【中医協第652回】7月新薬2成分の薬価算定を図解|ジャスケイドとハイツエキシン

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October 16, 26

スライド概要

令和8年7月8日の中医協総会で示された新薬2成分の薬価算定を図解します。類似薬効比較方式で計40%加算されたジャスケイドと、原価計算方式で加算係数0となったハイツエキシン。算定方式の違いが薬価をどう左右したかを、補正加算、革新的新薬薬価維持制度、費用対効果評価とあわせて解説します。

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【中医協第652回】7月新薬2成分の薬価と算定根拠を解説
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病院事務長。急性期から回復期まで多岐にわたる医療機関で勤務。 医事、介護事務、経理、財務、税務、監査、総務、設備、情報システム、地域連携、法人業務まで、幅広い部門で自ら実務を経験し全体を統括。福祉業界の知見やイベント開催経験に加え、課題解決のためにAIエージェントを作成し、法人を支援した実績も多数有する。 【公開資料】主に以下の2テーマでスライド・動画を提供。 1. 令和8年度診療報酬改定(算定要件・疑義解釈など)や施設基準、医療DXの解説 2. AIエージェント(miiboなど)の構築・活用

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各ページのテキスト
1.

【中医協インサイト】7月新薬薬価の算定アーキテクチャ ジャスケイドとハイツエキシンが示す、算定方式の違いと「加算の力学」 対象会議: 令和8年7月8日 中央社会保険医療協議会 総会 (第652回) 資料: 総-2 医薬品の新規薬価収載等について 収載予定日: 令和8年7月15日

2.

新薬の価値を価格に反映できるかは、 「算定方式」と「加算係数」が決定づける。 +40% +0% ジャスケイド錠 ハイツエキシン錠 類似薬効比較方式による 原価計算方式の壁。3つの加算要件を 強力な「加算の跳ね上がり」 満たすも「係数ゼロ」で相殺 同じ「希少疾病用医薬品」として承認された2つの新薬が、 全く異なる算定ロジック(道)を辿った結果を解読する。

3.

収載2成分のプロファイル:対照的な2つの道の全貌 ジャスケイド錠 ハイツエキシン錠 成分名 ネランドミラスト 成分名 リソバリシブメシル酸塩水和物 会社名 日本ベーリンガーインゲルハイム 会社名 海和製薬 効能・効果 特発性肺線維症、進行性肺線維症 効能・効果 がん化学療法後に増悪したPIK3CA 遺伝子変異を有する卵巣明細胞癌 算定方式 類似薬効比較方式(I) 算定方式 原価計算方式 補正加算 +40% (有用性I 35%、市場性I 5%) 補正加算 +0% (有用性II 5%、市場性I 10%、 迅速導入 10% ※加算係数0) 算定薬価 18mg 1錠 8,363.00円 算定薬価 10mg 1錠 7,313.40円 ピーク時予測 10年度 1.8万人・578億円 ピーク時予測 9年度 586人・14億円

4.

運命の分岐点:算定方式はどのように決まったか YES 「比較できる NO 既存薬(類似薬) はあるか?」 類似薬あり 類似薬なし(新規作用機序等) 類似薬効比較方式(I) 原価計算方式 最類似薬(オフェブ)と1日薬価をそろえる。 製造原価・経費を積み上げる。 「ジャスケイド」がこのルートへ。 「ハイツエキシン」がこのルートへ。 算定方式の違いは、単なる計算式の違いにとどまらず、 その後の「加算の効き方」を決定づける第一関門となる。

5.

Case 1: ジャスケイド (特発性肺線維症・進行性肺線維症) 【新規作用機序】 PDE4B阻害作用 【用法】 1回18mgを1日2回経口投与 (忍容性により9mgへ減量可) 【承認タイムライン】 米国先行承認(2025年10月) → 日本承認(令和8年5月18日) Key Insight 既存の抗線維化薬や肺高血圧症治療薬とは標的分子が異なる、 全く新しいアプローチの治療薬。

6.

基準薬価の設計:最類似薬「オフェブ」との同期 Comparator = オフェブ(100mg)の1日薬価 (1日あたりの薬価 11,947.20円 をそろえる) Jusquaid Daily ジャスケイドの1日薬価(18mg×2錠) 11,947.20円 ↓ ÷2錠 ジャスケイド加算前 1錠薬価=5,973.60円 9mg錠(4,190.10円)は、オフェブ(100/150mg)の規格間比 (0.99703)を用いて算出。外国平均価格調整は適用なし。

7.

