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January 19, 24
スライド概要
伊藤昌毅 東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 准教授。ITによる交通の高度化を研究しています。標準的なバス情報フォーマット広め隊/日本バス情報協会
2024年1月19日 東京都庁議会棟1階 都民ホール 令和5年度「高度技術政策研修報告セミナー」 交通データの活用と地域公共交通の未来 東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 伊藤昌毅
伊藤 昌毅 • • • • • • 東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 准教授 一般社団法人 日本バス情報協会 代表理事 静岡大学 土木情報学研究所 客員教授 専門分野 – – ユビキタスコンピューティング 交通情報学 – – – – – – – – 静岡県掛川市出身 2002 慶應義塾大学 環境情報学部卒 2009 博士(政策・メディア) 指導教員: 慶應義塾大学 徳田英幸教授 2008-2010 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特別研究助教 2010-2013 鳥取大学 大学院工学研究科 助教 2013-2019 東京大学 生産技術研究所 助教 2019-2021 東京大学 生産技術研究所 特任講師 2021-現在 現職 – 運行管理者(旅客) 経歴 資格 2
伊藤×国土交通省 • • • • • • • • • 標準フォーマット関連 – – – – バス情報の効率的な収集・共有に向けた検討会 座長(H28年度) 標準的なバス情報フォーマット利活用検討会 座長(H29年度) バス情報の静的・動的データ利活用検討会 座長(H30年度) GTFS-JPに関する検討会 委員(R2年度) – 公共交通分野におけるオープンデータ推進に関する検討会 委員(H29年度-R3年度) – – 都市と地方における新たなモビリティサービスのあり方懇談会 委員(H30年度) 新モビリティサービス推進事業有識者委員会 委員(R1年度) – 交通政策基本計画小委員会 委員(R1年度-R5年度) – シェアサイクルの在り方検討委員(R1年度-) – 鉄道の混雑緩和に資する情報提供のあり方に関する勉強会 委員(R2年度) – 運行管理高度化検討会・ワーキンググループ(R2年度-) – バス事業者の許可申請等におけるGTFS-JPの実務者協議会(R5年度-) – 「地域公共交通計画」の実質化に向けた検討会(R5年度) オープンデータ関連 MaaS関連 交通政策審議会 シェアサイクル 鉄道 点呼 申請オンライン化 地域公共交通計画
伊藤×経済産業省・総務省 • 経済産業省 オープンデータ関連 – 官民データの相互運用性実現に向けた検討会 座長(H29年度) – 情報共有基盤 利用促進ワーキンググループ 委員(H30年度) • 総務省 オープンデータ関連 – 地域情報化アドバイザー(R2年度〜R3年度)
伊藤×地方自治体 • • • • • • • 沖縄観光2次交通の利便性向上に向けた検討委員会 座長(H30年度〜) 群馬県バスロケーションシステム実証実験 アドバイザー(R1年度) さいたま市 スマート駅広研究会 副会長(R2年度〜R3年度) 佐賀市 街なか未来技術活用モデルプラン策定業務有識者会議 委員(R2年度) 東京都 東京都における地域公共交通の在り方検討会 委員(R2年度〜R3年度) 熊本市 熊本版MaaS勉強会 有識者委員(R3年度〜) 杉並区地域公共交通活性化協議会 会長(R3年度〜) • その他自治体主催のイベントでの講演多数 – 静岡県掛川市、石川県能美市、群馬県、島根県安来市、沖縄県、富山県、岐阜県、北海道など
モビリティは100年に一度の大変革の時代
ビジネス誌でも多くの特集 2018年3月5日号 2018年9月号 2019年4月29日号 2019年7月30日号
モビリティ革命の背景 • 情報技術の発達 – スマートフォン: 誰もが常時繋がる世界を達成 – IoT: 全てのモノ(車や電車、バス等も含む)も常時繋がる – AI・機械学習: 大量のデータに基づき人間以上の知的アウトプット • カーボンニュートラル – 温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡 – 気候変動を抑制して持続可能な社会を作る
車両目線で次のモビリティを考えるなら CASE
CASE: 自動車産業が見据えている方向性 • C: Connected – 通信・ネットワーク化 • A: Autonomous – 自動運転 • S: Shared and Services – サービス化 • E: Electric – 電動化 • 2016年にダイムラーが提唱・一企業に留まらない自動車産業の方向性を示 すキーワードとなる https://www.daimler.com/innovation/case-2.html
TESLA • イーロンマスク氏による電気自動車ベン チャー企業 – 2003年創業 • 自動運転に対応したハードウェアを標準 装備 – カメラや超音波、レーダーなどで周辺を認識 – オートパイロット機能を提供 – 現在は完全な自動運転ではないが、将来は完全自 動運転に対応? – ソフトウェアアップデートで機能追加 • 利用者の運転行動を通してアルゴリズム を進化 • Webでカスタマイズ・オーダー https://ja.wikipedia.org/wiki/テスラ・モデル3
https://response.jp/article/2019/02/28/319596.html
• xx トヨタの求人広告が話題に(2017年) https://adgang.jp/2017/10/151302.html
A: Autonomous
自動運転は いつ実現するか?
