタルヘルス もその一環としてWHO(World Health Organization)などの保健機構お よび政府が推進している。 • 各国のデジタルヘルス戦略 • 各国が抱えるヘルスケア上の問題は国によってさまざまであり、それ ぞれの国が状況に応じたデジタルヘルス戦略を立てて実装を進めてい る。 • 高所得国での取り組みと低中所得国での取り組みについて • 低中所得国でのデジタルヘルス実装策

3.

自己紹介 • 1970年佐賀県出身 • 1989年九州大学医学部入学 • 1995年九州大学医学部卒業、九州大学第一内科入局(血液腫瘍内科) • 2001年九州大学大学院(内科、医療情報学) • 2005年博士(医学)取得にて修了 • 2005年九州大学病院外来化学療法室 • 2006年国家公務員共済組合連合会千早病院 • 2009年愛媛大学第一内科助教 • 2013年京都大学大学院EHR共同研究講座講師 • 2020-2023年国立保健医療科学院研究情報支援研究センター上席主任研究 官

4.

デジタルヘルスとは • WHOによる定義 • 医療を改善するためのデジタル技術の開発と使用に関連する知識と実 践の分野。デジタルヘルスは、eHealthの概念を拡張し、より幅広いス マートデバイスと接続機器を使用するデジタルコンシューマを包含す る。また、IoT(Internet of Things; モノのインターネット)、人工知能、 ビッグデータ、ロボティクスなど、医療のためのデジタル技術の他の 用途も含まれる。 • 「医療DX」 • デジタルヘルスを用いた組織の体制や業務プロセスの変革 • 単なる「デジタル化」「情報化」は意味しない

5.

よくある「IT化/情報化」 報告書にはんこ押して 報告書にサインして スキャンして FAXで送信 PDFを作成して 提出完了 メールに添付して送付 印刷して保管

6.

DXとは はんこ押して FAXで送信 報告書提出 電子認証 情報システムで報告書作成・提出 データ利用

7.

WHOのデジタルヘルス戦略 • SDGs 3.8, Universal Health Coverage(UHC)達成のため • UHC達成目標の評価 • デジタル化による効率的な医療資源の配分と利用 • ガイドライン • WHO, Global Strategy on Digital Health, 2020-2025 • https://www.who.int/docs/defaultsource/documents/gs4dhdaa2a9f352b0445bafbc79ca799dce4d.pdf • WHO, Digital Implementation Investment Guide, 2020 • https://www.who.int/publications/i/item/9789240056572

8.

WHO デジタルヘルス戦略

9.

WHOの4つの指導原則 1. 国の医療システムにおけるデジタルヘルスの制度化には、国 の決断と取り組みが必要であることを認識する。 2. デジタルヘルス構想を成功させるためにには、戦略の統合が 必要であることを認識する。 3. 医療のためにデジタル技術の適切な利用を促進する。 4. デジタルヘルス技術を導入する後発開発途上国の主要な問題 に対処する緊急の必要性を認識する

10.

WHOのデジタルヘルス戦略目標 1. 世界的な協働を促進し、デジタルヘルスに関する知識の移転 を促進する。 2. 国のデジタルヘルス戦略の実施を推進する 3. 世界レベル、地域レベル、国レベルでのデジタルヘルスガバ ナンスを強化する 4. デジタルヘルスによって可能になる人間中心の医療システム を提唱する。

11.

WHOの行動フレームワーク 1. 取り組み • デジタルヘルスの世界戦略に参加するように各国に奨励する一報で、 自発的な取り組みについても維持する。 2. 促進 • 世界的に協力してデジタルヘルスを普及させるプロセスを構築して拡 大していく。 3. 測定 • 戦略の有効性をモニタリングする指標を定める、継続的に評価する。 4. 強化と反復 • 経験したこと、測定したことから学習し、新しい行動サイクルにつな げる。

12.

