化粧品に対するクチコミの信憑性判定に向けたクチコミ文章の調査

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March 01, 21

スライド概要

化粧品を購入する際の情報収集の手段として,インターネット上のクチコミを利用する人は多い.一方で,いいかげんな評価や誇張表現などを含むクチコミが存在するうえ,ステルスマーケティングが行われている可能性があることから,情報の信憑性に問題がある.ここで化粧品のクチコミは,実際の使用状況が判断できないことが多く,また期待する効果によってユーザの評価が異なるなど,信憑性判断が難しい.これまでにも情報の信憑性に関する研究は行われてきたが,化粧品に特化したものはない.そこで本研究では,化粧品の特性を考慮した信憑性評価システムの実現を目指し,クチコミの文章のみに着目した調査を行った.その結果,同じクチコミを提示しても人によって信憑性の評価は異なることや,いくつかの評価基準があることが明らかになった.また,信憑性の評価基準についても検討した.

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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各ページのテキスト
1.

C14-3 化粧品に対するクチコミの信憑性判定に向けた クチコミ文章の調査 明治大学 総合数理学部 濱野 花莉 中村 聡史

2.

日常的な化粧 • 化粧は理想の自分を実現する手段 • 日常の場面によって化粧を変える Øオフィス Øデート Ø女子会 Øパーティ

3.

日常的な化粧 78.9%の女性が化粧をする! 化粧の頻度(15~64歳) 行っていない 普段の生活でしたことがない 特別な時だけ行う 毎日行う 21.1 24.8 19.7 ときどき行う 34.4 ほぼ毎日行う N=1500 2019 ポーラ文化研究所調べ

4.

化粧品の選択 • 多様な化粧品が開発されている 例:ファンデーション 乾燥しない! • 自分に合う化粧品を選ぶのは難しい もし購入に失敗したら… Ø肌荒れのリスク シミを隠す! Øお金が無駄になる Øずっと使わないといけない ➡購入前の情報収集は大事! 肌にやさしい! 崩れにくい!

5.

ネット上のクチコミ • メリット Øユーザが多く,様々な意見を手軽に閲覧できる • デメリット Ø情報の質が低い • 専門知識のないユーザ • 誇張表現を含むクチコミ Øステマの可能性

6.

これまでの信憑性評価手法 • グループ単位で偽のレビュアーグループを検出[Mukherjee 2012] Ø個人単位で検出するより容易 Øステマに有効 • サクラチェッカー ØAmazonのレビューから「サクラ度」を判定 Øステマに有効 ➡ステマ以外の質の低いクチコミに対応できない 化粧品に特化していない

7.

化粧品のクチコミの特性 • 消費者の個人差が大きい → 意見が分かれやすい 肌質,パーソナルカラー,化粧の好み etc. • 本当にその商品を使っているのか判断できない • どの程度使い込んでいるのか判断できない Ø試供品が配布されていることもある Ø一定期間以上の使用で効果が出るものも多い • 複数の化粧品を併せて使用することが多い 例:化粧下地+ファンデーション これらの特性を同時に持ち合わせている

8.

本研究における信憑性の判断 • クチコミが真実かどうかを完璧に判別するのは不可能 • 信憑性の判断が苦手なユーザの手助けをしたい! 客観的な判断をシステムにさせる + 判断がうまい人の基準を共有する

9.

大目的 化粧品のクチコミに特化した信憑性評価システムの実現

10.

目的 システム実現に向けた信憑性評価軸の検討 • 化粧をする人への調査 Ø化粧に対する意識 Ø化粧品の情報収集手段 Øどのようなクチコミを信用するのか • クチコミの文章に着目したデータセット構築 • 信憑性評価軸の検討

11.

化粧をする人への調査:概要 • クラウドソーシングで実施 • 2000名(男性622名,女性1318名,不明60名) • 不真面目な回答者の除外 化粧頻度について「ほとんどしない(週1日未満)」と回答した426名, 質問とは無関係な単語や意味のない文字列を記入した11名などの計453名 →1547名(男性283名,女性1224名,不明40名)

12.

化粧をする人への調査:参考にする情報 • 回答者の多くは30〜50代 • 化粧を週5〜7日程度する人が60.6% • 化粧品の情報収集 化粧品購入時には周囲の人や クチコミサイトから新たに 情報を得る 742 800 651 600 736 596 549 557 530 593 509 502 400 315 290 307 188 200 73 96 0 情報を得る手段 YouTube 紙 媒 体 SNS テ レ ビ CM 友 人 ・ 家 族 ク チ コ ミ サ イ ト 買う時に参考にする情報 特 に な い そ の 他

13.

化粧をする人への調査:参考にする情報 化粧の好き嫌いと購入時参考にする情報の関係 (太字は好き嫌い度合いごとの利用する情報源上位2つ) ➡「とても嫌い」以外の人の多くはクチコミサイトを参考にする 友人・ 家族 テレビ CM 紙媒体 SNS YouTube クチコミ サイト 特にない その他 70 43 45 54 32 62 6 2 好き(584) 266 181 207 217 121 291 32 32 どちらでもない(627) 240 187 180 144 72 222 105 32 62 40 48 33 17 88 45 11 3 2 1 4 3 5 8 0 とても好き(126) 嫌い(194) とても嫌い(16)

14.

化粧をする人への調査:信用の判断基準 信用できるクチコミの特徴 信用できないクチコミの特徴

15.