• x http://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf
各社の実験も活発に • カリフォルニア州車両管 理局(DMV)が公開した 自律走行車の開発企業各 社による試験状況より • ウェイモ(Google)、 Uber、AppleなどIT企業 も実験中 https://wired.jp/2019/02/26/new-robo-car-report-card/
2020年!? • テスラは2020年に「完 全な自動運転」を実現 する – オートパイロット機能 – スマートサモン機能 https://wired.jp/2019/02/25/tesla-full-self-driving-promise/
CES 2019 トヨタ・リサーチ・インスティテュート (TRI)ギル・プラットCEOスピーチ • レベル5の自動運転とは、いつどこで どんな環境でも、ドライバーなしで自 動運転が可能なシステムと定義されま す。 • これはすばらしい目標ですし、私たち もいつかは達成できるかもしれません。 • しかしながら、こうした自動運転シス テムが抱える、技術的・社会学的な難 しさを甘く考えてはいけないと思って います。 2019年01月08日 https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/26085185.html https://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/1161/181/html/001_o.jpg.html
• x 官民 ITS 構想・ロードマップ 2019 より
もっと知りたい人は・・・ • 5年後のビジネス構造変化を読み解く、 最良の教材は自動車産業だった! ガソリン車の廃止 世界規模の再編 水平 分業の大波 そしてコネクテッド 日本経済の大黒柱は大丈夫か 世界の自動車産業を知り尽くすコンサル タント・ジャーナリストの描く未来 忖度なしに「自動車業界」の現状を描く https://www.amazon.co.jp/dp/4065235294/
今ある自動車がただ自動運転になる だけではない
City of Tomorrow with Autonomous Vehicles (Drive Sweden) • 自動運転によって街がどう変わるかというビジョン – 街の空間を車のための場所から人のための場所へ • • • • • • 道路標識が不要に 道路を効率よく使えるようになり歩道が広がる 駐車場を街の中心に作らなくてよい 駅に到着したときに待たずに出迎え 自動運転トラックの隊列走行で効率よく 計画的に積み荷を処理することで駐車場削減 https://www.youtube.com/watch?v=WmYsWYDQxuI
システムとして交通全般を捉え直し 現代の技術をベースにした組み合わせや都市 全体の最適化を考えるべき • これまでの自家用車、公共交通、自動車、電車などの区分を一 旦忘れる • 制度を硬直化させない工夫が必要
S: Shared and Services IT×交通の可能性が 世界中で試されている
Uber • 2010年 サンフランシス コで設立 • 2011年 NY、パリ進出 • 2013年 東京でタクシー 配車開始 • 2015年 CMUの研究者40 名を引き抜き • 2015年福岡市でライド シェア実証実験、国交省 が中止 • 2016年 トヨタと提携 • 2016年 京丹後市で「さ さえ合い交通」
Uber Pool (Uber Express Poolと統合) • 乗客が「歩いて」「待つ」ことでさらに効率的なライドシェア を実現 – 2017年11月〜 サンフランシスコで試験提供 – 2018年2月〜 正式提供 https://techcrunch.com/2018/02/21/uber-officially-launches-uber-express-pool-a-new-twist-on-shared-rides/
マイクロモビリティの急速な普及 • 電動キックボードとシェアサイクルをマイ クロモビリティと総称 – ドックレス(どこでも乗り捨てられる)が流行 • Bird、Jump (Uber)、Lyft、Lime、Skip、 Spin (Ford)などが全米の都市で競争
MaaS (Mobility as a Service)
MaaSとは? • ドア・ツー・ドアの移動に対し、 様々な移動手法・サービスを組み合わ せて1つの移動サービスとして捉えるものであり、ワンストップでシーム レスな移動が可能となる。 • 加えて、様々な移動手段・サービスの個々のサービス自体と価格を統合 して、 一つのサービスとしてプライシングすることにより、いわば「統 合一貫サービス」 を新たに生み出すものであり、価格面における利便性 の向上により利用者の移動行動に変化をもたらし、移動需要・交通流の マネジメント、さらには、供給の効率化も期待できる。 • 小売・飲食等の商業、宿泊・観光、物流などあらゆるサービス分野との 連携や、医療、福祉、教育、一般行政サービスとの連携により、移動手 段・サービスの高付加価値化、より一層の需要の拡大も期待できる。 (国交省 都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会中間とりまとめより)