WHOによるモニタリング計画 • この行動計画は、加盟国と事務局に対し、国や機関におけるデジタルヘル スの成熟度を動的にモニタリングし、合意された標準的な指標を通じてデ ジタルヘルス戦略の実施を評価することを求めている。これらの措置には、 デジタルヘルス介入の状況とパフォーマンスの両方と、確立されたモニタ リングおよび評価モデルを含め、医療システムプロセス、医療従事者のプ ロセス、および個々の医療ニーズに対するデジタルヘルスの貢献度に関す るモニタリングを促進する必要がある。 • 行動計画と一連のアウトプットを評価する価値測定モデルを実装するため の手順が国の機関または監視機関と協働で実施され、ユニバーサル・ヘル ス・カバレッジの達成、持続可能な開発目標、およびWHOの第13次総合 事業計画(2019~2023年)の目標の達成に向けた前進に対するデジタル システムの貢献度について報告する。世界的なデジタルヘルス戦略の隔年 更新を促進するモニタリングと評価の枠組みを確立することも必要である。

13.

WHOの戦略と行動計画 目標 成果物 アウトプット 政策と行動 目標とする影響 機会と課題に対処 するための世界的 な調整 - 影響を及ぼすための複数の利害 関係者の世界的な協働と連携が 確立される - 協働と能力構築のための国の枠 組みが確立される - 疾病サーベイランスのための国の 情報センターが設立または強化さ れるプログラムとプロジェクト 協働、連携、ネットワ ーク 調整機構 ガイダンス デジタルヘルスエコ システムがより一層 適切で持続可能 になる 戦略的ビジョンと国 家レベルで統合され た行動 - 確立された国の医療戦略におけ るデジタル技術の革新的な統合 - 優先順位付けと持続可能な財 務モデルが特定され、共有される - 動的なデジタルヘルス成熟度モ デルが開発され、実装される 法律、政策、および コンプライアンス 戦略と投資 インフラ、サービス、お よびアプリケーションの 労働力 変更管理 費用対効果が高く 効率的な医療シス テムとサービス 情報に基づいた意 思決定に基づく行動 と投資 - デジタルヘルスのガバナンスのため の世界的および国の枠組みが確 立される - デジタルヘルスと先進的な技術に 関するグローバルな研究テーマが 確立される - デジタル変革の主要分野に関す るガイドラインと枠組みが確立され る 技術文書と政策文 書 ガバナンスと能力開 発 規模と実装 知識の交換と学習 医療とウェルビーイ ング分野のデジタル 化の加速 人々のエンパワメント を高め、健康的な選 択および健康を可 能にする選択を行う - 人々がデジタルヘルス変革の中 心に置かれる - 人々の医療管理が改善される - デジタルヘルスリテラシーのスキル と男女平等と医療への公平なアプ ローチが強化される 個人と地域社会の 医療 医療とウェルビーイン グ システムとサービス 能力構築活動 より健康的な人々 協働と知識の伝達 デジタル戦略の実施 デジタルヘルスガバナ ンス 人間中心の医療シ ステム

14.

WHOの実装投資ガイド9つの原則 • ユーザーとともに設計する • 既存のエコシステムを理解する • 規模を意識して設計する • 持続可能性のための構築 • データ主導であること • オープンスタンダード、オープンデータ、オープンソース、オープ ンイノベーションを活用する • 再利用と改善 • プライバシーとセキュリティの取り組み • 協力的であること

15.

