公共交通データの標準化・オープンデータ化について

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December 26, 22

スライド概要

東京大学大学院情報理工学系研究科 伊藤昌毅による、地理空間情報に関するベースレジストリ利活用研究会(第3回)における発表資料です。

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伊藤昌毅 東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 准教授。ITによる交通の高度化を研究しています。標準的なバス情報フォーマット広め隊/日本バス情報協会

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各ページのテキスト
1.

2022年12月26日 オンライン開催 地理空間情報に関するベースレジストリ利活用研究会(第3回) 公共交通データの標準化・オープンデータ化について 東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 伊藤昌毅

2.

伊藤 昌毅 • • • • • 東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 准教授 静岡大学 土木情報学研究所 客員教授 専門分野 – – ユビキタスコンピューティング 交通情報学 – – – – – – – – 静岡県掛川市出身 2002 慶應義塾大学 環境情報学部卒 2009 博士(政策・メディア) 指導教員: 慶應義塾大学 徳田英幸教授 2008-2010 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特別研究助教 2010-2013 鳥取大学 大学院工学研究科 助教 2013-2019 東京大学 生産技術研究所 助教 2019-2021 東京大学 生産技術研究所 特任講師 2021-現在 現職 – 運行管理者(旅客) 経歴 資格 2

3.

標準的なバス情報フォーマットのオープンデータ整備が進行中 バス業界において「標準化」「オープン化」が同時に進行中 路線 時刻 運賃 リアルタイム 「標準的なバス情報フォーマット」(世界標準のGTFS互換)でデータ整備 乗換案内・MaaS サイネージ・印刷物等 交通分析・計画 7

5.

2018年7月:23 2019年2月:90 2018年11月:30 2019年7月:126 9

6.

22年3月 22年1月 21年11月 21年9月 21年7月 21年5月 21年3月 21年1月 20年11月 20年9月 20年7月 20年5月 20年3月 20年1月 19年11月 19年9月 19年7月 19年5月 19年3月 19年1月 18年11月 18年9月 18年7月 18年5月 18年3月 18年1月 17年11月 17年9月 17年7月 本年も順調にオープンデータが増加 オープンデータ提供事業者数 500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0

7.

オープンデータとして自社などのWebページで公開 • Webページからデータを誰でもダウンロード出来るように

8.

GTFSリアルタイム(バスロケ)提供も増加中( 56事業者) • 便ごとのバス停通過時刻、緯度経 度情報などをリアルタイム公開 – Protocol Buffer形式 • 混雑情報も提供可能 – 2020年より宇野バス、横浜市交通局が対応

9.

2020年: 都バス・横浜市営バスの GTFS-JP・GTFSリアルタイムデータ公開 • 公共交通オープンデータ協議会(坂村健会長) による取り組み – 公共交通オープンデータセンター • 都バスは、Google Mapsでバスロケを考慮し た検索が可能に 2019年3月

10.

GTFS形式 • 世界で広く使われる形式 • 乗換案内に必要な情報(バス停・駅+路線+時刻表+運賃)をまとめて格納 したファイル形式 バス停/駅+路線 時刻 運賃

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GTFSデータにはCSV形式で以下の情報が格納 • • • • • • 事業者データ バス停データ 路線データ 時刻表データ 路線図(緯度経度)データ など

12.

GTFS: Googleによるデファクト スタンダードが出発点 • 2005年オレゴン州ポートラン ドの公共交通事業者とGoogle によりGTFSという標準規格が 作られた – 2010年前後から米国で普及 – オープンデータとして公開 • 現在はGoogleの手を離れ、世 界中でデータが作られている http://qiita.com/niyalist/items/5eef5f9fef7fa1dc6644

13.

データ整備が実現した経緯

14.

乗換案内サービスで検索出来ますか? 駅すぱあと Yahoo!乗換案内 駅探 乗換案内 NAVITIME ジョルダン 乗換案内 Google Maps Apple Maps

15.

地域の公共交通は乗換案内に出てこない

16.

地域の公共交通は乗換案内に出てこない データ整備にはコストが掛かるため 利用者数が少ない地域のバスにまで 手が回らない 交通事業者が自ら 標準形式のオープンデータを用意して 乗換案内に提供する

17.

海外の事例: 交通事業者がオープンデータを提供 • 路線図、時刻表、リアルタイム車両位置情報などのデータの利用を開放 • 自由に使ってもらうことで、アプリの作成や工夫を凝らした印刷物などの情 報提供を促進 • アメリカ、ヨーロッパでは当たり前になりつつある

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オープンデータから様々なアプリが開発される • 大企業、ベンチャー−企業、個人がアプリ開発

19.

