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February 01, 22
スライド概要
自動車運転に苦手意識をもつ初心者ドライバやペーパードライバが多くいる.初心者ドライバやペーパードライバは他のドライバと比べると運転の経験が不足しており,苦手意識を克服するためには運転の回数を重ねることが重要である.そこで我々は練習運転の効果を高めドライバの技能向上を支援するために,内発的動機づけに着目した.運転前に提示する選択肢の中から運転時に気をつけることをドライバ自身が選択するシステムを提案した.提案手法による効果を検証するために,運転時に気をつけることを3つの選択肢の中からドライバ自身が選択する場合と,実験者から指示する場合について比較検証を行った.実験の結果,不必要なハンドルの切り足しや戻しをしないという技能において,内発的動機づけの方が外発的動機づけよりも良い結果となっていたが,スピードを一定にする,左右の幅に気をつけるという技能では両者に差がなかった.
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
⾃⼰決定に基づく内発的動機づけが 運転に及ぼす影響 明治⼤学 総合数理学部 3年 中川由貴 松⽥さゆり 船﨑友稀奈 ⿃居武史 松⼭直⼈ 澄川瑠⼀ 中村聡史 ⾼尾英⾏ ⼩松孝徳 (明治⼤学) (株式会社SUBARU) 1
-背景⾃動⾞運転において 初⼼者ドライバ や ペーパードライバ は多い 2
-背景⾃動⾞運転において 初⼼者ドライバ や ペーパードライバ は多い 新規免許交付件数 25,000,000 20,000,000 20,000,000 15,000,000 10,000,000 5,000,000 0 平成30年 令和元年 令和2年 3
-背景⾃動⾞運転において 初⼼者ドライバ や ペーパードライバ は多い 新規免許交付件数 運転頻度 25,000,000 数ヶ⽉に1回以下 20,000,000 20,000,000 20% 15,000,000 10,000,000 5,000,000 0 平成30年 令和元年 令和2年 4
-クラウドソーシングでのアンケートYahoo!クラウドソーシングで ⾃動⾞運転に関するアンケート調査を実施 対象:運転免許を保有する男⼥ 2000⼈ 質問:全22項⽬ 運転への 苦⼿意識 を調査 5
-クラウドソーシングでのアンケートQ.あなたは運転が得意ですか?苦⼿ですか? 初⼼者ドライバ ペーパードライバ その他のドライバ 67% 13% とても苦⼿ 苦⼿ 49% 6
-クラウドソーシングでのアンケートQ.あなたは運転が得意ですか?苦⼿ですか? 初⼼者ドライバ ペーパードライバ その他のドライバ とても苦⼿ 初⼼者ドライバやペーパードライバはその他のドライバに⽐べて 運転に苦⼿意識をもっている 苦⼿ 7
-背景苦⼿意識の放置 運転を避けることにつながる 運転への動機づけを促すこと 運転技能が向上すること が必要 8
-動機づけ- 内発的動機づけ 外発的動機づけ ¥ ⾏動⾃体が⽬的となっている 外的報酬や強制により⾏動している 9
-動機づけ内発的動機づけの⽅が外発的動機づけに⽐べて 豊かな経験やより良い問題解決を導く 効果が維持しやすい 10
-動機づけ内発的動機づけの⽅が外発的動機づけに⽐べて 豊かな経験やより良い問題解決を導く 効果が維持しやすい 運転に対して内発的動機づけを誘発すれば 運転技能の向上や苦⼿意識の軽減ができる 11
-⽬的- ドライバに対して内発的動機づけを誘発し それにより運転技能を向上させる 12
-仮説- 内発的に動機づけられているドライバは 外発的に動機づけられているドライバに⽐べて その運転に注⼒し,運転技能も向上する 13
-関連研究内発的動機づけは⾃⼰決定感と⾃⼰有能感によって形成される [碓井ら 1992] 内発的動機づけ ⾃⼰決定感 ⾃⼰有能感 14
-関連研究事前に意思を選択することでタスクへの内発的動機づけが ⾼まり, タスクの遂⾏率が向上する[神⼭ら 2019] 15
-提案⼿法ドライバに運転技能に関する3つの選択肢を提⽰し, その中から運転時に「気をつけること」を選択してもらう 左右の幅 スピード⼀定 修正舵 16
-提案⼿法ドライバに運転技能に関する3つの選択肢を提⽰し, その中から運転時に「気をつけること」を選択してもらう 左右の幅 スピード⼀定 修正舵 ⾃⾝で選択することによる ⾃⼰決定感 により内発的動機づけを誘発する 17
