文献04_Vazquez Dominguez, M., Allexsaht-Snider, M. & Buxton, C. (2017). Connecting soccer to middle school science- Latino students' passion in learning. 日本語要約

1K Views

August 11, 24

スライド概要

広島大学 外国人児童生徒の教育課程デザイン論(南浦担当 2024)の授業資料です

profile-image

教育方法学・教科教育学という「一般的な教育」と,外国人児童生徒教育学という「特別な教育」をどちらも行っています。 このどちらもを同時に行う研究室は,日本の中ではほとんどありません。その結果,大学を含む多くの教育の場でこの両者は別々のものになってしまっています。

Docswellを使いましょう

(ダウンロード不可)

関連スライド

各ページのテキスト
1.

広島大学 外国人児童・生徒の教育課程デザイン論(南浦担当 2024) サッカーと中学校理科を つなげる ―Dominguez et al. (2017)の検討― 2024年7月12日(金) 外国人児童・生徒の教育課程デザイン特論 大岡慎治・野呂航平・播摩朔良 Vazquez Dominguez, M., Allexsaht-Snider, M. & Buxton, C. (2017). Connecting soccer to middle school science: Latino students' passion in learning. Journal of Latinos and Education , pp.225-237. 発表資料は,広島⼤学「外国⼈児童・⽣徒の教育課程デザイン論」(南浦担当)受講⽣の許可を得てこのサイトで紹介をしています。 (あくまで論⽂そのものではなく,その要約資料です。教育的価値・資料的価値として公開していますので,引⽤などは必ず原著に あたり,ここのものを転載・引⽤することはお控えください)

2.

発表構成 • 著者紹介 • 全体構成(章立て) • 論点・争点 • 日本での論点・争点 • 要約 • 改めて、論点・争点 • 参考文献など

3.

著者紹介(大学HP,Google scholerより) ・Max Vazquez Dominguez(マックス・ヴァスケス・ドミンゲス) ノースジョージア大学助教授(科学教育) 学位:教育理論,教育方法の博士号(ジョージア大学) 【研究関心】 教育・学習プロセスにおけるバイリンガルの生徒の興味や情熱の 活用,家族参加,科学とサッカー,科学学習を強化するための空間 の代替概念の使用,科学教育・学習におけるバイリンガリズムなど #科学教育 #工学教育 #教師教育 #多言語教育 #家族参加 https://ung.edu/college-of-education/faculty-staff-bio/dominguez-max.php https://scholar.google.com/citations?user=NCcO6IYAAAAJ&hl=en

4.

著者紹介 名前:Martha Allexsaht-Snider (マーサ・アレクサート・スナイダー) 所属:ジョージア大学名誉准教授(Emeritus Affiliate Faculty) 研究テーマ:コミュニティの相互作用 数学・科学教育における専門能力開発と公平性 多様な文脈における教師教育への創造的アプローチ #多言語学習者 #教師教育 #専門能力開発 # Multilingual Learners # Teacher Education # Professional Development

5.

著者紹介 • Cory Buxton(コーリー・バクストン) (前回講義での検討論文と同著者) ・オレゴン州立大学教育学部教授 :同大学で科学教育を専門とする ・NASA、グアテマラでの米国平和部隊活動を経て、科学教育の道へ #科学教育 #移民・バイリンガル初学者 #多様な主体

6.

全体構成(章立て) • 問題の所在 • 理論的枠組み • 方法論 • 1990年代と21世紀初頭のメキシコとホンジュラスに影響を与えた 社会政治的強制力 • ホセとイスラエルとその家族のケース • 科学的探究にもとづくサッカー活動 • 解釈 • 議論

7.

論点・争点 • 理科授業(ほかの教科も)での子どもの学びはどのような「要素」, 特にどのような学校外の「要素」に影響を受けるだろうか? • 言語や教科の要素と文化的な活動に結びつけるような2つの異なる 学習環境(科学教室とサッカー場)を授業の中で合わせて行うことは 可能なのか? • 熱狂する文化として,ルーツを持つ国の文化のみならず,移住先の国 の文化でも適応可能だろうか? • 論文中の子どもたちは,自分たちがやった「サッカー×理科」学習を 何と捉えているだろうか?サッカーの時間?理科の時間?それとも??

8.

