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April 09, 25
スライド概要
ビーコンセンシングによる滞在空間同定手法について
resume: https://www.docswell.com/s/naoya_iwamoto/Z6VD87-2025-04-09-150917
大阪公立大学工学部情報工学科
2024年後期 情報工学実験2 ビーコンセンシングによる滞在空間同定手法 <スマートプラットフォーム研究室> <工学部・情報工学科3年> 岩本尚弥
本日の内容 1. 研究背景と関連研究 2. 提案 3. 評価と結果 4. 結論と今後の課題 5. 参考文献 2025/1/21 2
1.研究背景と関連研究 • 大学や企業の打刻システムにおける課題 - 打刻忘れ - ICカードの不正利用(代理打刻) 打刻者の滞在を保証できない • 既存の屋外位置推定技術 - GPSの屋内利用における精度低下 - 地下など電波を受信できない環境では使用不可能 • 滞在空間同定のニーズの高まり • BLEビーコンを用いたスマートフォンによる空間推定技術への注目 2025/1/21 3
1.研究背景と関連研究 • 用語説明 - BLE(Bluetooth Low Energy) 無線PAN技術である Bluetooth の一部で,バージョン 4.0 から追加になった低 消費電力の通信モード - RSSI値 無線通信における信号の強さを示す指標 - マルチパス 信号が空間を伝播する際に環境が原因で,2つ以上の伝播経路が生じ,受信電波 が乱れること 2025/1/21 4
1.研究背景と関連研究 • BLEビーコンによる空間推定の一般的な手法 • 三角測量法 - 複数のビーコンから受信したRSSI値を用いて,受信機の位置を推定 • 最近傍法 - 受信するRSSI値が最も大きいビーコンが存在する空間を推定 • 指紋法 - 事前に推定対象となる空間内の複数地点においてRSSI値を計測しデータベースに記 録しておき,実際に推定する際には,記録した値とパターンマッチングを行う手法 2025/1/21 5
1.研究背景と関連研究 • RSSI値はノイズや干渉などによるマルチパスの影響を受けやい - 三角測量法のように距離計算を行う際に誤差が大きい • 最近傍法では部屋内に設置されたビーコンの数について考慮されない • 指紋法は,事前に計測したデータベースとのマッチングを行うため,同 定空間内の複数地点で事前に計測を行う必要がある ⇒提案手法:複数RSSI値を考慮したファジィ推論に基づく空間同定手法 2025/1/21 6
本日の内容 1. 研究背景と関連研究 2. 提案 3. 評価と結果 4. 結論と今後の課題 5. 参考文献 2025/1/21 7
2.提案 • ファジィ推論を用いた事前測定不要なロバストな空間同定手法 • ファジィ推論 - 不確実な情報を取り扱うための数理的な手法 - 不確かさを表現するファジィ集合を用いて推論を行う • ファジィ集合 - 集合の境界があいまい. - 非二値化 • 要素に対する集合への帰属度をメンバーシップ関数で定義 メンバーシップ関数 𝜇𝐴෨ 𝑥 → [0,1] 2025/1/21 8
2.提案 • 使用するメンバーシップ関数の定義 - 三角形メンバーシップ関数𝜇𝐴 𝑥 0 (𝑥 ≤ 𝑎) 𝑥−𝑎 (𝑎 < 𝑥 ≤ 𝑏) 𝑎 𝜇𝐴 𝑥 = 𝑏𝑐 − −𝑐 (𝑏 < 𝑥 < 𝑐) 𝑐−𝑏 0 (𝑥 ≥ 𝑐) • 𝑥 :入力変数(RSSI値) • 𝑎, 𝑏, 𝑐:パラメータ 2025/1/21 9
