文献02_Buxton, C. Allexsaht-Snider, M., Kayumova, S., Aghasaleh, R., Choi, Y., & Cohen, A. (2015). Teacher agency and professional learning- Rethinking fidelity of implementation as multiplicities of enactment 日本語要約

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August 11, 24

スライド概要

広島大学 外国人児童・生徒の教育課程デザイン論(南浦担当 2024)の授業資料です

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教育方法学・教科教育学という「一般的な教育」と,外国人児童生徒教育学という「特別な教育」をどちらも行っています。 このどちらもを同時に行う研究室は,日本の中ではほとんどありません。その結果,大学を含む多くの教育の場でこの両者は別々のものになってしまっています。

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各ページのテキスト
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広島大学 外国人児童・生徒の教育課程デザイン論(南浦担当 2024) Teacher Agency and Professional Learning: Rethinking Fidelity of Implementation as Multiplicities of Enactment 教師のエージェンシーとプロフェッショナル・ラーニング -解釈・翻案の複数性として プログラム再現の忠実性を再考する- Buxton, C. Allexsaht-Snider, M., Kayumova, S., Aghasaleh, R., Choi, Y., & Cohen, A. (2015). Teacher agency and professional learning: Rethinking fidelity of implementation as multiplicities of enactment, Journal of Research in Science Teaching , 52 , 2015 , pp.489-502.発 表資料は,受講⽣の許可を得てこのサイトで紹介をしています。(あくまで論⽂そのものではなく,その要約資料です。教育的価値・資料的 価値として公開していますので,引⽤などは必ず原著にあたり,ここのものを 転載・引⽤することはお控えください) 2024年07⽉19⽇ 「外国⼈児童・⽣徒の教育課程デザイン」第13回発表資料 発表担当 ⼭本亮介・⼩⽥夏未・藤井⿇央

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発表構成 ・著者紹介 ・論⽂の内容構成 ・論点,争点 ・⽇本での論点,争点 ・訳語の確認,前提共有 ・要約−ⅰ導⼊ ⅱ調査結果 ⅲ考察

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著者紹介 Cory Buxton (以前扱われた⼀部論考のものと同著者) 【所属】オレゴン州⽴⼤教育学部 【関⼼】移⺠や移⺠の学⽣、および新興のバイリンガル学習者に とって、より公平で魅⼒的な科学学習の機会を促進し、 学⽣、保護者、教師、研究者が共同学習者として⼀緒に 参加できるスペースを作成すること 本論⽂は,ここでの 「教師・研究者の協働」 がキーワード (オレゴン州⽴⼤ホームページ:https://education.oregonstate.edu/directory/cory-buxtonより翻訳の上転記) その他著者:Martha Allexsaht-Snider, Shakhnoza Kayumova, Rouhollah Aghasaleh, Youn-Jeng Choi, Allan Cohen

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論⽂の内容構成 ⅰ導⼊部 ・研究課題 ・Practice Theory ・⽅法論 −プロジェクトの 概要と研究⽅法 理論的枠組みと ⽅法論 ⅱ調査結果 ・「関与・参加意欲」 ⅲ 考察 ・「関与・参加意欲」と 「解釈・翻案」の関係性 構造とエージェンシーの相互作⽤ 説明 「関与・参加意欲」 「解釈・翻案」 提⾔ ⾃律的な教師の 意思決定の内実と その⽀援⽅略

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論点・争点 本論文の中核たるキーワードは,「教師のエージェンシー(主体性)」。 プログラムで学んだことを忠実に再現できることを是とするのではなく, 多様な教師の実践における意思決定を読みとることを目標とする。 ラテン系生徒/バイリンガル生徒を支援する教師教育として最終的に導き出され た 以下プロフェッショナル・ラーニングの方向性は,趣旨に照らして妥当だといえ るだろうか? ①LISELLのスタッフの協働による授業の計画・実施 ②教授内容知識ノートの作成 ③定期的な指導ログの記録の開始 ④プロフェッショナル・ラーニングのコンテクストの追加(夏季の学生科学ア カデミー)

