文献05_Buxton, C. & Allexsaht-Snider, M., Kim, S. & Cohen, A. (2014). Potential benefits of bilingual constructed responses science assessments for emergent bilingual learners 日本語要約

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August 11, 24

スライド概要

広島大学 外国人児童・生徒の教育課程デザイン論(南浦担当 2024)の授業資料です

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教育方法学・教科教育学という「一般的な教育」と,外国人児童生徒教育学という「特別な教育」をどちらも行っています。 このどちらもを同時に行う研究室は,日本の中ではほとんどありません。その結果,大学を含む多くの教育の場でこの両者は別々のものになってしまっています。

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広島大学 外国人児童・生徒の教育課程デザイン論(南浦担当 2024) Buxton, C. & Allexsaht-Snider, M., Kim, S. & Cohen, A. (2014). Potential benefits of bilingual constructed responses science assessments for emergent bilingual learners, Double Helix , 2, pp.1-21. 発表資料は,受講生の許可を得てこのサイトで紹介をしています。(あくまで論文そのものではなく,その要約資料です。教育的価値・資料 的価値として公開していますので,引用などは必ず原著にあたり,ここのものを 転載・引用することはお控えください) 外国人児童・生徒の教育課程デザイン特論 第9回:LISELL-B分析 Potential Benefits of Bilingual Constructed Response Science Assessments for Understanding Bilingual Learners’ Emergent Use of Language of Scientific Investigation Practices バイリンガル学習者の科学的調査実践のための言語使用を理解するための バイリンガル構成応答科学アセスメントの潜在的利点 発表者 尾花日向子 細野 花莉 ●● ●●

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目次 〇著者紹介 〇全体構成 〇要約 • • 用語の確認 背景と理論的根拠 • • • 概念的枠組み 研究方法 調査の結果 • • 考察 今後の研究への示唆 〇どのような論点・争点があるか 〇日本ではそのような論点がどのように存在しているか

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著者紹介 Cory Buxton コーリー A. バクストン オレゴン州立大学教育学部の教授 オレゴン州立大学に着任前:ジョージア大学体育協会教育学部教授であ り、高校の理科と ESOL の元教師 すべての学生、特に移民や移住者の学生、新興のバイリンガル学習者に とって、より公平で魅力的な科学学習機会を促進すること そして学生、保護者、教師、研究者が共同学習者として関わりながら、 学術的な関係、科学と工学の実践とキャリアに関する知識、科学の言語 をのばすための研究 https://education.oregonstate.edu/directory/cory-buxton

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全体構成 Background and Rationale (背景と理由) Conceptual Framework (概念的枠組み) Methods (調査方法) Data Collection (データ収集) Data Analysis(データ分析) Findings (調査結果) Technical Vocabulary Usage (専門用語の使用状況) Grammatical Drift Toward More Stable Linguistic Classes Lexical Density 語彙密度 rheme to theme(rheme to theme の構造) Discussion(議論) Implications(意味合い) References(参考文献)

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Background and Rationale ―背景と理論的根拠 本研究の背景 学校で決められた第二言語としての英語(ESOL)レベル ◦ 生徒の母国語の機能的な使用状況や快適さ 教室での授業、指導で使用する言語 を研究者や教師が理解するためには最適な尺度ではない可能性がある(Solano-Flores, 2008) ◦ バイリンガルの構成的な解答(記述式など)の評価の枠組みの提供 ◦ 学問的目的に母国語と学校言語を使用する生徒の能力について、より有用な機能的尺度を作成 →書くことを通して科学学習を支援するために、 第一言語資源を活用することの潜在的な利点を探る教師の支援になる

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Background and Rationale ―背景と理論的根拠 理科の学習(Science Learning)の目標 ◦ 実践 これらの組み合わせ ◦ 核となる概念的な考え方 生活全般にわたる幅広い学習の文脈で培われる ◦ コミュニケーションのスキル (National Research Council, 2011, 2009) =問題解決に用いる批判的思考プロセスを適用する能力を身に付けること(Kuhn, 2005) 批判的コミュニケーションの実践→思考の可視化 • • • • 仮説の生成と検証 因果関係の推論 変数の制御の学習 根拠をふまえた主張 (critical communication practices) 科学的な会話、記述、行動を促す科学課題 生徒の思考を可視化する学習課題 →科学的思考を向上させる