イギリス政府の路線バスオープンデータ • バス事業者が時刻表や運賃、ロケーション情報 をオープン化することを法的に義務化 – The Public Service Vehicles (Open Data) (England) Regulations 2020 に基づく – イングランドの政策にスコットランド、ウェールズも追従 • 全国一体的にデータ収集し複数のフォーマット でデータ公開 – 2020年12月 時刻表データ公開義務化 – 2021年1月 位置情報、運賃やチケット情報の公開義務化 – 2023年1月 乗り継ぎなど特殊な運賃・チケットについても 公開義務化 https://www.bus-data.dft.gov.uk

20.

2014年〜 静岡県でコミュニティバスのオー プンデータ化の取り組み • 県庁、市役所、地元IT企業等とGTFS、GTFSリア ルタイムによるオープンデータ化を実現 – Google Mapsへ提供可能に • アイデアソン、ハッカソンで地域でのデータ活用 を目指す

21.

バス情報の効率的な収集・共有に向けた 検討会(2016年12月〜2017年3月) • 事務局: 総合政策局公共交通政策部交通計画課 • 外部委員 – – – – – – – – – – 伊藤昌毅 東京大学生産技術研究所(座長) ー川雄一 株式会社構造計画研究所 伊藤浩之 公共交通利用促進ネットワーク 井上佳国 ジョルダン株式会社 遠藤治男 日本バス協会 櫻井浩司 株式会社駅探 篠原雄大 株式会社ナビタイムジャパン 丹賀浩太郎 株式会社工房 別所正博 公共交通オープンデータ協議会 山本直樹 株式会社ヴァル研究所

22.

2017年3月31日 「標準的なバス情報フォーマット」公開

23.

2019年3月 標準的なバス情報フォーマット 第2版 • GTFSリアルタイムをベースにバスロ ケデータの標準化にも対応 • GTFS-JPの改定作業 – 2年経って40項目以上の検討、見直し事項が蓄 積 • 国交省バス情報の静的・動的データ利 活用検討会 – バスロケ事業者も委員に

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2021年7月 標準的なバス情報フォーマット 第3版 • より精度が高いデータを作成するため – Google Maps は一定以上の精度が確保されたデータでないと受理しないよう に

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標準的なバス情報フォーマット広め隊 • 標準的なバス情報フォーマット (GTFS-JP)データ整備に関わる有志 によるコミュニティ – 2017年夏頃から、国交省検討会の関係者らを 中心に自然発生的に誕生 – 普及に関わるツール開発、勉強会やイベント 開催、関係者への働きかけなどを継続的に実 施 – チャットなどによる活発な情報交換 • 参加者 – – – – – – 大学研究者 乗換案内サービスデータ整備担当 バス事業者向けツール開発者 公共交通コンサルタント 交通事業者職員 自治体職員 等 20名程度

26.

フリーのデータ作成ツール開発・提供・利用支援 • 西沢ツール – 西沢明氏開発 – 約40+自治体・事業者が利用 • 見える化共通入力フォーマット – 伊藤浩之氏開発 • 当初は三重県のプロジェクトで利用 – 約33自治体・事業者が利用

27.

その筋屋 • 無償配布されているダイ ヤ編集システム • プロ向けシステムと同等 の機能を備え、バス事業 の運営に利用出来る • GTFS/標準的なバス情報 フォーマット出力機能を 備える – 42事業者がオープンデータ公 開 http://www.sinjidai.com/sujiya/

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広め隊による講演会・講習会 • 県や運輸局が実施する勉強会に講師として登壇 • 事業者や自治体にツール導入を指南

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国際連携 • GTFSの標準化を進めている MobilityData.orgと協業 – 日本にてミーティング開催 – 公式Webページの翻訳受託

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県によるデータ整備事業 • 佐賀、富山、群馬、沖縄 • その他にも続々と・・・

31.

標準的なフェリー・旅客船航路情報フォーマット • 国土交通省海事局内航課に より船舶向けデータフォー マット(GTFS互換)が策定 – 受託 ジョルダン株式会社

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データ利用の広がり

33.

Google Mapsへの掲載 • GoogleはGTFS形式によるオープ ンデータを推奨 • 乗換案内に掲載されていない自治 体やバス事業者が利用促進のため にデータ整備 • 訪日外国人が利用するのはGoogle Maps

34.

「駅すぱあと/Yahoo!乗換案内」がオープン データを採用 • オープンデータ化されたバスデータを経路探索に採用 https://ekiworld.net/personal/app/spec/info.html?style=pc

35.

Moovitが日本のデータに対応 • イスラエルのベンチャー企業が開発するMoovitが山梨県GTFSを採用

36.

サイネージでの活用

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MaaSの基盤データとして • 北海道十勝MaaS実証実験の 基盤データの一部はGTFS-JP オープンデータ • 小田急+VAL研究所のMaaS プラットフォームに採用 http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/hokkaido-tokachi-maas.htm https://www.slideshare.net/KenjiMorohoshi/20200128shikoku-gtfsjp

38.