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⽇本での論点・争点 「構造によって教師を規定する」ことは,はたして「⽶国のルーツが異なる児童⽣徒 教育を担う教師教育」だけに⾒られることだろうか。⽇本でも,画⼀的な⽇本語指導 を促し,⾃律的な教師の意思決定を尊重できていない側⾯があるのではないか。 ⽇本における外国⼈児童・⽣徒教育を担う教師に向けた研修において,教師教育者は どのような環境を設定し(マクロ),どのように関わるべきなのだろうか(ミクロ)。 発表で検討する「LISSELの⽅針」をふまえて,再⽂脈化の観点から⽇本への適応に ついて考えて下さい。

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訳語の確認,前提共有 発表者らは,先⾏研究やニュアンスをふまえ,以下概念や⽤語を次のように翻訳した。 (ここに掲載したのは,特に解釈を強く表すものである) ・Engagement :「関与」「参加意欲」 学習や仕事に対する積極的な関与や⼼理状態を表す構成概念(Christenson et al,2012; Schaufeli and Bakker,2004) ・Enactment:「解釈・翻案」 (Hurlbut & Dunlap,2019;Latta,2018;Kaur et al.,2019) ・Grand rounds observation:「(授業の)協働観察」 発表者らで検討の上,論⽂内の⽂脈から定義 ・その他,翻訳が難しい概念/⽤語(エージェンシー,プロフェッショナル・ ラーニング等)はカタカナのまま記載をする。 ※1 ※2 エージェンシーを「主体性」と訳して良いと思われる場合はこれを適⽤しています。 翻訳に関してより良い事例があればご教授いただけると幸いです。

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導⼊部の発表⼿順 研究課題① 研究課題② 研究課題③ 全体概観 概念規定 RQ導出 ⽅法論① 理論的枠組み プロジェクト 概要 ⽅法論② ⽅法論③ データ収集 分析⽅法

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研究課題① 研究課題② 研究課題③ 全体概観 概念規定 RQ導出 ⽅法論① 理論的枠組み プロジェクト 概要 ⽅法論② ⽅法論③ データ収集 分析⽅法 現職教師からの声:さまざまな「状況」 (学校職員,⽣徒層の変動,ELLの個別的ニーズ)に基づいた 柔軟な「対応策」の要望 LISSELBプロジェクトが強調する「構造とエージェンシーの相互作⽤」の実例である。 教師の実践における幅広い選択を理解し,説明することの困難性 「プロジェクトをいかに忠実に実践しているか」という視点だけでは, 参加した教師・⽣徒・家族の複雑な相互作⽤や意思決定は説明不能 「構造とエージェンシーの相互作⽤」を捉えるため, 関与・参加意欲(engagement)と解釈・翻案(enactment)を枠組みとした説明を図る

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研究課題① 研究課題② 研究課題③ 全体概観 概念規定 RQ導出 ⽅法論① 理論的枠組み 概要 関与・参加意欲 (Engagement) ⽅法論② ⽅法論③ データ収集 分析⽅法 解釈・翻案 (Enactment) におけるエージェンシー 教師が,教育観(⽣徒像・⽬標…)に 基づき,プロジェクトのどれに参加し, どのように仕事に反映させるかを意味する。 学校の⾔語対応の⽅針・州の教員評価 といった影響されやすいものから, 社会階級,⼈種,ジェンダーといった 深く埋め込まれた社会的・歴史的な構造 まで,様々な要因がある。 プロジェクト におけるエージェンシー プロジェクトの「適応」性 (遵守) 教師が状況に合わせてプロジェクトの どの側⾯を取り上げるか 「遵守」に焦点を当てるアプローチ :①「良い⽅法」「悪い⽅法」が明確で, ②⽂脈依存的ではなく, ③質の変化が予測可能であり ④研究者が最も⾒取るのにふさわしい は,本研究の背景とはマッチしない。

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研究課題① 研究課題② 研究課題③ 全体概観 概念規定 RQ導出 ⽅法論① 理論的枠組み プロジェクト 概要 ⽅法論② ⽅法論③ データ収集 分析⽅法 「構造とエージェンシーの相互作⽤」がどのように発展していったかを 明らかにするため,本研究では次のような研究課題を探求する 1)バイリンガルの⽣徒の科学学習に焦点を当てたとき,教師はどのような⽅法で プロフェッショナル・ラーニングに取り組み,授業実践を⾏っているか。 2)構造とエージェンシーの相互作⽤を通して,これらの教師の 「関与・参加意欲」と「解釈・翻案」をどのように説明できるか