MaaS Global社による定義 • あらゆる種類の移動手段を単一の 直感的なモバイルアプリにまとめ ます。さまざまな事業者が提供す る移動の選択肢をシームレスに組 み合わせて、旅行計画から支払い まですべてを取り扱います。オン デマンドで旅行を購入する場合で も、手頃な価格の月額パッケージ をサブスクライブする場合でも、 MaaSは最善の方法であなたの移 動のニーズに応えます。
Whim by MaaS Global • • ヘルシンキ(フィンランド)でMaaSを実現 Whim というアプリを通して鉄道、バス、タ クシー、自転車などの組み合わせ検索や予約決 済を実現 https://whimapp.com
https://note.mu/kakudosuzuki/n/n01c8ab0f9b84 Whimの利用 • xx
Whimのプラン: 料金により交通行動を誘導
統合の度合いで4段階のレベルが提唱されている • xx http://www.tut.fi/verne/aineisto/ICoMaaS_Proceedings_S6.pdf
変身するLA マイカーなしでも移動に不自由なし モビリティー革命進行する米国 • 牧村和彦氏(計量計画研究所) による現地レポート • 米国にて、車社会から新しいモ ビリティサービスによるまちづ くりが始まっていることを報告 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33296960T20C18A7000000/
「全ての交通サービスが自分の ポケットの中にある」 という、 今までに感じたことのない 異次元の感覚
モビリティのサービス化 (MaaS)は、自動運転より本質 的なモビリティ進化の方向性 流行語として消費される予感しかしない…
MaaSの背景: IT・スマホの普及・発展 • いつでもどこでも「その時・その場で・他に何も使わずに」解決す るのが当たり前に – – – – 知りたい→WebやSNS検索 届けたい→SNSでシェア 売りたい→カメラで撮ってメルカリに 行きたい→乗り換え案内やGoogle Maps • 利用者の「したい・欲しい」の種に気付かせ、阻害せずに具体的な 形に落とし込めるようにUI/UXが進化中 – 明確に「何をしたい」を持たなくても、アプリとの対話の中で欲求を形成・具現化
交通行動におけるスマホの役割の拡大 • なぜ使えなかった?雪の日の交 通アプリ – アプリに騙されてバス3回も逃した – 乗る予定のバスがアプリから消えた – タクシーアプリでずっと探してたけど全 然駄目 • →平常時に使えるだけでなく、 緊急時にも使えて当然という利 用者意識 – 悪天候なら乱れて当然、で思考停止しな い NHK NEWS Web 2016年1月19日 46
交通事業者による検索エンジン最適化(SEO)的な発想 日経MJ 2015年10月19日 京阪電気鉄道社長インタビュー 鉄道に乗る際に利用者はスマホの 乗り換えサイトを利用します。 いくら沿線の良さをアピールしても大 半の方はサイトの上に表示された時 間が早いほうに乗ってしまう。先に 表示されないと選ばれない。鉄道を 選ぶ最大のポイントはサイトで上位 に表示されることになりつつある。 これは無視できない。だから1分でも 2分でも早くしようと努力しています 2015年10月25日 くらしの足をみんなで考える全国フォーラム2015 ラウンドテーブル インターネットやスマホはくらしの足にどう踏み込むのか 47 太田恒平氏スライドより
公共交通を活かしたまちづくりの成熟 • モータリゼーションが先行したヨーロッパにおいて、中心市街 地を公共交通によって活性化する施策が一般化 – 数十万人規模の都市でもトラムを整備、赤字前提の運営 • LRT導入、歩行者専用道路、トランジットモール… フランス オルレアン https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Rue_Jeanne_dArc_Tramw ay_Orleans.jpg フランス ストラスブール http://uemuraakifumi.com/machi/858 ドイツ カールスルーエ https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Heilbronn_Bah nhofsvorplatz_Stadtbahn01_2002-09-08.jpg
ヨーロッパなどでは運輸連合を形成 • 複数の交通事業者を一体運用し統一的な公共交通サービスを実現する組織 – 交通事業者、自治体などが主導し結成される • 公費を投入しての運営が前提、運賃収入は半分以下 • ドイツ、フランスなどで導入が進む – 1965年にドイツ ハンブルグで始まる • 運輸連合の役割(例) – – – – – – 統一的な運賃システムの構築と販売のマネジメント 事業者間での運賃調整 地方自治体や事業者との契約に関するマネジメント ローカル線の維持管理と品質管理 旅客輸送の計画策定 マーケティングと乗客への情報提供 https://www.itej.or.jp/assets/seika/jijyou/201209_00.pdf 運輸連合の概要と日本への示唆 −ドイツ・ベルリンを例に−(渡邉亮) 参照
モビリティ革命の地域社会へのインパクト • 移動手段・くらしの足をどう確保するか – 多くの人にとっては、モータリゼーションで移動が手軽に・便利に – 過疎化・少子高齢化などの状況の中で、新しいモビリティで地域の足を再構築で きるか? • 地域の産業・経済基盤をどう成立させるか – 地域の雇用を支える企業・事業は今後どうなるのか • 裾野の広い自動車関連産業 • 道路などのインフラ整備 – 第一次、第二次産業からソフトウェア・サービスへ
交通データとは?