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Background and Rationale ―背景と理論的根拠 先行研究/まだなされていないこと l初級バイリンガル学習者の理科のライティングに注目することの価値についての研究 限定的ではあるが増えている →しかし、形成的評価と総括的評価の両方で学習者の理科の学習を支援するための証拠は少ない lバイリンガル学習者の評価における言語的なアコモデーションに関する研究 2005年と2009年にアメリカで行われた全国学力調査(NAEP)の科学アセスメント 英語学習者は、対訳辞書、対訳テキスト、科目別用語集、英語辞書、アセスメントを完了する時間の延長、テス ト項目の音読、明確な質問の許可、書記への口述応答の許可 →しかし、アセスメントの言語そのものを変更するようなアコモデーションはなかった LISELLプロジェクトの一環 ライティングを通して表現される生徒の科学的思考をより確実に測定する、生徒に科学調査につ いて記述させるバイリンガル構成的応答評価を開発

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Background and Rationale ―背景と理論的根拠 アコモデーションを行ったテストのメタ分析 バイリンガル学習者の成績向上に、テストでの特定のアコモデーションは有効性/妥当性があるか l有効性:バイリンガル学習者間で、アコモデーションがあった学習者の方が優れているか否か l妥当性:モノリンガル学習者間で、アコモデーションがあった学習者の方が優れているか否かを測定し、 アコモデーションがテストの全体的な構成要素の妥当性を変えていないかを見る Kieffer, Lesaux, Rivera, and Francis (2009) 時間の延長、二カ国語問題、スペイン語版テスト、二カ国語辞書の使用、英語辞書の使用、英語版テスト問 題の簡略化などの対応→バイリンガル学習者の成績を一貫して向上させたのは、英語辞書の提供のみ Siegel (2007) 言語的、認知的、視覚的な評価項目の明確化 →英語を母国語とする学習者とEBL学習者の両方が、有意に高い得点を獲得→妥当性△

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Background and Rationale ―背景と理論的根拠 なぜこのような結果の曖昧さが生じるのか?→母語を用いることに対する感覚(comfortかどうか) 1. 学問的な要素 理科に関する一般的/専門的な語彙を十分に持ち、母語で理科について読み書きした経験が豊富かどうか 2. 社会的な要素 学習に母国語を学校で使ってもよいと感じるかどうか →二言語での評価の潜在的な利点がすべて相殺されてしまう可能性がある LISELLプロジェクト l母語と第二言語を用いた理科の活動 l教師、生徒、家族とのアカデミックなディスカッション スペイン語(母語)のアカデミックな言語に触れ、 慣れ親しむ機会を増やす 生徒と教師に、生徒の母語は理科の教室で育まれ 、歓迎されるべき貴重なリソースである ことを明確にする →生徒が二言語での評価というリソースを活用する可能性が高まるのではないか

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Conceptual Framework ―概念的枠組み Systemic Functional Linguistics (SFL):選択体系機能言語学 読み書きを学ぶことは、私たちが世界を経験する方法や、それらの経験の意味づけかたを根本的に変える 文法の価値と力は、ある言語クラスの単語を別の言語クラスに変えるという、文法のもつ力(=grammatical metaphor)からくるものである 科学・理科の言語の機能的な目標 →実験科学が、プロセスと物事の交差で生み出される仮想的な実在が大部分を占める新しい世界を創 造することによって、プロセスの現実世界をどのように理論化するかを表現すること 科学・理科の言語の文法クラスの移行 状況(不安定で刹那的なもの)からプロセスや性質を経て、時間を経ても安定的で永続的な実体へと向 かう文法的な流れを要する (具体的な場面から普遍的・抽象的な理論や法則へ)

