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May 23, 26
スライド概要
スペース用配布資料(5/23)
PODCAST「知財を読むラジオ」公開収録 ふたりの分析家が読み解く「競馬 × 知財」 競馬関連特許の技術動向 クラスタ動態と勃興領域に見る 671 件の 40 年 馬券と特許 4,700 件 日 時 2026 年 5 月 23 日(土)20:00〜21:00 会 場 X のスペース 出 演 上村侑太郎(株式会社 LeXi/Vent) しばやま(PH.D. / 特許情報分析家) 資 料 配布用レジュメ(聴衆向け) 本レジュメは、1985〜2025 年に日本で出願された競馬関連の特許 671 件を APOLLO v8.0.0 で分析した結果の要約版です。 2026 年 5 月 / Analysis: APOLLO CAPCOM
競馬関連特許技術動向分析 1985-2025 — 配布用レジュメ 2 / 13 1. はじめに — 本分析の 3 つの問い サラブレッド、ジョッキー、馬券、ウマ娘 ——。私たちが「競馬」と聞いて思い浮かべるもののすべて に 発明(特許) が関わっています。本分析は、1985 年から 2025 年までの 40 年間に日本で出願され た競馬関連の特許 671 件をデータ分析し、技術の構造と変化を俯瞰しました。 本日お話しする 3 つの問い 1. 競馬関連の特許にはどんな 技術系統 が存在するか 2. どの技術領域が 伸びている か(勃興) 3. どの技術領域が 衰退・撤退 しているか 2. データの全体像 対象母集団 • 出願件数: 671 件 • 対象期間: 1985 年〜 2025 年(41 年間) • 出願人数: 約 370 名義(共同出願含む) • 構築方法: 特許のキーワード検索 出願件数のピークと現在地 競馬関連の特許出願はすでに 衰退期 に入っています。ピークは 2001 年の 59 件 で、 2024 年はわず か 8 件、ピーク時の約 1/7 にまで縮小しました。 時系列の 4 期区分: 1985-1991 1992-2001 2002-2011 2012-2025 黎明期: 年 1〜7 件、物理投票券・ゲーム機系がぽつぽつ 急成長期: ネット投票・電話投票・IT 化で 277 件が一気に出願(全体の 41%) 急減期: ピークから年 4 件へ。リーマン後の縮小と遊技機メーカー撤退 緩やかな安定期: 年 4〜15 件で推移。AI 予想・IoT 計測の新陳代謝
競馬関連特許技術動向分析 1985-2025 — 配布用レジュメ 3 / 13 図 1: 図 1: 出願件数推移(1985-2025) — ピーク 2001 年 59 件、その後縮小し直近は年 4〜15 件 本章のキーメッセージ: 全体は衰退期、しかし AI で再活性化の兆し 2.5 外部環境(Web 調査の概要) 本分析は特許データを軸としますが、特許だけでは見えない 市場・政策・学術・企業の外部コンテキス ト を Web 調査で補完しました。4 カテゴリの要点を以下に示します。 (1) 市場規模・業界統計 • JRA 売得金 3.3 兆円(2024 年、対前年比 101.2%、13 年連続増)1 • 馬券販売の 85% が電話・ネット投票(2022 年)、電話・ネット投票会員 650 万人(2024 年末)2 • 競馬コンテンツ市場では 『ウマ娘プリティーダービー』(Cygames)が世界累計収益 24 億ドル(約 3,790 億円) に達する(Cygames 全体収益の 72%)3 (2) 政策・規制動向 • ギャンブル等依存症対策推進基本計画(2022 年 3 月閣議決定)が事業者に 利用停止制度の整備 を求 めている4。JRA は家族による申請で利用停止可能。 • コロナ禍下でオンライン投票は公営競技全体の 8〜9% に拡大。 1netkeiba「2024 年の中央競馬全日程終了発売金、売得金ともに 13 年連続で前年超え」 https://news.netkeiba. com/?pid=news_view&no=285560 2日本経済新聞「JRA、競馬収益 3 兆円の立役者はネット投票システムの全貌」 https://www.nikkei.com/article/ DGXZQOUC167FC0W4A110C2000000/ 3ファミ通.com「『ウマ娘』世界累計収益が約 3790 億円を突破」https://www.famitsu.com/article/202405/4097 4内閣官房「ギャンブル等依存症対策推進基本計画進捗状況」 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gambletou_ izonsho/setsumeikai/dai3/siryou1.pdf