日本での論点・争点 • 日本社会にいる外国人児童生徒やその保護者が「熱狂」する文化と して何があるだろうか?そして、それは(教科,日本語)学習とどのよう に結びつけることができるだろうか? • 部活動指導の外部化が進む中で,外国人児童生徒教育の立場から 部活動にどのようにかかわっていくべきなのか? 紹介した論文の事例は体育授業だったらどうか? • 日本の外国人児童生徒たちは,学校での学習を「言語」学習としてと らえているのか?「教科」学習としてとらえているのか?

9.

問題の所在 • ラテンアメリカ系住民 =米国の文化的・言語的多様性の拡大の中で大きな役割 =米国社会の科学への関心が高まったのと同時期にラテン系住民増加 • カリキュラムの変更…ラテン系生徒が理科学習で成功する支援△ ☝科学=「文化に関係ない(culture-free)」ものとする枠組み (Lee & Buxton, 2013) ⇒本研究:ラテンアメリカ諸国で重要とみなされる文化的実践に注目 • サッカーと(理科の)科学的調査を組み合わせたカリキュラムを開発 :生徒のスペイン語の知識、スポーツへの興味などの導入 ⇒アッサンブラージュ理論(De Landa, 2006)を枠組みとして研究

10.

問題の所在 • 本研究のリサーチ・クエスチョン(RQ) ①アフタースクール・プログラムにおいて、ラテンアメリカの生徒たちは、 彼らの文化的実践とサッカーへの情熱を理科学習に統合する プロジェクトにどのように取り組んだか? ②サッカーの実践の中で行われる理科学習において、 物質的・表現的要素が破壊的(disruptive)・同質的なプロセスで 相互作用することの理解を深める可能性を、 理科教師はどのような方法で探ることができるのか?

11.

理論的枠組み ★アッサンブラージュ理論(De Landa, 2006) 【発表者の補足】 • assemblage :(名)集合体、機械の組み合わせ • さまざまなものを「組み合わせる」という イメージの語

12.

理論的枠組み ★アッサンブラージュ理論(De Landa, 2006) • 外部性の関係によって特徴づけられる(右側の図のイメージ) 両親の 社会歴史的 プロセス 放課後の サッカー 教育政策 スペイン語 理科学習 ラテン系生徒/Aさんの 理科学習 両親の 社会歴史的 プロセス 放課後の サッカー ・・・・ 教育政策 スペイン語 ・・・・

13.

理論的枠組み ★アッサンブラージュ理論(De Landa, 2006) • 外部性の関係によって特徴づけられる(右側の図のイメージ) 両親の 社会歴史的 アッサンブラージュ理論は、このランドスケー 教育政策 プロセス プに組み合わされた各要素と、これらの相互 作用に関わるプロセスを説明し、扱うための 放課後の ツールを提供する。さらに、アッサンブラージュ サッカー スペイン語 は、学校外でのサッカーの練習という一見バラ バラに見える要素と、学校日中に行われる理 科や英語の学習目標との関連性など、マクロ とミクロの構造間の相互作用の研究を容易に する。 理科学習 ラテン系生徒/Aさんの 理科学習 両親の 社会歴史的 プロセス 放課後の サッカー ・・・・ 教育政策 スペイン語 ・・・・

14.

理論的枠組み ★アッサンブラージュ理論(De Landa, 2006) • 表現‐物質軸(the expressive-material axis) アッサンブラージュにおける表現的要素と物質的要素の異なる役割 例:生徒のサッカーへの関心、スペイン語の使用、理科授業の文脈 (生徒の教材への理解、言語能力) • 領域化‐非領域化 (the territorialization-deterritorialization axis) ①実際の領域の限界を定義するか ②システムの均質性を安定させるか不安定にするか←本研究の立場

15.

理論的枠組み ★アッサンブラージュ理論(De Landa, 2006) • 領域化‐非領域化 (the territorialization-deterritorialization axis) ②システムの均質性を安定させるか不安定にするか =「均質性の安定化/不安定化」機能 :同じ要素がアッサンブラージュを壊す/均質化する (例)「サッカー×理科」学習 →「理科の勉強で遊んでいいの!?」(理科学習を「混乱」させる) →「サッカーって楽しいだけじゃないんだな」 (サッカーという文化的実践の重要性を強化)

16.