図 1.1.1. デジタルヘルス・エンタープライズ・アーキテクチャの計画・実装:フェーズ、ステップ、リソース フェーズ 現状と実現環 境の評価 フェーズ 共通理解の確立 と戦略の 立案 01 02 フェーズ 03 フェーズ 04 フェーズ 05 フェーズ 06 フェーズ 07 将来の状態の定 義 STEPS +既存または過去に使用したソフトウェア・アプリ ケーション、ICTシステム、その他のツールのイ ンベントリを作成し、再利用と相互運用のため の要件をよりよく理解すること。 STEPS +包括的なニーズ、望ましい活動、成果を概説す る国家デジタルヘルス戦略を策定する。 + デジタル技術の活用により、医療システムをど のように強化するか、そのビジョンを定める。 WHOデジタ ルヘルスア トラス STEPS + デジタルヘルス実装の設計のために、現状を レビューし、アーキテクチャの青写真を作成す る。 + データ交換、システム統合、デジタルヘルス実 装の将来性を確保するために、有効なオープン スタンダードを特定する。 オープンヘル スインフォメ ーションエク スチェンジ (OpenHIE) 健康コンテンツ の要件を定める STEPS + 実装状況に適した有効な健康コンテンツを特 定する。 + 未来の状態のために特定された標準に沿っ たコンテンツの使用を保証する。 第一次医療 のデジタル 化に関する WHOハンド ブック モンタリングおよび 評価(M&E)、デー タ活用の促進 STEPS + デジタル実装が意図したとおりに機能し、望ま しい効果を発揮していることを確認するために、 実装をモニタリングする。 + 医療システム全体の中で、データ駆動型の適 応的なチェンジマネジメントを促進する。 STEPS + デジタルヘルス実装を維持・持続させる。 + リスクと適切な軽減策を特定する。 ステム強化のた めのデジタル介 入策に関する 推奨事項 デジタル実装 投資ガイド (本ドキュメン ト) エンタープライ ズ・アーキテク チャの立案 実装、維持、スケ ーリング WHO ガイド ライン:医療シ WHO/IT U国家 eHealth 戦略ツー ルキット STEPS +国家デジタルヘルス戦略を支援するためのデ ジタルヘルス投資ロードマップを策定する。 +医療システムのプロセスを改善し、プログラム 上のニーズに対応するために、健康やデータの 内容と並行して、適切なデジタル介入を計画・特 定する。 WHO デジタ ルヘルス発 明のモニタリ ングおよび 評価 WHO MAPS ツールキット: スケールに応 じたmHealth 評価と計画 グローバ ル・デジタ ルヘルス・ インデック ス ITU SDGs デジタル投 資枠組み (eGov) デジタルヘ HIS 継続的改 ルス投資検 善ステージ 討ツール WHO デジタルヘル ス介入策の分 類 ITU デジタルヘル ス・プラットフ ォーム・ハンド ブック WHOスマートガイドライン デジタルア クセラレー タキット PATH データ 活用文化の定 義と構築 機械読み 取り可能な 推奨事項 ドナーアラ イメントのた めの原則 Principles for デジタル開 Digital デジタル 発に関する Development 開発の原 原則 則 デジタル スクエア グローバル グッズ ガイドブッ ク UNICEF 人間中心 設計ツール キット オープング ループアー キテクチャ 枠組み (TOGAF) デジタルヘル 世界銀行デジ スへの投資 タル・アイデン に関するガイ ティティ・ツー ルキット ダンス 一連の WHOコア・ インジケータ ー WHO デジタルク リアリング ハウス 非伝染性疾 患のための Be He@lthy, Be Mobile ハ ンドブック MEASURE データデマン ドおよび有用 なリソース ADB Total アジア開発銀 ADB総所 Cost of Tool 行(ADB)デジ 有コストツ Ownership タルヘルス投 ール 資コスト計算 ツール 印刷用PDF オンライン環境

16.

デジタルヘルス実装プロセス • チームの編成および目標設定 • ガバナンス、マネジメント、オペレーションの3部門において、それぞれ求める役割および責任を決める。 • 必要なスキルセット、経験 • 医療プログラムのニーズと目標について共通理解を進める • 短期、長期における目標、目的を設定する • 医療システムの各階層においてプログラム運営を理解する • 対象となるワークフローを理解する • 適切なデジタルヘルス介入策を定める • • • • 医療プログラムのプロセスを再設計する 優先付けされた医療システムの課題に対するデジタルヘルス介入策を決定する。 実現環境は特定されたデジタルヘルス介入策を支援できるかどうか判断する。 デジタル介入策としてどのようなことが必要であるかを決める • 実装を計画する • インフラストラクチャを整備する • 法規制、政策、コンプライアンスを考慮する • リーダーシップ、ガバナンスを考慮する

17.

