openEHR チュートリアル、第43回医療情報学連合大会

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November 27, 23

スライド概要

第43回医療情報学連合大会で行ったopenEHRチュートリアルです。

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1970年生まれ。マイコン少年として育ち、1995年に医師免許取得。以後、血液内科で修練すると同時にインターネット、情報システムに興味を持ち医療情報学の研究を始める。 医療分野のオープンソースソフトウェア、医療情報標準規格について研究、医療DX教育にも携わってきた。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

openEHR/ISO13606の実装 について 小林 慎治 NPO日本openEHR協会

2.

第41回医療情報学連合大会 COI開示 演題名:openEHR/ISO13606入門 筆頭演者名:小林 慎治(特定非営利活動法人日本openEHR 協会、岐阜大学) 私が発表する今回の演題について開示すべき COIは以下のとおりです。 役員・顧問等の就任:特定非営利活動法人日本 openEHR協会

3.

Agenda • openEHRとは • 臨床情報モデルをベースとしたEHR実装例

4.

openEHRとは • The openEHR Project • 医療分野のICTで相互運用性の向上について取り組むプロジェクトであ る. • 非営利組織openEHR Foundationが主体となり開発。 • openEHR specifications • 医療情報の相互運用性を保証する技術仕様 • 医療情報の相互運用性のための標準モデル開発 • ISO 13606 • 1997年にヨーロッパ標準(CEN13606)として認定 • 2008年にISO標準に認定 • 2019年に改訂

5.

医療情報標準 • 目的 • 異なるシステム間で正確にデータを連携するため • 手段 • 用語:病名、医薬品名、検査項目 • 方式:データ形式、通信手順

6.

医療情報の標準化がなぜ難しいのか • ゴールが不明確 • そもそも医療分野で標準的なワークフローが確立されていない • 同じ疾患であっても病態はさまざまであり、診断方法や治療法は一律 に決まっていない。 • 同じような病態に対して同じように介入するはずのクリニカルパスで すらバリアンスが出る。 • 標準的電子カルテの対象となる標準的病院とは? • 医学の進歩(内的要因)と社会的要求の変化(外的要因) • 医学の進歩に伴う用語の変化、新規診断法や治療法の導入。 • 社会体制すら変化を要求されるようなパンデミック。 • 保険改定、医療制度改革など。

7.

変化へのソフトウェアアプローチ • 開放閉鎖原則(Open close principle) • • • • 拡張には開いていて、変化には閉じている。 ソフトウェアの変更なしで変更にも対応すること プログラムの変更なしで追加対応可能なように設計する。 例:検査システムと検査マスタ • アジャイルアプローチ • 顧客との対話を重視し、小さい変更を積み重ねる。 • 問題を小さな課題に分割して、それぞれに解決していく。

8.

例:検査結果 日付 WBC RBC Hb Ht Plt 11/21 6300 430 11.5 38.4 22.3 11/21 5200 420 10.8 36.5 28.2 11/21 8400 540 13.4 42.1 19.8 11/21 4500 480 12.8 39.8 21.3 シンプルな実装 ただし、項目を追加する ためにはテーブル構造を 変更する必要がある。 検査ID 日付 項目名 値 単位 00001 11/21 WBC 6300 /μL 00001 11/21 RBC 430 万/μL 00001 11/21 Hb 11.5 g/dL 00001 11/21 Ht 38.4 % 00001 11/21 Plt 22.3 万/μL 00002 11/21 WBC 5200 /μL テーブル構造を変更することなく検 査項目の追加が可能

9.

openEHRとHL7 FHIRの比較 openEHR HL7 FHIR • 設計対象 • 設計対象 • Architecture • Architecture • Record • Multi-level modeling • Reference Model / Archetype model / Template • Message志向 • Single level modeling • Resource / Bundle / Profile

10.

Message志向 病院 診療所 薬局 行政 在宅医療 学校

11.

Record志向 病院 診療所 EHR 薬局 在宅医療 行政 学校

12.

レターパック

14.

薬品だな(百味箪笥)

15.

openEHRとHL7 FHIRの比較 openEHR HL7 FHIR • 設計対象 • 設計対象 • Architecture • Architecture • Record • Multi-level modeling • Reference Model / Archetype model / Template • Message志向 • Single level modeling • Resource / Bundle / Profile

16.

Observation openEHR • RM, Observation HL7 FHIR • Observation resource • メリット • メリット • Observation RMをベースとした300 のarchetypeがCKM(Clinical Knowledge Manager)に公開されてお り、CC-BY-SAで利用可能 • 多様な記録を標準化されたコンポー ネントで実現できる • デメリット • 初期開発の難易度があがる • 身体所見、バイタルサイン、検体検 査、放射線検査一般を表現する。 • 必要に応じてProfileを作成し、プロ ジェクトによってProfileを作成 • プログラムの変更なしで多様なメッ セージを作成できる。 • 初期開発の難易度が下がる。 • デメリット • Profileを都度開発し、場合によって はプログラムを変更する必要がある。

17.