データ: PCで「ファイル」として開ける • • • • • • • 道路データ 渋滞データ バス停データ 路線データ 時刻表データ 路線図(緯度経度)データ など
GISとは • 地理空間情報の地理的な把握又は分析を可 能とするため、電磁的方式により記録され た地理空間情報を電子計算機を使用して電 子地図上で一体的に処理する情報システム – 地理空間情報活用基本法(平成19年法律第63号) 第2条 • 様々なデータを電子地図の上に層(レイ ヤ)ごとに分けて載せ、位置をキーにして 多くの情報を結びつけることで、相互の位 置関係の把握、データ検索と表示、データ 間の関連性の分析などが可能に https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_tk1_000041.html
ワンソース・マルチユース 乗り換え案内 マイ路線図・マイ時刻表 公共交通 オープンデータ 交通分析 service_id route_name 平日 250号線 [3102](片上→岡山駅) 行ラベル 06:52 08:40 10:35 15:11 17:05 総計 計画 最小 中央値最大 120 83 92 102 106 78 78 83 90 100 76 76 80 84 75 79 81 88 80 85 87 98 111 60 79.4 82 89 96 • • 40 計画 中央値 20 最小 最大 17:05 15:11 10:35 08:40 06:52 0 データを使った様々なアプリ開発や 交通分析が実現 データ分析やアプリ開発によって公 共交通の利便性が向上
データを肴に交通を議論・計画したい • 採択決定後から行 政(市・県)・バ ス事業者幹部、地 域ITコミュニティ などと打ち合わせ を重ねる • 熊本エリアにおけ る実証実験や フィールド調査な どを推進 59
実は充実している交通データ • 「データがない」「企業がデータを出さない」というあるある 話はあるものの… • 様々な分野の交通データが整備・公開されている • オープンデータにも積極的。多くのデータが自由にアクセス・ 利用可能
基礎データ
基礎データ: 地理院地図 • 国土地理院が提供する – × Web地図サービス – ○ タイル地図配信サービス
国勢調査の人口データ • Qiitaに公表した記事の前半 部分までを参照 – ただし記事は2015年データに基 づく。現在は2020年データも公 開 https://qiita.com/niyalist/items/d70f471c259211aa1554
重ねれば見えることがある! • 基礎地図、人口、バス路線図
国土数値情報 • 国土交通省が整備している基礎的なGISデータ集
国土数値情報 行政区域データ • 市区町村の境界を入手可能 • https://nlftp.mlit.go.jp/k sj/gml/datalist/KsjTmplt -N03-v3_1.html
国土数値情報 鉄道データ
公共交通データ
GTFSオープンデータ • 公共交通の静的データ(路線、バス停や駅、時刻表)などを格 納する世界標準のフォーマット • 世界の公共交通事業者において、GTFSに準拠したデータを公 開することが一般的 • 日本では路線バス業界が「標準的なバス情報フォーマット」と して採用し整備、公開が進む
GTFS形式 • 世界で広く使われる形式 • 乗換案内に必要な情報(バス停・駅+路線+時刻表+運賃)をまとめて格納 したファイル形式 バス停/駅+路線 時刻 運賃 82
GTFSデータ一覧 • 旭川高専 嶋田鉄兵氏が管 理するGTFSオープンデー タの一覧 • https://tshimada291.sa kura.ne.jp/transport/gtf s-list.html
参考)GTFS-GOが欧米で話題に、運行頻度図 UKのスタートアップThe Data City社 GitHub上の評価☆が急上昇 が高評価 CTOのTweetをきっかけに話題に SEPTA地域鉄道 (米国ペンシルバニア州) https://twitter.com/yfreemark/status/1565030476439494658 英国内の鉄道 287RT, 1619いいね https://twitter.com/thomasforth/status/1564683686330736646 FLiXBUS (ドイツ・欧州各国) https://twitter.com/BorisMericskay/status/1565301466243506177 オープンソースとオープンデータによる 公共交通EBPMエコシステムに貢献 85
GTFS-GO • QGISプラグインとして 提供されているGTFS可 視化ツール • GTFSに基づいた路線図、 運行頻度図などを出力 が可能
シェアモビリティデータ
GBFS • シェアモビリティの国際標準 フォーマット – シェアサイクル、シェアキック ボードなどのポートデータが公開 されている • 日本では2022年よりドコモ バイクシェア、ハローサイク リングのデータが公開 https://www.odpt.org
