医療分野でのオープンソースソフトウェア開発と利用

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May 14, 24

スライド概要

医療分野でのオープンソースソフトウェアの活用について、2012年当時の状況について述べたスライドです。OSC愛媛で発表した内容です。

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1970年生まれ。マイコン少年として育ち、1995年に医師免許取得。以後、血液内科で修練すると同時にインターネット、情報システムに興味を持ち医療情報学の研究を始める。 医療分野のオープンソースソフトウェア、医療情報標準規格について研究、医療DX教育にも携わってきた。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

医療分野でのオープンソースソフ トウェア開発と利用 小林慎治 愛媛大学医学部第一内科

2.

Agenda    日本における医療情報システムの現状 ● 電子化の背景、日本の医療について ● 医療情報の電子化における諸問題 医療分野におけるオープンソースソフトウェア ● ORCA Project ● 医療オープンソースソフトウェア協議会 ● 医療情報の標準化とオープンソースソフトウェア まとめ・今後の展望

3.

日本の保険医療システム  意外と知られていない国民皆保険制度 ● すべての住民が医療保険に加盟することができる ● どの医療機関を受診するか患者が選択できる ● サービスに対して全国一律の対価が設定されている ● ● ● 医療機関は診療の翌月10日までに保険請求を行わな ければならない。 医療機関は受診ごとに負担額を徴収する。 各県や郡、市町村の行政単位で医療費に対して独自 の公費制度が設けられている。 平均寿命や乳幼児死亡率は世界でも最良である。

4.

日本の保険医療システム  意外と知られていない国民皆保険制度 ● すべての住民が医療保険に加盟することができる ● どの医療機関を受診するか患者が選択できる ● サービスに対して全国一律の対価が設定されている ● ● ● 医療機関は診療の翌月10日までに保険請求を行わな ければならない。 医療機関は受診ごとに負担額を徴収する。 各県や郡、市町村の行政単位で医療費に対して独自 の公費制度が設けられている。 平均寿命や乳幼児死亡率は世界でも最良である。

5.

医療費/GDP

6.

「レセプト」  患者氏名・住所  保険番号  診断名  実施した検査や項目  処置  処方  地方ルール

7.

'レセコン'   医事会計アプリケーション ● 複雑なルールで決められている医事会計処理を行う ● 紙にレセプトを打ち出す 医療データベース ● 患者個人情報 – ●  氏名、生年月日、性別、保険 病名、処方、処置 寡占ソフトウェア ● データはほぼレセプト業務のみでしか使えない ● 導入に300万円から500万円かかった

8.

医療情報システムの問題点    ハイコスト・ローリターン ● 多くの役職・部門を抱える複雑なビジネスロジック ● ほぼ国内市場に限られる寡占市場 ● 強力な医療費抑制策->システム予算も逼迫 多くの標準、少ない実装 ● 「紙」上の標準であり、使用には制限がある ● プロプライエタリな規約の標準 「ロックイン」 ● ベンダーロックイン→ 寡占 ● データロックイン → 相互運用性の欠如 – 患者は何人?医療のアウトカム評価は?

9.

大学主導の開発   大学病院主導 ● 全国に存在する(していた)医療情報部 ● 病床も多く予算が豊富 実用性と新奇性 ● ● ●  研究と臨床のバランス 実用性よりも「論文のネタ」になるかが重要視され ることも 単年度開発・次年度忘却 小病院・医院は大病院のミニチュアではない ● 大病院のシステムをそのまま小病院では使えない

10.

AYDBTU? VENDOR: ALL YOUR DATA ARE BELONG TO US!?

11.

輸血医療情報システム  輸血ミス防止、適正輸血推進システム ●   輸血学会総出で取り組み 外部インターフェース ● 「標準規格」を採用 ● しかし、どのベンダも「標準規格」では接続不能 ● Paper-based standard Open Source? ● 大学病院関連だけオープン

12.

OSS  オープンライセンス、自由な配布形態 ●  「ロックイン」からの開放 ●  健康データはヒトの寿命と同じだけ保存されなけれ ばならず、未来でも利用できることが保証される必 要。 開かれた標準化を推進する ●  知的資産を共有できる オープンな参照実装が開かれた標準化を推進する コスト削減 ● それ自体が目的ではないが、結果として

13.

水道哲学 産業人の使命は貧乏の克服である。その為 には、物資の生産に次ぐ生産を以って、富 を増大しなければならない。水道の水は価 有る物であるが、通行人が之を飲んでも咎 められない。それは量が多く、価格が余り にも安いからである。産業人の使命も、水 道の水の如く、物資を無尽蔵たらしめ、無 代に等しい価格で提供する事にある。それ によって、人生に幸福を齎し、この世に楽 土を建設する事が出来るのである。松下電 器の真使命も亦その点に在る。 松下幸之助 1894- 1989

14.

ORCA Project  日医標準レセプトソフト ● ●   OSS, 日医オープンライセンス(GPL 2.0を日本語 訳したものにほぼ相当) ロックインを回避する 標準化 ● Paper-basedではなく「デファクト」 ● MML/CLAIMプロトコル ↔ 電子カルテ データ収集 ● 思いつき政策に対抗するための基本的な保健情報の 収集

15.

