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December 01, 21
スライド概要
プログレスバーの周辺の視覚刺激と数え方による体感時間の変化の調査
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
プログレスバーの周辺の 視覚刺激と数え方による 体感時間の変化の調査 明治大学3年 青木柊八 中村瞭汰 中村聡史(明治大学) 山中祥太(ヤフー株式会社)
はじめに • コンピュータを利用する機会が多くなるにつれ、 待機時間に遭遇する回数も多くなる
はじめに 短い待機時間はユーザにとってストレスとなり、 モチベーション低下を引き起こす →プログレスバーや視覚刺激を用いることで 短く体感させ、ストレスを和らげる
関連研究 • プログレスバーの速度が一定の場合よりも 変化する場合のほうが知覚する速度が速くなる [Kurokiら 2015] • プログレスバーの速度が加速する場合のほうが、 減速する場合よりもユーザの満足度が高い [Gronierら 2019]
関連研究 • 方向性を持つ刺激が時間知覚に影響を与える [木村ら 2017] • プログレスバー提示と視覚刺激提示を 組み合わせることで、体感時間がより短縮される [松井ら 2018]
これまでの研究 プログレスバー周辺に視覚刺激を設置する研究 [中村ら 2021] →プログレスバーの周辺に提示する 視覚刺激として、体感時間を短縮するために 効果的なものを明らかにする
これまでの研究 no_stimulate rotate_balls wave slide_balls wave_reverse
これまでの研究 398名(男性203名、女性195名) プログレスバーと同一方向に 運動する視覚刺激は 体感時間を短縮させる
これまでの研究 398名(男性203名、女性195名) プログレスバーと逆方向に 運動する視覚刺激は 体感時間を延長させる
これまでの研究 398名(男性203名、女性195名) プログレスバーと逆方向に 運動する視覚刺激は 体感時間を延長させる プログレスバーと逆方向に運動する 視覚刺激は一種類のみ
これまでの研究 398名(男性203名、女性195名) プログレスバーと逆方向に 運動する視覚刺激は 本研究ではプログレスバーと 体感時間を延長させる 逆方向に運動する視覚刺激を増やし、 追加実験を行う
数え方による影響 これまでの研究より、 ユーザの体感時間にばらつきがある →刺激による影響だけではなく、 時間評価における数え方が影響を 与えている可能性
数え方による影響 A:開始と同時に0秒から数える人 B:開始と同時に1秒から数える人 C:開始後に少しの間をあけて 1秒から数え始める人 D:開始後に少しの間をあけて 0秒から数え始める人
数え方による影響 ±0 +1 +0.5 - 0.5
仮説 • 進行方向と同じ方向に進む視覚刺激のほうが 体感時間の短縮効果が強い • 個人によって数え方が変化し、 それらが4つのパターンに分類できる →各パターンの分布により、数え方が 体感時間に及ぼす影響を明らかにできる
目的 • どの視覚刺激が体感時間の短縮に 有用なのかを明らかにする • 秒数の数え方が体感時間に及ぼす影響を 調査する
実験 • Yahoo!クラウドソーシングを用いて 事前に依頼対象から1312名を除外した上で 男女それぞれ600名に依頼 • 男性600名、女性400名の回答が得られた
実験 • 数え方の調査を行うため、実験協力者を 非カウント群とカウント群にランダムでわける • カウント群には、プログレスバーが 提示されている間は毎秒数えるごとに 画面をクリックするように指示した
実験:注意事項 全員に時計を用いて秒数を数えない、 プログレスバー提示時は プログレスバーを注視する、 • 非カウント群:心の中でカウントしない • カウント群:マウスクリックしつつ秒数を数える
実験設計:提示秒数 Yahoo!クラウドソーシングを用いて行う関係上、 条件が多すぎるのは好ましくない →5~12秒の1秒区切りで行った
実験設計:秒数回答方法 0~20秒の間の0.1秒刻みのスライダーを 用いた回答方法を使用した
実験設計:視覚刺激 これまでの研究で使用した視覚刺激5種をもとに、 反転が行われていなかった2種の視覚刺激の 反転を加えた合計7種の視覚刺激を用いた
実験設計:視覚刺激 rotate_balls_reverse slide_balls_reverse
実験の流れ 待機画面 ↓ プログレスバー提示 ↓ 体感時間回答 ↓ インターバル画面
実験の流れ 待機画面 ↓ プログレスバー提示 ↓ 体感時間回答 ↓ インターバル画面
実験の流れ 待機画面 ↓ プログレスバー提示 ↓ 体感時間回答 ↓ インターバル画面
実験の流れ 待機画面 ↓ プログレスバー提示 ↓ 体感時間回答 ↓ インターバル画面
実験の流れ • 以上を1セットとし、 (刺激なし+6種類の視覚刺激のうち1種類) ×(5~12秒の1秒刻み)= 2×8 = 16(回) 行ってもらう • 最後にアンケートに回答してもらう
