>100 Views
November 06, 26
スライド概要
令和8年9月9日の中医協総会(第656回)で報告された「令和7年度 医療費の動向」を図解します。医療費は49.2兆円(2.6%増)でした。受診延日数は0.7%減った一方、1日当たり医療費は3.3%増えています。入院・入院外・歯科・調剤の動きと、調剤の薬剤料・後発医薬品の数字を整理しました。
▼ メルマガ記事(テキスト版)はこちら
令和7年度の医療費は49.2兆円、2.6%増|中医協で報告された最新動向
https://www.daitoku0110.news/p/medical-expenses-fy2025-trends
病院事務長。急性期から回復期まで多岐にわたる医療機関で勤務。 医事、介護事務、経理、財務、税務、監査、総務、設備、情報システム、地域連携、法人業務まで、幅広い部門で自ら実務を経験し全体を統括。福祉業界の知見やイベント開催経験に加え、課題解決のためにAIエージェントを作成し、法人を支援した実績も多数有する。 【公開資料】主に以下の2テーマでスライド・動画を提供。 1. 令和8年度診療報酬改定(算定要件・疑義解釈など)や施設基準、医療DXの解説 2. AIエージェント(miiboなど)の構築・活用
CONFIDENTIAL / FOR INTERNAL STRATEGY 令和7年度 医療費動向の解剖図 量の減少を凌駕する「単価高騰」の構造と、次期改定に向けた戦略的含意 49.2兆円(前年度比+2.6%)の増加要因を読み解くエグゼクティブ・ブリーフィング Gemini Notebook
Executive Summary: 令和7年度概算医療費の3つの最重要ファクト 規模と構造 49.2兆円 前年度比 約1.3兆円増 / +2.6% 患者の受診(量)は減少しているにもかかわらず、1日当たりの医療費(単価)が上昇し、全体を過去最高水準へと押し上げている構造的パラドックス。 牽引分野 調剤 (+3.9%) と歯科 (+3.5%) が突出 入院・入院外を含む全4分野で増加したが、特に調剤分野の高騰が全体の伸びを強力に牽引している。 ミクロ要因 薬剤料 +5.7% 処方箋1枚当たり 腫瘍用薬(抗がん剤)や注射薬の高額化が、医療費上昇の「真犯人」として浮き彫りに。後発品普及の限界と新薬の高価格化が同時に進行中。
The Macro Paradox: 受診が減る中で、なぜ医療費は、なぜ医療費は「1.3兆円」増えたのか? 受診延日数(量) ▲0.7% コロナ禍後の増加トレンドから一転、減少へ 1日当たり医療費(単価) +3.3% 令和3~6年度と比較しても顕著な拡大 「患者数の増加」ではなく、「医療提供内容の高額化」が現在の医療費膨張のコア・エンジンである。
Growth Drivers: 医療費増加を牽引する未知のファクター「+2.9%」 高齢化による自然増 (+0.6%) はもはや主因ではない。人口減少と報酬改定の下押し圧力を跳ね返すほどの巨大な「その他の影響 (+2.9%)」こそが、解明すべきターゲットである。 +2.9% +2.6% +0.6% ▲0.5% ▲0.39% 令和6年度医療費 人口増減 診療報酬改定等 (※休日補正▲0.2%含む) 高齢化の影響 その他の影響 令和7年度医療費
Sector Matrix: 4大診療分野の成長ドライバー比較 1日当たり医療費(単価)の伸び率 +6% +5% 単価: +5.0% 量: ▲1.1% 調剤 総額伸び率 第1位 (+3.9%) +4% +3% 入院外 入院 単価: +2.8% 量: ▲0.5% +2% 単価: +3.2% 量: ▲1.6% +1% 0% -6% -4% -2% 0% +2% +4% +6% 受診延日数(量)の伸び率 単価: +3.2% 量: +0.4% 歯科 唯一の「量」増加分野。 貴金属価格の変動が寄与。 全分野で医療費は増加したが、メカニズムは異なる。 調剤の「極端な単価増」と、歯科の「量・単価の双発」が全体の伸びを底上げしている。
Sector Deep Dive 1: 医科(入院・入院外)における「量から質」への転換 入院 (Inpatient +2.3%) 量の減少要因 新規入院件数はコロナ前を超えるが、平均在院日数の短縮により、受診延日数は令和元年度未満に抑制 (▲0.5%)。 特定保険医療材料 (循環器系疾患など) ↗ +0.6% DPC包括部分 ↗ +0.6% 手術・麻酔 ↗ +0.5% 入院外 (Outpatient +1.6%) 量の減少要因 4分野で最大の「量」の減少幅(受診延日数▲1.6%)。 外来受診の手控えや効率化が進行。 薬剤料(新生物<腫瘍>が大幅プラスへ転換) ↗ +1.1% Key Insight: 在院日数短縮や外来受診による「量の削減」効果を、高度な医療材料や手術、高額薬剤の投入が完全に相殺している。
Sector Deep Dive 2: 調剤医療費の異次元の伸びを解剖する 処方箋1枚当たり医療費: 9,839円 (+5.0%) 技術料 (Tech Fee) 2,676円 (+3.2%) 全体への影響度: 0.6% 薬剤料 (Drug Fee) 7,144円 (+5.7%) 全体への影響度: 3.3% Total 調剤医療費: 8兆7,242億円 (+3.8%) / 処方箋枚数: 8億8,669万枚 (▲1.1%) 調剤費増大の正体は処方箋枚数の増加でも、技術料の引き上げでもない。 処方箋1枚に印字される「薬剤料」の圧倒的な高騰である。