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研究課題① 研究課題② 研究課題③ 全体概観 概念規定 RQ導出 ⽅法論① 理論的枠組み プロジェクト 概要 学校の⽅針 構造 移⺠政策 実践 対象としての個⼈ データ収集 分析⽅法 規律 実践 学校の⽅針 移⺠政策 説明責任 説明責任 ⽅法論③ Practice Theory theories of social reproduction 構造 ⽅法論② エージェンシー ⾏為者としての個⼈ 1.実施する/しないという判断を⾏う⾃律的な教師像 2.構造に影響を与える教師像 →「研究課題①」部分の問題意識に合致

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研究課題① 研究課題② 研究課題③ 全体概観 概念規定 RQ導出 科学的探究の ⾔語実践開発 を促す教育学 的モデル 科学的調査の実践と バイリンガル学習者 の包摂の両⽴のため, ⼀般的学術語彙の ような科学的調査に 必要とされる⾔語 スキルの発達を促す ペダゴジー ⽅法論① 理論的枠組み プロジェクト 概要 アンドラゴジー ⽣徒/教師がこれらを どのように取り⼊れたかに ついて,教師教育の 特質をふまえながら 「構造とエージェンシーの 相互作⽤」を枠組みとして 調査 ⽅法論② ⽅法論③ データ収集 分析⽅法 中学校理科 教師のためのプロ フェッショナル・ ラーニングの枠組み 対象:近年,バイリンガル ⽣徒数が300%増加している ⽶国南東部の3つの学区・ 4つの中学校 環境設定: ・夏の4⽇間の教師研修 ・(授業の)共同観察 ・ファミリーワークショップ ・⽣徒のライティングワーク ショップ

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研究課題① 研究課題② 研究課題③ 全体概観 概念規定 RQ導出 ⽅法論① 理論的枠組み プロジェクト 概要 ⽅法論② ⽅法論③ データ収集 分析⽅法 データ収集 4つの環境を通して25名の教師を3年間追跡調査する (参加した活動を通してどのような意味付けがなされたか…) とりわけ,LISSELプロジェクトの実践における教師の考え,意思決定に焦点化する。 具体的な収集⽅法は,環境に応じて次の⼿法が⽤いられた。 教師研修: focus group interviews & field notes 共同観察: open-ended observation forms & debrief(報告) interviews ファミリーワークショップ: semi structured(半構造化) interviews & field notes ⽣徒のライティングワークショップ:focus group conversations(対話)

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① ② ③ 研究課題① 研究課題② 研究課題③ 全体概観 概念規定 RQ導出 ⽅法論① 理論的枠組み プロジェクト 概要 ⽅法論② ⽅法論③ データ収集 分析⽅法 「関与・参加意欲」 「解釈・翻案」 プロフェッショナル・ラーニングへの 観察による記述と教師の対話/語りを 参加回数で「関与」データを抽出 組み合わせてデータベースを構築 (低・中・⾼に分類) 分類(categorizing)による分析アプローチ 発表者補⾜:共通点・相違点… 接続(connecting)による分析アプローチ 発表者補⾜:つながり… の双⽅を⽤いて分析 詳細は, Maxwell & Miller(2008)参照 「構造とエージェンシーの相互作⽤」をレンズとして, ⾃律的な調節/構造的な障壁への対応といった際の教師の意思決定を考察 以上をふまえ,④: 「構造とエージェンシーの相互作⽤」 「関与・参加意欲」「解釈・翻案」 これらを統合の上,相互に影響していること (⾚枠部分)を説明しうる「テーマ」を抽出

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調査結果

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調査結果 • プロフェッショナル・ラーニングへの エンゲージメントが⾼い教師は合計11名、 中程度の教師は2名、低い教師は12名であった。 • エンゲージメントの⾼い・低いという⼆峰性の分布は顕著 →教師の主体性や学校の構造との関連において、 エンゲージメントのパターンを説明することが必要