競馬関連特許技術動向分析 1985-2025 — 配布用レジュメ 4 / 13 • 統合型リゾート(IR)構想は 大阪が 2029 年開業予定。ギャンブル領域全体の規制枠組みは整備途上5。 (3) 学術動向・実運用基盤 • JRA は 馬場資材として青森県産砂・ニューポリトラック・ウッドチップ を運用し、エアレーション / シャタリング で物性管理を実施6。 • 芝・ダートのクッション値は「畳より少し硬い反発力」を基準とする独自指標で数値化(ニューポリ トラック=7、ウッドチップ=4)7。 • AI 予想サービスは JRA-VAN データマイニング・netkeiba UMAI 予想ビルダー・競馬ブック AI 指 数・楽天競馬南関 AI 指数 など主要 6 サービスが拮抗8。 • 2025 年 12 月、産業経済新聞社が ChatKeiba を提供開始(サンスポ記者の思考を学習)9。 (4) 主要企業動向 • 富士通 は JRA 基幹「トータリゼータ」中核ベンダー(毎時 660 万件処理、富士通製メインフレーム)。 脱メインフレーム化が課題10。 • 2025 年 4 月 1 日、トータリゼータ事業が富士通フロンテックから トータリゼータエンジニアリン グ株式会社 に移管11。 • 新興プレイヤー: ソフトバンクグループ(生成 AI 競馬予想 6 件) 、楽天グループ ( 「福来エマ AI 予想」 12・5 件)、村田製作所(鞭の IoT 計測)、日本トーター(予想者口上動画販売) 外部環境と特許動向の関係 — 4 つの整合・乖離 • 整合: ネット投票市場の拡大(85%)⇄ クラスタ「投票券購入・管理」が母集団の 46% • 整合: 馬場のクッション値運用 ⇄ 「衝撃吸収パッド・馬場素材」127 件(第 2 位) • 乖離: コンテンツ市場 24 億ドル ⇄ ゲーム系特許 2010 年代以降ほぼゼロ • 乖離: 依存症対策の政策要請 ⇄ 関連特許 7 件のみ(うち利用停止機能ゼロ) 3. 4 つの技術系統 671 件を AI で自動分類した結果、9 つのクラスタが浮かび上がり、これらは大きく 4 つの技術系統 に 整理できます。 5日本経済新聞「オンラインカジノ対策強化政府が新基本計画を閣議決定」 https://www.nikkei.com/article/ DGXZQOUE2111N0R20C25A3000000/ 6JRA「ダートコースのクッション砂について」 https://www.jra.go.jp/keiba/baba/dirt/ 7JRA「3 分でわかる JRA の馬場指標『クッション値とは?』」 https://spaia-keiba.com/news/detail/11149 8note 凱旋門太郎「競馬 AI 指数の裏側 — 国内主要 6 サービス徹底比較」 https://note.com/gaisenmontaro/n/n 493992f5611a 9株式会社産業経済新聞社「競馬 AI『ChatKeiba』を無料で」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002010. 000022608.html 10日経クロステック「毎時 660 万件の処理さばく JRA 基幹システム、急務は脱・富士通メインフレーム」https://xtech. nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02692/121800002/ 11富士通フロンテック「トータリゼータ」 https://www.fujitsu.com/jp/group/frontech/solutions/industry/ totalizator/ 12楽天競馬「福来エマの AI 予想」 https://keiba.rakuten.co.jp/event/ema_result
