システマティックレビューとメタアナリシス:キーノートレクチャー資料 (3/5)

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September 06, 24

スライド概要

日本体育・スポーツ・健康学会第74回大会の測定評価部会キーノートレクチャー(2024年8月29日)の発表資料を一部改変しました。

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西の方の研究者です。

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各ページのテキスト
1.

日本体育・スポーツ・健康学会第74回大会 測定評価/キーノートレクチャー 体育・スポーツ・ 健康科学分野における システマティックレビュー/ メタアナリシス (3) 九州大学大学院医学研究院 附属総合コホートセンター 本田貴紀

2.

スクリーニング ● スクリーニングの流れ マニュアル作成 タイトル・抄録スクリーニング 本文スクリーニング 不一致の討議 不一致の討議

3.

スクリーニング データベースからCSV等で一覧を取得したら… エクセル派 文献管理ソフト派 専用ソフト派 ● 文献整理・重複等の削除 • • 著者名にすら、表記のブレ・誤り・抜けが偶にある。 例 Yang, L(MEDLINE) – Li Y(WoS) MEDLINE以外のデータベースでは、PMIDが必ずしも振られていない。 → 最終的には手作業で確認も。

4.

スクリーニング ● スクリーニングのための適格基準とコード設定 ・2名(以上)が独立で行うこと ・不一致の場合は(できれば3名以上で)協議すること 適格基準(包含・除外基準)を示したマニュアルを事前に整備しておく。 1) 明らかに除くレコード 2) 明らかに含めるレコード 3) 保留 に大まかに振り分けると良い。 ※除外すべきキーワードでフィルタリングして1)を決めていくと効率的。

5.

スクリーニング ● プロセスは一方通行ではない マニュアル作成 タイトル・抄録スクリーニング 本文スクリーニング 不一致の討議 不一致の討議

6.

批判的吟味: データ抽出 ✓ 選択した文献の一覧の提示 ✓ 研究の質、バイアスリスク、エビデンスの確実性の評価 ✓ メタアナリシス(必要に応じて)や異質性の評価 のために、文献から情報を抽出し、記録する。 研究の質(quality) 研究者が可能な限り高水準で研究を実施できたか バイアスリスク (risk of bias) 研究結果に系統的な歪みを生じうる要素が存在するか エビデンスの確実性 (certainty of evidence) エビデンスの総体が、特定の治療や介入実施を推奨できるか どうかに関する確信の強さ Microsoft AccessやLibre Office等でデータ抽出フォームを作ると効率的

7.

批判的吟味: データ抽出 ● 非ランダム化研究の報告ガイドラインを参考に項目を設定 CHARMS-PFチェックリスト (予後因子研究の報告ガイドライン) データ抽出は論文から忠実に。計算が必要であれば後から行う。 Riley et al. BMJ 2019

8.

批判的吟味: バイアスリスクの評価 ● バイアスの種類 説明 観察(非ランダム化)研究での事情 交絡 曝露とアウトカムに共通の要因がある場合 常に未測定の交絡が存在する。 選択バイアス 対象者の選択や追跡期間が曝露とアウトカム の両方に関連する場合 曝露の水準ごとに異なる研究への不参加率、 追跡不能例など、RCTに比べて生じやすい。 情報バイアス アウトカムや曝露の測定に誤り(誤分類)が生 じる場合 アウトカム・曝露を互いにマスキングして評価 することが稀。 報告バイアス (出版バイアス) 研究者にとって望ましくない知見が出版・報 告されない場合 事前にプロトコルを作ることが稀。ネガティブ スタディは出版されにくい。 非ランダム化研究のSR/MAではバイアスリスク評価に特別な考慮が必要

9.

批判的吟味: バイアスリスクの評価 ランダム化比較試験のSR/MA用の評価ツール ● コクランのバイアスリスク評価(RoB)ツール/RoB2ツール 非ランダム化研究のSR/MA用評価ツール ● Newcastle-Ottawaスケール ● ROBINS-I: 非ランダム化介入 ● ROBINS-E: 予後因子・病因学的研究 ● QUADAS-2: 診断検査精度研究 ● PROBAST: 予測モデル研究

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批判的吟味: バイアスリスクの評価 ● Newcastle-Ottawaスケール Selection: サンプリング(代表性)・曝露の評価 ✓ ✓ ✓ ✓ 曝露群(コホート)の代表性(一般性)は担保されるか。 非曝露群は曝露群と同じコホートから選ばれているか。 曝露の定義は妥当か。 追跡開始時点で既往例は正しく除外されているか。 Comparability: 交絡の評価 ✓ 最も重要な交絡因子が調整されているか。 ✓ その他の十分な交絡因子の調整がなされているか。 Outcome: アウトカムの評価 ✓ アウトカムの評価方法は妥当か。 ✓ 追跡期間は(アウトカム発生に対して)十分な長さか。 ✓ 追跡率は十分か。 9点満点で評価する。

11.