図 2.2.1. ナイジェリアの国家eHealth戦略から抽出された国家医療ICTビジョンの例 ナイジェリア国家 健康ICTビジョン 2020年までに、健康ICTは、ナイジェリアの人々が経済的なリスクを負うことなく、必要なサービスに アクセスできるユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に貢献する。 UHCアウトカム 医療に対 する財政 的カバレッ ジの増加 ヘルスケ ア・サービ ス、情報、 資金調達 の公平 性、アクセ ス、および 質の向上 健康保険 やその他 の健康関 連金融取 引におけ るICTの有 効活用 疫学と支 払い能力 に基づき、 最も必要 とする 人々に適 切なヘル スケア・サ ービスを 提供する ためのICT の効果的 な使用 健康ICT アウトカ ム 長期ICT アウトカ ム ヘルスケ ア・サービ スへのア クセス向 上 ヘルスケ ア・サービ スのカバ レッジの 向上 遠隔医療 の効果的 な利用、 医療従事 者のトレ ーニング や支援の ためのICT の利用 ヘルスケ ア・サービ スや商品 の需要と 供給を追 跡するた めの CRVS、 HRIS、 NHMIS、 LMISの効 果的な使 用。 ヘルスケ ア・サービ スの利用 率の向上 需要創出 のための モバイルメ ッセージン グと現金 給付の効 果的な使 用 ケアの質 の向上 意思決定 支援と継 続的なケ アのため のICTの効 果的な使 用 適切な資金、インフラストラクチャ、設備、トレーニング、政策によって実装されるナイジェリア医療 情報交換に支えられた、全国規模の統合医療ICTサービスおよびアプリケーション。 出典:ナイジェリア政府 全国健康ICT戦略枠組み、2016年(48)。

18.

図2.3.1. 医療システムの組織図と関係性の例示 健康・家族福祉省k) 家族計画局長(DGFP) 免疫・ワクチン開発(IVD) 月次報告 EPI担当ナショナ ルマネジャー ナショナ 月次報 ル・ロジス ティクス・マ 告・サプラ イ要求書 ネジャー 納品証 明書フォ ーム IVD/EPI月 次報告 ヴィレッジ・エグゼ クティブ・オフィサー 地域社会 報告書 ファミリープラン ニング担当アシ スタントディレク ター クリニカルコン トラクション担 当アシスタント ディレクター 家族計画担当 副部長 MIS フォーム-4 ウパジラ家族計画担当者 地域予防接 種・ワクチン担 当者(RIVO) DVDMT月次報 告およびサプラ イ要求フォーム MIS フォーム-2 ClMCH-家族計画担当医 納品証明書フォーム ウパジラ家族計 画担当補佐 地区予防接 種・ワクチン 担当者 (RIVO) 家族計画 検査官 タリーシート (F201 & F202) 診療所担当医 臨床避妊学担当医 MIS フォーム-3 保健所報告書 フォーム-1 UH&FWC 母性 健康管理進捗 報告書 シニア健康 家庭福祉ビ ジター MIS フォーム-1 地域社会担当 サブアシスタ ント医 健康家庭福祉 ビジター (FWV)

19.