理論的枠組み ★アッサンブラージュ理論(De Landa, 2006) • 文化的慣習 :アッサンブラージュを構築・解釈する際に重要な要素 ●本研究に参加した家族…出身国が異なる ホンジュラス、メキシコ→サッカーが文化的に重要 プエルトリコ、キューバ→野球が文化的に重要 ∴文化的慣習=歴史的プロセスとして広く研究されなければならない (自認する国、文化ごとに/個人と家族ごとに)

17.

理論的枠組み ★アッサンブラージュ理論(De Landa, 2006) • 生産的な相互作用のための臨界閾値(critical thresholds)を 見出す実験が重要 ●本研究の場合・・・ ・ジェスチャー、口頭、テキストなどのさまざまなモードを導入 →言語的負担を多様化し、文脈を超えて科学に触れる機会を増やす ・「いかなる社会も、人々や制度が欲望をとらえ、その欲望を社会構造に 取り込む方法によって定義される」(Deleuze & Guattari, 1987) →生徒の「欲望」をプロジェクトに位置付ける (発表者の解釈) ラテン系生徒の理科学習の促進→言語以外のモード、熱中する題材・・・

18.

方法論 • 参加者 ○ジョージア州北東部の小さな都市の中学校 ・生徒の84%が無料/割引価格給食の対象 ・全校生徒640名 ラテン系(52%)、ヒスパニック(33%)、白人(10%)、多民族(3%)、 アジア系(2%) ●24名の男子サッカーチーム ラテン系(21名)、アフリカ系・アジア系・アングロ系(各1名) ●サッカーチームの指導責任者(同校中学2年生の理科教師)

19.

方法論 • 参加者 ●プログラムの内容:40分間の活動を7週間続けた 20分・・・学問的探究(理科学習) 20分・・・サッカーの動きの練習、結果の整理 ●研究の分担 ・ドミゲンス氏:フィールドノート、生徒の文章の収集、対象生徒(ホセ・ イスラエル)および彼らの父親へのインタビュー ・ほか2名:データ分析、研究の執筆

20.

方法論 • 参加者 ●対象生徒(ホセ、イスラエル) ・調査当時は14歳 ・アメリカでの第1世代:活動やインタビューでは英語・スペイン語を使用 ・サッカー:さまざまな意味で非常に重要なトピック (例)テレビでのサッカー観戦、地元リーグへの出場経験 ・両親:スペイン話者、中等教育を受けていない

21.

方法論 • データ収集 ●6つの「科学とサッカーの授業」(soccer with science activities) ・すべての教材:英語、スペイン語の二か国語対応 ・授業の基本的な流れ ①サッカー選手の動きなどの映像をみる ②生徒同士で議論、科学についての基礎的なことが書かれた文章を読む ③実際にサッカーをしてみる ④結果を整理する

22.

方法論 • データ収集 ●6つの「科学とサッカーの授業」(soccer with science activities) ・子どもの学び=理科の実験(科学調査)の実践について学んだ 仮説、観察、証拠を調整すること 変数をコントロールして公正な調査を計画すること 原因と結果の関係を説明すること 一般的な学術語彙を文脈にあわせて使うこと 科学用語を自分のものにすること

23.

方法論 • データ分析 ●質的研究 →アッサンブラージュにおける要素間の様々な関連性・相互作用を コード化 ●2つの異なるカテゴリー ・科学活動の既存のカテゴリー (例)科学的実践 ・研究のプロセス (例)活動や教材に対する相互作用や修正

24.

方法論 • 結果:3つのパートに分けて記述 第1部…父親と生徒との会話 →参加者の社会歴史的な立場を形成したミクロとマクロの力 第2部…実際のプログラム内での重要な場面を抜粋 第3部…プログラムへの参加についての生徒との会話 →プログラムについての生徒の感想、修正してほしい点

25.

1990年代と21世紀初頭のメキシコとホンジュラスに影響を 与えた社会政治的強制力 ・1992年:メキシコ大統領が,メキシコ経済の活性化とアメリカへの移民減を目標として, NAFTA協定(メキシコ・アメリカ・カナダ)に調印 1990年代から21世紀初頭 にかけて,移民問題が深刻化 (Blecker,2014) ⽶国の⼯業化された安価な農作物の流⼊ NAFTAが農村部の労働条件改善に失敗 メキシコ経済危機(1995年)

26.