ハローサイクリング・ドコモバイクシェアのポート位置
道路データ
道路交通センサス • 一般交通量調査と道路交 通起終点調査を実施し、 現在の道路の使われ方、 道路整備の現状等を把握 し、道路計画の策定や道 路の維持・修繕等に活用 • データの解釈には有償の デジタル道路地図 (DRM)データが必要 https://www.mlit.go.jp/road/census/h27/index.html
https://www.mlit.go.jp/common/001187536.pdf
JARTIC(日本道路交通情報センター)オープン データ • • • • • • 「交通規制情報」 一般道路の「断面交通量情報」 一般道路の「交差点制御情報」 それぞれ、2ヶ月遅れの最新データをWeb掲載 位置情報の取得には別途有償データが必要 https://www.jartic.or.jp/service/opendata/
利用者データ
大都市交通センサス • 国土交通省が5年毎に首都圏、中京圏、近畿圏の三大都市圏に おいて、鉄道・バス等の大量公共交通機関の利用実態を調査 • 最新データは令和3年度に実施 • 調査方法 – 第12回まで:駅において鉄道利用者に紙の調査票を配布し、郵送等にて回収した うえで拡大する手法にて調査を実施(サンプル調査(32万件) – 第13回: 鉄道ICカードの利用実績をもとに集計する手法(非接触かつ全数調査 (1915万件)等に変更 https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000007.html
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/content/001596536.pdf
パーソントリップ調査 • 都市における人の移動に着目し た調査 – 世帯や個人属性に関する情報と1日の 移動をセットで尋ね「どのような人 が、どのような目的で、どこから どこ へ、どのような時間帯に、どのような 交通手段で」移動しているかを把握 – 公共交通、自動車、自転車、徒歩と いった交通手段の乗り継ぎ状況を捉え る – 全国の都市圏でおよそ10年おきに実施 https://www.mlit.go.jp/toshi/tosiko/toshi_tosiko_tk_000031.html
第6回(平成30年)東京都市圏パーソントリップ調査 • 一部の集計データはWebよ り取得可能
ダウンロード可能データ • 人口関連 – a-1 居住地ゾーン別性別年齢階層別人口 – a-2 居住地ゾーン別就業別人口 • 原単位関連 – – – – b-1 b-2 b-3 b-4 居住地ゾーン別性別年齢階層別目的種類別原単位 居住地ゾーン別就業別年齢階層別目的種類別原単位 居住地ゾーン別車種別目的種類別運転有無別トリップ数 ゾーン別時刻別滞留人口 – – – – c-1 c-2 c-3 c-4 ゾーン別目的種類別代表交通手段別発生集中量 ゾーン別目的種類別発着時間帯別発生集中量 ゾーン別代表交通手段別発着時間帯別発生集中量 ゾーン別代表交通手段別発着施設別発生集中量 • 発生集中量関連 • 分布関連 – d-1 目的種類別代表交通手段別OD表
国土数値情報 駅別乗降客数データ • 鉄道事業者からの情報提供に基 づき、駅ごとの乗降客数を提供 • https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/g ml/datalist/KsjTmplt-S12v3_0.html
「データがある」ことが 多くの施策の出発点に
バス事業者に広がるGTFS形式の公共交通オープンデータ バス業界において「標準化」「オープン化」が同時に進行 路線 時刻 運賃 リアルタイム GTFS: 国際的な標準フォーマット(標準的なバス情報フォーマット・GTFS-JPと互換) 乗換案内・MaaS サイネージ・印刷物等 交通分析・計画 110
2019年2月:90 2019年7月:126 112 21年1月 20年10月 20年7月 20年4月 20年1月 19年10月 19年7月 19年4月 19年1月 18年10月 18年7月 18年4月 2018年11月:30 18年1月 2018年7月:23 17年10月 17年7月 事業者数 350 300 250 200 150 100 50 0
順調にオープンデータが増加 700 600 500 400 300 200 100 0 オープンデータ提供事業者数
GTFS形式 • 世界で広く使われる形式(GTFS-JP, 標準的なバス情報フォーマットもほぼ 同等) • 乗換案内に必要な情報(バス停・駅+路線+時刻表+運賃)をまとめて格納 したファイル形式 バス停/駅+路線 時刻 運賃
GTFS: Googleによるデファクト スタンダードが出発点 • 2005年オレゴン州ポートラン ドの公共交通事業者とGoogle によりGTFSという標準規格が 作られた – 2010年前後から米国で普及 – オープンデータとして公開 • 現在はGoogleの手を離れ、世 界中でデータが作られている http://qiita.com/niyalist/items/5eef5f9fef7fa1dc6644