表 2.3.2. 予防接種プログラムを立案する際に作成されるペルソナの例. マネジャーのペルソナ: Dr Regina Flowers、 地域予防接種担当者 責任 地域レベルの教訓を国レベルの政策立案者に報告・伝達する。ワクチンの資 金調達と供給を監督する。 年齢:50歳+ 人口統計学的属性 教育:医学博士 英語が堪能。パソコンやスマートフォンを常用する。 課題 ワクチンの使用と供給のデータは、頻繁に欠落または誤りがある。データ報告 が遅れ、統合が難しい。現場スタッフの訓練が十分でない。 見込まれる成果 十分な資金がある。高品質で定期的なデータ。政策立案者の関与と対応。 マネジャーのペルソナ: Mr Paul Dacosta、地域予防接種 担当者 責任 診療所にワクチンと監督を提供する。30か所の診療所を監督する。生命統計の 記録。 年齢:50歳+ 人口統計学的属性 教育 MPH(医学博士) 英語が堪能。スマートフォンを持っている。パソコンが使える。 課題 時間的制約のため、すべての診療所を監督することができない。診療所から定 期的にデータが報告されない。 見込まれる成果 診療所と定期的に連絡を取り、トラブルシューティングを行う時間を確保する。 診療所からの高品質で定期的なレポート。

20.

図3.1. 医療システムの課題を定義するためのCRDM手法の適応 CRDMのアプローチは、3つの集中領域に分かれている: ビジネスプロセス分析 Think ビジネスプロセスの再設計 Rethink (考える) (再考する) 今、私たちはどのような 仕事をしているのか? 今、私たちはどのように仕 事をすればいいのか? + 目標や目的を明確にす る。 + 対象とする健康プログラ ムのプロセスを決定す る + これらの各プロセスにお けるユーザーの旅/ワ ークフローをマップ化す る。 + 各ワークフローにおけ るペイン・ポイントを特 定する。 + タスクやワークフローを 検討する。 + 非効率な部分を洗い出 す。 + タスクとワークフローの 再構築 + 優先された医療システム の課題に対処するため に、1つまたは複数のデ ジタルヘルス介入策を選 択する。 要件の定義 Describe (説明する) 情報システムは、私たちの 仕事をどのようにサポート できるのか? + ビジネスプロセスを最適化 するために、実行すべき具 体的なタスクを定義する。 + ビジネスルールの実装を説明す る。 + 実現環境が、選択したデジタル ヘルス介入策をサポートできる かどうかを判断する。 + エンドユーザーのニーズとステー クホルダーの期待に基づき、デ ジタルヘルスへの介入は何をす べきかを定義する。 + 既存のICTシステムやデジタル ヘルス・プロジェクトを活用し て、デジタルヘルスへ介入策を サポートできるかどうかを判断 する

21.

図3.1.1.1. 典型的なワクチン接種プログラムにおける3つのプロセスの例を示すプロセスマトリ クス # プロセス 患者の管理 A 目的 全新生児のワクチン接種 履歴をデータベース化す ることで、新生児を管理 する。 タスクの設定 » 患者登録 アウトカム より完璧な新生児の登録 » 既存のレコードを検索 する » 患者データベースの維 持管理 ワクチン接種の 管理 B すべての乳幼児に、ナシ ョナルスケジュールの全 ワクチンを接種するように する。 » ナショナルスケジュール を定義する » 予防接種を計画する よりタイムリーなワクチン 接種、より高いワクチン接 種率 » リマインダーを送信する » 予防接種の登録 » ワクチン接種率のモニ タリング 在庫管理 C ワクチンやその他の在庫 が必要なときに常に入手 できるようにし、無駄や過 剰在庫を最小限に抑え る。 » 在庫を発注する » 受け取る » ストア ワクチンやその他の在庫 の入手性が高く、無駄が 少ない。 » カウントストック » 在庫、賞味期限、廃棄 物、使用量のモニタリ ング サービス提供 D 必要な予防接種歴やど の予防接種が必要かのリ ストを持ち、医療提供者 がクライアントに質の高い サービス(予防接種の提 供)を提供していることを 確認する。 » カウンセリングの実装 » 診断 » ディスペンス(予防接種 を行う) » 参照 » 予防接種を受けた記録 を更新する » 次回訪問のスケジュー ルとお知らせ 医療提供者が正しいプロ トコルとワクチン接種スケ ジュールに従っている、よ りタイムリーなワクチン接 種、カバレッジの向上、ケ アの質の向上、提供され たワクチン接種の記録性 の向上。

22.