批判的吟味: バイアスリスクの評価 ● 「筋トレ」のレビューでのNOS評価例(抜粋) Momma et al. Br J Sports Med. 2022

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批判的吟味: バイアスリスクの評価 ● ROBINS-E (Risk Of Bias In Non-randomized Studies - of Exposures) A. 評価 対象とする結果 を決める B. 総合 評価に進 めるかを決 める 停止 C. 一次 研究やその 解析につい て記述する D. 評価 対象とする結果 に特有の 因果効 果を定 義する どの シグナル 項目 を評価 すべきか を 決め る。 1. 交絡 によるバイア ス 2. 曝露 の測定 に関わるバイアス 3. 対象 者選択 のバイアス E. 評価 対象の 結果に つい て、調 整すべき 交絡 因子が(正しく) 調整 されているか ど うか検討する。 ✓ 特定の曝露-アウトカムの関連(効果)について、 個別の研究ごとに評価を行う。 (一つの研究で複数の曝露-アウトカムが報告さ れていれば、さらに個別に評価する) ✓ 7つのドメインごとに「シグナル項目」に回答する。 ✓ ドメインごとに「バイアスリスク」「バイアスの方向」 「結論への脅威度」を評価する。 ✓ 最後に、総合的な「バイアスリスク」「バイアスの方 向」「結論への脅威度」を評価する。 4. 曝露 後の介 入によるバイアス 5. 欠測 によるバイア ス 6. アウトカム測 定に関わ るバイアス 7. 結果 報告の 選択に関 わるバイア ス 全体 的なバイアス Higgins et al. Environment Int, 2024より本田訳

13.

批判的吟味: バイアスリスクの評価 ROBINS-Eのドメイン ドメイン 主なシグナル項目 (はい、おそらくはい、おそらくいいえ、いいえ で回答) 交絡によるバイアス ✓ すべての重要な交絡因子が適切な方法でコントロールされているかどうか ✓ 交絡因子が、利用可能な変数によって有効かつ信頼性をもって測定されたか。 ✓ 曝露開始時以降の変数(曝露によって影響を受ける可能性のある変数)が不適切にコント ロールされたか。 曝露の測定に関わるバイアス ✓ 研究で使用された曝露指標が、対象とする曝露指標をよく特徴付けているかどうか。 ✓ 試験で使用された曝露測定値に誤差があるか、あるいは誤分類の可能性があるか。 ✓ 差異的誤差(または誤分類)があるか。 ✓ 非差異的誤差(または誤分類)があった場合、効果推定値にバイアスがかかったか。 対象者選択のバイアス ✓ フォローアップの開始と曝露(期間)の開始が同じか。 ✓ 研究への参加者選択(または分析への参加者選択)が、曝露期間開始後に観察された参加 者の特徴に基づいているかどうか ✓ (該当する場合)これらの特性が曝露(または曝露の原因)の影響を受け、結果(または結果 の原因)の影響を受けたか。 ✓ (該当する場合)選択バイアスの存在を補正するための調整がなされたか。 曝露後の介入によるバイアス ✓ 事前の曝露の影響を受けた曝露後介入があったか。 ✓ (該当する場合)解析はこれらの曝露後の介入の影響を補正したか。 Higgins et al. Environment Int, 2024より本田訳