オープンデータとして自社などのWebページで公開 • Webページからデータを誰でもダウンロード出来るように
GTFS データリポジトリの開発(2021〜) • 国土交通データプラット フォームにGTFSデータを投 入するために開発 – 国土交通省技術調査課 – 受託・社会基盤情報流通推進協議会 (AIGID) – 協力・ 日本バス情報協会 • 自治体、バス事業者がデータ を公開、管理するためのプ ラットフォームとして 123
GTFSデータリポジトリを利用してデータ公開 • GTFSデータリポジトリにデータを登録、自社Webからリンク
GTFSリアルタイム(バスロケ)提供も増加中(67事業者) • 便ごとのバス停通過時刻、緯度経 度情報などをリアルタイム公開 – Protocol Buffer形式 • 混雑情報も提供可能 – 2020年より宇野バス、横浜市交通局が対応
2020年: 都バス・横浜市営バスの GTFS-JP・GTFSリアルタイムデータ公開 • 公共交通オープンデータ協議会(坂村健会長) による取り組み – 公共交通オープンデータセンター • 都バスは、Google Mapsでバスロケを考慮し た検索が可能に 2019年3月
日本でデータ整備が進んだ経緯
乗換案内サービスで検索出来ますか? 駅すぱあと Yahoo!乗換案内 駅探 乗換案内 NAVITIME ジョルダン 乗換案内 Google Maps Apple Maps
地域の公共交通は乗換案内に出てこない
地域の公共交通は乗換案内に出てこない データ整備にはコストが掛かるため 利用者数が少ない地域のバスにまで 手が回らない 交通事業者が自ら 標準形式のオープンデータを用意して 乗換案内に提供する
日本の公共交通データ流通の現状 JR 私鉄 交通新聞社 私鉄 私鉄 バス バス バス JTBパブリッシング バスデータに関しては、集約して販売する 事業者がなく、乗換案内事業者それぞれが 独自で一社一社のデータを集めている 乗換案内サービス事業者
海外の事例: 交通事業者がオープンデータを提供 • 路線図、時刻表、リアルタイム車両位置情報などのデータの利用を開放 • 自由に使ってもらうことで、アプリの作成や工夫を凝らした印刷物などの情 報提供を促進 • アメリカ、ヨーロッパでは当たり前になりつつある
オープンデータから様々なアプリが開発される • 大企業、ベンチャー−企業、個人がアプリ開発
2014年〜 静岡県でコミュニティバスのオー プンデータ化の取り組み • 県庁、市役所、地元IT企業等とGTFS、GTFSリア ルタイムによるオープンデータ化を実現 – Google Mapsへ提供可能に • アイデアソン、ハッカソンで地域でのデータ活用 を目指す
学会発表を繰り返す • 交通の専門家は学会に結集している • ならばそこに参加してオープンデータ を訴える
「交通ジオメディアサミット 〜 IT×公共交通 2020年とその先の未来を考える〜」 開催 • • • • • 2016年2月12日開催(東大駒場第2キャンパス コンベンションホール) 195人来場 産(現場寄り): JR東日本、バイタルリード(出雲市の交通コンサルタント) 産(IT寄り): ジョルダン、ナビタイム、ヴァル研究所(駅すぱあと) 官: 国土交通省、学: 東京大学(私) コミュニティ: Code for Japan、 路線図ドットコムなど
バス情報の効率的な収集・共有に向けた 検討会(2016年12月〜2017年3月) • 事務局: 総合政策局公共交通政策部交通計画課 • 外部委員 – – – – – – – – – – 伊藤昌毅 東京大学生産技術研究所(座長) ー川雄一 株式会社構造計画研究所 伊藤浩之 公共交通利用促進ネットワーク 井上佳国 ジョルダン株式会社 遠藤治男 日本バス協会 櫻井浩司 株式会社駅探 篠原雄大 株式会社ナビタイムジャパン 丹賀浩太郎 株式会社工房 別所正博 公共交通オープンデータ協議会 山本直樹 株式会社ヴァル研究所
2017年3月31日 「標準的なバス情報フォーマット」公開
2019年3月 標準的なバス情報フォーマット 第2版 • GTFSリアルタイムをベースにバスロ ケデータの標準化にも対応 • GTFS-JPの改定作業 – 2年経って40項目以上の検討、見直し事項が蓄 積 • 国交省バス情報の静的・動的データ利 活用検討会 – バスロケ事業者も委員に
2021年7月 標準的なバス情報フォーマット 第3版 • より精度が高いデータを作成するため – Google Maps は一定以上の精度が確保されたデータでないと受理しないよう に
標準的なフェリー・旅客船航路情報フォーマット • 国土交通省海事局内航課に より船舶向けデータフォー マット(GTFS互換)が策定 – 受託 ジョルダン株式会社