図 4.1.2. 医療システムの課題とデジタルヘルス介入策との関連性 医療システムの課題 (HSC) デジタルヘルス介入策 (DHI) 取り扱われるニーズまた は問題 医療システムの課題に対応す るためのデジタル機能 商品の供給不足 健康用品の在庫・流通を管理する 健康用品の在庫状況を知らせる プロトコルに基づいたプロンプトやアラート を提供する 医療提供者の低い診療ガ イドラインの遵守度 プロトコルに従ったチェックリストを提供する 医療提供者へのコミュニケーションとパフ ォーマンスをフィードバックする 医療提供者の活動をスケジュール化する

23.

GAPSフレームワーク

24.

https://monitor.digitalhealthmonitor.org/map

25.

指標(Indicators) • 7分野19指標(9 10,11, 19は細分化されているため、合計30指 標)を1-5までのスコアで算出 • Leadership and governance (Indicator 1-2) • Strategy and investment (Indicator 3-4) • Legislation, policy and compliance (Indicator 5-8) • Workforce (Indicator 9-12) • Standards and interoperability (Indicator 13-14) • Infrastructure (Indicator 15-16) • Services and applications (Indicator 17-19)

27.

UHC SCI(WB)とGDHI 100 90 New Zealand 80 Chile Peru 70 Kuwait Sri Lanka Mongolia Indonesia UHC SCI 60 50 Portugal Thailand Malaysia Jordan Philippines Bangladesh Lao Uganda Pakistan 40 Nigeria Mali Benin Ethiopia Sierra Leone Afghanistan 30 20 10 0 0 1 2 3 GDHI 相関係数 0.51 4 5 6

28.

まとめ • WHOは2000年代より情報技術の保健医療分野への応用に取り 組んできており、先進国から途上国への技術移転を含めて戦略 的に実装を進めてきている。 • 国別の課題に応じた独自の実装プランを立てるためのガイドラ インも示している。 • それぞれ国のデジタルヘルスの達成状況も客観的な指標をもと に評価されている。

29.

各国の状況

30.

アメリカ • 概観 • 人口3億2833万人 • 一人あたり国内総生産 $66,130 • 健康指標 • 平均寿命 78.8 • UHC SCI 86(2021) • 5歳以下死亡率 6.4‰ • デジタルヘルス • HIPAA, HITECH • “Meaningful use”

31.

アメリカのデジタルヘルス戦略 • HIPAA (Health Insurance Portability and Accountability Act), 1996 • 健康情報に関するプライバシールール、セキュリティルール • HITECH(Health Information Technology for Economic and Clinical Health act), 2009 • HIPAAを拡張して罰則を強化した法律 • Meaningful Use • 医療事故を減らすためにデジタル化を推進 • 達成項目と評価基準、それに応じたインセンティブを設定。 • 達成できなければ罰則もあり。

32.

Death by a thousands of Clicks • “Meaningful use”で、2008年に 普及率4%だった電子カルテが 2018年時点で96%の病院で採用 された。 • しかし、電子カルテ自体のできが 悪いことで医療事故も起きており 医師への負担も増えている。 • 1回のER勤務で医師は4000回マウ スをクリックする • 検査データが伝わらずに医療事故 の原因となる • 90%の病院が電子的に接続されて おらず連携は紙とFAX https://khn.org/news/death-by-a-thousand-clicks/

33.

https://www.nytimes.com/2020/07/13/upshot/coronavirus-response-fax-machines.html

34.

イギリス • 概観 • 人口6,684万人 • 一人あたり国内総生産 $43,380 • 健康指標 • 平均寿命 81.2 • UHC SCI 88(2021) • 5歳以下死亡率 4.3‰ • デジタルヘルス • NHS (National Health Service) によるデジタル化 • NPfITの失敗をもとに再構築中

36.

