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August 28, 22
スライド概要
都内某所で飲み会の肴として喋ったスライドです。
論文はこれです
https://asa.scitation.org/doi/10.1121/1.4864464
聴覚・音声の行動神経科学が専門。小鳥やヒト、ネズミの音声コミュを研究しています。ヒトの音楽能力についても少し研究しています。
超音波による骨質評価と信号処理: 瞬時周波数の応用 橘 亮輔 東京大学大学院 総合文化研究科 特別研究員PD 長谷 芳樹 神戸市立工業高等専門学校 電子工学科 准教授 1
瞬時周波数って矛盾してません? 瞬時周波数とはその瞬間その時点での周波数のこと。 でも・・・ frequencyとは頻度のこと。周期的に生じる波の数。 1サイクルもないのに周期的とはこれいかに このへん 低そう ある瞬間t1 このへん 高そう ある瞬間t2 2
定義 単一音源 x(t) を考える 𝑥 𝑡 = 𝐴(𝑡) × 𝑒 𝑗𝜃(𝑡) AMかけられたFMな複素正弦波 θは時々刻々の位相(瞬時位相) 瞬時位相の時間微分を瞬時周波数 𝑓𝑖𝑛𝑠 𝑑𝜃 𝑑 arg[𝑥 𝑡 ] 𝑡 = = 𝑑𝑡 𝑑𝑡 時々刻々の偏角の回転速度 直感的には音源(振動源)が1個 だとすると瞬時周波数は解釈可能 3
波形 スペクトロ グラム 瞬時 周波数 瞬時周波数は詳細な「時間-周波数表現」 4
骨の話 骨は皮質骨と海綿骨でできてる 骨の強度=骨密度と骨質(弾性とか異方性とか) 骨粗鬆症は海綿骨がスカスカになる 皮質骨 海綿骨 骨粗鬆症財団ウェブサイトより 健康 アカン… from Encarta (Microsoft) 5
二波分離現象 Hosokawa & Otani (1997) JASA 水だけ 骨あり 骨を水の中に置いて超音波を照射して、反対側で受波 速い波と遅い波が受かる。先行する波は骨を通ってきたはず この速い波を細かく調べればなんか分かりそう 瞬時周波数 つかえるかも 少なくとも分離したい 6
FDTD a.k.a 「さわ~」 有限差分時間領域法 音圧の 更新式 粒子速度の 更新式 𝜅 : 体積弾性率 𝜌 : 密度 http://ultrasonics.jp/nagatani/fdtd/ 7
研究の目的と方針 骨に超音波を当てたときの「速い波」をみれば骨の 状態が細かく分かるかも 瞬時周波数を利用して時間周波数表現を調べる 理想的な状況を対象としたいので模擬データ使う Hosokawa & Otani (1997) JASA 8
ウェーブレット変換した例 ガウス近似 複素モルレー(ガボール) 残差 Hasegawa, et al (2010) JJAP 9
とりあえず普通の瞬時周波数 受波信号をヒルベルト変換して虚部をつくり解析信号を得る。 解析の偏角の時間微分をとる。 振幅の小さい(相対的にノイズが大きい)ところですごいバタつく。 二波が重なるところで(?)ぶっ飛ぶ(矢印の箇所) 10
マルチチャンネルIF法(MCIF) 元信号 バンドパス スペクトログラム フィルタバンク マルチチャンネル 瞬時周波数 短時間フーリエ変換(スペクトログラム)の偏角をとって瞬時位相 とし、その時間微分を求めて各チャンネルの瞬時周波数とする 時間窓はガウス窓。 Nagatani & Tachibana (2014) J Acoust Soc Am 135: 1197 11
解析ガウス窓 σ= 0.25 us CF-IF関数の制約 傾斜制約: 0.5 Hz/Hz 曲率制約: 0.003Hz/Hz2 フィルタの中心周波数(MHz) 安定的な稜線を抽出する 時間(us) 12
結果1:骨の厚み変えてみた Nagatani & Tachibana (2014) J Acoust Soc Am 135: 1197 13
結果2:骨梁の太さ変えてみた Nagatani & Tachibana (2014) J Acoust Soc Am 135: 1197 14
MCIF法まとめと展望 詳細な時間-周波数表現が得られた – 骨の状態を表現している。結構使えそう。 実は他の分野でもある方法なのだが、骨分野に応用 したところがポイント – ノイズに敏感なので現場で使うには工夫がいるかも 15
「さわ~」情報 http://ultrasonics.jp/nagatani/fdtd/ 「FDTD法で視る音の世界」 (コロナ社,今秋発刊予定) 16