-技能の選択肢ドライバに提⽰する運転技能に関する選択肢 左右の幅に気をつける スピードを⼀定にする 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 18
-技能の選択肢ドライバに提⽰する運転技能に関する選択肢 左右の幅に気をつける 狭い道での⾛⾏が苦⼿ スピードを⼀定にする 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 19
-技能の選択肢ドライバに提⽰する運転技能に関する選択肢 左右の幅に気をつける 安全運転で重要 狭い道での⾛⾏が苦⼿ スピードを⼀定にする 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 20
-技能の選択肢ドライバに提⽰する運転技能に関する選択肢 左右の幅に気をつける 安全運転で重要 狭い道での⾛⾏が苦⼿ スピードを⼀定にする 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 安定した運転に必要 21
-実験内発的動機づけ条件 と 外発的動機づけ条件 とで⽐較検証 22
-実験内発的動機づけ条件 と 外発的動機づけ条件 とで⽐較検証 ドライバ⾃⾝が選択する 気をつけること 23
-実験内発的動機づけ条件 と 外発的動機づけ条件 とで⽐較検証 実験者から指⽰される 左右の幅に気をつけて 運転してください
-実験ドライビングシミュレータ上で運転をしてもらう ドライビングシミュレータ 実験協⼒者 ⼤学⽣・⼤学院⽣ 27名
-実験|コース150m 全⻑ 400m 90° カーブ 64m 半径64m, ⾓度90° 道幅 5m 150m 環境 昼モード, 夜モード 5m 26
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-実験⼿順- 1. 練習運転 2. 選択(指⽰) 3. 本番運転 4. アンケート 29
-実験⼿順- 1. 練習運転 2. 選択(指⽰) 3. 本番運転 4. アンケート シミュレータに慣れるため, 昼夜それぞれのコースを2回以上 納得するまで運転してもらう ※⾞速は40km/h〜60km/h程度にするように指⽰ 30
-実験⼿順- 1. 練習運転 2. 選択(指⽰) 3. 本番運転 4. アンケート 内発的動機づけ群 選択肢の中から気をつける技能を1つ選択 外発的動機づけ群 実験者から気をつける技能を指⽰ 31
-実験⼿順- 1. 練習運転 2. 選択(指⽰) 3. 本番運転 4. アンケート 昼のコース5回, 夜のコース5回を シャッフルした計10回を運転してもらう ※事故を起こした場合はそのコースを セットの最後に再度運転してもらう 32
-実験⼿順- 1. 練習運転 2. 選択(指⽰) 3. 本番運転 4. アンケート 休憩を挟んで3回繰り返す 33
-実験⼿順- 1. 練習運転 2. 選択(指⽰) 3. 本番運転 4. アンケート 実験後に主観評価として 選択または指⽰された技能について どのくらい意識できたかを調査 34
-分析⽅法- 『左右の幅に気をつける』 道路の中央と⾞体のズレ を 積分計算して求めた 35
-分析⽅法- 『スピードを⼀定にする』 コースを⾛⾏している間の 速度の標準偏差 を求めた ⾛⾏開始直後は⼀定速度に達するまで加速し続けているため, 標準偏差を出す区間は100m通過後〜コース終了地点まで 36
-分析⽅法- 『不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない』 修正舵 の回数をカウントして求めた 操舵⾓の時間微分値の正負が 変わったタイミングでカウント ※最も上⼿なカーブ⾛⾏でも1回はカウントされる 37
-左右の幅に気をつける選択した技能ごとの中央からのズレ 内発的動機づけ群 中 央 か ら の ズ レ の 積 分 値 外発的動機づけ群 スピードを⼀定にする 120 90 60 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 30 0 1 2 3 試⾏回数(回) 4 5 中 央 か ら の ズ レ の 積 分 値 120 90 60 左右の幅に気をつける 30 0 1 2 3 4 5 試⾏回数(回) 38
-左右の幅に気をつける選択した技能ごとの中央からのズレ 内発的動機づけ群 中 央 か ら の ズ レ の 積 分 値 外発的動機づけ群 スピードを⼀定にする 120 90 60 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 30 0 1 2 3 試⾏回数(回) 4 5 中 央 か ら の ズ レ の 積 分 値 120 90 60 左右の幅に気をつける 30 0 1 2 3 4 5 試⾏回数(回) 内発・外発ともに選択した技能による差はない 39
