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January 23, 20
スライド概要
Japanese slide about suport of observation for art at conference of IPSJ SIG Digital Contents Creation 24.
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
個人のイラスト制作における 観察に対する支援手法の検討 菅野 一平 (明治大学) 髙橋 拓 (明治大学) 中村 聡史 (明治大学)
背景 初心者にとってイラスト制作は難しく, 思い通りに描けるようになるには練習が必要不可欠 練習方法としては, • 絵画教室に通う • 動画 • 書籍
背景 デジタルイラスト制作環境が普及 ・ SNS ・ 動画投稿サイト ・ イラスト制作ソフト ・ 液晶タブレット デジタルイラスト制作に独学で挑戦する人が増えている
背景 なかなか一人でイラスト制作することは難しい 特に,初心者のうちは, • 思い通りに描けない • バランスや色が狂う
背景 イラスト制作において観察は重要 観察を十分に行うことで…… • バランスが整えられる • 色や光などが正確になる • 細かい部分に気づくことができる →描いた絵が整合性のとれたものになる, 思い通りに描ける
背景 しかし,十分に観察することは難しい 原因 • 目に見えない作業である • とても時間がかかる • 「描くこと」がメインになりがちで,おろそかになりやすい
問題 初心者は, • 観察 • 想像,考察 を十分に行わない そこで,観察を促し,深く考察させる手法が必要である
アプローチ 観察を促すためにはどうしたらいいか →言葉でアウトプットさせることによって促す 言葉でアウトプットすることで • 考察する • より意識が向き,観察を行う
本研究の目的 初心者により深い観察や考察を促すための 言語化手法の有効性の検証
今回の報告 “気づいたことを言語化する”ことで, • 観察を促せたのか • 想像,考察をしたのか,自身の絵に反映できたのか を検証した
実験の目的 模写時に気づいたことを言語化させることによって ・ より深く観察し,描画対象の特徴に気づくか ・ 気づいたうえで考察し,自身のイラストに反映できるか を検証する
実験1 簡単な描画対象に対し,言語化が観察を促すのに有効か検証 模写実験 • 2日に分けて, 観察,模写時に気づきを記述する,しない条件で実験を行った • 実験が終わってからすぐに実験後アンケートを実施 • 数日後,協力者に自身の絵に関する主観評価を依頼した
実験1の流れ 言語化なし 言語化あり 実験の説明,練習 実験の説明,練習 ①描画対象の観察 ①描画対象の観察,気づきを記入 ②模写 ②模写,気づきを記入 ③実験後アンケート,気づきを記入 ③実験後アンケート
実験1の様子
実験1(見本画像) 見本は地図と果物であり,果物のみ色塗りも行った
実験1の詳細 • 実験協力者4名(情報系の学部に通う21~22歳の大学生) • 液晶タブレットはwacom MobileStudio Proを使用 • ペイントソフトはclip studioを使用 • 使用した機能は Gペン(線画用),水彩ブラシ(塗り用),消しゴム,スポイト,レイヤ操作
主観評価 主観評価アンケート 1. 絵の出来栄えにどれくらい満足しているか 2. 模写としてどれくらいうまく描けたか 3. 見本と自分の絵を比較して,どれくらい似ているか 4. 似ている部分はどこか 5. 違和感があるか 6. どこに違和感があるか 7. 直すとしたらどこをどのように直すか
A B C D 見本
変化が大きいもの B 見本 言語化なし 言語化あり 言語化なし 言語化あり D
実験1結果 • 実験後アンケートから, 気づきを記入した箇所は言語化ありのほうが多かった →観察を促せたのではないか • 1~3の質問において提案手法の評価は大きな差はなかった