競馬関連特許技術動向分析 1985-2025 — 配布用レジュメ 5 / 13 図 2: 図 2: Saturn V ランドスケープマップ — 671 件が UMAP 空間で 9 クラスタに分類 系統 (1) 運営インフラ系(306 件、46%)— 最大の柱 馬券をどう売るか、オッズをどう配信するか、会員口座をどう管理するか。 JRA の馬券売上 3.3 兆円 (2024 年、13 年連続増)の裏側を支える技術群です。 注目すべきは、JRA の馬券販売の 85% が電話・ネット投票(会員数 650 万人)であり、 このメガク ラスタはまさにその「デジタル投票」の特許群そのものです。
競馬関連特許技術動向分析 1985-2025 — 配布用レジュメ ◆ 注目特許 6 / 13 特開 1997-147024(新田洋保ほか, 1995 年) 「遠隔投票システム」 電話回線・通信回線を介して 競輪・競馬・競艇・サッカー・カーレース を遠隔投票できるシステム。今 や当たり前のネット投票の ご先祖様 です。 「気軽に・健全に・低コストで楽しめる」と書かれているのが 時代を感じさせます。 系統 (2) 実競技基盤系(127 件、19%)— 馬場と競走馬 馬場のクッション砂、ウッドチップ、走路の物性、競走馬の医療。 実物の競馬を支える物理技術 の領域 です。 JRA の馬場には「クッション値」という独自指標があり、芝もダートも毎週この数値が公表されていま す(基準は畳より少し硬い反発力)。そのクッション値運用の裏側には、 以下のような技術があります。 ◆ 注目特許 特開 2025-125207(村田製作所, 2024 年) 「測定システム」 騎手の鞭にセンサを取り付けて変位量を測定 し、同時に騎乗する馬の位置も測定する IoT 計測システム。 「いつ・どこで・どのくらいの強さで鞭が使われたか」がデータ化される時代の特許。動物福祉と競技公 正性の両方に関わる発明。 ◆ 注目特許 特開 2025-041426(城南工建, 2023 年) 「砂洗浄装置」 ダートコースのクッション砂を 洗浄する設備。砂は何度も使うので、糞尿・血液・油分等を物理的に分離 する必要がある。地味だが競技の安全性に直結する基盤技術。 系統 (3) 映像解析系(42 件、6%)— 競走馬を「見る」 レース映像・パドック映像・競走馬の画像認識。近年、最も技術革新が進む領域の一つです。 ◆ 注目特許 特開 2025-131453(富士通, 2024 年) 「レース内容再現方法およびレース内容再現プログラム」 過去のレース映像から各馬の 走行位置を抽出 し、別々のレースに出走した競走馬を、 同じレースで走っ たかのように仮想再現 する。 「もしディープインパクトとオルフェーヴルが同じレースに出ていたら?」と いう夢を技術にする特許。 ◆ 注目特許 特開 2025-035488(JRA システムサービス, 2023 年) 「パドック動画分割システム」
競馬関連特許技術動向分析 1985-2025 — 配布用レジュメ 7 / 13 パドックの全周映像から 個々の競走馬を自動で切り出す。映像 AI を運営に応用した実用的事例。これで 「気になる馬だけを集中観察」が可能に。 系統 (4) ゲーム・遊技機系(119 件、18%)— かつての主力、いま撤退 ゲーム系の 6 クラスタは 2010 年代以降の新規出願がほぼ途絶 しています。 セガ・コナミグループ・ ユニバーサルエンターテインメントといった かつての主役は全員撤退 しました。 ところが—— ウマ娘プリティーダービー(Cygames)は 世界累計収益 24 億ドル(約 3,790 億円)。 Cygames 全 体収益の 72% を占めるモンスターヒットです。 市場は爆発的に伸びているのに、特許出願はゼロ。 本章のキーメッセージ: コンテンツ・ブランド・ライブサービスの時代になり、 ゲーム領域では「特 許」が競争優位の源泉ではなくなった。 ◆ 注目特許 特開 2016-144646(サンセイアールアンドディ, 2013 年) 「遊技機」 パチンコの大当たり遊技中に、遊技者が選んだ馬と出走レースを組み合わせてレース演出 を行う。馬の 種類とレースの組み合わせで ST(時短)抽選確率が変わる。 「競馬演出パチンコ」の特許。今ではほぼ 絶滅した文化の証拠。 4. 誰が伸びていて、誰が止まったか 図 3: 図 3: MEGA PULSE 4 象限マップ — リーダー 3 社(富士通・NEC・日本トーター)と衰退・ニッチ 7 社の二極化
