ユーザに気づかせることなく書写技能を向上させるシステムの提案

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書写技能向上システム ユーザが文字を書いているうちに自然と文字が綺麗になっている

研究背景 子供 →なぞり書き・模写練習 大人 →履歴書・契約書・手紙 手書き文字を 書く機会は 多い 手書き文字を 書くことに • ペン字講座 関心がある 大人になっても手書きで文字を書く機会は多い • 書写技能検定 文字に関する検定多数存在

研究背景 筆跡の恒常性 大人になるにつれて，その人自身の字のクセが 身についてしまっている→字形を変えるのは難しい 文字を綺麗にする →時間やお金がかかる なぞり書き練習，単純作業でつまらない！！ 書写技能を向上させるのは 容易ではない

研究目的 ユーザに気づかせることなく書写技能を向上させる ①ユーザが気づかない程度の融合割合の値 ②練習している意識なく字がきれいになるのか を検証し明らかにする

書写技能向上サイクル 少し綺麗な字を 書く 書く 綺麗に 自動変換 思い込み 提示された文字を 綺麗な字と思い込む お手本文字と 融合させる 認識 綺麗になった文字を 提示する

お手本文字との融合方法 ❶ ストロークの点の座標データを取得 ❷ スプライン補間 （点間の距離を短くする） ❸ フーリエ級数展開により数式化 お手本 ユーザ ❹ お手本とユーザを加重平均化 お手本×α ＋ ユーザ×(1ーα)

融合割合ごとの変化 お手本×α ＋ ユーザ×(1ーα) ユーザ 0.0 お手本 0.2 0.4 0.6 お手本に近づいていく！ 0.8 1.0

予備実験 融合割合αをどこまでの値なら ユーザに変換したと気付かれないのか？ 気づかないうちに手書き文字を綺麗に変換するため

データセット構築 ①実験協力者10人に漢字13文字を3回ずつ書いてもらう 子富案空色夢道波理敬永女様 ②それを平均化（ブレをなくすため） お手本文字 書道経験者1人，クセがなく整った字形の3人の計4人

予備実験：融合割合評価 お手本文字｜4人 実験協力者｜6人 書道経験者Aさん 他B〜Dさん E〜Jさん お手本 平均文字 × 13(文字) ＝ 4(人) 52(文字)

加重平均化文字提示システム ①ランダムに融合割合の違う 加重平均化した平均文字を提示 ②自分の文字だと思ったものを 選択してもらう（複数選択可） ユーザに融合割合は示さず 直感的に選んでもらう

結果(予備実験) お手本となる文字によって融合割合は変化するのか？ 融合割合の最大値と最小値を表した棒グラフ

結果(お手本ごと) A 画数の少ない漢字 融合割合が高い＝自分の字が変換されたと気づきにくい 特徴が出る機会が少ない→自分のだと判断する要素が少ない

結果(お手本ごと) C D 「女」の融合割合が高い 気づかれにくい＝字形の影響受けやすくなる？！

結果(お手本ごと) A 画数の多いもの 止め，はね，払い→ユーザの癖が出やすい

波の書き順

結果(お手本ごと) 漢字の書き順が難しいもの 止め，はね，払い→ユーザの癖が出やすい A 画数の多いもの いつもと違う書き順→特徴量増加 融合割合が低い＝お手本の要素が多いと自分の字でないと気づく

結果(Aさんとユーザごと) 画数に関係なく融合割合が変化 規則性がない 自分の文字にこだわりがない 割合を高くしても 気づかれない

予備実験結果まとめ 画数 書き順 こだわり 融合割合の値は変化する 融合割合が0.4以上だと自分の文字と認識しにくくなる 0.4未満であれば気づかれないで変換できる可能性

書写技能向上システム 融合割合αを用いて実験を行う

システム内容 ①ユーザが書いている時 →ユーザ自身の点列を表示 ②1つのストロークを入力し終わる →融合割合を使って 加重平均化したストロークの提示 ※1つのストロークが決まってからでないと 数式が確定できない