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調査結果 参加意欲の高い教師は 4つのプロフェッショナル・ラーニングのコンテクストに幅広く参加 参加意欲が中程度と低い教師は、 4つのプロフェッショナル・ラーニングのコンテクストのうち、1つか2つのセッションに しか参加しないという決断をしている +授業時間中に行われるに共同観察に参加することが一般的 • 参加に関する決断は、参加した教師側の主体的な動きと見なす必要がある • 教師がプロフェッショナル・ラーニングへの参加を選択する際の文脈が多様

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1.夏の4日間の教師研修 教師がLISELL教育モデルの重要な評価者として、 また実践の共同開発者として関わっていることが浮き彫りになった。 Samuel(高) 私たちをパートナーとして扱ってくださ ることにいつも感謝しています。もし、 私たちに指図するような感じだったら、 ワークショップに来るのをずっと前にや めていたでしょう。このプロジェクトで の探求についての考え方は管理者たちか ら十分に学ぶことができました。それは、 私たち教師陣とみなさんが力を合わせた からだとわかっています。

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• 教員研修への参加は、参加者のLISELL教育実践に対する理解を深める上で、 実践間の関係性を明確にする役割を果たした ⇒教員研修に参加した教師たちは参加の程度に関わらず、 生徒に対する目標を説明する際に、複数のプロジェクト実践とその関連性 について一般的に議論した。 Nancy(低) 変数について、原因と結果について、アカデミックな 言葉について…。生徒たちは、これら全てがつながっ ていると考える必要があると思っています。これら全 てのスキルがなければ、科学がどのように機能するか について自分の考えを説明することはできません。 ESOLの教師として、科学の言語をユニークなものに している具体的な特徴についてあまり考えたことが ありませんでしたが、(研究所の)調査をすること で、生徒が意味を理解するために実践と言語がどの ように連動しているかがわかりました。 Marcy(高)

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2.(授業の)共同観察 • 教師たちに、自分自身と同僚の教育実践の両方を問い直すとい う共同作業者としての関わりが強く見られた。 • 多くの場合、こうした活動を自分たちの典型的な常日頃の実践 を導く構造と対比させていた。

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Larry(低) 学年Jチームではいつも一緒に計画を立ててい ますが、お互いに教える姿を見ることはありま せん。LISELLの同僚を見たり、彼らに私を見て もらったりして、多くのことを学びました。 • 学校教育の構造が、同僚の実践から学ぶ機会がほとんどないまま、 教えることを孤独な行為にしている。 • 共同観察に参加することで、他者の教育法を垣間見ることができる。 • 実践を理解するという点では、共同観察に参加することで、 教師が一緒に観察した授業を報告することの価値。 見た授業についてみんなで話し合うことは、とても 役に立ちました。科学的な方法をどう教えるか、ELL が科学的な方法をもっと理解できるようにするには どうしたらいいか、改めて考えさせられました。 Rachel(高)

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3.ファミリーワークショップ 教師はスペイン語学習者として参加者を観察しつつ、 また保護者と協力して生徒の支持する立場として参加している。 Victor(高) さまざまなワークショップで、さまざまなことを学ん だ。ファミリーワークショップでは、家族と会って、 彼らがどのように支え合っているのかを見ることがで きた。その他、一緒にアクティビティをしたり、家族 がスペイン語で話しているときに何が起こっているの か理解するのに苦労したり。そのおかげで、生徒たち との関係がよくなり、私の信念が少し変わりました。

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子どもたちが科学の言葉をものにすることの重要性にますます注目し ていることが浮き彫りになった。 彼らの言語的なコンフォートゾーンから抜け出 させる必要がある。日常的な言葉を科学的な言 葉に置き換えるのです。口頭でも、文章でも。 ファミリーワークショップをしたことで、子ど もたちの背中をもっと押してあげなければなら ない、もっと期待してあげなければならない、 と考えるようになりました。 Claire (高)

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4.ライティングワークショップ 教師が生徒の評価の専門家として関わっていることが浮き彫りになった 私たちは、生徒がどのように評価され、何を 知っているのかがどのように決定されるかをほ とんどコントロールできません。LISELLの評価 を採点し、生徒の作文を見るとき、生徒が何を 知っているのか、その根拠は何なのかを本当に 考えるよう求められているように感じます。 Tia(高) Tiaは、近年教師が自分たちの主体性が大きく損なわれていると感じ、 生徒の学習評価において自分たちの声がもはや重要でないと感じてい るという見解を指摘。