競馬関連特許技術動向分析 1985-2025 — 配布用レジュメ 8 / 13 リーダー 3 社(直近も活動継続) 富士通 NEC 日本トーター 45 件、JRA トータリゼータ基幹システム中核ベンダー。毎時 660 万件の処理 16 件、AI 予測・番組編成支援で安定型 11 件、予想情報販売のニッチ専業 衰退・ニッチ 7 社(直近 5 年の活動量ゼロ) JRA 本体 セガ コナミ G 富士通フロンテック ユニバーサルエンタ ゼネラル / 山口シネマ 31 件、出願をやめて子会社(JRA システムサービス)と富士通系へ移譲 29 件、自走模型ゲームの主役。2010 年代以降ゼロ 29 件、ビデオゲーム機の主役。同じく撤退 25 件、2025 年 4 月にトータリゼータエンジニアリング株式会社に事業移管 11 件、競馬演出パチンコの主力 計 25 件、いずれも 2010 年以前で出願停止 新興プレイヤー(MEGA 10 件閾値を下回るが急速台頭) 本分析の最大の見どころは、リーダー象限 3 社の外側から 新興 IT 大手と新聞社が AI 競馬予想で続々 と参入 している事実です。 ◆ 注目特許 特開 2025-053676 ほか 6 件(ソフトバンクグループ, 2023〜2024 年) 「システム」(生成 AI 競馬予想) 生成 AI を使った競馬予想・調教メニュー提案・飼育管理 AI を 1 年半で 6 件連続出願。 「過去の馬の医 学データから、その日の調教内容を AI が提案」など、サラブレッド業界に ChatGPT 的アプローチを持 ち込む試み。 ◆ 注目特許 特開 2025-085599(産業経済新聞社, 2024 年) 「公営ギャンブル用プログラム、競馬用プログラム、情報処理方法及び情報処理システム」 「ChatKeiba(チャットケイバ)」の基盤特許。サンスポ記者の思考を学習した AI と対話して予想する。 新聞社の 記者の暗黙知をデータ資産化 する戦略。 ◆ 注目特許 特開 2025-023365(日本トーター, 2023 年) 「予想情報販売システム及び予想情報販売プログラム」 予想者が「口上」を述べる動画を撮影・配信して 予想情報を販売 するプラットフォーム。AI 予想とは真 逆の 「人間予想者」を価値化 する独自モデル。 「YouTuber × 競馬予想屋」の特許版。 ◆ 注目特許 出願 2025-140848(早期公開請求、CSV に公開番号未反映)(カスパペイ, 2025 年) 「資産トークン連携インタラクション型ゲーム結果処理システム」
競馬関連特許技術動向分析 1985-2025 — 配布用レジュメ 9 / 13 暗号資産(トークン)と連動するゲーム結果処理。Web3 × 競馬の挑戦的な出願。 実用化は未知数だが、 新興プレイヤーの自由な発想を象徴する。 5. 何が「勃興」しているか Explorer 共起ネットワーク分析の急上昇キーワード 図 4: 図 4: 急上昇キーワード(Growth Rate) — 「着順」+7.25 倍、「予測」+2.95 倍、「映像」+2.78 倍が顕著 過去 5 年(2016-2020)と直近 5 年(2021-2025)の比較で、以下のキーワードが急上昇: 着順 順位 指示 計算 予測 映像 +7.25 倍 +5.6 倍 +4.6 倍 +3.0 倍 +2.95 倍 +2.78 倍 3 → 32 件 — AI 予想 / レース結果処理 4 → 32 件 — 同上 4 → 27 件 — UI 改善・指示型 UX 5 → 23 件 — 統計処理・AI 18 → 74 件 — AI 予想の本格化 8 → 33 件 — 映像解析の運営応用 新規勃興語(過去ゼロ → 直近出現): 進行(17 件)、レース結果(11 件)、 ゲームシステム(9 件)、参 加(9 件)。 3 つの勃興領域: 1. AI 予想 — ソフトバンクグループ、楽天グループ、産業経済新聞社が牽引 2. 映像解析 — 富士通、JRA システムサービスが牽引 3. IoT 計測 — 村田製作所の鞭計測など