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Conceptual Framework ―概念的枠組み 1. “The big fish have nothing to eat and die.” This is an example of a circumstance–it is grammatically unstable and temporary, and we do not perceive the language as scientific. 「大きな魚は食べるものがなくて死 んでしまう。」→状況:文法的に不安定で一時的なもので、科学的な表現とは感じられない。 2. “If the population of little fish decreases, then the population of big fish decreases too.” This example demonstrates a process–it is somewhat more stable in time, and therefore sounds more scientific. 「小さな 魚の数が減れば、大きな魚の数も減る。」→過程を示している-時間的にある程度安定しているので、より科学的に聞こえる 3. “Diseased small fish cause a decrease in the number of big fish.” This example, while expressing the same idea as the prior example, grammatically shifts to demonstrate a quality of the small fish (they are diseased) that is more persistent and thus sounds still more scientific. 「小魚の病気は大魚の減少を引き起こ す」→ 前の例と同じ考えを表現しているが、文法的には、より持続的で、したがって、より科学的に聞こえる、小魚の質(彼らは病 気である)を示すためにシフトする。 4. “Population density of the large fish depends on the density of the small fish population.” In this case, a stable entity has been grammatically constructed (population density) and typifies the fully formed language of science. 「大きな魚の個体数密度は小さな魚の個体数密度に依存する」→安定した実体(個体数密度)が文 法的に構築されており、完全に形成された科学言語の典型である。

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Conceptual Framework ―概念的枠組み Systemic Functional Linguistics (SFL):選択体系機能言語学 こうした科学の言語の性質は多くの生徒にとって難しい →EBL生徒にとっては二重に難しいものである →科学の概念の理解以上のものを評価することになってしまう bilingual constructed response science assessment LISELLプロジェクトの一環として開発 lEBLがどのように言語を選択するのかをよりよく理解し l口頭/筆記の両方で、科学の言語を用いて生徒が科学的思考をよりよく表現できるよう、教師がどのよ うに指導すればよいかを理解することを目的としている。

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研究方法―データ収集 評価の目的:生徒が以下の科学的実践を、科学の言葉を使った科学実験の文脈でどれだけ適 用できるかを測定する LISELL教育モデルが含む5つの科学的実践 (a,b,cのトピックでテストを作成) a. 仮説、観察、証拠を調整する(coordinating hypothesis, observation and evidence) b. 変数をコントロールして公正なテストを計画する(controlling variables to design a fair test) c. 原因と結果の関係を説明する(explaining cause and effect relationships) d. 文脈の中で一般的な学術語彙を発達させる(developing general academic vocabulary in context) e. 科学の言葉を自分のものにする(owning the language of science)

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研究方法―データ収集 用いた評価テストの形式 lピンクのフォームとブルーのフォームの2種類 →色によってシナリオが異なる(評価する構成要素は同じ) la~cの各トピックについて2問ずつ、計6問の構成応答課題(=記述式)で構成 l事前評価:半分の生徒に青い用紙、残りの半分の生徒にピンクの用紙(ランダム) 事後評価:各生徒に事前評価時とは逆の用紙を配布 l以下について評価テストで確認 ・ 各質問をどの言語で読んだか(英語のみorスペイン語のみor両方) ・ 評価テストでの学生の回答がどの言語か(英語のみorスペイン語のみor両方の言語)

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研究方法―データ収集 LISELLプロジェクトの評価におけるアコモデーション l言語的、認知的、視覚的な明確化 l英語とスペイン語の二言語 l不必要なアカデミックな言葉を減らす (言葉の選択に気を配り、各問題に関連する図や絵を入れ、中学生が学校の外である 程度経験しているはずの文脈やシナリオを問題に使用)

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研究方法―データ収集 実施 : 2011~2012年専門的な学習活動に参加した16人の理科教師のクラスの すべての生徒(年初:1,714 人 年末:1,552 人 事前評価と事後評価の両方:1,270 人) →事前評価と事後評価を完了した、自分をラテン系と自認する 546 人の生徒のデータ ●スペイン語を話すバイリンガルの生徒の言語選択に注目→分析をラテン系生徒の評価に限定 ●特定の生徒の事前評価と事後評価を一致させることはしない →個々の生徒の成長ではなく、研究対象のラテン系生徒の一般的な言語使用パターンを特定 ●性別、学年、学校は考慮しない

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研究方法―データ収集 事前 事後 少なくとも一部をスペイ ン語で記述 少なくとも一部の質問をス ペイン語と英語の両方で読 み、回答を英語のみで記述 すべての質問を英語のみ で読み、記述 ピンク15、青15 〃 〃 〃 〃 〃 l 30人×6パターン=180件 l ピンク、青を合わせて6 つの項目のうち 3 つを分析→計540の解答を分析 3 つの LISELL 科学調査実践(仮説、観察、証拠の調整;公平なテストの設計のための変数の 制御;因果関係を説明する) のそれぞれを含める