書写技能向上に関する実験 ①ユーザに気づかれずに変換できるのか？ ②書写技能が本当に向上して字が綺麗になるのか？

お手本文字・融合割合αの選定方法 予備実験より… お手本文字の選定 実験協力者から最も評価が高かったCさんをお手本とする お手本となる漢字の選定 比較的画数の少ない漢字は融合割合が高く，値に違いがない →「安」「色」「女」「空」の4文字を選定 融合割合αの選定 最大値の中で最も一番小さかった値→ 0.4 これ以上にすると 気づいてしまう可能性 融合割合αは0.1 , 0.2 , 0.3 で実験を行う

実験手順 安色女空の漢字4文字を30回書いてもらう 回数(回目) 融合割合(割) 1〜5 0.0 6〜25 ユーザごとに変化 0.1 0.2 0.3 26〜30 0.0 書写技能が 向上しているかを見る 1回書き終わるごとに書いた4文字を見直してもらう ユーザに「自分の文字はこういうのだ！」と思い込ませるため 書いているうちに雑になるのを防ぐため

結果(本実験) 25 2 書くのに 慣れていない 26 3 27 … 1 15 28 5 29 6 … 4 30

結果(筆跡の変化) (回目) 3 4 5 28 29 30 α＝0.3 α＝0.2 α＝0.1

結果(筆跡の変化) (回目) 3 4 5 28 29 30 α＝0.3 α＝0.2 α＝0.1

α＝0.3のときの文字変化 3回目 4回目 28回目 29回目 字形に安定感がない 重心がバラバラ 5回目 30回目

α＝0.3のときの文字変化 3回目 4回目 28回目 29回目 5回目 30回目

結果(筆跡の変化) (回目) 3 4 5 28 29 30 α＝0.3 α＝0.2 α＝0.1

α＝0.2 0.1のときの文字変化 α＝0.2 形にばらつき α＝0.1 3〜5回目 形・大きさに統一感 28〜30回目

結果（重ね合わせ） α＝0.3 α＝0.2 お手本に少しだけ近づいた 緑＝お手本 青＝1〜5回目の平均文字 赤＝25〜30回目の平均文字 α＝0.1 変化なし

結果（重ね合わせ） α＝0.3 α＝0.2 お手本に少しだけ近づいた 緑＝お手本 青＝1〜5回目の平均文字 赤＝25〜30回目の平均文字 α＝0.1 変化なし

システムを使ってみた！！ 3日間 毎日システムを使用(融合割合0.3) 最初 お手本 3日後

考察：書写技能向上について 字形に大きな変化はないが，微妙にお手本に近づいた 何回も書いたために文字が綺麗になった可能性 →融合割合を0の時のシステムを利用してもらい 結果を比較する 書写技能向上には30回では少なく向上につながりにくい →人数を増やし，長期的な実験が必要

考察：ユーザ観察において 自身の手書き文字を見直してると，綺麗になったと実感 →融合割合が0.3 気づく 融合割合が0.2 0.1 気づかない 25回目〜30回目は丁寧に書く うまく書けなかったら書き直す →綺麗に書くということのモチベーション向上 につながった

オープンキャンパスで… (2016/8/18~19) 175人にシステムを利用してもらった 割合が0.15以下だと，変換されていることに気づかない 変換に気づいてしまっても綺麗になっていることが嬉しい 割合を高くして，ノートを取る時の支援に使えるのでは？

まとめ ユーザに気づかせることなく書写技能を向上させる システムの提案 システムによって書写技能が向上するのか検証 →ユーザに変化が見られた 字の癖が身についてから書写技能を向上させるのは 簡単ではない

今後の課題 長期的なシステムの利用 →書写技能がほんとうに向上するのか検証 対象者の拡大 →小学生，日本語学習中の外国人 手書き分野全般に応用 →文字だけでなく絵や図形などでも効果はあるのか？