競馬関連特許技術動向分析 1985-2025 — 配布用レジュメ 10 / 13 6. 興味深い 3 つの「逆説」と「空白」 逆説 (1): 市場拡大 vs 特許停止 ウマ娘の 24 億ドルが示すように、競馬コンテンツ市場は爆発的に伸びています。 だが本分析の ゲーム 系特許は 2010 年代以降ゼロ。 特許がなくても勝てる時代になった。 逆説 (2): 全 CAGR マイナスなのに「成長リーダー」? 図 5: 図 5: Saturn V クラスタ動態マップ — 累積件数 × 5 年 CAGR の 4 象限。全クラスタが CAGR 負だが 5 つは「成 長リーダー」象限に分類 Saturn V のクラスタ動態マップでは 全 9 クラスタの CAGR が負(-25%〜-50%) 。 それでも 5 つの クラスタが「成長リーダー」象限に分類されます。これは 「衰退の中で相対的に踏ん張っている」 とい う意味であり、業界全体が縮小しているという事実を見落とさないよう注意が必要です。 空白: ギャンブル依存症対策技術がない CORE 分類で本領域に該当するのは「券・データの真正性・不正防止」 (2 件)と 「利用者適合・推奨 精度・初心者支援」(5 件)の 合計 7 件のみ。しかも、その中身を詳しく見ると—— 衝撃の事実: 政策が直接求める「利用停止・利用上限・自己排他機能」 そのものを扱う特許は、本 母集団にほぼ存在しません。 「7 件」の中身は、 KYC 認証・初心者向け推奨・キャンセル機能 等の 「周辺技術」が大半です。
競馬関連特許技術動向分析 1985-2025 — 配布用レジュメ 11 / 13 ■ 該当 7 件のうち代表的な 5 件 ◆ 注目特許 特開 2024-161294(MIXI, 2018 年) 「情報処理装置、投票受付方法及び投票受付プログラム」 投票経験の少ないユーザでも容易に投票できる ことを目的とした初心者支援装置。ユーザの過去投票履 歴を記憶し、推奨投票方式(単勝・複勝・馬連等)を AI が選択して通知する。依存症対策ではなく「初 心者支援」だが、過剰投票を防ぐ間接的効果も期待できる。 ◆ 注目特許 出願 2025-140848(早期公開請求、CSV に公開番号未反映)(カスパペイ, 2025 年) 「資産トークン連携インタラクション型ゲーム結果処理システム」 ユーザの本人確認情報に基づく KYC(顧客確認)/ AML(マネーロンダリング対策) 準拠の多層的な 認証処理 を行うシステム。年齢確認・本人確認の自動化という意味で、 依存症対策の「入口」に当たる 技術。 ◆ 注目特許 出願 2024-203379(早期公開請求、CSV に公開番号未反映)(楽天グループ, 2024 年) 「購入予約装置、購入予約方法、ならびに、プログラム」 投票券の予約時にユーザが自ら キャンセル条件を設定でき、所定時刻になると自動キャンセル される仕 組み。 「衝動的な購入を後から取り消したい」というニーズに応える、衝動買い抑制の現実的アプローチ。 ◆ 注目特許 特開 2021-168200(MIXI, 2019 年) 「情報処理装置、特典提供プログラム、及び特典提供方法」 購入した投票券が不的中だった場合でも、ユーザに楽しむ機会を提供する 技術。 発明者は池田武史氏・ 照内大丈氏。投票内容(馬番・車番・賭式・賭け金)を受け付け、 競技結果が不的中の際にユーザに特 典を提供する第 1 提供部を持つ。 実装事例 — MIXI「TIPSTAR」(競輪・オートレース投票アプリ)13: • TIP メダル: 毎日のログインで無料配布、投票に使える疑似通貨 • ガチャポイント: 当選時に貰え、ガチャを引ける権利 • 相乗り投票(ridingBet): 他ユーザーの予想に追従できる •「ポイ活機能では投票結果に関係なくポイントが付与される」運用 ビジネス上のロジック: 損失回避バイアス(人は失う痛みを得る喜びの 2 倍強く感じる) を緩和し、リテ ンションを上げる。モンスターストライクで培った ソーシャルゲームのリテンション設計を公営競技に 持ち込んだ象徴的特許。 逆説的評価:「ハズレに特典」は損失感を和らげる一方、ガチャ的中毒性と同じ構造を持つため、依存症対 策の観点では逆方向 とも言える。 依存症対策技術は薄いのに、「ハマらせる側」の特許は出ている と いう構造的非対称性を示す典型例。 なぜこうなるのか — 「企業側のインセンティブ構造の不在」: 13MIXI ニュースリリース「競輪・オートレース投票サービス『TIPSTAR』が 8 月 5 日(火)よりフルリニューアル!」 https://mixi.co.jp/news/2025/0801/43638/