標準的なバス情報フォーマット広め隊 • 標準的なバス情報フォーマット (GTFS-JP)データ整備に関わる有志 によるコミュニティ – 2017年夏頃から、国交省検討会の関係者らを 中心に自然発生的に誕生 – 普及に関わるツール開発、勉強会やイベント 開催、関係者への働きかけなどを継続的に実 施 – チャットなどによる活発な情報交換 • 参加者 – – – – – – 大学研究者 乗換案内サービスデータ整備担当 バス事業者向けツール開発者 公共交通コンサルタント 交通事業者職員 自治体職員 等 20名程度
フリーのデータ作成ツール開発・提供・利用支援 • 西沢ツール – 西沢明氏開発 – 約40+自治体・事業者が利用 • 見える化共通入力フォーマット – 伊藤浩之氏開発 • 当初は三重県のプロジェクトで利用 – 約33自治体・事業者が利用
その筋屋 • 無償配布されているダイ ヤ編集システム • プロ向けシステムと同等 の機能を備え、バス事業 の運営に利用出来る • GTFS/標準的なバス情報 フォーマット出力機能を 備える – 42事業者がオープンデータ公 開 http://www.sinjidai.com/sujiya/
広め隊による講演会・講習会 • 県や運輸局が実施する勉強会に講師として登壇 • 事業者や自治体にツール導入を指南
県によるデータ整備事業 • 佐賀、富山、群馬、沖縄 • その他にも続々と・・・
フリーのGTFS作成ツールによるデータ作成が主流に その筋屋 西沢ツール 見える化共通入力フォーマット • • 2020年12月現在 N=309(一部期限切れデータ含む) 資料 ⚫ GTFS公共交通オープンデータのリストは、「GTFS・「標準的なバス情報フォーマット」オープンデータ一覧(旭川工 業高専島田鉄兵先生)による。事業者・市町村単位で集計した。鉄道、航路等を含む。 ⚫ HODaP、OTTOPはこれらのプロジェクトで整備されたGTFSである。 HODaP、OTTOPの区分は上記一覧記載による。 ⚫ その筋屋、見える化共通入力フォーマット、西沢ツール、その他の区分は、各GTFSデータのtrips.txtを見て判断した。 156
公共交通オープンデータ最前線 in インターナショナルオープンデータデイ2019開催 • 2019年3月2日(土) 東大生研 にて • https://geomedia2020.peatix.com
データ活用の広がり
ワンソース・マルチユース 乗り換え案内 マイ路線図・マイ時刻表 公共交通 オープンデータ 交通分析 service_id route_name 平日 250号線 [3102](片上→岡山駅) 行ラベル 06:52 08:40 10:35 15:11 17:05 総計 計画 最小 中央値最大 120 83 92 102 106 78 78 83 90 100 76 76 80 84 75 79 81 88 80 85 87 98 111 60 79.4 82 89 96 • • 40 計画 中央値 20 最小 最大 17:05 15:11 10:35 08:40 06:52 0 データを使った様々なアプリ開発や 交通分析が実現 データ分析やアプリ開発によって公 共交通の利便性が向上
Google Mapsへの掲載 • GoogleはGTFS形式によるオープ ンデータを推奨 • 乗換案内に掲載されていない自治 体やバス事業者が利用促進のため にデータ整備 • 訪日外国人が利用するのはGoogle Maps
「駅すぱあと/Yahoo!乗換案内」がオープン データを採用 • オープンデータ化されたバスデータを経路探索に採用 https://ekiworld.net/personal/app/spec/info.html?style=pc
GTFSリアルタイムで攻めの情報発信 • バスロケやアラートを標準フォーマットで積極公開、利便性向上へ
GTFS-JPオープンデータ整備の効果 • 北恵那バス馬籠線での調査 – 利用者の多く(76%)は外国人。馬籠宿 から妻籠宿へ向かうルートが大半 – 外国人のうち欧米の旅行者が85% • 外国人の15%がGoogle Maps検索で バスを知る。20代は4割以上 • 沖縄・石垣島での調査 – データ整備前(2018年2月)と整備後(2019 年8月)との比較 – 「バス・船の検索に不便があった」が約5割か ら約3割に改善 • • – 検索する際の不便や困難が大きく改善 • 2018年10月調査(中津川市が実施) http://www.city.nakatsugawa.gifu.jp/page/081195.html 国内: 約5割(n=88)から約3割(n=101) 海外: 約6割(n=9)から約4割(n=34) 検索できなかったとの回答が約7割から約3割に 2019年9月報告(沖縄県 観光2次交通検討委員会資料) https://oki2k.jp/files/ic_20190913_no4.pdf
バスロケーションシステムの基礎データ • 群馬県・富山県では2018年度整備したデータを活用しバスロ ケーションシステムの整備を推進 – GTFSリアルタイムデータのオープン化にも取り組む https://toyama.vtfm.jp https://www.pref.gunma.jp/04/h21g_00088.html
