CN124-スポーツ記者の試合の振り返りを容易化するフラグ付与手法の取材現場における実践的検証

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January 23, 25

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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1.

スポーツ記者の試合の振り返りを容易化する フラグ付与手法の取材現場における実践的検証 明治大学 萩原亜依,中村聡史

2.

背景:スポーツのインタビュー 「今日の調子はいかがでしたか?」 「今回の勝因/敗因は何ですか?」 選手が回答しづらい質問 曖昧な質問ばかりしていると信頼関係を損なう − 選手も自分のプレーをしっかりと見て考えた上で 質問をされると喜んで話してくれる − 試合を掘り下げた質問をすることが理想 2025/1/23 1

3.

背景:理想的な質問が思いつかない要因 マルチタスク 時間的制限 プレーに関するメモ 記事構成・質問作成 取材開始までの 時間が短い 写真撮影,SNS投稿 カメラマンや広報的役割も 担うことがある 2025/1/23 私はいつも10〜15分後に 取材が始まるスケジュール感 2

4.

背景:理想的でない質問しか思いつかない要因 プレーに関するメモ 余裕がないから取材開始までの 記事構成・質問作成 時間が短い 理想的な質問が思いつかない 写真撮影,SNS投稿 カメラマンや広報的役割も 担うことがある 2025/1/23 私はいつも10〜15分後に 取材が始まるスケジュール感 3

5.

振り返り手法:試合を深掘りする質問作成支援 フェンシングにおける選手の立ち位置を可視化 選手Aの立ち位置 選手Bの立ち位置 2025/1/23 4

6.

振り返り手法:試合を深掘りする質問作成支援 振り返りたいと感じたシーンをフラグとして利用 ポジティブフラグ ネガティブフラグ 2025/1/23 5

7.

振り返り手法:利点 必要最低限の操作で これまで見れなかった 情報を提示 フラグによって 短時間で振り返り可能 記者は試合前撮影開始ボタンを押し フラグを記録するだけ 試合中にフラグ付与することで 振り返る場所が即座にわかる 2025/1/23 6

8.

振り返り手法:利点 必要最低限の操作で これまで見れなかった 情報を提示 実際の業務を行いながら フラグ付与可能か? 2025/1/23 フラグによって 短時間で振り返り可能 これまでに検証済み 理想的な質問が増加 選手からも記者からも高評価 7

9.

フラグ付与手法:入力機器 ◼ PCの利用が難しい要因:写真撮影 − 観戦中は望遠レンズを装着した一眼レフカメラを所持 − スマートウォッチを採用 ◼ ウェアラブルデバイスを用いた入力 − スマートウォッチの方が記録回数が多い [Volsa+ 2024] − 快適性が高く,反応時間が短い 2025/1/23 [Hernandez+ 2016] • Volsa, S., Lewetz, D., Mlakic, V., Bertagnoli, C., Hochsto g̈ er, S., Rechl, M., Sertic, H., Batinic, B. and Stieger, S.: Development of an open-source solution to facilitate the use of one-button wearables in experience sampling designs, Behavior Research Methods, pp. 1–24 (2024). • Hernandez, J., McDuff, D., Infante, C., Maes, P., Quigley, K. and Picard, R.: Wearable ESM: differences in the experience sampling method across wearable devices, Proceedings of the 18th international conference on humancomputer interaction with mobile devices and services, pp. 195–205 (2016). 8

10.

フラグ付与システム ◼ シングルタップでフラグを記録 ◼ フラグ付与時の思考を減らす − フラグの種類を2種類から1種類に ◼ 1試合に複数セット含まれていることを考慮 自動遷移 スラ イ ド セッ ト 開始 セッ ト 開始 フラグ セッ ト 終了 2025/1/23 セッ ト 終了 試合終了ま で 繰り 返す 9

11.

実験目的 実際の取材現場で業務をこなしながら あとで振り返りたいシーンに フラグ付与可能かどうかを検証 2025/1/23 10

12.