競馬関連特許技術動向分析 1985-2025 — 配布用レジュメ 12 / 13 • 収益との利益相反: 依存症対策(利用上限・自己排他)は 売上を下げる方向 に作用するため、事業会 社が自発的に開発・出願する動機が弱い • 規制対応は「運用ルール」で済む: JRA の利用停止申請のような運用は ガイドライン・約款 で実装で き、特許化の必要がない • 対照的に「ハマらせる側」は売上直結: TIPSTAR の TIP メダル・ガチャ・相乗り投票は 収益とリテン ションを伸ばす ため、企業が積極的に特許化する • 結果として「政策が求める技術 ≠ 企業が出願したい技術」という インセンティブの不一致 が空白を 生む ◆ 注目特許 特開 2025-045819(ソフトバンクグループ, 2023 年) 「システム」(対話型競馬予想 AI) AI と対話して 予想を他者と共有・一緒に考える ためのシステム。「予想は孤独な決断」から「協働的な 思考プロセス」への転換を目指す。 社会的相互作用を組み込むことで衝動投票を抑制する可能性を持つ。 ■ 残り 2 件は周辺特許(外資・誤分類含む) 「券・データの真正性・不正防止」の残り 2 件は、外資の医療系特許や誤分類気味の特許(STANFORD UNIVERSITY「病理修飾神経変調療法設計」等)で、実質的に競馬の利用者保護とは無関係です。 本章のキーメッセージ: • 本格的な利用停止・上限・自己排他機能の特許はゼロに近い • 存在するのは「初心者支援」「キャンセル」「KYC」 「不的中時の楽しみ」等の周辺技術 • JRA 自身は依存症対策制度(家族による利用停止申請等)を運用しているが、これらは 特許化さ れていない運用ルールにとどまる • 政策ニーズ × 特許空白 = 先行投資の好機 7. まとめ 3 つの問いへの回答 1. どんな技術系統があるか → 運営インフラ・実競技基盤・映像解析・ゲームの 4 系統 2. どこが伸びているか → AI 予想・映像解析・IoT 計測(新興プレイヤー主導) 3. どこが衰退しているか → ゲーム・遊技機系(市場は伸びるが特許は止まる) ひと言で言うと 競馬関連特許の世界は「成熟末期」だが、 AI と IoT と生成 AI で「次の地平」が見え始めている。
競馬関連特許技術動向分析 1985-2025 — 配布用レジュメ 13 / 13 引用に使える数値の早見表 項目 総出願件数 対象期間 ピーク年と件数 直近 2024 年 値 671 件 1985-2025 年(41 年間) 2001 年 / 59 件 8件 最大クラスタシェア 46%(投票券・運営) JRA 売得金 (2024) 3.3 兆円(13 年連続増) JRA ネット投票比率 85% JRA 投票会員数 650 万人 ウマ娘累計収益 24 億ドル(約 3,790 億円) 富士通出願件数 45 件(最多) 出願人 HHI 0.0623(競争的・分散) Explorer「予測」急上昇 +2.95 倍 Explorer「映像」急上昇 +2.78 倍 Explorer「着順」急上昇 +7.25 倍 依存症対策関連特許 合計 7 件のみ(うち利用停止機能はゼロ) 主要参考資料(出所) • JRA 2024 年売得金 13 年連続増(netkeiba 2024 年集計) / 富士通製メインフレームのトータリゼータ脱却(日経 クロステック) / 富士通フロンテック → トータリゼータエンジニアリング社へ事業移管(2025 年 4 月 1 日) / 産 業経済新聞社の ChatKeiba (PR TIMES) / 楽天競馬「福来エマの AI 予想」 / ウマ娘 24 億ドル累計収益 (ファミ 通.com / Sensor Tower) / MIXI「TIPSTAR」フルリニューアル (MIXI 公式) / ギャンブル等依存症対策 推進基本計画(内閣官房)