1990年代と21世紀初頭のメキシコとホンジュラスに影響を 与えた社会政治的強制力 • 移民の長い歴史を持ち,米国に社会的なつながりを持つ(ミチョアカ ン州,ゲレロ州など)から,NAFTA協定後に大量移住 (Durand & Massey, 1999) • かれらは,労働者を必要とするアメリカ企業とメキシコ移民との橋渡し 役になることが多かった (Consejo Nacional de Población, 2001) • 米国にいる無許可のメキシコ人の推定数:1995年から2005年で 250万人→1100万人に増加,低所得・低学歴・地方出身の特徴 (Martin2005,Passel2005,Consejo Nacional de Población, 2001; Ho & Loucky, 2012)

27.

1990年代と21世紀初頭のメキシコとホンジュラスに影響を 与えた社会政治的強制力 • 同時期にボンジュラスの人々も米国 への移民プロセスを開始した。 (Confederación de las Entidades de acción caritativa y social de la iglesia, 2003) • かれらの66%は,低学歴・低所得・英 語がほとんどできない。 (Blanchard, Hamilton, Rodríguez, and Yoshioka 2011) • 1998年のハリケーン・ミッチによる, 産業・インフラ破壊(国連1999)

28.

1990年代と21世紀初頭のメキシコとホンジュラスに影響を 与えた社会政治的強制力 • 9.11テロによって,国境管理の問題が「公 序良俗」の問題から,「国家安全保障」の問 題へと変質した。(Alden2012) • 移民に対する排外的風潮が生まれ,ジョー ジア州でも移民排斥法を可決しようとする 動きがあり,州の主要5大学は出願資格に 移民の「合法性」の証明を義務付けている。 投資や政府介⼊により, 移⺠先の南部が多国籍企 業の労働⼒の供給地へ (Amescua2013) ラテン系移⺠に対する 社会的抵抗の⾼まり, 排外的傾向

29.

ホセとイスラエルとその家族のケース • ホセ(14歳) 両親はボンジュラスの最も大きな沿岸都 市出身で,1995年に結婚。 祖父母は,小学校を卒業したが,家族を 養うために中学校は卒業していない。 ハリケーン・ミッチの影響で「ほとんど何 もない状態」になり,親戚の援助もあり, ジョージア州へ移住,その後3人兄弟の 長男としてホセが生まれる。 「高校を卒業したら就職したい。大学に 行く必要がないから。」 バルセロナのファンで,メッシが最高の サッカー選手と思っている。 • イスラエル(14歳) 両親はメキシコのミチョアカン州で生ま れ育ち,イスラエルもそこで生まれた。異 母兄弟が二人いるが,直接会ったことは ない。妹がいる。 両親はテキサス州に移住していたが,イ スラエルを妊娠したときに故郷に戻り,そ れ以来はジョージア州に住んでいる。 科学が好きで,大学に進学する機会が あれば,土木工学を学びたい。 メキシコリーグが始まると,家族でサッ カープールをする,幼少期からストリート サッカーの経験がある。

30.

科学的探究にもとづくサッカー活動 • 以下の科学調査の実践を発展させる機会の創出を意図 (1)仮説,観察,証拠の調整 (2)公正なテストを設計するための変数の制御 (3)原因と結果の関係の説明 (4)文脈における一般的な学術用語の使用 (5)科学の言葉を自分のものにすること (Buxton & Lee 2014) このセクションでは,6つのうち3つの活動について,生徒の回答ととも に説明するものとする。

31.

科学的探究にもとづくサッカー活動 • First activity (1)仮説,観察,証拠の調整 (4)文脈における学術的語彙の使用 第1問. あなたは、さまざまな種類のボールについて、適切なスピンで蹴ったときにサッカーボールの ようにカーブするかどうかを調べる実験を行いたいと考えています。ロベルト・カルロス(ビデオでゴー ルを決めた選手)に、これから試すすべての選択肢を使って同じフリーキックを繰り返すように頼んだと します。どのボールが一番カーブを描くでしょうか? ホセ 仮説「プラスチックボールはサッカーボールよりも密度 が低いので,最もカーブを描くと思う。」 観察「ボールを蹴ってカーブを描き,どれが最もカーブ を描くかを確かめる必要がある。」 証拠「重さはプラスチックの方が軽い」 エンリケ 仮説「通常の5号サイズのサッカーボールが最も曲が るだろう。どちらが一番曲がるかは、実際に実験してみ ないとわからない。」 証拠「ボールが壁を回ってゴールに入ること」

32.

