待ち合わせ困難なユーザの支援に向けた人の探索時の視線分析

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January 16, 20

スライド概要

日常生活において,人と待ち合わせを行う場面は数多く存在する.待ち合わせスポットとして指定されやすい場所は,同じように待ち合わせをしている人によって混雑していることが多い.そのため相手を探す必要があるが,そういった状況で自身の待ち合わせ相手を見つけることは困難である.我々は,待ち合わせ相手を見つけることが得意な人と不得意な人の探索の仕方について,実際に探している時の視線ログから,違いを明らかにすることができると考えた.そこで本研究では,待ち合わせ相手を探索するタスクを用意し,その時の視線ログを取得し,人の探索が得意な人と不得意な人の探し方について,視線や頭の動きの大きさなどの違いについて分析を行った.その結果,不得意な人は既に見た場所を見返すための振り返り行動が多いことが明らかになった.

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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各ページのテキスト
1.

待ち合わせ困難なユーザの支援に向けた 人の探索時の視線分析 明治大学 総合数理学部 4年 古市冴佳 中村聡史

2.

背景

3.

背景 待ち合わせ場所 • アクセスの良い場所 • ランドマークのあるわかりやすい場所

4.

背景 待ち合わせ場所 • アクセスの良い場所 • ランドマークのあるわかりやすい場所 混雑した場所で探すことはとても大変!

5.

待ち合わせに関するアンケート調査 回答者:18〜25歳の学生62名(男性31名、女性31名) • 76%が待ち合わせ場所が混雑している割合が半分以上 • 24%が相手を見つけることに苦手意識をもっている • 63%が相手が見つからず困った経験がある 56件の困ったエピソード • 駅のどこにいるか聞いたら「東口」とだけ言われ、 どこかわからず5〜10分ほど探したが見つからなかった • 相手から写真を送られたがどこか分からなかった • スマホの充電がなくなってしまい連絡がとれなくなって困った 混雑した場所で待ち合わせ相手を見つけることに • 急に髪型や雰囲気が変わって分からなかった 苦手意識をもつ人の支援をしたい!

6.

待ち合わせに関する関連研究 • 待ち合わせ行動や待ち合わせ場所に関する研究 待ち合わせ行動を細分化 →待ち合わせやすい場所について調査 [吉冨ら, 1996] • 待ち合わせ場所の到着時間に関する研究 相手の到着を待っている時間を無くすために 到着時間を揃えることを目指す [曽我ら, 2008] [小林ら, 2015] 待ち合わせ相手を探索する際の行動に着目 視線ログの分析から人の探索の傾向を明らかにする →待ち合わせ支援につなげる

7.

仮説 苦手意識をもつ人は人の顔を見ることができない ↓ 探索行動の違いが視線の動きに現れる • 人の顔を注視できないことで待ち合わせ相手を見落とす • 似た雰囲気をもつ人に気を取られすぎてしまって苦戦する

8.

仮説 苦手意識をもつ人は人の顔を見ることができない ↓ 探索行動の違いが視線の動きに現れる • 人の顔を注視できないことで待ち合わせ相手を見落とす • 似た雰囲気をもつ人に気を取られすぎてしまって苦戦する 研究目的 混雑した場所で行う待ち合わせを想定した実験により 探索行動の特性(視線など)を明らかにする

9.

待ち合わせに関する予備実験 予備実験の目的 ・ 実験に適切な待ち合わせ場所や時間 ・ 人の探索時の視界や視線にどのような傾向がみられるか について調査 • 実験協力者: アンケート調査の回答者のうち7名(男性5名、女性2名) • 実験場所:明治大学中野キャンパス内で4ヶ所 • 実験時間:昼休み・授業合間の休み時間 • 使用した装置: 眼鏡型ウェアラブル視線計測装置「Tobii Pro Glasses 2」

10.

Tobiiの視線ログデータについて • 視線計測装置によって記録された動画 • 視線の注視位置(Gaze Point) • 眼鏡の加速度:歩行の様子 • 眼鏡の角速度:頭を左右に動かす振り向き行動

11.

実験協力者を分類 人の探索に対する苦手意識の有無によって分類 • 待ち合わせに関するアンケート調査への回答 「待ち合わせ相手を見つけることはどれくらい得意か」 • 実験時の質問の回答 人の探索が得意なグループ(4名) • 普段、自分から待ち合わせ相手を見つけることが多い • 待ち合わせに困った経験がない 人の探索が得意ではないグループ(3名) • 普段、待ち合わせ相手に見つけられることが多い • 待ち合わせ相手との連絡手段に対する依存度が高い

12.

