医療DX入門講座1 課題整理

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January 21, 25

スライド概要

Dr Prime Academiaの医療DX入門講座で提示したスライドです。内容についての解説はDr Prime Academiaでご覧ください。
医療DX入門講座は、医療現場でのデジタルトランスフォーメーションを企画立案し、実行できるようになることを目指します。参加者は、医療DXの担当者や興味がある方々で、講座では医療DXの定義やGAPSフレームワーク、外来予約・受付管理システムの導入に関する具体的な例題を学びます。全5回のプログラムを通じて、理論と実践が組み合わさった内容で、デジタル化における重要な課題や現状を理解することができます。
https://academia.drsprime.com/events/qyttder3yP_K1fjw2C0LpFUgXT7jP8tw

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1970年生まれ。マイコン少年として育ち、1995年に医師免許取得。以後、血液内科で修練すると同時にインターネット、情報システムに興味を持ち医療情報学の研究を始める。 医療分野のオープンソースソフトウェア、医療情報標準規格について研究、医療DX教育にも携わってきた。

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各ページのテキスト
1.

医療DX入門講座 1 課題整理 小林慎治

2.

自己紹介 • 学歴 • • 1995年九州大学医学部卒 2005年九州大学大学院修了、博士(医学) • 職務経歴 • • • • • • • • 業績 九州大学病院 国家公務員共済組合連合会千早病院 福岡少年院法務技官 愛媛大学医学部助教 京都大学工学部情報学科、医学部特定講師、特定准教授 厚労省国立保健医療科学院上席主任研究官 岐阜大学医学部特任講師 • • 原著論文51報 国際会議:招待講演3回 • 研修/講義 • 一般発表26回 • • • • • 内科学 医療情報学 医療DX 地域医療ネットワーク NDB、KDB • 資格 • • • 医師免許 情報一種、情報二種、情報セキュリティアドミニストレー タ 総合内科専門医 • 社会活動 • • • • 医療オープンソースソフトウェア協議会代表 NPO openEHR協会代表 Chair, Open Source Working group, International Medical Informatics Association Asia eHealth Information Network • 獲得資金 • • • • • • H15未踏 文部科研基盤C代表 文部科研基盤B分担 AMED事業分担 R4厚労科研代表 R6厚労科研分担

3.

医療DX入門講座について • 目標 • 医療現場でのDXを企画立案し、 実行できるようになる。 • 対象 • 医療DXの担当者。 • 医療DXについて興味のある方。 • 内容 • 医療DXとは何か? • GAPSフレームワーク • 例題:外来予約・受付管理シス テムの導入 • プログラム • 第1回「医療DX:課題整理」 • 第2回「医療DX:ガバナンス」 • 第3回「医療DX:アーキテク チャ」 • 第4回「医療DX:計画管理」 • 第5回「医療DX:標準規格」

4.

医療DXのための体系的な考え方 • DXを実践する上で基礎となる考え方 • GAPSフレームワーク この講座で 学ぶこと 理論と実践 • DXのための理論体系であるGAPSフレームワークを 実践的な例題をもとに学習します。 • 例題:あなたは入院病床300床の病院で外来予約・ 受付管理システム導入のプロジェクトリーダーを 命じられました。どのようにプロジェクトを進め ていきますか?

5.

扱わないこと • 国の医療DX政策解説 • 具体的な製品についての解説 • 具体的な事例 • 個別具体的なデジタル技術(あまりデジタル技術に詳しくない 方でも学べるようにしています。)

6.

医療DX:課題整理 • 医療DXとは • 医療DXにおける課題 • 医療そのものの性質 • 医療機関特有の組織 • システム構成 • 人材育成・キャリアパス • GAPSフレームワークについて

7.

医療DXって何だろう?

8.

Grok(AI)による医療DXのイメージ

10.

厚生労働省保険局医療課、医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて、2024、 https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001277499.pdf

11.

デジタルトランスフォーメーション(DX) とは • 定義 • 企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を 活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモ デルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文 化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること 経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイ ドライン)」2018年, https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004.html

12.

よくある「IT化/情報化/デジタル化」 報告書にはんこ押して 報告書にサインして スキャンして FAXで送信 PDFを作成して 提出完了 メールに添付して送付 印刷して保管

13.

DXとは はんこ押して 電子認証 FAXで送信 情報システムで報告書作成・提出 報告書提出 データ利用

14.

医療DXで期待されていること 業務改善 情報共有 データ活用 ・効率改善・AI導入 ・はたらきかた改革 ・医療安全 ・患者の医療参加(PHR) ・地域医療ネットワーク ・診療連携、データ連係 ・経営改善・政策立案 ・医学研究、臨床試験

15.

https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108041.pdf

16.

株式会社 情報通信総合研究所、デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに 関する調査研究の請負、2021年 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/r03_02_houkoku.pdf

17.

医療DXはなぜ進まないのか?

18.

医療DXにおける課題 医療そのものの性質 • 労働集約型産業であり、DXに限界があり競争力を生み出せない。 医療機関特有の組織 • 組織構成が複雑であり専門家が多くトップダウンで物事が進まない。 システム構成 • 電子カルテ、各部門システム、検査機器など構成技術が複雑である。 人材育成・キャリアパス • 関連する法令が多く内部・外部にステークホルダーを抱えている • 一般企業とは異なり、経済合理性よりも重視される価値概念が存在する。 • 標準規格が十分に普及していない • 医療DX人材は貴重ではあるが、キャリアパスは限られておりスキルに見合った待 遇が得られるとは限らない。

19.