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研究方法―データ分析 2つの概念的視点 1. 選択体系機能言語学 (SFL) の観点: 分析の焦点 科学の言語の性質:学生の回答の文法がどのように構築されるか Halliday (2004) , Fang&Schleppegrell (2008) (a) 専門用語の使用 (b) より安定した言語クラスへの傾向 (c) 語彙密度 (d) themeとrhemeの関係の頻度 2. LISELL 教育モデルの言語構造 : 質問のための文脈 1.公平なテストを設計するために変数を制御する言語 2.仮説、観察、証拠を調整する言語 3.因果関係を説明する言語

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専門用語の使用方法 ○専門用語とは 科学の文脈に特有な語彙(光合成、絶縁体)や科学的な意味で適切に使用される場 合(物質、管理)、日常的な用法と科学に特有な用法の両方を持つ語彙が含まれる。 ○専門用語の分析 ・各問題で専門語彙が使用された回数を数える。 ・各専門語彙の頻度を数えた。 →平均数から使用方法が3パターン存在した

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○使用方法の3パターン ①1つを除くすべてのケースで事前評価から事後評価にかけて、専門用語の平均使 用数が増加(無作為に抽出) ・伸びがごくわずかの場合もあれば、もっと大幅な増加もあった。 ・共通して事後評価では増加していた。 ・専門用語の使用率は全体的にかなり低く、一問につき生徒一人あたり 平均1例以下であることが多かった。

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②テストでの生徒の言語選択に関連したパターン ・事前評価では、3つの言語グループすべての生徒が回答で非常に類似した専 門用語の使用を示した。 ・事後評価では両方の言語で質問を読み、回答を英語で書いた生徒は最も専門 用語を使用し、グループとして最も専門用語が成長している。

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③事前評価と事後評価では、最も頻繁に使用される専門語彙の性質 に違いがあること ・事前評価で最も使われた専門用語は、問題の科学的内容に関連したものであっ た。(ex.電気回路に関する問題では電気に関する単語の使用がみられること) ・事後評価で最も使われた専門用語は、科学調査の実践に関連する 語彙であった。(ex.仮説、効果、観察など)

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より安定した言語クラスへの文法的な移行 ○文法的な移行とは 状況や過程といった安定性の低い言語類型から実態や性質といった 時間的な持続性が高く、分析や分類が容易な、より安定性の高い言 語類型へと言語的な移行が生じること。 ex.)名詞化←状況や過程を抽象名詞に変える

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○生徒の回答における名詞化の使用、状況や過程から実体や質への 文法的移行記録の分析から ・この分析では各言語使用グループにおいて名詞化またはその他の文法的転用 の明確的な例を少なくとも1つ使用した生徒の割合を示している。 ・文法的な移行をどのように利用しているのか、いくつかパターンが見られた。

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①少なくとも一部の回答をスペイン語で書いた学生は、文章中に実体や 質に向かう文法的な移行を使う傾向が強い ・スペイン語で書いた生徒は事前評価と比較して、事後評価で文法的移行の 例が大幅に増加した唯一のグループ。 ・両方の言語で問題を読んだが、英語で書いた生徒は英語だけで読み書きし たラテンアメリカ系の生徒と比較すると、開始時と終了時の両方で、文法的比 喩の使用率が高かった。

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②質問の焦点は文法的比喩の使用頻度に影響を与える ・具体的に、2つの原因と結果の質問では、制御変数に焦点を当てた質問や、仮説、観察、証拠の調 整に焦点を当てた質問よりも、文法的な移行の使用頻度が低いことである。 ③専門用語の使用と同様に、これらの生徒の文章における実体や質 に対する文法的な移行の全体的な量はかなり少ない ・中学生が科学言語の文法的な移行の側面を利用し始めている一方で、まだ持っている中学生の 会話的な言語構造を持つ彼らにとって科学文章には、この文章がやや異質なものであると認識して いる状態。