NHSとNPfIT • NHS(National Health Service) • 「ゆりかごから墓場まで」 • 世界でも先進的な医療皆保険サービス • 1992年 NHSNet、NHS全体のネットワークの整備方針決定 • 2000年 NHSプランで2004年までに電子処方箋、電子カルテ、2005 年までに電子予約システムの実現する方針。Microsoftと包括協定。 • 2002年 2012年までに統合情報基盤となるNPfITを実現すると発表。 • 2011年 計画の遅れからNPfITの解体を決断(総額114億ポンド) • 2016年より別プロジェクトスタート

37.

フィンランド • 概観 • 人口552万人 • 一人あたり国内総生産 $49,940 • 健康指標 • 平均寿命 81.98 • UHC SCI 87(2021) • 5歳以下死亡率 2.3‰ • デジタルヘルス • ヨーロッパのモデル国家 • EUHD

38.

https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001188758.pdf

39.

タイ • 概観 • 人口 7,131万人 • 一人あたり国内総生産 $7,080 • 健康指標 • 平均年齢 78.98 • UHC SCI 82(2021) • デジタルヘルス • 国民ID制度(1990年代より) • SNOMED CT加盟(2023)

41.

ラオス共和国 • 概観 • 人口7,210万人 • 一人あたり国内総生産 $2,520 • 健康指標 • 平均年齢 68.98 • UHC SCI 51(2021) • デジタルヘルス • CRVSが未完了 • ADBからの援助によりデジタル ヘルス整備中

43.

マレーシア • 概観 • 人口3,280万人 • 一人あたり国内総生産 $10,960 • 健康指標 • 平均年齢 75.76 • UHC SCI 76(2021) • デジタルヘルス • 2017年に全ての国公立病院を 接続しデータ収集基盤を構築

44.

インドネシア • 概観 • 人口2億6,958万人 • 一人あたり国内総生産 $4,070 • 健康指標 • 平均年齢 70.52 • UHC SCI 55(2021) • デジタルヘルス • 2023年に全ての国公立病院を 接続しデータ収集基盤を SatuSehatを構築

46.

日本 • 概観 • 人口 12,663万人 • 一人あたり国内総生産 $42,010 • 健康指標 • 平均年齢 84.36 • UHC SCI 83(2021) • デジタルヘルス • デジタルヘルス基盤でPHR構築 を目指す

47.

GDHM: Country summary(Japan) • In the case of Japan, it is difficult to say government approval because the Ministry of Health, Labor and Welfare, the Ministry of Economy, Trade and Industry, the Ministry of Internal Affairs and Communications, and the Cabinet Office are all involved. In addition, the medical care system and the insurance system, which is related to revenue for the field, are on opposite sides, with the field responsible for more than half of the services and the government wanting to lower costs. Academia also has its own position, and opinions are divided, making it difficult to accurately understand the current situation. I have described the situation in academia as one of equality • 日本の場合、厚生労働省、経済産業省、 総務省、内閣府がすべて関与しているた め、本調査で政府の承認をえるのは困難 です。 • さらに、現場にとっての収益に関連する 医療制度と保険制度は、サービスの半分 以上を現場が担当し、政府がコストを下 げたいという逆の立場にあります。医学 会も自身の立場を持っており、意見は分 かれているため、現状を正確に理解する のは難しいです。私は学術的立場で書か れた状況を公平性の意味でとりあげてお ります。

48.

日本のデジタルヘルス戦略 https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/001163650.pdf

49.

まとめ • 国内外のデジタルヘルス戦略について概況を述べた • WHOはUHC達成のためデジタルヘルス政策を戦略的に推進し ており、実装ガイドラインも含めて整備されている。 • それぞれの国の健康課題に応じてデジタルヘルス実装が進めら れており、各国の課題についてGlobal Digital Health Monitor で評価されている。 • 国家レベルでのデジタルヘルスは巨大事業であるため、難易度 も高く先進国でも失敗例が多い。 • が、それを乗り越えてデジタル化が進められようとしている。