日医標準レセプトソフトを構成するもの Main body of JMA - receipt Table & Screen & documents definition Utility CLAIM, shell, etc… Various scripts Tools monpe, gcc, OpenCOBOL, glade, Ruby, GNUpgp OLTP MONTSUQI PANDA, glclient GUI GNOME Xwindow GDM,libglade,Gtk widget (GtkPanda,etc…) DB PostgreSQL pg_dump, tdump Application Device driver XFree86 4.x , Printer driver GS driver, OCR fonts OS Hardware Debian GNU/Linux woody, sarge P4 2GHz, 512MB, 100GB.. GPU, Others device17/32

16.

日医標準レセプトソフトの稼働状況

17.

定点観測調査 (2006.12~) JMA Personal information deleted Improvement of medical quality Outcome Proposal of a fair medical policy Medical facilities Permit Feedback Patients / Members • Voluntary participation by medical facilities • No information collected that can specify an individual patient • Secure security using electronic certification • Privacy of individual medical facilities strictly maintained

18.

インフルエンザ累積発生件数(3/1521)

19.

CLAIM標準  レセコンと電子カルテを接続する規格 ● XMLベース標準 ● 臨床情報と保険情報 –  日本の健康保険に対応 電子カルテ開発コストの提言 ● ● レセコン部分の開発コストを削減 > 20以上の電子カルテがCLAIM標準を使ってORCA に接続できる。

20.

ORCAプロジェクトの運用形態 (認証システム) • 品質保証 – 日医総研が認定した技術者、サポート業者に対してリソースを提供する 日医総研 日医総研 ORCAサポートセンター ORCAサポートセンター 日医認証ORCAサポートビジネス 日医認証ORCAサポートビジネス (135 companies: 2007-04) 14/32

22.

ORCAプロジェクトのインパクト    「レセコン」の低価格化 ● ORCA以前:300−500万円 ● ORCA以後:100万円前後 ● 電子カルテの値段も低下 シェア ● レセコンリプレースは'5年から8年周期 ● 約12%, 12,000施設(2012年3月現在) 派生ソフトウェア資産 ● OpenCOBOL , CLAIM標準

23.

未踏15   P2Pによる診療連携ソフトウェア ● ORCAをP2Pでつなぐ ● Java, JXTAベース 未踏でわかったこと ● ●  日本のソフトウェア産業の水準は決して低くない オブジェクト指向は特殊な技術ではなく基本中の基 本 ● 自分の技術レベルは未踏レベルの平均よりかなり下 ● それでも、自分でなければ書けないコードがある ソフトウェア公開へ

24.

ORCAエコシステム Information 医療機関 日医・日医総研 Membership fee Community Source codes A u th o riz a t i on f ee Development fee Au tho riz e 開発者 Support fee Support service サポートベンダ Bug report/ request

25.

医療オープンソースソフトウェア協 議会  MOSS(Medical Open Source Software Council) ● ORCAプロジェクトや医療ソフトウェア開発者の連 帯 ● 医療分野にも応用できるOSSを紹介していく ● 医療分野のOSSを一般の開発者に紹介する ● 2004年4月にに最初のセミナー ● 2009年8月に第8回セミナー – ● Many Asian developers / students gathered 開発者、医療従事者、サポート業者によるコミュニ ティ

26.

MOSS1

27.

日本のOSS電子カルテ  OpenDolphin ●  地域医療連携プロジェクトで診療所向け電子カルテ 端末として開発。OSSとして後悔 ● Java/JBoss ● Doctors are arranging for their use NOA ● 大橋克洋(産婦人科医、70歳)により作成 ● PHP/Java Script

28.

九大から千早病院、愛大へ    九州大学病院外来化学療法室(2005) ● 初代専属医員 ● XOOPSで部門Web、MS-Accessで部門システム 千早病院(2006-2009) ● 医療情報企画科長、内科医師 ● 国際学会デビュー、openEHR.jp立ち上げ ● 翻訳、実装 愛媛大学病院第一内科(2009-) ● 研究、臨床、国際活動

30.

医療OSSの国際的動向  国家・地域の状況にあわせて ● 先進諸国 – 共通基盤として。病院情報システムのspin out。 OpenVISTA, OpenEMR – 研究開発基盤 – – ●  不景気の影響 低開発諸国 標準化 – 結核・HIV、周産期医療 – 低コストは魅力の一つであるがそれよりも開発 の自由が目的

31.

openEHR.jp   The openEHR Project ● OSS実装ベースの標準化 ● ISO/EN 13606 Local activity of the openEHR project ● 資料の日本語訳 ● 日本在住者対象(一部は非日本語話者) ● ● ヨーロッパ・オーストラリアで開発された臨床概念 の日本への適応可能性を調査 Ruby実装

32.

GitHub

33.

gem install open_ehr

34.

OSS2010, Notre Dame, USA

35.

OSS2010, Notre Dame, USA

36.

MOSC2010, Kuala Lumpur

37.

MOSC2010, Kuala Lumpur

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世界的なつながり

39.

医療OSSの問題点  開発者とユーザー(医療従事者)のギャップ ●  医療システム開発における永遠の課題 国際展開がしづらい ● 国ごとに異なるシステム、文化  コミュニティの維持  ビジネスモデルの確立 ● ORCAモデルは普遍的なモデルとなりうるか

40.

今後の展開   開発者のリクルート ● セミナー開催・合宿 ● 日本だけではなく、海外とも ● GitHubどんどん 標準とその実装 ●  実装ベースの標準化 ORCAの今後 ● 100万行以上のCOBOL資産