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September 06, 24
スライド概要
西の方の研究者です。
日本体育・スポーツ・健康学会第74回大会 測定評価/キーノートレクチャー 体育・スポーツ・ 健康科学分野における システマティックレビュー/ メタアナリシス (5) 九州大学大学院医学研究院 附属総合コホートセンター 本田貴紀
メタアナリシス: 異質性の検討 ● 臨床的多様性(異質性): 研究ごとのリサーチクエスチョンのばらつき (対象者の違い、アウトカムの定義、曝露の定義…) ● 方法論的多様性(異質性) : 研究の実施方法のばらつき(研究デザイン、 盲検化の有無、解析手法の違い…) ● 統計学的異質性: 臨床的または方法論的多様性に起因する、解析結果 (効果量)のばらつき
メタアナリシス: 異質性の検討 ● 異質性の検定(コクランのQ検定) 2 𝑄 = 𝑤𝑖 𝜃መ𝑖 − 𝜃መ𝐼𝑉 統計量Qは真の介入効果がすべての研究で同じであるという帰無仮説の もとで自由度k‒1のχ2分布に近似できる。 (一般に検出力が低いため、個別研究が少ない場合には参考程度に。)
メタアナリシス: 異質性の検討 ● 異質性統計量 𝑄− 𝑘−1 2 𝐼 = 100 × 𝑄 (%) 0% to 40% 重要でない異質性 30% to 60% 中程度の異質性 50% to 90% 大きな異質性 75% to 100% 高度の異質性 × I2統計量は異質性の強さを表す。 〇 I2統計量は統合効果推定値のばらつきのうち、 偶然ではなく研究間の異質性に起因するばらつきの割合を表す。 (=異質性が効果推定値に与えるインパクト) コクランハンドブック 9.5.2
メタアナリシス: 異質性の検討 ● サブグループ解析 研究間サブグループ 研究ごとの特性 例:高齢者研究 vs 若年者研究、運動介入のタイプなど 研究内サブグループ 研究内の個人特性 例:男女、年代別など ・ 文献内でサブグループ別の解析結果が示されている場合 ・ Individual participant dataが利用できる場合
メタアナリシス: 異質性の検討 ● メタ回帰 変形性膝関節症患者に対する有酸素運動介入試験(9件) アウトカム: 疼痛スコア(群間の標準化平均差) 候補となる修飾因子: 運動指導のセッション数 各研究の分散の逆数を用いた重みづけ回帰分析 yi = -0.087 + 0.023×(セッション回数) Juhl et al, Arthritis Rheumatol 2014
メタアナリシス: 異質性の検討 ● 感度分析 方法論的な質を左右する因子で異質性を調べる:結果の頑健性を検討 バイアスリスクによる違い 曝露の評価方法による違い Momma et al. Br J Sports Med. 2022
メタアナリシス: 異質性の検討 ● 非ランダム化研究では、RCTと比べて測定の標準化が甘かったり、指標 が多様であったりして、異質性を生じる原因が数多く存在する。 統合可能性が低いものを無理やり統合しても意味がない。 異質性の原因を探索することに注力するほうが、レビューの価値を高めら れるかもしれない。
メタアナリシス: 小規模研究効果の検討 ● ファンネルプロット × 出版バイアス・報告バイアスを調べるツール 〇 小規模研究効果(small-study effect)を調べるツール 治療が有効 治療が有効 治療が無効 治療が無効 大規模 大規模 大規模 小規模 小規模 小規模 0.25 0.5 1.0 2.0 4.0 対称なプロット 0.25 0.5 1.0 2.0 4.0 治療が有効 治療が無効 0.25 0.5 1.0 2.0 左に偏ったプロット 4.0
メタアナリシス: 小規模研究効果の検討 ● ファンネルプロット × 出版バイアス・報告バイアスを調べるツール 〇 小規模研究効果(small-study effect)を調べるツール 治療が有効 治療が有効 治療が無効 治療が無効 大規模 大規模 大規模 小規模 小規模 小規模 0.25 0.5 1.0 2.0 4.0 対称なプロット 0.25 0.5 1.0 2.0 4.0 出版バイアスにより、 小規模かつネガティブな研究が 出版されなかった。 治療が有効 治療が無効 0.25 0.5 1.0 2.0 4.0 方法に不備のある小規模研究で 効果が過大に推定されたものが 出版された。
メタアナリシス: 小規模研究効果の検討 ファンネルプロットは × 出版バイアス・報告バイアスを調べるツール 〇 小規模研究効果(small-study effect)を調べるツール Higgins et al. 本田ら監訳、大修館書店より刊行予定
メタアナリシス: 小規模研究効果の検討 ● ファンネルプロットの前提 治療が有効 治療が無効 大規模 研究規模 ≈ 精度 標準誤差が小さい(サンプルサイズが大きい)試験では、 推定値が真の値の付近に集まり、標準誤差が大きい (サンプルサイズが小さい)試験では、偶然によって 極端な値になりやすい。 精度 小規模 0.25 0.5 1.0 2.0 4.0 ● 非ランダム化研究の場合 : 効果推定量とばらつきの間で漏斗状の関連が必ずしも仮定できない。
メタアナリシス: 小規模研究効果の検討 ● ファンネルプロットの難しさ Y軸(精度)に1/SEを用いた場合(C1)と サンプルサイズ(C2)を用いた場合 X軸(効果)にリスク差を用いた場合(E1)と リスク比(E2)を用いた場合 Tang JL & Liu JLY, J Clin Epidemiol. 2000
報告 ● PRISMA2020 Extensions https://www.prisma-statement.org/
まとめ ● 体育・スポーツ・健康科学分野では、非ランダム化研究が主戦場。 ● 非ランダム化研究のSR/MAでは、レビュークエスチョンの設定やバイア スリスク評価など、RCTのSR/MAと異なる注意を要する点がある。 ● 非ランダム化研究では、結果の統合可能性について一段と注意が必要 である。 ● メタアナリシスでの統合に固執せず、異質性を探ることも重要。 Murad et al, BMJ Evid Based Med. 2016
ご質問・ご感想・共同研究 etc. E-mail: [email protected] Twitter(X): @pon144 (仮)保健・医療のためのシステマティックレビューとメタアナリシス 2025年初めに大修館書店さまより刊行予定