医療は労働集約型産業である。 • 患者データはデジタル化できても患者の存在をデジタル化はできない。 • DXを完全に実施したとしても他業種ほどの効果が得られない。 • 外来患者数、手術件数、救急車受け入れなどをDXだけで劇的に増やすこ 医療そのもの の性質 とはできない。 • AIには「診断」「ケアプラン作成」はできても、「食事介助」や「おむつ 替え」はできない。 DXが競争力強化につながりづらい。 • 「最新の画像診断装置と専門医による診断が受けられる」 • 「最新の電子カルテを導入している」 • 医療法、療養担当規則、保険医療上の制約 • DXに関するコストを価格に転嫁できない

20.

医療機関特有の組織 複雑な組織構成 • 診療部門、職域、専門、資格 • 専門性の高い国家資格職であり、慢性的に人手不足でもあり、トップダウン で経営陣の意向が伝わりにくい。 特有の文化 • 経済合理性よりも上回る価値観がある。 • 生命や健康に関わるところでは保守的な考えが支配的となる。

21.

システム構成 • 複雑なシステム構成 • 電子カルテと各部門システムを 接続・連携させる必要がある • 依存関係もあり簡単には入れ替 えられない。 • 医療情報標準規格 • 長年の課題とされるが開発や普 及が進んでいない。 厚生労働省、標準的電子カルテ推進委員会資料より https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/03/s0303-8a.html

22.

普及しない標準規格(厚労省標準) No 規格提案名 実装率/活 用率(%) 採択日 No 規格提案名 実装率/活 用率(%) 採択日 HS001 医薬品HOTコードマスター 49.5/21.0 2003/05/23 HS026 57.8/40.9 2016/02/19 HS005 ICD10対応標準病名マスター 92.0/86.6 2004/12/28 SS-MIX2ストレージ仕様書および構築ガイド ライン HS007 患者診療情報提供書及び電子診療データ 提供書 8.6/5.9 2007/03/16 HS027 処方・注射オーダ標準用法規格 23.9/14.5 2016/09/09 HS028 7.8/6.2 2016/04/13 HS008 診療情報提供書(電子紹介状) 8.6/5.9 2008/09/01 ISO 22077-1:2022保健医療情報-医用波形 フォーマット-パート1:基本規格(MFER) HS009 IHE統合プロファイル「可搬型医用画 像」およびその運用指針 14.8/12.4 2008/12/01 HS030 データ入力用書式取得・提出に関する仕様 (RFD) 2.8/0.9 2019/05/09 HS011 医療におけるデジタル画像と通信 (DICOM) 22.6/20.4 2010/01/25 HS031 地域医療連携における情報連携基盤技術仕 様(IHE) 17.7/13.4 2017/02/10 HS012 JAHIS臨床検査データ交換規約(HL7 V2) 34.9/18.0 2010/02/10 HS032 HL7 CDAに基づく退院時サマリー規約 8.3/5.9 2019/06/20 HS013 標準歯科病名マスター 51.8/36.3 2010/09/20 HS033 標準歯式コード仕様 21.0/12.4 2018/10/02 HS014 臨床検査マスター 28.5/15.6 2011/01/31 HS034 口腔診査情報標準コード仕様 2019/12/19 HS016 JAHIS放射線データ交換規約 32.0/16.9 2011/09/29 HS035 医療放射線被ばく管理統合プロファイル 2020/05/7 HS017 HIS, RIS, PACS, モダリティ間予約, 会計, 照 射録情報連携指針(JJ1017指針) 22.0/13.4 2011/12/16 HS036 処方情報HL7 FHIR記述仕様 2022/02/28 HS037 健康診断結果報告書HL7 FHIR記述仕様 2022/02/28 HS022 JAHIS処方データ交換規約(HL7 V2) 31.4/18.0 2014/12/16 HS038 診療情報提供書HL7 FHIR記述仕様 2022/02/28 HS024 看護実践用語標準マスター 32.8/22.3 2016/02/12 HS039 退院時サマリーHL7 FHIR記述仕様 2022/02/28 実装率/活用採用率は厚労省「日本における医療情報システムの標準化に係わる実態調査研究報告」2019年より病院でのデー タを抜粋https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000685906.pdf

23.

医療DX人材のキャリアパス問題 • 長年人材不足と言われてきて人材育成が急務と言われ 続けてきた。 • しかし、求人はない。

24.

「改革疲れ」「改善疲れ」 「医療制度改革」のたびに紙が増えていく状況で今さらDX?

25.

それでも医療DXを推す理由 • 診療業務を改善したい。 • 1割業務効率を改善できれば、一日約50分の余裕が生まれる。 • 5%-10%程度の効率改善は比較的容易にDXで達成される。 • データを活用していきたい • 日々の業務を改善するためにはデータが必要。 • そうはいっても… • 加算をとらないといけないし、デジタル化をすすめていかないといけ ない。 • デジタル技術に詳しくなくてもDXを進めることは可能。 • 王道(フレームワーク)をみにつけましょう。

26.

医療DXを実践するために • 体系的・実践的な知識を身につけよう • 解剖がわからないと手術はできない • フレームワークを活用しよう。 • 病院経営陣を動かそう • 部門をまたいだ業務改革のためには経営陣の関与が必要 • 楽するために努力しよう • 楽することは悪徳ではなく、患者さんのためのリソースを増やす美徳 である。

27.

GAPSフレームワーク • Governance • 組織管理、統制、経営 • Architecture • 技術構成 • People and program management • 計画運営 • Standards and interoperability • 標準,相互運用性 https://www.asiaehealthinformationnetwork.org/mind_the_gaps/

28.

まとめ • 医療DXとは • 医療業務をデジタルで楽にしていくこと。 • 医療DXにおける課題とは • 医療そのものの性質 • 医療機関特有の組織 • システム構成 • 人材育成・キャリアパス • GAPSフレームワーク

29.

Noteもやってます! https://note.com/skoba