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批判的吟味: バイアスリスクの評価 (続き)ROBINS-Eのドメイン ドメイン 主なシグナル項目 (はい、おそらくはい、おそらくいいえ、いいえ で回答) 欠測によるバイアス ✓ 曝露状態、アウトカム、交絡因子に関する完全なデータが、全参加者またはほぼ全参加者に ついて入手可能であったか。 ✓ (完全ケース解析の場合)解析からの脱落がアウトカムの真の値に関連している可能性が 高く、脱落の予測因子が解析モデルに含まれているか。 ✓ (補完データを用いた解析の場合)補完が適切に行われたか。 アウトカム測定に関わるバイアス ✓ アウトカムの測定や判定が、曝露群間または曝露レベル間で異なっている可能性が高いか どうか。 ✓ アウトカム評価者が研究参加者の曝露歴を知っていたかどうか。 ✓ (該当する場合)アウトカムの評価が、参加者の曝露歴の知識に影響された可能性が高いか。 結果報告の選択に関わるバイアス ✓ 評価される数値が、その結果に基づいて、結果ドメイン内の複数の曝露指標から選択され た可能性が高いか。 ✓ 評価される数値が、その結果に基づいて、結果ドメイン内の複数の結果指標から選択され た可能性が高いか。 ✓ 評価される数値が、その結果に基づいて、複数数の分析から選択された可能性が高いか。 ✓ 評価される数値が、その結果に基づいて、より大きなコホートの複数のサブグループから 選択されている可能性が高いか。 Higgins et al. Environment Int, 2024より本田訳

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批判的吟味: バイアスリスクの評価 ROBINS-Eの総合判定のアルゴリズム バイアスリスク の総合判定 意味 基準 低い 観察研究の特性上、未調整の交絡の可能性は あるが、それ以外はバイアスリスクに関する懸 念はほとんどない。 「未調整の交絡」の項目に関する懸念を除いて、ドメイン1のバイアス リスクが低く、かつ他のすべてのドメインでバイアスリスクが低い。 懸念あり 結果のバイアスについては若干の懸念がある が、重大なバイアスリスクがあることは明らか ではない。 少なくとも1つのドメインで「懸念がある」ものの、バイアスリスクが 「高い」または「非常に高い」ドメインがない。 高い 研究にいくつかの重要な問題点がある:研究 の特徴から、結果に高いバイアスリスクが生じ ている。 少なくとも1つのドメインでバイアスリスクが「高い」が、バイアスリス クが「非常に高い」ドメインがない。 または 複数のドメインで懸念があり、バイアスリスクが「高い」と判断される。 非常に高い 研究に非常に問題がある:研究の特徴から、結 果に非常に高いバイアスリスクが生じている。 少なくとも1つのドメインでバイアスリスクが「非常に高い」。 または 複数のドメインでバイアスリスクが「高く」、バイアスリスクが「非常に 高い」と判断される。 (未調整の交絡に関 する懸念を除く) Higgins et al. Environment Int, 2024より本田訳

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批判的吟味: バイアスリスクの評価 ● ROBINS-Eの評価例 (逆境的小児期体験と多重疾患) Senaratne et al, BMC Med. 2024

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批判的吟味: バイアスリスクの評価 観察研究のバイアスリスク評価に関する7つの原則(COSMOS-E) 1. レビュークエスチョンおよび研究デザインごとに重要なバイアスを特定する。 2.「低リスク」「中リスク」「高リスク」のようにバイアスリスクを定性的に評価する。 3. バイアスリスクの判定のために、シグナル項目が参考となる。 4. アウトカム別にバイアスリスクを評価しなければならない場合がある。 5. 論文内で判断根拠となったテキストを複写・保存して、評価を文書に残す。 6. 合計点による評価は避ける。 (Newcastle-Ottawa Scaleには批判も。) 7. バイアスのない仮想試験を想像することが役に立つ。 Dekker et al. Plos Med 2019

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批判的吟味: エビデンスの確実性 ● GRADE: Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation 確実性の評価・・・アウトカムごとの研究横断的な質の評価 「ある効果推定値が正しいという確信(confidence)がどの程度か」 デザインの評価 高 (RCTはここから) 中 低 (観察研究はここから) 非常に低 減点項目(5項目) 加点項目(3項目: 観察研究のみ) ◆ 個々の研究の バイアスのリスク ◆ 結果の非一貫性 ◆ PICOの非直接性 ◆ 結果の不精確さ ◆ 出版バイアス ◆ 効果の大きさ ◆ 用量反応関係 ◆ 交絡による効果の減 弱 全体的な質の評価 高 中 低 非常に低 https://www.gradeworkinggroup.org/; Guyatt et al. J Clin Epidemiol 2011

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批判的吟味: エビデンスの確実性 ● 「筋トレ」のレビューでのエビデンスプロファイル表の例 Momma et al. Br J Sports Med. 2022

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ご質問・ご感想・共同研究 etc. E-mail: [email protected] Twitter(X): @pon144 (仮)保健・医療のためのシステマティックレビューとメタアナリシス 2025年初めに大修館書店さまより刊行予定