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ライティングワークショップを探究する話し合いは、 科学的調査の実践の重要性についての生徒の理解を深めることに重点を置い ていた。 Teresa(高) 生徒が書いた文章を見ると、私がもっと努力し なければならないところがよくわかります。仮 説、変数、原因と結果の意味など、部分的なこ とは理解しているようですが、知っていること を質問の文脈に当てはめる、あるいは、それを 現実の世界に当てはめることに苦労していま す。。自身の考えを説明するために、生徒たち にもっと文章を書かせる必要がある。

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プロフェッショナル・ラーニングの枠組みへの 教師の関与に関する知見を総括 • LISELLプロフェッショナル・ラーニングの枠組みにおける教師の関 与に関する調査結果は、教師が教育モデルの様々な側面を体験でき るように意図的に独自の空白を作り出す我々の試みを強調している。 • また、これらの調査結果は、教師がプロジェクトに関与する時期や 方法、そしてその関与が教育モデルのどの側面を最も重要だと見な すかにどのように影響を与えたかに関する自主的な行動も浮き彫り にする。 しかし、実践理論が強調するように、個人が参加する活動には、 その人なりの解釈が形成される。 →プロフェッショナル・ラーニングへの関与の高低に最も重要な 影響を及ぼすものは、プロジェクト実践の実施に関連させて教師 の関与検討するまで明らかにならなかった。

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教師の教育実践と教師の関与の関係 • 教育実践を実施したのは、教師の関与の選択とプロジェクト実践 の実施の多様性との間から見とることができる関係を示すため。 • ほとんどの教師はプロジェクトに参加した最初の年はLISELLの 教育実践のうち、限られたものを実践することを選択 →教師たちは、これらの特定の実践が、自分たちがすでに使って いる、あるいは過去に使ったことのある実践に似ていると説明 →自分たちが知識豊富で有能な専門家であることを主張

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初等部出身の私は、いつも真剣に単語を 教えてきました。LISELLは注目すべき単 語について考える新しい方法を与えてく れましたが、レッスンで単語カードを使 うのは自然な習慣のように感じました。 自分達たちは専門的な能力開発が方向性を示してくれるの を待つ白紙の状態ではなく、新しいアイデアを既存の教育 Robert(低) 学的な強みと結びつける方法を選択する主体的な行為者で Norma(高) あることを主張 原因と結果を考えることは、科学だけではなく、 全ての教科でとても重要になることだからだ。 今日の(海面上昇に関する)私の授業は、科学 だけではなく社会科でも原因と結果がいかに重 要であるかを示す良い例だったと思う。

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その後 • エンゲージメントの高い教師は、エンゲージメントの低い教師に 比べ、より多様なLISELLの教育実践を実施する傾向が強かった。 • 時間の経過とともに観察された教師のエンゲージメントの多様性 は、教育的意思決定に影響を及ぼすと思われる構造的特徴に教師 がどのように対応しているかに関連していた。

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あなた方がやろうとしていることの価値は本当に よくわかります。例えば、LISELLのレッスン・ス ターターは素晴らしいと思います。しかし、現実 には1クラスの時間は限られていますし、他にもや らなければならないことがたくさんあります。 Larry(低) 私たちがすでにやっていること、あるいはやる べきことと、これ以上やることが増えるわけで も、大きく変わるわけでもない。基準を重視し すぎると忘れてしまう大切なことを思い出させ てくれているだけだと思います。(分解に関す る)私の授業は常に観察に重点を置くつもりで したが、観察はより広い調査プロセスの一部に 過ぎません。 Teresa(高)

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Larry(低)は、実践の長所と思われる点を論じる際にも、実践 を阻む構造的な障壁の問題を提起している。 →エンゲージメントの低い教師は、LISELLの実践を、はめ込みに くい教材として説明することが多かった。 Teresa(高)のコメントは、構造的な制約に直面しているにもか かわらず、生徒のニーズに応えるために、より主体的な指導の選 択をするために、LISELLのエンゲージメントのおかげで力を与え られたと感じる方法について話す傾向が強かった。 実践理論の観点からすると、 これらの例は、個人の日常的な活動がより広範な権力のネットワークと どのようにつながっているかを浮き彫りにしている。