The Drug Culprits: 薬剤料を引き上げる「真犯人」の特定 薬剤料 7,144円 内服薬 (Oral Drugs) 単価: 5,450円 (+4.0%) ・増加要因: 1種類1日当たり薬剤料(+0.4%)や種類数(+0.3%)ではなく、「1種類当たり投薬日数(+3.2%)」の長期化が主因。 注射薬 (Injectables) 単価: 918円 (+23.8%) 圧倒的な単価増。全体の単価伸びに対する影響度は内服薬(3.1%)に迫る2.6%の破壊力。 薬効分類影響度 (全体へのインパクト) 腫瘍用薬 (Tumor Drugs) +2.0% (最大の影響要因) 生物学的製剤 (Biologicals) +0.9% 化学療法剤 (Chemotherapy) マイナス寄与 Takeaway: がん治療などの極めて高額な注射薬・生物学的製剤へのシフトが、医療費全体のベースを劇的に押し上げている。
The Generic Illusion: 後発医薬品普及のパラドックス 数量ベース (Volume Share) 91.7% (前年度比+1.0pt) - 目標を達成し普及は極限まで進行 薬剤料ベース (Value Share) 75.9% (前年度比▲1.8pt) - 金額ベースでのシェアは逆に低下 Analytical Insight 数量ベースでジェネリックが9割を超えても、残りの1割未満を占める「先発品・新薬(腫瘍用薬やバイオ医薬品など))」の単価が桁違いに高額化している。 そのため、金額ベースではジェネリックのシェアが縮小する逆転現象が発生しており、後発品による医療費適正化効果は限界に達している。
Demographics: 年齢両極における「受診減・単価増」の進行 全体 1人当たり医療費: 40.0万円 (+3.1%) / 75歳未満: 26.1万円 (+2.7%) 75歳以上 (The Financial Engine) 1人当たり医療費: 98.9万円 (+1.6%) 医療費総額: 20.3兆円 (前年度比+3.9%) 1人当たりの伸び率は全体を下回るが、母数の大きさから総額ベース(+3.9%)で全体(+2.6%)を力強く牽引。 未就学者 (The Microcosm of the Paradox) 1人当たり医療費: 24.8万円 (▲0.8%) - 唯一のマイナス区分 1人当たり受診日数: ▲5.5% (激減) 1日当たり医療費: +4.9% (急騰) 受診回数が劇的に減る一方で、1回あたりの単価が急激に上がるという、全体構造の極端な縮図。 Margin Note: 地域別: 東京都が伸び率最大。関東圏・沖縄で高く、東北・山口・徳島で低い傾向。
Institutional Shift: 高度急性期 (大学病院) への医療費の極端な集中 医療費の推移 (Hospital Type Comparison: Inpatient & Outpatient Growth) +2.4% +6.5% +2.6% +7.5% 病院全体 (All Hospitals) 大学病院 (University Hospitals) 入院 病院全体 (All Hospitals) 大学病院 (University Hospitals) 入院外 Synthesis: 医療費の増加は全国の医療機関で均等に起きているのではない。高度な手術、先進的な医療材料、そして高額な腫瘍用薬や注射薬を集中して扱う「大学病院」に資金が急速に還流している。
Synthesis: 「量の医療」から「超高単価・高度集中治療」へのパラダイムシフト Before / After 過去の前提 (The Old Paradigm) 高齢者の頻回受診による「量」の拡大 長期入院による病床稼働 ジェネリック普及によるコストコントロール 現在の正体 (The New Reality - 令和7年度の真実) 受診行動の変容: 在院日数の短縮と外来受診の減少 (量はマイナスへ) 革新による超高額化: 腫瘍用薬・注射薬・特定医療材料への依存 機能の極端な偏在: 大学病院等、特定の高度急性期へのリソース集中 Core Insight: 49.2兆円の医療費膨張は「多死社会・高齢化」というより、「医療技術の高度化・高価格化」にシステムが適応した結果である。
Looking Ahead: 令和10年度 診療報酬改定に向けた戦略的含意 Point 1: 高額薬剤・材料の評価適正化 腫瘍用薬や注射薬(+23.8%増)の著しい伸びに対し、費用対効果評価(HTA)の厳格化や、最適使用推進ガイドラインの適用拡大が必至。 Point 2: 大学病院・高度急性期へのメス 突出した伸び(+6.5~7.5%)を示す大学病院群に対する、DPC算定ルールの厳格化や、高度医療の集約・連携に関する新たな要件化が議論の的となる。 Point 3: 調剤報酬の構造的見直し 処方日数の長期化による内服薬費用の増大と、ジェネリック推進(数量91.7%)による抑制効果の乖離。技術料偏重ではない、新たな薬剤費コントロール手法の導入可能性。 「受診減・単価増」の構造転換を前提に、次期改定は『質の担保と超高額化のジレンマ』をどう制御するかが最大の焦点となる。