化粧をする人への調査:信用の判断基準 信用できるクチコミの特徴 信用できないクチコミの特徴 文章に関する内容

16.

化粧をする人への調査:信用の判断基準 信用できるクチコミの特徴 信用できないクチコミの特徴 画像に関する内容

17.

化粧をする人への調査:信用の判断基準 信用できるクチコミの特徴 信用できないクチコミの特徴 投稿者に関する内容

18.

化粧をする人への調査:結果 • 信憑性の判断基準は文章,画像,投稿者の3つに分類できる • 文章についての記述に注目 信用できる特徴にもできない特徴にも「文章が長いもの」「短所」 …信用する基準は人によって異なる 文章についてより詳細に調査!

19.

化粧品のクチコミデータセット構築 クチコミを収集 + 信憑性を人手で評価 • ファンデーション,化粧水,リップ各5商品,計15商品 • 各商品について20件ずつ,計300件のクチコミを収集 • クチコミに含まれる特徴8項目について記述の有無を付与 良い点,悪い点,使用感,投稿者の体質,企業のPRであるかどうかなど • 女子大学生13名に評価を依頼 300件すべてに回答した9名を分析対象とした

20.

信憑性評価システム

21.

実験協力者ごとの分析・考察 • A,G,I:評価の平均が低く,分散が大きい →信憑性を低く評価しやすい 評価理由に共通点(購入経緯を含む,追記があるなど) • D,H:信憑性を高く評価しやすい →クチコミを鵜呑みにしやすい可能性 A B C D E F G H I 全体 平均 0.61 0.64 0.80 1.11 0.89 1.00 0.47 1.11 0.54 0.79 分散 1.53 0.42 0.66 0.56 0.48 0.80 1.19 0.84 1.24 0.86

22.

実験協力者ごとの分析・考察 • A,G,I:評価の平均が低く,分散が大きい →信憑性を低く評価しやすい 評価理由に共通点(購入経緯を含む,追記があるなど) • D,H:信憑性を高く評価しやすい →クチコミを鵜呑みにしやすい可能性 A B C D E F G H I 全体 平均 0.61 0.64 0.80 1.11 0.89 1.00 0.47 1.11 0.54 0.79 分散 1.53 0.42 0.66 0.56 0.48 0.80 1.19 0.84 1.24 0.86

23.

分散が大きいクチコミの分析・考察 信憑性評価の分散が大きいものに絞って分析 分散が大きいほど悪い点を含む割合が減る PRを含む割合が増える →悪い点を含むクチコミは評価がブレにくい 信憑性評価の支援が 特に必要 PRを含むクチコミは評価がブレやすい 良い点 悪い点 使用感 体質 成分 比較 リピート PR 全体(300件) 0.94 0.36 0.59 0.31 0.20 0.13 0.19 0.12 分散大(122件) 0.95 0.23 0.52 0.26 0.19 0.10 0.13 0.22 分散1.0以上(45件) 0.93 0.58 0.33 0.20 0.07 0.13 変化量(分散1.0−全体) -0.01 0.18 -0.18 -0.01 0.02 0.00 -0.06 -0.06 0.31 0.19

24.

信憑性が高いクチコミの分析・考察 9名全員が信憑性を正の値で評価したクチコミに絞り込み →PRが極端に少ない(2件) 企業がPRの目的でユーザにプレゼントした商品であっても 他の製品との比較や,製品の悪い点について率直な意見があれば 信憑性を高く評価されやすい 良い点 悪い点 使用感 体質 成分 比較 リピート PR 全体(300件) 0.94 0.36 0.59 0.31 0.20 0.13 0.19 0.12 正の評価(90件) 0.94 0.56 0.76 0.44 0.26 0.21 0.32 0.02

25.

信憑性の評価理由の分析・考察 信憑性の評価値を正・負で分類→評価理由を分析 信憑性が正の評価理由 評価値負が負の評価理由

26.

信憑性の評価理由の分析・考察 「信頼」とつながる単語→信憑性評価において重要 信憑性が正の評価理由 評価値負が負の評価理由

27.

商品ごとの分析・考察 ファンデーション カバー 毛穴

28.

商品ごとの分析・考察 化粧水 肌 肌質 コスパ

29.

商品ごとの分析・考察 リップ 発色 落ちる 荒れる

30.

信憑性の評価軸について • PRだが他製品との比較や製品の悪い点が含まれる • 「信頼」と繋がりのある単語 • それぞれの化粧品において重要な単語 ➡客観的に評価できる • A,G,Iの評価基準 ➡多面的な評価が可能

31.

信憑性の評価軸について • これらの評価軸は「ユーザがどのような観点でクチコミを信用 するか」がもとになっている • 今後評価軸の有用性を検証 →ユーザがどの程度正しく判断できているか明らかにする • この評価軸で正しく評価できないクチコミ →ユーザが正しく判断できていない可能性が高いため システムの補助が特に必要

32.

展望 • 検討した信憑性評価軸の有用性を検証 • 信憑性評価の人数を増やす • 画像や投稿者についての調査・分析 • システムの実現

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まとめ • 大目的 化粧品のクチコミに特化した信憑性評価システムの実現 • 目的 システム実現に向けた信憑性評価軸の検討 • 化粧をする人への調査 文章,画像,投稿者から信憑性を判断 • クチコミデータセットの構築 クチコミ収集+人手での信憑性評価 • 評価軸の検討 クチコミの特徴や単語の有無による評価,特徴的な評価基準の採用