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生徒たちは、自分たちの仮説が間違っていることが判明し ても、それを受け入れることに苦労している。生徒たちは それを失敗ととらえ、戻って仮説を変更したがります。し かし、私たちはそれを続けることで、(間違った仮説が) 別の質問をするきっかけになるかもしれないことを理解さ せるのです。考え方を変えればいいのです。それが科学者 の仕事であり、考え方を変えることなのです。 チャレンジングな実践を続けながら、 バイリンガルの生徒への高い期待を支える 新しいツールを探す傾向が強い Samuel(高) チャレンジングな実践から遠ざかり、 自分が心地よいと感じる実践に限定し、 原因と結果は地球科学において非常に重要なことなの で、私がそれについて話し続けることは間違いない。 バイリンガルの生徒への期待を低く表現する傾向が強い 変化をコントロールすることは、ほとんどの生徒の頭 の上にあることだから、それに時間を費やすことはな いだろう。 Peter(低)

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総括 • プロフェッショナル・ラーニングへの教師の参加と、LISELLの 科学調査と言語実践の多様な実践についての分析を行ったり来 たりするうちに、重要な関係を見出すようになった。 • 教師がLISELLの実践(同僚の指導を観察したり、自分の生徒の 書いた文章を調べたり、ファミリー・ワークショップで生徒や その家族と関わったりすること)を実施しているバイリンガル の生徒を目にする機会を通して、LISELLの実践を活用してバイ リンガルの生徒をサポートする方法について、より強く、より 主体的な教師の声を聞くことができた。

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Discussion(考察)

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Discussion(考察) 【教師のプロフェッショナル・ラーニングへの参加度合いについて】 ・教師たちは、LISELLのプロフェッショナル・ラーニングの効果を実感してることを定期的に 示していた。 ⇔LISELLプロジェクトに参加した25人の教師の参加度合いが二極化(高:11人、低:12人) 低い参加度の理由 ▷家庭の事情、副業、健康上の問題など理解できるものだったが、 多くの場合、教師が米国社会でどのように位置づけられているかという 構造的な要因にも関連していた。 低い参加度の教師 ▷授業でのプロジェクトの実践も制限的で生徒に対する期待も低い ・同様の構造的な障壁に直面する教師たちでも、その構造に対するキャパシティが異なっている ➾プロフェッショナル・ラーニングへの参加レベルとプロジェクトの実践の多様性に反映

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Discussion(考察) 【実践理論について】 ・教師に対しての構造的な力は恒久的ではなく、時間の経過とともに徐々に変化すると教えてくれる ・教師がプロフェッショナル・ラーニングから得た実践をどのように、いつ、どこで実践するかに ついての決定を考えるうえで、様々な有用な視点を提供してくれる ➾低い参加レベルや制限的な実施を不十分な実施や弱い成果の事例としてみる (=悲観的に捉える)のではなく、 教師が自分の文脈の中で持続可能で柔軟かつ状況に応答的な方法で実践を自らのものに している(自分の状況にひきつけて主体的に取捨選択している)と理論化することができる

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Discussion(考察) 【「実践の多様性」という概念】 ・構造とエージェンシーの相互作用に注目することで、教師の実践に新しい洞察を与えることができる ➾ただ忠実にたくさん実践すればいいということではない ・教師が自身の教育目標にとって問題となる構造的な力に抵抗する寛容性(キャパシティ)を 高められるよう支援することが目標の一つであるなら… ➾教師がプロフェッショナル・ラーニングへの参加や教室での実践について選択できるよう 支援することが必要 構造的な力

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Discussion(考察) 【「実践の多様性」という概念】 ・教師が行ったすべての参加と実践の選択が、生徒にとって同等に有益だったわけではない。 ➾エンゲージメントが低い教師の中には… 構造的な制約から自分には 扱えないものとする (主体性がない) どれが自分の状況に 活用できそうかな (主体的に取捨選択) 2つのタイプを ごちゃまぜにして 一括りに捉えない ・教師の参加の質が、すべての生徒の学習を支援するような望ましい実践をどのように行うかに 大きな影響を及ぼす可能性がある ・効果的なプロフェッショナル・ラーニングの特徴や教育実施研究における実施の忠実度の望ましさに ついて、多くの教育研究者が受入れてきた前提について、疑問を提起したい