2.提案 • ファジィ集合 - 以下の6つの集合を定義 非常に強い(definitelyStrong) 強い(veryStrong) やや強い(strong) 中程度(medium) 弱い(weak) 非常に弱い(veryWeak) • 𝑆 𝑅𝑖 :部屋𝑅𝑖 のスコア • 𝑑𝑗 :部屋𝑅𝑖 で検出されるデバイス𝑗のRSSI値 • 𝐷𝑖 :部屋𝑅𝑖 で検出されたデバイスの集合 2025/1/21 10
2.提案 • デバイスjに対するスコアΔ𝑆 𝑅𝑖 , 𝑑𝑗 Δ𝑆 𝑅𝑖 , 𝑑𝑗 = 𝜇definitelyStrong 𝑟𝑗 + 0.7 𝜇veryStrong 𝑟𝑗 + 0.4 𝜇strong 𝑟𝑗 + 0.3 𝜇medium 𝑟𝑗 + 0.2 𝜇weak 𝑟𝑗 + 0.1 𝜇veryweak 𝑟𝑗 • 部屋𝑅𝑖 の最終的なスコア 𝑆 𝑅𝑖 = Δ𝑆 𝑅𝑖 , 𝑑𝑗 𝑑𝑗 ∈𝐷𝑖 • 推定結果 推定結果 = arg max 𝑆 𝑅𝑖 𝑅𝑖 2025/1/21 11
2.提案 • RSSI値はマルチパスなどの影響により変動 - 時系列データを考慮 - 時刻[0, 𝑇]におけるスコアを合計 𝑆𝑡 𝑅𝑖 = 𝑆𝑡−1 𝑅𝑖 + Δ𝑆𝑡 𝑅𝑖 , 𝑑𝑗 𝑡>1 𝑑𝑗 ∈𝐷𝑖 𝑆0 = 0 (𝑡 = 0) - 本実験では 𝑇 = 25 [s]と指定 2025/1/21 12
本日の内容 1. 研究背景と関連研究 2. 提案 3. 評価と結果 4. 結論と今後の課題 5. 参考文献 2025/1/21 13
3.評価 • 実験機材 - Android 端末(moto g64 5G,Android 14) - サンワ 温度・湿度センサー搭載BLE ビーコン (MM-BLEBC7) • 実験環境 - 杉本キャンパス工学部F棟 F601, F602, F612で測定 - 右図の青点にビーコンを設置 - 紫点で推定 ドア前では複数回推定 2025/1/21 14
3.評価 • 実験環境 ビーコン設置例 2025/1/21 廊下 15
3.評価 • 実験環境(教室) F602 2025/1/21 F601 F612 16
3.評価 • 実験用Flutterアプリケーション • UI上の機能 - スキャン機能 - デバイス管理機能 - CSV出力機能 - 教室推定機能 2025/1/21 17
3.評価 • 評価方法 - 従来手法と提案手法の精度を比較 従来手法:最近傍法 精度評価指標:適合率, 再現率, F1値を比較する • 実験1 - 廊下のビーコンを無効の状態で推定 • 実験2 - 廊下のビーコンを有効にした状態で推定 2025/1/21 18
3.評価 • 測定方法 - 測定は実際のユーザーを想定して実施 立った状態で手でスマートフォンを持つ ドアは開けた状態で行う 2025/1/21 19
3.評価 • 1mの距離におけるRSSI値の変動 - 上記を考慮してパラメータの決定を行った 2025/1/21 20
3.結果 • 実験1の結果 - 推定結果と真値の混同行列 最近傍法 2025/1/21 提案手法 21
3.結果 • 実験1の結果 - 適合率と再現率,F1値 部屋 適合率 再現率 F1値 部屋 適合率 再現率 F1値 F601 0.90 0.90 0.90 F601 1.00 1.00 1.00 F602 0.80 0.80 0.80 F602 1.00 1.00 1.00 F612 0.90 0.90 0.90 F612 1.00 1.00 1.00 平均 0.87 0.87 0.87 平均 1.00 1.00 1.00 最近傍法 提案手法 - 最近傍法では,壁際やドア前などで誤推定することがあった - 廊下ビーコンがない場合,提案手法では真値と推定値が全計測位置で一致 2025/1/21 22
3.結果 • 実験2の結果 - 推定結果と真値の混同行列 最近傍法 2025/1/21 提案手法 23