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語彙密度 ・任意のテキスト(話し言葉または書き言葉)に含まれる文法語に対する内容語 の比率を示す尺度である。 内容語とは、話されたり書かれたりしている内容を説明するのに重要な語と定 義される。 ・ほとんどの名詞(代名詞を除く)、ほとんどの 形容詞("so "や "too "のような、 より説明的な形容詞に置き換わる原形形容詞を除く)、動詞(助動詞を除く)、 副詞("here"、"how"、"why "などの原形副詞を除く)。文法語(機能語とも呼 ばれる)には、代名詞、前置詞、接続詞、助動詞(例:can、could、will)、原形副 詞と形容詞、限定詞(例:"a"、"the"、"my")、間投詞(例:"wow")が含まれる。

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各問題と各生徒グループの平均語彙密度の分析 ・生徒の回答の語彙密度は開始前と終了後ではわずかであるが一貫し て増加している。 ・ 18の可能な比較(6つの質問に対してそれぞれ3つの言語グループ)の うち、14の比較で評価前と評価後の語彙密度が増加し、そのうち9つの比 較(全体の半分)で語彙密度が3%以上増加した。 →ほとんどの質問に対する生徒の回答は、会話的でなく、よりアカデミッ クな言語へと変化している。

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・言語選択に基づいて生徒グループを比較すると、両方の 言語で問題を読み、英語で書いた生徒が、事前テストでも 事後テストでも、最も高い語彙密度を示した。 ・スペイン語で書くことを選択した生徒は、事前評価と事後 評価の間で語彙密度が平均して最も増加した。これらのス ペイン語の回答は、事前評価では最も会話的な言葉から始 まったが、事後評価では、より典型的な書き言葉の文法を使 用。英語だけで読み書きするラテンアメリカ系生徒が使用す る言語と同等。

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Rheme to Theme 構造 選択体系機能言語学では、themeとは文の主要な考えであり、rhemeとは ・ その主要な考えについて話し手/著者が述べていることである。科学の 文章では、ある文の主題が次の文の主題になることがよくある。 ・このようにして、技術的なアイデアに関する詳細を一文で詳しく説明し、ラ ベル(技術用語)を付与することで、次の文以降で、元の文で詳しく説明した アイデアを表現することができる。よって、技術的な文章は、長い説明を何度 も繰り返すことなく、より簡潔なものになる。

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・LISELLのアセスメントで生徒が書いた文章を分析する際、私たちは、生徒が回 答の中でrheme to themeの関連性を使っている例をすべて記録 →他の言語的特徴で行ったように、 rheme to themeのパターンの記述的 統計を表形式で示し、その後に例を示すことを目標 しかし 生徒たちがrheme to theme の言語構造を使用することは非常に まれであり、数値データを提供する意味がないことがわかった。

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Rheme to theme 構造使用時の分析から ・稀に生徒が回答に「テーマ対テーマ」の構造を使ったとしても、その構造 は通常の言語的機能を果たすために使われたものではないことがわかる。 ・この構造は、科学的言説における通常の言語的機能である、用語にニュ アンスのある意味を持たせ、その用語を再利用して科学的言説に用いる、 ということを達成するために用いられたものではない。つまり、ある用語に ニュアンスのある意味を持たせ、そのニュアンスを表現するために用語を 再利用するのである。 →生徒たちの文章には、明確な機能的目的がないように思われた。

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調査の結果 1.専門用語の使用 事前評価から事後評価にかけて専門用語の平均使用数が増加(1つのケースを除く) ただし全体的な専門用語の使用率は低い。 2.言語選択による専門用語の使用パターン 事前評価では3つの言語グループの専門用語の使用レベルは似ていた。 両方の言語で質問を読み、英語で書いた学生は、事前テストと事後テストの両方で、作文の語彙密度が最も高い。 スペイン語で書くことを選択した学生は、事前評価と事後評価の間で語彙密度の平均増加が最も大きかった。 3.最もよく使われる専門用語の性質の違い 事前評価で最もよく使われた専門用語は質問の科学的内容に関連するもの(電気、植物など) 事後評価では科学的調査の実践に関連する語彙(仮説、効果、観察など)

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専門用語についての考察 (a)事前評価から事後評価にかけて使用される専門用語の平均数の増加 →原因:教師との専門学習の一環として語彙に注目したこと 今後:教師がバイリンガル学習者の語彙ニーズにより重点を置けばさらに専門用語の使用を増やすこ とが期待できる。 (b)両方の言語で質問を読んだ生徒による事後評価での専門用語の使用の増加 →原因:問に重要な専⾨⽤語が多数使⽤されていたこと (c)使用される専門用語の性質の変化(科学内容に関連する言葉の重点から科学探求実践に関する語彙への重点の増加) →プロジェクトに参加した教師が実践で使用される言語の重要性に年間を通じて重点を置いていた可能性あり 学生がその重点を反映して科学的調査の言語をより多く使用することが期待できる。