ジャスケイドの薬価形成:40%加算の威力 +5% +298.70円 +35% 市場性加算I +2,090.70円 (希少疾病用指定) ↑ 有用性加算I 8,363.00円 5,973.60円 (新規作用機序・既存薬併用での有効性) ※1日薬価 16,726.00円 加算前薬価 最終薬価(18mg 1錠) Analytical Analalytsis 市場性加算(I)は通常10~20%だが、「優先審査対象外」のため例外的に下限を下回る 5%が適用された。それでも有用性加算(I)の大きさが最終薬価を強力に押し上げた。

8.

Case 2: ハイツエキシン (卵巣明細胞癌) 【遺伝子変異】 PIK3CA遺伝子変異陽性(がん化学療法後) 【新規作用機序】 PI3Ka阻害作用(既収載品に類薬なし) 【用法】 1回40mg(10mg錠×4錠)を1日1回空腹時経口投与 【承認タイムライン】 日本が世界初承認(迅速導入・令和8年3月23日承認) Key Insight 欧米に先駆けて日本で最初に承認された、極めて独自性の高い 新規抗がん剤。比較できる既存薬が存在しない。

9.

基準薬価の設計:原価と経費の積み上げ 消費税 664.90円 流通経費 458.80円 (消費税を除く価格の6.9%) 営業利益 965.60円 (流通経費を除く価格の15.6%) 加算前1錠薬価 製品総原価 =7,313.40円 5,224.20円 ※4項目の単純合計は7,313.50円だが、各項目の端数処理により資料上の算定薬価は7,313.40円となる。

10.

ハイツエキシンの「幻の加算」:係数ゼロの壁 【幻】迅速導入加算10%: 国際共同試験・優先審査・日本早期承認 (日本人症例多数で上限適用) 【幻】市場性加算(I) 10%: 希少疾病用医薬品 結果、加算前と同額の 7,313.40円に留まる。 【幻】有用性加算(II) 5%: 新規作用機序・有効性の証明 (通常用量1日4錠換算: 29,253.60円) 「加算係数0」の壁 加算前薬価:7,313.40円 原価計算方式において、企業の原価 開示度等に応じて設定される係数。 今回はゼロと査定されたため、要件 を満たした25%分の加算が価格に 一切反映されなかった。

11.

市場規模のコントラスト:対象患者数と販売金額の圧倒的差異 ジャスケイド ピーク時予測:10年度 投与患者数:1.8万人 販売金額:578億円 ハイツエキシン ピーク時予測:9年度 投与患者数:586人 販売金額:14億円 どちらも希少疾病用医薬品の指定を受けているが、ビジネススケールにおいては約40倍の開きが存在する。

12.

収載後の制度適用:価格をどう守るか、どう見直すか 革新的新薬薬価維持制度(改定時の引き下げ猶予) 両成分とも該当(対象) 共に「希少疾病用医薬品」に指定されていることが主因。 費用対効果評価(価格対効果の検証による価格調整) ジャスケイド:該当する(H1区分) ハイツエキシン:該当しない 理由:ピーク時の市場規模が大きく(578 理由:市場規模が極めて小さく(14億 億円)、H1区分の要件を満たすため、収 円)、評価対象外。 載後に厳格な検証を受ける。

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算定アーキテクチャが示す3つの構造的インサイト 1 比較薬の有無が「加算の威力」を決定する 類似薬効比較方式に乗ることで、ベース価格の安定確保と、係数減額のない強力な 「加算(+40%等)」の恩恵をフルに受けることができる。 2 原価計算方式における「係数ゼロ」のジレンマ 迅速導入や有用性の要件を完璧に満たしても、原価開示度等に基づく「加算係数」 がゼロになれば、制度上の加算は「幻」と化す。 3 巨大市場を開拓する新薬を待ち受ける「事後評価」 ジャスケイドのように収載時に高い評価と巨額市場(578億円)を得た新薬は、 必然的に「費用対効果評価(H1)」という収載後の価格調整リスクに直面する。 薬価は単なる原価や価値の合算ではない。 それはルールの分岐と係数の壁によって形作られる「建築物」である。