-選択•指⽰した技能の効果『左右の幅に気をつける』について l なるべく道路の中央を⾛るという⾏動に結び付かなかった l 道路の中央がわかりにくい 40
-選択•指⽰した技能の効果『左右の幅に気をつける』について l なるべく道路の中央を⾛るという⾏動に結び付かなかった l 道路の中央がわかりにくい 実験参加者 ⾞体が左にズレているように感じた 41
-選択•指⽰した技能の効果『左右の幅に気をつける』について l なるべく道路の中央を⾛るという⾏動に結び付かなかった l 道路の中央がわかりにくい 実験参加者 ⾞体が左にズレているように感じた 選択肢として適切でなかった可能性 42
-選択•指⽰した技能の効果『左右の幅に気をつける』について l なるべく道路の中央を⾛るという⾏動に結び付かなかった 今後の分析では l 道路の中央がわかりにくい 「スピードを⼀定にする」と「不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない」 実験参加者 についてのみ議論する ⾞体が左にズレているように感じた 選択肢として適切でなかった可能性 43
-不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない- 内発と外発の⽐較 14 選択した技能ごとの⽐較 16 外発的動機づけ群 スピードを⼀定にする 14 12 修 正 舵 回 数 ︵ 回 ︶ 左右の幅に気をつける 修 正 舵 回 数 ︵ 回 ︶ 10 8 6 内発的動機づけ群 4 2 12 10 8 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 6 4 2 0 0 1 2 3 施⾏回数(回) 4 5 1 2 3 4 5 施⾏回数(回) 44
-不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない- 内発と外発の⽐較 14 選択した技能ごとの⽐較 16 外発的動機づけ群 スピードを⼀定にする 14 12 修 正 舵 回 数 ︵ 回 ︶ 左右の幅に気をつける 修 正 舵 回 数 ︵ 回 ︶ 10 8 6 内発的動機づけ群 4 2 12 10 8 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 6 4 2 0 0 1 2 3 4 5 施⾏回数(回) 内発的動機づけ群の⽅が少ない傾向 1 2 3 4 5 施⾏回数(回) 45
-不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない- 内発と外発の⽐較 14 選択した技能ごとの⽐較 16 外発的動機づけ群 10 スピードを⼀定にする 14 12 修 正 舵 回 数 ︵ 回 ︶ 左右の幅に気をつける 修 修正舵については⾃⾝で選択することによる動機づけの⽅が 正 舵 他者からの指⽰による動機づけよりも技能向上の効果が⾼い 回 12 10 8 6 数 ︵ 回 ︶ 内発的動機づけ群 4 2 8 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 6 4 2 0 0 1 2 3 4 5 施⾏回数(回) 内発的動機づけ群の⽅が少ない傾向 1 2 3 4 5 施⾏回数(回) 46
-スピードを⼀定にする内発と外発の⽐較 0.07 外発的動機づけ群 0.06 速 度 の 標 準 偏 差 0.05 0.04 内発的動機づけ群 0.03 0.02 0.01 0 1 2 3 4 5 試⾏回数(回) 47
-スピードを⼀定にする内発と外発の⽐較 0.07 外発的動機づけ群 0.06 速 度 の 標 準 偏 差 0.05 0.04 内発的動機づけ群 0.03 0.02 0.01 0 1 2 3 4 5 試⾏回数(回) 両群に差はない 48
-内発的動機づけの効果- 不必要なハンドルの切り⾜しや戻し スピードを⼀定にする ハンドルの物理的な操作量を 調節するという直接的な操作による アクセルの踏み込み⽅や アクセル操作量を組み合わせた 間接的な操作による 49
-内発的動機づけの効果- 不必要なハンドルの切り⾜しや戻し スピードを⼀定にする ハンドルの物理的な操作量を 調節するという直接的な操作による アクセルの踏み込み⽅や アクセル操作量を組み合わせた 間接的な操作による アクセル操作量・アクセルを踏み⾜した回数 についても分析 50