実験1の課題 この実験では描画対象を印刷した紙を用いた • 言語化の効果を正確に検証できないため, 次の実験では箇条書きとした 実験協力者のイラストに対する主観評価において, 大きな差が見られなかった • 次の実験では立体的で複雑な描画対象を選定
実験2(変更点) 複雑な描画対象に対し,言語化が観察を促すのに有効か検証 変更点 • 5分間,見本を観察したうえで模写する • 気づきを紙に記述する条件では,白紙に気づいたことを 箇条書きで書きながら①観察,②模写タスクを行う • 描画対象をより立体的で複雑に
実験2の流れ 言語化なし 言語化あり 実験の説明,練習 実験の説明,練習 ①描画対象の観察 ①描画対象の観察,気づきを記入 ②模写 ②模写,気づきを記入 ③実験後アンケート,気づきを記入 ③実験後アンケート
実験2(見本画像) ① ②
実験2の様子
実験2の詳細 • 実験協力者11名(情報系の学部に通う21~22歳の大学生) • 液晶タブレットはwacom MobileStudio Proを使用 • ペイントソフトはclip studioを使用 • 使用した機能は Gペン(線画用),水彩ブラシ(塗り用),消しゴム,スポイト,レイヤ操作 • 評価は主観評価と客観評価を行った
主観評価 主観評価アンケート 1. 絵の出来栄えにどれくらい満足しているか 2. 模写としてどれくらいうまく描けたか 3. 見本と自分の絵を比較して,どれくらい似ているか 4. 似ている部分はどこか 5. 違和感があるか 6. どこに違和感があるか 7. 直すとしたらどこをどのように直すか
客観評価 ・基準を設定し,それがイラストとして表現できているか判定 見本 ・前髪の形がほとんど同じである :1点 ・前髪の形が明らかに違う :0点 (髪が右に流れていない,中央に分け目がない)
客観評価① バランス(16項目) 形,特徴(13項目) 1~8.各パーツの大きさは適切か 17.顔の輪郭 (8項目) 18.つむじの位置 9~15.各パーツの位置は適切か 19~29.各パーツの形状 (7項目) (11項目) 16.顔の向き,目線は正面 色(11項目) 30.前髪の光の当たり方 31.縛ってる髪の流れ 32.肌の色 33~40.各パーツの色 (8項目)
客観評価② バランス(16項目) 形,特徴(13項目) 1~8.各パーツの大きさは適切か 17.顔の輪郭 (8項目) 18.髪の生え際 9~15.各パーツの位置は適切か 19~29.各パーツの形状 (7項目) (11項目) 16.顔の向き,目線は正面 色(11項目) 30.左髪の光の当たり方 31.髪の流れ 32.肌の色 33~40.各パーツの色 (8項目)
実験2結果① 言語化あり 言語化なし
実験2結果①(口元) 言語化あり 言語化なし
実験2結果①(まつ毛) 言語化あり 言語化なし
実験2結果①(縛った髪) 言語化あり 言語化なし
実験2結果② 言語化あり 言語化なし
実験2結果②(目元) 言語化あり 言語化なし
実験2結果(左髪,影) 言語化あり 言語化なし
実験2結果(協力者ごと) • 細かい部分への描き込みが増えた 見本 言語化なし 言語化あり
実験2結果(協力者ごと) • 細かい部分への描き込みが増えた 見本 言語化なし 言語化あり
実験2結果(言語化:C) 言語化なし ・唇の色が少し暗い ・鼻の形が特徴的かも ・目が茶色 ・ほうれい線?えくぼ? 言語化あり (観察中) ・左目 一重? ・左ほほ ニキビ? ・髪の毛 ストレート ・おでこ,ぶつぶつ ・涙袋でかめ ・左(本人から見て)の輪郭がつりあがってる ・左暗い,右明るい ・上唇薄い ・耳みえない ・黒目 ・歯 白すぎない ・鼻の下 特徴的 ・左眉,短い (描画中) ・歯でか ・左目尻がでかい?暗くなっているところが ・目頭の影 ・首長い