予備実験の結果 実験に適切な場所や時間について調査 • 実験場所:4ヶ所から2ヶ所の待ち合わせに絞る • 実験時間:昼休みの時間帯

13.

予備実験の結果 実験に適切な場所や時間について調査 • 実験場所:4ヶ所から2ヶ所の待ち合わせに絞る • 実験時間:昼休みの時間帯 視界や視線にどのような傾向が見られるか調査 人の探索が得意なグループ • 誰を見ているのかはっきりとわかることが多い 人の探索が得意ではないグループ • 常に視線が動いていて 誰を見ているのかわからないことが多い • 頭を左右に動かす振り返りを何度も行っていた

14.

本実験 本実験の目的 探索行動の傾向が人の特性としていえるかを明らかにする (視界や視線の動き方など) 複数日にわたって待ち合わせを想定した実験を実施 待ち合わせ場所に探索対象となる待ち合わせ相手を配置し 実験協力者に探してもらうタスク • 実験協力者:予備実験と同じ7名 • 時間 ・ 場所:予備実験より決定した条件 2ヶ所×7名×3日=42データ

15.

待ち合わせ場所について 場所 ラウンジ 食堂 提示情報 6階の南側 食堂 場所の特徴 ・ 細長い空間 ・ 幅と奥行きが広い空間 ・ テーブルごとに人が集まる ・ 人の密度が多い ・ 人の流れは少ない ・ 1方向に人の流れがある

16.

実験協力者への指示・インタビュー 実験協力者への指示 待ち合わせ場所については大まかな情報のみを提示 例:「食堂にいる」 実験協力者への制限: 待ち合わせ対象者と連絡を取り合うことはしない • 情報の統制 • 探索を行うことなく相手を見つける可能性を避ける 探索後に行ったインタビュー • 見つけることがどれくらい難しかったか • 待ち合わせ対象者だと確信した要素は何だったのか • 待ち合わせ対象者が同じ服を着ている姿を見たことがあるか

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待ち合わせ対象者について 待ち合わせ対象者 • 実験協力者と同じ研究室に所属している人 • 週に1回以上実験協力者と会っている人 待ち合わせ対象者への指示 待ち合わせ対象者の着席する位置・向きについて指定 待ち合わせ対象者への制限: 待機中に『探索中の実験協力者』を探さない →実験協力者の探索に影響を与えてしまうことを避ける

18.

結果:所要時間(秒) ラウンジ 食堂 1回目 2回目 3回目 A B C D E F G 33 28 25 34 40 26 30 25 26 35 33 179 29 41 16 13 25 27 73 17 20 人の探索が得意 1回目 2回目 3回目 A B C D E F G 40 4 167 110 141 83 6 11 22 52 0 15 34 44 人の探索が得意ではない 47 35 24 97 21 292 60

19.

結果:角速度値(ラウンジ) 青線はY軸まわりの角速度値 実験協力者が頭部を左右に回転させたことを示す 実験協力者D (人の探索が得意なグループ) 実験協力者F (人の探索が得意ではないグループ)

20.

結果:角速度値(ラウンジ) 青線はY軸まわりの角速度値 実験協力者が頭部を左右に回転させたことを示す 実験協力者D (人の探索が得意なグループ) 実験協力者F (人の探索が得意ではないグループ)

21.

結果:角速度値(振り返り行動) ラウンジ(平均:3.52回) 1回目 2回目 3回目 A B C D E F G 3 1 0 2 3 3 3 2 4 2 2 25 7 10 0 0 2 4 7 0 0 食堂(平均:12.43回) 個人平 均 1.67 1.67 1.33 2.67 11.67 3.33 4.33 人の探索が得意 1回目 2回目 3回目 A B C D E F G 8 20 22 40 9 0 7 9 3 9 8 10 7 4 15 6 35 6 人の探索が得意ではない 個人平 均 6.00 7.00 11.00 18.5 16.33 17.67 7.00

22.