3.結果 • 実験2の結果 - 適合率と再現率,F1値 部屋 適合率 再現率 F1値 部屋 適合率 再現率 F1値 F601 0.89 0.80 0.84 F601 1.00 0.90 0.95 F602 0.67 0.67 0.67 F602 0.90 1.00 0.95 F612 1.00 0.91 0.95 F612 1.00 1.00 1.00 廊下 0.67 0.80 0.73 廊下 1.00 1.00 1.00 平均 0.81 0.79 0.73 平均 0.97 0.97 0.97 最近傍法 提案手法 - 最近傍法では,ドア前での部屋と廊下の誤推定が多い. 部屋の中心でも廊下と推定してしまった例もある - 一方提案手法では誤推定が少なく堅牢であった. 2025/1/21 24
3.結果 • 考察 - 同定精度について 提案手法では,廊下にビーコンを設置した場合とそうでない場合で共に同定精 度が高かった ドア前などといったビーコン集約地点においても,精度を高く維持できた. 一方,廊下ビーコンがある場合100%の精度を維持することはできなかった. • ビーコンの配置やパラメータをより調整していく必要 • RSSI値以外のセンシングデータを考慮する必要 • 音響データ,加速度データなど - アプリケーションの負荷について Flutterで作成 • 長時間測定を行うと端末のバッテリーを消耗させてしまう • 推定精度とトレードオフ 2025/1/21 25
本日の内容 1. 研究背景と関連研究 2. 提案 3. 評価と結果 4. 結論と今後の課題 5. 参考文献 2025/1/21 26
4.結論と今後の課題 • 結論 - ファジィ論理に基づく滞在空間同定手法を提案 - 従来手法と比較して,ファジィ論理と時系列情報を考慮した,堅牢な滞在空間同定 を実現 • 今後の課題 - メンバシップ関数のパラメータの設定方法の検討 - RSSI値以外のセンシングデータを考慮したよりロバストな手法の検討 2025/1/21 27
本日の内容 1. 研究背景と関連研究 2. 提案 3. 評価と結果 4. 結論と今後の課題 5. 参考文献 2025/1/21 28
5.参考文献 1. 中井若菜,川濱悠,勝間亮, 単位 RSSI 値の強弱の推定による位置推定 精度の向上, 2017 年度 情報処理学会関西支部 支部大会 講演論文集, ISSN1884-197X (2017). 2. 水本雅晴, ファジィ推論 (1)(ファジィ理論入門 (8)),日本ファジィ学会 誌,4(2), pp. 256-264 (1992). 3. 酒井 瑞樹, 森田 裕之, Bluetooth を用いた屋内位置推定手法の提案, 経営 情報学会 全国研究発表大会要旨集, pp.53-56, (2016). 2025/1/21 29
5.参考文献 4. 高山 智史, 梅澤 猛, 大澤 範高,「複数地点の位置指紋を使った非線形回 帰モデルによる屋内位置推定」『マルチメディア,分散協調とモバイル シンポジウム 2018 論文集』, pp. 610-619, (2018). 5. 国土交通省 国土地理院 測地部, 屋内測位のためのBLE ビーコン設置に 関するガイドライン〈平成 29年度版 Ver.1.0〉(2018). 6. 渡邉洸, 高橋雄太, 大坪敦, 藤本まなと, 荒川豊, 安本慶一, BLE ビーコン と反響音センシングによる屋内スポット推定, マルチメディア,分散協 調とモバイルシンポジウム 2018 論文集, pp. 620-626(2018). 2025/1/21 30
2024年後期 情報工学実験2 ビーコンセンシングによる滞在空間同定手法 <スマートプラットフォーム研究室> <工学部・情報工学科3年> 岩本尚弥 2025/1/21 31