実験2結果(言語化:B) 言語化なし ・顔の傾き具合(少し左が下がっている) ・左右の目の形の違い (こちらから見て右目が小さい) ・顔の横にある髪のうねり具合 ・顔のほぼ真ん中に目がある ・眉毛は左側しか見えてない ・左耳はほぼ見えない 言語化あり (観察中) ・(左右はこちらから見て)右目のほうが少し小さい,幅が狭い ・左目の端は髪で隠れている ・眉は太め,カーブ後半が上がる ・一重まぶた ・鼻は前の人より小さめ ・口は右側のほうが少し上がっている ・髪は少し赤めの茶色 ・前髪の分け目7:3くらい (描画中) ・なでがた ・中心より少し上に目がある(縦幅において) ・肌の色は色白というよりオークルっぽい ・右の黒目は中心より (終了後) ・眉の色が髪と違う ・右肩は紙で隠れている ・笑いじわ
実験2結果 記述した箇所 20 15 10 5 0 A B C D E 言語化なし F G H 言語化あり I J K
実験2結果 主観評価 *(p<0.05) 絵にどれくらい満足しているか 7 模写としてうまく描けたか 見本とどれくらい似ているか 7 7 6 6 5 5 5 4 4 4 3 3 3 2 2 2 1 1 1 * 6 言語化なし 言語化あり 言語化なし 言語化あり 言語化なし 言語化あり
本実験結果 実験後アンケート • 記述あり条件では各パーツへの意識をしている人が多かった. 主観評価 • 記述あり,なし条件ともに5.違和感があるかについては 全ての実験協力者が「ある」と回答していた • 記述あり,なし条件ともに7.どのように直すかについて 「わからない」と回答していた人がいた
実験2結果 客観評価 ■言語化なし ■言語化あり ①の女性の絵に関する客観評価 40 35 30 25 20 15 10 5 0 A B C D E F G H I J K
実験2結果 客観評価 ■言語化なし ■言語化あり ②の女性の絵に関する客観評価 40 35 30 25 20 15 10 5 0 A B C D E F G H I J K
考察 • 言語化あり条件で気づいた箇所を記述した個数は多かった • 細かい部分への描き込みが増えた →観察を促すことができた • 主観評価の結果が言語化ありのほうが高かった →ユーザの思い通りに描けている
考察 • 客観評価では人によってばらつきがあり, 言語化ありで点数が低い人もいた • 客観評価の点数は全て50%以下であった →観察したことを十分に絵に反映できていない
今後の展望 今回,言語化について有効性を検証し,気づきは増えた →観察を促すことができた →しかし,観察したことが十分に絵に反映されていない 今後,より深い観察を促し,考察や想像もさせる必要がある
提案手法 対話手法として, • 観察対象に対して質問を行い, その質問に言葉で回答させる手法 Q.どこが光に反射していますか? A. 胴体,蓋とか取っ手のところも
システム • 独学でできるよう,先述の質問手法を搭載した支援システム • 初心者が描きたい対象の画像をアップロードすると質問を返す
システム概要 描画対象の画像 提案システム ユーザ 1. 画像を取得 2. 取得した画像の描画対象を判定する 描画対象に関する質問 3. システムが描画対象の 観察するべき箇所の情報を取得 例:へたのまわりの形状はどんな形ですか? 4. システムが質問を生成する 5. 生成した質問をユーザに提示する 回答 例:しぼむようにくぼんでいる 回答を保持, ユーザがいつでも確認できるように提示する
今後の展望 今回,言語化について有効性を検証し,気づきは増えた →観察を促すことができた 今後行うこと • 質問することで想像や考察を促せるかを検証 • 観察するべき場所,視点の検討
まとめ 目的 • より深い観察や考察を促す手法の実現 • この論文では言語化により観察が促されるか模写実験で検証 模写実験結果 • 言語化あり条件で,記述が多かった • 客観的に見て,細かい部分への書き込みが増えた.→観察を促せた • 主観評価の結果が高かった→より思い通りに描けた 今後の展望 • 質問手法の検証 • 観察するべき場所,視点の検討