結果:角速度値(振り返り行動) ラウンジ(平均:3.52回) 1回目 2回目 3回目 個人平 均 食堂(平均:12.43回) 1回目 2回目 3回目 個人平 均 A 3 2 0 1.67 A 8 0 10 6.00 B 1 4 0 1.67 B 7 7 7.00 C 0 2 2 1.33 C 20 9 4 11.00 D 2 2 4 2.67 D 22 15 18.5 E 3 25 7 11.67 E 40 3 6 16.33 F 3 7 0 3.33 F 9 9 35 17.67 G 3 10 0 4.33 G 8 6 7.00 人の探索が得意 人の探索が得意ではない 振り返り回数:探索が得意なグループ<探索が得意ではないグループ →その振り返り時に実際に何を見ているのか動画から確認を行った

23.

結果:角速度値(振り返り行動) 人の探索が得意なグループ まだ見ていなかった場所を見るための振り返り行動 =初見の振り返り

24.

結果:角速度値(振り返り行動) 人の探索が得意ではないグループ 既に見た場所を見直すための振り返り行動 =見直しの振り返り

25.

結果:視線の注視位置 探索が得意なグループ:人の顔をしっかり見ている

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結果:視線の注視位置 探索が得意ではないグループ:人の顔をあまり見ていない 見てもすぐ目をそらす/遠くの人しか見ない/後ろ姿を見てることが多い

27.

結果:視線の注視位置 OpenPoseを用いて 実験協力者が探索時にどれくらい顔を見ているのか計算 • 顔の両目、鼻、両耳を1フレームごとに取得 • 視線の注視位置が顔と重なっているフレームの割合を計算 • 正面:両目と鼻が取得 • 横 :目か鼻が取得 • 後ろ:耳のみ取得

28.

結果:視線の注視位置 顔を見ていた割合(%) 食堂において 実験協力者が人の顔を見ている割合の平均 定性的な分析では差があったが 人の探索が得意 人の探索が得意ではない この計算からは差が見られなかった →Gazeの取得率・動画の解像度が高くなかったことが原因

29.

考察 人の探索が得意ではないグループ 見直しの振り返り行動が多い • 行っていない時でも多くの見直し行動が見られた • 1度見た人をすぐに2、3回見直す

30.

考察 人の探索が得意ではないグループ 待ち合わせ対象者の顔をはっきりと認識できるにも 関わらず気が付くことができなかったタスク

31.

考察 人の探索が得意ではないグループ 待ち合わせ対象者の顔をはっきりと認識できるにも 関わらず気が付くことができなかったタスク 探索時に人の顔を見るかについて質問 • 「後ろ姿や横顔だとしっかり見ることができるが、 距離が近い人は目が合わないようにしている」 • 「シャイなので人に顔を見られないように気をつけている」 苦手意識をもつ人は人の顔を見ることができていない

32.

考察 人の探索が得意なグループ • 振り返り行動の回数が少ないタスクが多かった • しっかり誰を見てるかわかりやすかった ↓ ちゃんと顔を見ていることがわかる • 一方で時間がかかり振り返り行動が多いタスクもあった (食堂:Fの1、Gの1、3回目) 「待ち合わせ対象者と似ている人が気になって 何度もその人を見てしまった」 待ち合わせ相手に似ている人がいることで 振り返り行動が多くなる

33.

考察 探索が困難になる条件 それ以外の探索でも • 「待ち合わせ対象者が思っていたより髪が短く感じた」 • 「絶対にこの服を着ていると思っていた」 • 「顔が痩せているように感じた」 などの回答 →思い込みが探索に影響を与えていることも考えられる 振り返り行動や見直し行動が多いほど、 待ち合わせ対象者を見落とすことが多く見られた →振り返り行動が探索をより困難にさせている可能性

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苦手意識をもつ人への支援方法 待ち合わせ相手の探索に苦手意識を持つ人への 支援方法について検討 • 今回の実験より振り返り行動や見直し行動が探索を困難 にさせる原因として考えられる →振り返り行動を行わないような 指示や探し方について明らかにしていく • 人の顔をじっと見ることのできない人に対し、 直接見ることなく待ち合わせを行える仕組みの実現 →周辺の待ち合わせ対象者を画像として 一覧確認できる仕組みなど

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まとめ 探索時の視線ログデータを収集 →探索行動に、どのような違いが見られるか調査 混雑した場所で行う待ち合わせを想定した実験 • 人の探索が得意ではない人は、人の顔をあまり見ない →振り返り行動や見直し行動が多い • 待ち合わせ相手と似ている人がいることや自分の思い 込みで探索が困難になる 今後の展望 より実際の待ち合わせに近い環境で実験を行い 視線ログデータの収集と分析を引き続き行う 新宿駅や渋谷駅などの有名な待ち合わせスポットを実験場所とする