科学的探究にもとづくサッカー活動 • Second activity (1)仮説,観察,証拠の調整 (3)原因と結果の関係の説明 (4)文脈における学術的語彙の使用 第3問 二人一組になり、各自が異なる高さにサッカーボールをトスし、もう一人がビデオのロナウジー ニョのようにボールをコントロールしようとする。ボールを垂直に蹴り、地面から測って10m、20m、 30mの高さに到達させ、最後の高さでは、あなたとパートナーは違う高さを測ります。そして、次の表 で原因と結果を説明しながら、何が起こったかを説明してください。 イスラエル 結果「10mではボールはコントロールしやすかった。 20mではボールは少し難しくなり、3インチほど離れた。 30mではボールはさらに難しくなり、1フィートほど離れ た。」 原因「ボールが高ければ高いほどコントロールが難し くなる。」 ホセ 結果‐原因「10mは簡単だった-低かった"、"20mはバ ウンドした-中程度だった"、"30mは釘付けにならな かった-高かった」

33.

科学的探究にもとづくサッカー活動 • Second activity (1)仮説,観察,証拠の調整 (3)原因と結果の関係の説明 (4)文脈における学術的語彙の使用 第4問 実験中に観察された原因と結果の関係を、 科学的な言葉を使って 説明しなさい イスラエル 「ボールが高くなったことは、ボールをコ ントロールすることの難しさ(結果)を決 定づけたと思う。」 ホセ 「原因はボールが高かったことで、結果 は私がボールをコントロールできなかっ たことだ。」

34.

科学的探究にもとづくサッカー活動 • Sixth activity (1)仮説,観察,証拠の調整 (4)文脈における学術的語彙の使用 第1問 ボールをコントロールするために必要な選手の特徴を3つ挙げてください。 第2問 あなたまたはあなたのサッカー仲間が地面に触れずにボールをコントロールできる時間 を予測する仮説を書いてください。 エンリケ 第1問「スピード,足の速さ,バランス,コントロール」 第2問「1分間ボールをコントロールできると思う。」 ホセ 第1問「ボールコントロール,反応,バランス」 第2問「1分,(ジーザスは)『30秒間ボールをコントロー ルできると思う。ショーンは10秒間ボールをコントロール できると思う。そして,僕は25秒間ボールをコントロールで きると思う』と答えた。そして、僕は(ジーザスより)少しうま いけど、それほどではないからだ。」

35.

科学的探究にもとづくサッカー活動 • 注目した生徒(ホセ,イスラエル)との最後の会話 ホセ:キックスピン,空気抵抗,異なるボールのアクティビティが一番好き 「アクティビティは好きだったけど,書くことが嫌だった」 「質問はもっと少ない方がいい」 イスラエル:原因と結果,仮説を立てたという振り返り 「楽しかった」

36.

Interpretations(解釈) 社会的、政治的、物質的、認知的、言語的背景(Gutiérrez, BaquedanoLópez, & Tejeda, 1999)を教室のリソースとして、生徒の社会歴史的プロ セス(De Landa, 2006)を利用する科学教師が、生徒の科学への取り組み に利用できる重要な文化的実践や情熱を解明できるという明確な証拠を示し ている (1)ラテン系の生徒が、異なる環境の中で、英語とスペイン語の両方で科学的 なアイデアを考え、読み、書くことを助けること (2)科学的なアイデアを試しながらサッカーの技の披露に挑戦すること

37.

Interpretations(解釈) サッカー ライティング への抵抗 図: assemblage(アッサンブラージュ) の要素 Vazquez Dominguez, M., Allexsaht-Snider, M. & Buxton, C. (2017). Connecting soccer to middle school science: Latino studentsʻ passion in learning. Journal of Latinos and Education , p.233 より

38.

Interpretations(解釈) 背の低い人と高い人、どちらがボールを強く蹴る? Who kicks the ball harder, shorter or taller people? あなたのチームでは誰がボールを強く蹴ると思いますか? Who do you think kicks the ball harder in your team? エステバン 「重要なのは脚の物理的な状態です。 僕の仮説では、リカルドの方が足が強いから強く蹴れるんだ。」

39.