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文法的な移行についての考察 (a) スペイン語で回答を書いた学⽣は、より安定した⾔語クラスを使⽤する傾向が強い。 →原因:スペイン語は仮定法が一般的で科学言語の重要な文法構造とより一致している。 (b) 質問の探究の焦点が、使⽤される⾔語クラスに影響を与えているように⾒える。 →原因:原因と結果は性質や事象としてではなく状況や過程として表現する方が自然である。 (c) 学⽣の回答の全体的な⾔語パターンは、より不安定な⾔語クラスで書く傾向にある →固有な専門的文法に慣れておらず会話調で書く傾向 →科学言語の構造に細心の注意を払う必要がある。 練習を重ねるにつれより安定した性質や事象で書くようになるのを期待する。

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語彙密度についての考察 (a) 生徒の回答の語彙密度は一貫して増加している →より正確な言語を必要とする具体的な調査実践に取り組む練習をすることで語彙密 度は高まるのではないか。 (b)両方の言語で問題を読んだ生徒の文章の語彙密度が最も高い(特にスペイン語で書いた 生徒は密度が平均して最も増加した) →特定の質問の文脈で科学の言語がどのように聞こえるかについての追加のモデルを 学生に提供したことを示し、回答を作成する際に使用できる。

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テーマ構造について 予想:ある文で主要な考えについて述べられているところが次の文のテーマや主要な考えに なり、複雑な考えを構築し、さらに詳しく述べるという言語構造が増加すると考えていた →実際には非常にめずらしい チャートを用いた評価回答形式の構造が、質問のある部分から次の部分へアイデアを結び付 けるのに役立たず、各列を独立したものとして考えた可能性がある 一文だけで回答していて文をまたいでつなげる機会がなく、広範囲に回答した生徒の多くは 文法的に誤った連続文を使用していた

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さらなる研究への示唆 以下のような研究が必要である。 ①生徒が行う選択についての理解や思想発話研究 ②教師と学⽣が教室で⼀緒に難しい学術的問題について考えることと、学⽣が評価の中で ⼀⼈で⾏うことを結び付ける研究 ③SFL枠組みを利用した理科の授業と評価の両方で繰り返し科学言語に触れ、練習すること によって科学言語特有の言語的特徴に慣れ、快適に使えるようになる方法についての研究

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授業実践と形成的評価への影響について 生徒のメリット ①探求型学習に不可欠な批判的思考プロセスをより容易に行うことができる ②表現に使う言語を自分で選択する必要があるため言語学習の機会も増える 教師のメリット ①各生徒がどのように理解しているか、どのように作文を通して考えを伝えることができるかに ついてより明確に洞察できる。 しかし、生徒の様々な背景を考慮すると単なるバイリンガルのアセスメントを提供するだけでは 能力測定に役立たない。継続的な指導と評価の実践を通して様々なアセスメント・アコモデー ションを最大限に活用できる。

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どのような論点争点があるのか? 1. 科学の学習における科学的な思考をどのようにして可視化し、見とるのか。 2. 英語が母語でない学習者の科学的な思考を評価するためにはどのような言語的 なアコモデーションが有効か。 3. 1、2を統合した評価の意義と今後の課題は何か。 4. 教室における指導と形成的評価を通じて、標準化されたテストにおける母語に よる受験上の配慮をいかに活用できるようにするか。

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日本において論点・争点はどのように 存在するか? l母語が多様であり、マイナー言語も多い上、地域によって人数差がある。どこまで母語で の支援を取り入れられるか。 l(この前の授業見学での批評会を踏まえて)母語での概念形成ができていない(質問の科 学的内容の概念が理解できていない)段階で日本に来る児童が多くいる。その場合、この母 語での支援はどれくらい効果があるのか。 l日本語の文型は英語とは異なる。スペイン語は語順がかなり柔軟であるため英語との併記 で効果があったかもしれない。しかし、日本の外国人児童の母語で多い、ポルトガル語、中 国語、フィリピノ語は日本語の文型とは異なる。この影響はないのか?