Clinical Knowledge Manager

18.

openEHR: Template/Arhchetype/ HL7 FHIR: Profile/Resource openEHR Reference model Archetype Template 文書/Form Resource/(Profile) HL7 FHIR Bundel/Profile

19.

標準化とテンプレート • 定型業務におけるデータ入力の省力化 • 診療科、疾患別、初診時、術前に行われる定型業務支援 • 治験・臨床試験 • クリニカルパス • 入力項目のチェック • 機械的に入力項目のバリデーションを行うことで記録の質を高めるこ とができる。 • その分野の診療で必要な項目を意識させるという教育的な意味もある。

20.

標準テンプレート 白血病初診 氏名: 性別: 生年月日: 年齢: 診断名(FAB): 診断名(WHO): WBC(/μl): RBC(/μl): ………………

21.

標準テンプレート(2年後) • 白血病初診 • 白血病初診(AML) • • • • • • 白血病初診(AML、AYA世代) 白血病初診(AML、30-40代) 白血病初診(AML、50-60代) 白血病初診(AML、70代以上) 白血病初診(AML、治験A) 白血病初診(AML、治験B) • 白血病初診(ALL) • 白血病初診 • ……

22.

テンプレートと標準化 • テンプレートは無限に増えるものである • 病態の違い、臨床試験・治験に求められるデータが異なり、担当医が 変わったりすることでテンプレートが追加されていく。 • テンプレート間でのデータの共有化が難しい • テンプレートで共通する項目があるがその項目名や記録形式が異なる と違うデータとして扱われる。 • 項目名を標準化するために標準用語集を導入するのが望ましいが、す べての医学用語を網羅して機械的に処理できる用語集はSNOMED CT くらいであり、日本では利用が難しい。 • 病名と重症度のように、各用語の標準化だけではなくまとめて扱うべ きデータセットもある。

23.

用語だけでは不明瞭 SNOMED-CTの例 右上肢と左下肢の感覚麻痺 • 感覚麻痺(44077006) • 右(24028007) • 上肢(40983000) • 左(7771000) • 下肢(30021000) 左上肢と右下肢の感覚麻痺 • • • • • 感覚麻痺(44077006) 左(7771000) 上肢(40983000) 右(24028007) 下肢(30021000) Stan Huff, Practical Modeling Issues: Representing Coded and Structured Patient Data in EHR Systems, AMIA 2014, Washington D.C., USA

24.

openEHR/ISO 13606を利用し たEHRシステム

25.

openEHR Industrial Partners • Diamond partner (>100 employees) • • • • • • • • Microsoft Cambio DIPS TeitoEvry Dedalus Better EY HEALTH CISTEC AG • • • • • • Code24 Ocean health systems Patient Sky Nedap vitagroup Karkinos Healthcare • Silver partner (10-24 employees) • IN2 Ingeniera de la Informacion, S.L. • Avenue3 • Bronze partner (<10 employees) • Gold partner (25-49 employees) • • • • • • • • FreshEHR Future Perfect (Healthcare), Limited VeraTec for Health ECOSYSHUB LLC BioCytics, Inc. Carolina BioOncology Institute Solit cloud eWave AB • Startup partner • NeoEHR 下線は2023年に新規登録されたもの。

26.

Microsoft Azure Health Data services

27.

openEHRのアプローチ • Template/Archetype/Reference model • Reference model: データ型やデータ構造を定義したものであり、ほぼ 不変。 • Archetype: Reference Modelを組み合わせて、Templateに繰り返し出 てくる医学概念・用語をモデル化したもので複数のテンプレートで再 利用可能。 • Template: Archetypeモデルを組み合わせて柔軟に利用できる • 複数の種類のテンプレートを横断してAQL(Archetype Query Language)を使ってデータを検索することができる。

28.

Azure Health Data services事例

30.

Better care • スロベニアを拠点として15カ 国に展開 • 旧共産圏のつながりを利用した 展開。(東欧、南米を中心) • 500以上の病院で採用 • 患者2,200万人 • 50以上のアプリケーション • 28年間の実績 • Microsoft Azure

31.

Better EHR Studio

32.

openEHR/ISO 13606のオープンソースソ フトウェア実装 • Cobalab EHR server • EHRbase • OpenEyes

33.

Sidharth Ramesh • インド人医師(2020年医師免 許取得) • Block chainを医療に応用した Medblockを公開。 • openEHR Templateから Svelteを使ってWeb formに展 開するMedblocks UIを作成 • FHIR bridgeやopenEHR template testなども公開 • Youtubeで有用な情報を配信

34.

GitHub

36.

GitHub

38.

まとめ • openEHRはRecord志向の標準である。 • 多様で変化する医療記録に対応するために多段階モデルを採用 している。RM/Archetype/Template • 多くの実装があり、産業利用も進んでいる。