試合会場におけるフラグ付与実験:概要 ◼ 明大スポーツOGOB 2名 − フェンシングの取材経験が3年以上 − スポーツ記者経験は4年 ◼ 10, 11月に行われたフェンシングの2大会 − フラグ付与実験 − 半構造化インタビューを実施 2025/1/23 11

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実験1:関東学生選手権の結果 付与フラグ数 ◼ 個人戦 30個,団体戦 21個のフラグ 半構造化インタビューの結果 ◼ 業務を行いながらのフラグ付与は問題なくできた ◼ 写真撮影を優先しつつフラグ付与を行った ◼ フラグの種類を1種類にしたことで迷いなく ボタンを押せた ◼ セット開始・終了を押し忘れて嫌な気持ちになった 2025/1/23 12

14.

実験2に向けたシステム改良 ◼ セット管理機能の削除 − 動画の撮影時間,再生時間をもとにフラグ付与箇所を特定 試合終了ま で繰り 返す 2025/1/23 13

15.

実験2:全日本選手権における結果 付与フラグ数 ◼ 団体戦に20個のフラグ 半構造化インタビュー結果 ◼ 業務を行いながらのフラグ付与は問題なくできた ◼ 体感5秒遅れほどで付与 ◼ 直前のフラグを削除する機能があるとよりよい ◼ フラグの種類を増やしてもいい 2025/1/23 14

16.

実験結果 実際の取材現場で業務をこなしながら あとで振り返りたいシーンに フラグ付与可能かどうかを検証 フラグ付与可能であることが明らかになり 提案手法の実現可能性が示された 2025/1/23 15

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考察:ラウンドごとのフラグ付与傾向 初戦のフラグ数が少ない − 序盤から点差を広げる展開 − 試合が圧倒的な展開だとフラグ数が減少する可能性 フラグ付与者 記者1 記者2 2025/1/23 ラウンド フラグ数 (個) 試合結果 2回戦 4 45-21 準決勝 9 45-34 決勝 8 45-32 2回戦 4 45-32 準決勝 6 45-34 決勝 10 45-32 16

18.

考察:各試合のフェーズごとのフラグ付与傾向 記者1は,相手と点差が小さいシーンで 特にフラグ数が多い傾向 ラウンド 2回戦 準決勝 決勝 セット 1~3 4~6 7~9 1~3 4~6 7~9 1~3 4~6 7~9 フラグ数(個) 2 2 0 1 3 5 5 1 2 記者2は,各選手の最終出場試合で意識的に付与し 決勝は試合終盤にフラグが集中 ラウンド 2回戦 準決勝 決勝 セット 1~3 4~6 7~9 1~3 4~6 7~9 1~3 4~6 7~9 フラグ数(個) 3 0 1 3 1 2 1 1 8 2025/1/23 17

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考察:点差とフラグ数の関係 点差とフラグ数には強い負の相関あり(相関係数:-0.88) 2025/1/23 18

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フラグ付与タイミング 動 き 他 者 2025/1/23 牽制しあって試合が動かない場面 普段と違う動きをしたシーン 選手がガッツポーズや雄叫びを上げた場面 ベンチの選手や観客が盛り上がった場面 19

21.

記事執筆への応用可能性 記者2 「記事を書く際に振り返るためにフラグ付与した」 「通常の取材では,記事を書くために試合の内容について 質問することもあったので,このシステムがあれば そういう質問をしなくて済む」 不必要な質問を聞く必要がなくなり 取材の質が向上する可能性 記事執筆においても活用できる 2025/1/23 20

22.

展望 ◼ 実際の取材現場で使えるシステムの開発 − 動画のリアルタイム処理 − 可視化方法や提示する情報の検討 − スマートフォン用のインタフェースの検討 ◼ 実際にインタビューをやってもらう実験 − 記者・選手のコミュニケーションの変化 2025/1/23 21