-アクセル操作量スピードを⼀定にする 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 1.2 1.2 1 ア ク セ ル 操 作 量 1 内発的動機づけ群 ア ク セ ル 操 作 量 0.8 0.6 0.4 外発的動機づけ群 0.2 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 1 2 3 試⾏回数(回) 4 5 1 2 3 4 5 試⾏回数(回) 内発的動機づけ群は外発的動機づけ群に⽐べて アクセル操作量が多い 51
-アクセルを踏み⾜した回数スピードを⼀定にする ア ク セ ル を 踏 み ⾜ し た 回 数 ︵ 回 ︶ 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 25 外発的動機づけ群 20 15 10 内発的動機づけ群 5 0 1 2 3 試⾏回数(回) 4 5 ア ク セ ル を 踏 み ⾜ し た 回 数 ︵ 回 ︶ 25 20 15 10 5 0 1 2 3 4 5 試⾏回数(回) 内発的動機づけ群は外発的動機づけ群に⽐べて アクセルを踏み⾜した回数が少ない 52
-考察- 内発的動機づけ群は外発的動機づけ群に⽐べて アクセルの操作量は多いものの アクセルを踏み⾜す回数は少なかった 内発的動機づけ群は 少ない回数 で ⼤きな量 の アクセル操作をすることで スピードを⼀定にさせたり修正舵を減らしたりしようとした 53
-タスクの適切性- ハンドルの⾜し戻しをしない スピードを⼀定にする 直接的なハンドル操作による アクセル操作やハンドル操作の 複合的な操作による 54
-タスクの適切性- ハンドルの⾜し戻しをしない スピードを⼀定にする 直接的なハンドル操作による アクセル操作やハンドル操作の 複合的な操作による 内発的動機づけの効果があった 55
-タスクの適切性- ハンドルの⾜し戻しをしない スピードを⼀定にする 操作が直接的でわかりやすい運転技能において 内発的動機づけが作⽤しやすい 直接的なハンドル操作による アクセル操作やハンドル操の 複合的な操作による 内発的動機づけの効果があった 56
-主観評価各技能について「どのくらい意識しましたか?」という質問に対して 1〜5の5段階で回答を求めた 5 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 内発 外発 スピードを⼀定にする 内発 外発 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 57
-主観評価各技能について「どのくらい意識しましたか?」という質問に対して 1〜5の5段階で回答を求めた 5 4.5 4 3.5 3 < 2.5 2 1.5 1 内発 外発 スピードを⼀定にする 内発 外発 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 58
-主観評価各技能について「どのくらい意識しましたか?」という質問に対して 1〜5の5段階で回答を求めた 5 修正舵回数は 4.5 内発的動機づけ群の⽅が少なかった 4 3.5 3 < 2.5 2 1.5 1 内発 外発 スピードを⼀定にする 内発 外発 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 59
-主観評価各技能について「どのくらい意識しましたか?」という質問に対して 1〜5の5段階で回答を求めた 5 修正舵回数は 4.5 内発的動機づけ群の⽅が少なかった 4 3.5 3 < 外発的動機づけ群は 2 意識したつもり になって 1.5 技能向上の効果が低くなる可能性 2.5 1 内発 外発 スピードを⼀定にする 内発 外発 不必要なハンドルの切り⾜しや戻しをしない 60
-今後の課題シミュレータの改善 ハンドル操作の遅延やエンジンブレーキの効き⽅の違いなど 実⾞とは異なる部分の改善 動機づけの検証 選択による内発的動機づけの効果の検証 選択肢の再選定 難易度の統⼀と⾔い回しの吟味 61
-まとめ背景|初⼼者ドライバやペーパードライバは多い ⽬的|内発的動機づけによる運転技能向上 ⼿法|運転前の選択により技能への内発的動機づけを誘発 結果|内発的動機づけにより修正舵が減少する傾向 展望|適切な選択肢の選定やシミュレータの改善 62