Interpretations(解釈) 関与の強さと範囲を明らかにすることで、参加者の学習プロセス を構築するための要素と閾値を局所化できた ホセ 「自分にとって役に立つことを学んだし、ボールやサッカーを使った実験は あまり見かけない。」 「私は自分の仮説を立て、(中略)得点すると確信し、フィールドの隅から ボールを曲げさせたときに得点した」

40.

Interpretations(解釈) ・6回の活動は、理科の授業で使われる実験レポートに似た構造化された ライティング・プロセス使って、サッカーや科学活動に参加する生徒の興味 を引き出すのに十分な時間だった ・「意味のある文章を書く練習をするための優れた文脈であり、特に、生徒 が自分の理解を詳しく説明する場合、最初は日常的な言葉を使い、徐々に 科学的コミュニケーションに典型的な学術的語彙や談話構造へと発展し ていく」(Buxtonら 2013, p.349)

41.

Interpretations(解釈) ・バイリンガルの新入生に有意義な実践を提供し続けるには、科学教師とし て、「思考に衝撃を与え、習慣を破壊する」(Marble, 2012, p.29)ような 新しい状況に対して、新しいアプローチ、新しいつながり、新しい協力関係を 創造しなければならないことを認識しなければならない ・家庭での文化的実践を取り入れ続けることが必要であり、特にサッカーの ケースで提案するように、それが情熱的なものであればなおさら良い

42.

Discussion(議論) ・学校と地域社会における社会的・教育的プロセスに関わるさまざまな要素を どのように活用するかを考えるきっかけ ・非主流の生徒のユニークな特徴や軌跡に目を向け、それらを科学の教室に統 合する。より公平な学習状況を提供する新しい方法を生み出すことができる ・文化的実践は教室で考慮すべき集合体(アッサンブラージュ)の重要な一部 本研究では、 文化的資材・生徒のユニーク:スペイン語の使用 文化的実践:サッカー

43.

Discussion(議論) (1)文化的実践と情熱を科学教育に橋渡しすること (2)主要な科学的実践をサッカービデオと結びつけ、サッカー技術の側面を 科学的に調査すること (3)ルーディック(遊び心のある)空間を科学学習プロセスの一部にすること 今後の課題 ・新進バイリンガル(ラテン系・非ラテン系)や女子生徒を対象とした研究 ・多様な生徒にとって重要な他の文化的実践の探求をさらに進めること

44.

論点・争点 • 理科授業(ほかの教科も)での子どもの学びはどのような「要素」, 特にどのような学校外の「要素」に影響を受けるだろうか? • 言語や教科の要素と文化的な活動に結びつけるような2つの異なる 学習環境(科学教室とサッカー場)を授業の中で合わせて行うことは 可能なのか? • 熱狂する文化として,ルーツを持つ国の文化のみならず,移住先の国 の文化でも適応可能だろうか? • 論文中の子どもたちは,自分たちがやった「サッカー×理科」学習を 何と捉えているだろうか?サッカーの時間?理科の時間?それとも??

45.

日本での論点・争点 • 日本社会にいる外国人児童生徒やその保護者が「熱狂」する文化と して何があるだろうか?そして、それは(教科,日本語)学習とどのよう に結びつけることができるだろうか? • 部活動指導の外部化が進む中で,外国人児童生徒教育の立場から 部活動にどのようにかかわっていくべきなのか? 紹介した論文の事例は体育授業だったらどうか? • 日本の外国人児童生徒たちは,学校での学習を「言語」学習としてと らえているのか?「教科」学習としてとらえているのか?

46.

参考文献など • Cory BUXTON | Professor (Full) | PhD University of Colorado | Oregon State University, Oregon | OSU | College of Education | Research profile (researchgate.net) (最終閲覧:2024年7月11 日). • Assemblage, 彫刻 Frédéric Dhenninによって | Artmajeur (最終閲覧:2024年7月11日). • 「240705_文献06_川原、細野、尾花」外国人児童・生徒の教育課程デ ザイン特論第9回発表資料. • Community for Advancing Discovery Research in Education https://cadrek12.org/users/martha-allexsaht-snider (最終閲覧:2024年7月11日).