市民発のアプリも登場 • Aa 青バスなう! https://sonohino-kibunshidai.org/aobus_now/ UnoMap https://play.google.com/store/apps/details?id=work.momizi.unomap&hl=ja

39.

ゆる〜と 全国日帰り温泉・銭湯マップ • バスの利用を促進する援軍! https://yuru-to.net

40.

オープンデータ活用ハッカソン • アプリ、乗り換え案内以外へも活用が検討される

41.

乗換案内のためのデータ作りから 交通事業者の主体的な活動へ

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データが使われる姿が見えると事業者の意識が変わる

43.

臨時便への対応 • お盆の日のみ走る臨時便を事 前に情報提供 • その日を設定した検索にだけ 案内される • Google Mapsはデータを送信 してからほぼ48時間以内で更 新されるらしい

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先進事例(佐賀市営バス・祐徳バス): 正確な情報でバス→バスの乗換も安心 • 佐賀空港から「枝梅酒造」を検索 • バス停位置が正確だから「県庁前」での乗換も 不安なし!

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GTFSリアルタイムで攻めの情報発信 • バスロケやアラートを標準フォーマットで積極公開、利便性向上へ

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GTFS整備からバス事業のDX推進へ (みちのりホールディングス) • アナログな現場オペレーションにGTFSだけを導入しても求めら れる情報提供ができない • 業務フロー全体を捉えたデジタル化を進めている 【国土交通省主催】標準的なバス情報フォーマット/GTFSオンラインセミナー(2020年9月) https://www.youtube.com/watch?v=vQV3kXBtAAs

47.

災害時の公共交通情報整備プロジェクト • a 2018年7月11日の西日本豪雨に おける鉄道不通区間 Source: https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/322119.pdf https://roote.ekispert.net/ja/traininfo_map

48.

JR西日本 被災・復旧状況(公式より・広島地域) 2018年8月5日参照

49.

検索:8月5日時点 運行情報の出典はレスキューナウか 通常ダイヤ+運行情報 駅探 Google Maps Apple

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災害対応がついに実現 • 2018年の西日本豪雨を踏まえ てデータ整備の体制や訓練 • 2021年夏の水害による呉線の 運休・代行バス運行の際に、 オープンデータ整備公開・ Google Mapsにて検索可能に

51.

地域・行政によるデータ活用を 進められないか 「地域が自らデザインする地域の交通」 のために

52.

都バスのサービスレベルを把握するマップを作成

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公共交通の運行本数の直感的把握

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中心地からの到達時間

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地域ごとの通える高校数

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日本バス情報協会(2022年3月〜) • • • • • • 行政、バス事業者等に対するコンサルティング 講習会、勉強会等の開催 データコミュニティに対する技術支援 データプラットフォーム、ツール等の提供 バス運行システム事業者等の連携の推進 調査研究 GTFS・バスデータ整備実習(2022年8月) https://www.busdata.or.jp

57.

GTFSデータリポジトリの開発支援 • GTFSデータをアップロー ドし広く流通できる仕組み • 社会基盤情報流通推進協議 会(AIGID)とともに開発 • 2022年3月に試験運用開始

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GTFSデータ連携APIのイメージ 国土交通データプラットフォーム関連 国土交通データ プラットフォーム 検索 GTFSデータ 掲載 取得 GTFSデータ リポジトリ 作成者 掲載 取得 (バス事業者・ 市町村等) 一覧 認証 履歴管理 品質検証 手間無く適切な方法で 掲載・更新できる 表示・ 取得 国交DPF 利用者 取得 QGIS 利用者 GTFSデータ 利用者 等 (交通情報・ 交通分析等) 一元的にデータ取得し 自動運用できる 104

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QGISプラグイン「GTFS-GO」に連携機能を追加 運行頻度マップの作成が可能 GTFSデータリポジトリ連携機能 GTFSリポジト リ連携を追加 デジタル田園都市のWell-Being指標の更新も可能に 運行頻度が必要 12年前のデータを更新できる 105

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参考)GTFS-GOが欧米で話題に、運行頻度図が高評価 UKのスタートアップThe Data City社 CTOのTweetをきっかけに話題に GitHub上の評価☆が急上昇 SEPTA地域鉄道 (米国ペンシルバニア州) https://twitter.com/yfreemark/status/1565030476439494658 英国内の鉄道 287RT, 1619いいね https://twitter.com/thomasforth/status/1564683686330736646 FLiXBUS (ドイツ・欧州各国) https://twitter.com/BorisMericskay/status/1565301466243506177 オープンソースとオープンデータによる 公共交通EBPMエコシステムに貢献 106

61.

公共交通オープンデータは データ作成・更新・活用が噛み 合って回っている先進事例 今後他分野との積極的な連携も