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Discussion(考察) 【プロフェッショナル・ラーニングの進化】 ・今回の調査からわかったことを踏まえて、プロフェッショナル・ラーニングに変更を加えた。 (意思決定について明確にして、生徒の学習と結びつける必要性があった) ①自身のアイデアを試す ➾LISELLのスタッフと教師とが共に定期的に授業を計画・実施 ②教授内容知識ノートの作成 ➾教師のプロフェッショナル・ラーニングの様々なコンテクストへの参加が、 生徒の学習についての教師自身のアイデアにどう影響しているかを記録するため ③定期的な指導ログの記録の開始 ➾プロジェクトの実践をどのようにしているかをより体系的に捉え記述するため ④プロフェッショナル・ラーニングのコンテクストの追加(夏季の学生科学アカデミー) ➾教師とLISELLのスタッフが共同で指導。教師が生徒と一緒にLISELLの実践を行う事ができる 👉プロフェッショナル・ラーニングモデルの継続的な進化により、教師がプロジェクト実践のエージェンシーを 更に強化し、教室での実践の強化につながるだろう

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Discussion(考察) 【本研究の示唆】 ・効果的な教師のプロフェッショナル・ラーニングの特徴を再考する必要性がある。 (内容、アクティブな学習、整合性、継続性、集団参加といったよく言われる特徴は必要 かもしれないが、不十分である) ➾構造とエージェンシーの弁証法的な理解を深めることで、学校や地域社会の構造の中で、実践が どのように受入れられ、支持され、抑制されるかという複雑性に取り組むことが求められる。 Ex.バイリンガル学習者のニーズに応じて実践を変える(=政治的に微妙な話題)際に 特に当てはまる ・構造とエージェンシーの弁証法の先行研究 ➾行動の結果についての洞察は、行動の時点では部分的であって事後に振り返って 初めてわかる ⇓ 本研究での重要な示唆 ・教師の参加と実践の決定は「主体的な行動」と見なされるべきだが… プロフェッショナル・ラーニングへの低い参加レベルの選択など、そうした決定がバイリンガル学習者を 支援するうえで、どのような影響を及ぼす可能性があるかについて、共に探求することもできる。

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Discussion(考察) 【まとめ】 ・教師のプロフェッショナル・ラーニングプログラムの質を調査・評価する新しい方法が必要である。 ➾教師が絶えず変化する基準による過度な要求に対処しながら、すべての生徒を科学の学習に ひきつける力強い教授法の実現を支援するため。 👉応答性・機敏性といった新しい考え方を質の基準として検討すべき 選択 (モデルへの忠実度や遵守を評価することに限定するのではなく…) 【著者による2つの質問の提起】 ①プロフェッショナルラー二ングにおける教師の主体的な選択は、教師がプロジェクトの プロジェクト の解釈 内容(目標、実践、教材)を自分の文脈に落とし込んで捉えていることを、 どのような形で示しているのだろうか。(応答性に関して) ②時系列的に(長期的に)見る(=一瞬・一部分だけを見ない)ことによって、 「LISELLは自らの指導状況を支援しうるものである」という教師の考えをどのようにみとることが できるか。(機敏性に関して)

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論点 ラテン系⽣徒/バイリンガル⽣徒を⽀援する教師教育として最終的に導き出された 以下プロフェッショナル・ラーニングの⽅向性は,趣旨に照らして妥当だといえるだろうか︖ ①LISELLのスタッフの協働による授業の計画・実施 ②教授内容知識ノートの作成 ③定期的な指導ログの記録の開始 ④プロフェッショナル・ラーニングのコンテクストの追加(夏季の学⽣科学アカデミー) ⽇本における外国⼈児童・⽣徒教育を担う教師に向けた研修において,教師教育者はどのよう な環境を設定し(マクロ),どのように関わるべきなのだろうか(ミクロ)。 発表で検討する「LISSELの⽅針」をふまえて,再⽂脈化の観点から⽇本への適応に ついて考えて下さい。