分析対象外の回答の除外 1000名中495名が分析対象として残った • 非カウント群男性:154名 • 非カウント群女性:93名 • カウント群男性:144名 • カウント群女性:104名
実験結果:非カウント群
実験結果:非カウント群 wave系統の刺激が 体感時間の短縮効果が 強い
実験結果:非カウント群 12秒時では slide_ballsは体感時間の 延長効果が強い
実験結果:非カウント群 • 前半は待機時間に 比べて体感時間の ほうが高い • 後半は待機時間に 比べて体感時間の ほうが低い
実験結果:カウント群
実験結果:カウント群 slide_balls系統の刺激は 体感時間の短縮効果が 強い
実験結果:カウント群 rotate_ballsと wave_reverseは少し 体感時間を延長させた
実験結果:カウント群 前半の体感時間の 正確性が上がっている →体感時間としては 短縮している
実験考察 9秒以下の場合: • 非カウント群よりカウント群のほうが 体感時間が短縮される • 非カウント群では視覚刺激なしより視覚刺激が 提示されている方が体感時間が短く回答される
実験考察 10秒以上の場合: • カウントの有無や視覚刺激の持つ方向とは関係なく、 体感時間が短縮する場合と延長する場合がどちらも 存在する →視覚刺激の持つ刺激方向がプログレスバーの 速度知覚に直接は影響しない
数え方:分析対象外の回答 • カウント群248名のうち、 157名(男性98名、女性59名)が残った
数え方:パターン分け 本実験では最初に紹介した4パターンを基準に、 分類を行った • A:開始と同時に0秒から数える人 • B:開始と同時に1秒から数える人 • C:開始後に少しの間をあけて1秒 から数え始める人 • D:開始後に少しの間をあけて0秒 から数え始める人 ±0 +1 +0.5 - 0.5
数え方:実験結果 男性 A B C D 80.0% 3.4% 14.4% 2.3% 女性 72.5% 3.6% 18.5% 5.4% 全体 77.2% 3.5% ±0 15.9% +1 3.4% +0.5 - 0.5
数え方:実験結果 • 男女どちらの場合でもパターンAが 最も頻出である • 全体では約23%の回答が B、C、Dに該当する →全体の約23%の体感時間が 数え方による影響を受けている ±0 +1 +0.5 - 0.5
数え方:問題点 • クリックの間隔で数え方をとっている →実験開始時のクリックが数え方へ 影響を与えている可能性 • クリックのし忘れやミスが起きた場合のための やり直し機能がない
数え方:問題点 • クリックの間隔で数え方をとっている →実験開始時のクリックが数え方へ 影響を与えている可能性 実験システムを改良し、 追加実験を行う • クリックのし忘れやミスが起きた場合のための やり直し機能がない
追加実験:変更点 • 純粋な数え方の分布を調べるため、 プログレスバーのみを提示して実験を行う • そのため試行回数は半分の8回とする • クリックをしていない場合は強制的に 同じ試行を行わせる クリックをしている場合でも同じ試行を 行うことが可能となっている
追加実験:変更点 時計回りで回転する円が完成したら 実験が開始される形式に変更した
追加実験:変更点 • 実験参加者は600名(男性300名、女性300名) • 本実験と同様の方法で分析対象外の回答を抽出し、 360名(男性190名、女性170名)が残った
追加実験:パターン分け 追加実験でも最初に紹介した4パターンを基準に、 分類を行った • A:開始と同時に0秒から数える人 • B:開始と同時に1秒から数える人 • C:開始後に少しの間をあけて1秒 から数え始める人 • D:開始後に少しの間をあけて0秒 から数え始める人 ±0 +1 +0.5 - 0.5
数え方:追加実験結果 男性 A B C D 47.6% 1.0% 44.2% 7.2% 女性 32.9% 0.3% 56.7% 10.2% 全体 40.9% 0.7% ±0 49.9% +1 8.5% +0.5 - 0.5
追加実験結果 • 男性はパターンA、女性はパターンCが 頻出であり、全体のパターンCの割合が増加した →最初のクリックが原因 ±0 • 全体では約60%の回答が B、C、Dに該当する →約60%の体感時間が 数え方による影響を受けている +1 +0.5 - 0.5
追加実験結果 全ての回答における最初のクリックの秒数(0.02秒刻み)
追加実験結果 0.5秒や0.75秒付近に集中している
追加実験考察 • 数え方による影響を受けている回答の割合は 本実験より大幅に増加した約60%であった →数え方の影響が実験結果を左右している 可能性が存在する • 人は0.5秒や0.75秒付近に1秒目を置く傾向がある →最初の1秒を正確にしなければ 数え方の影響を受けてしまう
まとめ • 目的:待機時間における体感時間の短縮と 数え方が体感時間に及ぼす影響の調査 • 仮説:プログレスバーと同方向に進む視覚刺激が 体感時間を短縮し、数え方による影響を受ける • 結果:視覚刺激の持つ方向性は体感時間に 直接的には影響しない、なお体感時間は 数え方による影響を受ける