MaaSの基盤データとして • 北海道十勝MaaS実証実験の 基盤データの一部はGTFS-JP オープンデータ • 小田急+VAL研究所のMaaS プラットフォームに採用 http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/hokkaido-tokachi-maas.htm https://www.slideshare.net/KenjiMorohoshi/20200128shikoku-gtfsjp
サイネージでの活用
市民発のアプリも登場 • Aa 青バスなう! https://sonohino-kibunshidai.org/aobus_now/ UnoMap https://play.google.com/store/apps/details?id=work.momizi.unomap&hl=ja
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自治体はどうあるべきか
行政が地域交通の司令塔
背景: 地域交通における行政の役割の高まり • 地域交通法(活性化再生法) 改正で地域交通のリ・デザイ ンを求めている • 協議会の開催など地方自治体 に期待される役割は大きい
地域公共交通会議など • 市町村が主体となり、地域の交通事業者や利用者などを集めた 協議会を開催できる 出展: 中部運輸局愛知運輸支局 「地域公共交通会議等運営マニュアル」
東京と「地域公共交通」
民間鉄道会社主導による鉄道・都市開発 https://www.kantetsukyo.jp/guide
鉄道のあり方: 国交省 交通政策審議会で議論・答申 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/tetsudo01_sg_000261.html
東京における地域公共交通の基本方針(2022年)
「都市交通」という課題を 捉えよう
パーソントリップ調査 • 都市における人の移動に着目した調査 – 世帯や個人属性に関する情報と1日の移動をセットでアンケート調査 – 「どのような人が、どのような目的で、どこから どこへ、どのような時間帯 に、どのような交通手段で」移動しているかを把握 – 公共交通、自動車、自転車、徒歩といった複数の交通手段を把握 • 日本での実施状況 – 1967年に広島都市圏で初めて本格的に実施 – 現在は全国各地の都市圏で概ね10年に1度実施 – 都市交通の現況の把握、将来交通需要の予測、都市交通マスタープランの作成等 に活用 https://www.mlit.go.jp/toshi/tosiko/toshi_tosiko_tk_000031.html
パーソントリップ調査とは https://www.mlit.go.jp/toshi/tosiko/toshi_tosiko_tk_000031.html
移動の単位「トリップ」とは • 目的トリップ、リンクトトリップ – 通勤や買い物など「一つの目的」を達成するために出発地から到着地まで移動 – パーソントリップ調査では「目的トリップ」についても把握できる点が特徴 • 手段トリップ、アンリンクトトリップ – 徒歩→バス→ 鉄道→徒歩など、「交通手段」が変わるごとにカウント https://www.mlit.go.jp/toshi/tosiko/toshi_tosiko_tk_000031.html
全国での実施状況 • 3大都市圏に加え、地方 中核都市圏などでも実施 • 10年に一度の実施であ るが、実際は20年以上 実施されていない地域も 多い https://www.mlit.go.jp/toshi/tosiko/toshi_tosiko_tk_000031.html
https://www.tokyo-pt.jp/static/hp/file/data/tebiki.pdf PT調査 調査票の例(世帯票・個人票) • X
東京都市圏PT調査 第5回→第6回 交通手段が簡略化され、バス停 は記入されなくなった
第6回(平成30年)東京都市圏PT調査における 対象圏域 https://www.tokyo-pt.jp/data/01_01
第6回(平成30年)東京都市圏PT調査における 小ゾーン • 都市部と地方部で面積 が大きく異なることに 注意
PT調査標本率 • 1〜9%程度 総合都市交通体系調査の事例集(平成30年6月) https://www.mlit.go.jp/common/001241231.pdf
新谷先生コラム:PT 調査事始(抜粋) • • • • • • • 1962年に,建設省都市局の指導と補助により、主要な都市で2度目の自動車OD調査を実施し、以後3年ごとに実施した結 果,これらのデータを利用して,主要都市の自動車トリップのパターンや特性が分析され、将来計画の検討作業が各地で 行われだした。 当時,アメリカから帰ってこられた大塚勝美氏からシカゴ都市圏交通計画の報告書を戴いた。これは,従来の自動車ト リップをベースとするOD 調査に代わり,パーソントリップをベースとするOD 調査を行い、4段階推定法による方法を実 行した最初の画期的な都市交通計画報告書であった。 我々は,PT 調査を基礎とした交通計画の方法について内外の資料を集めて研究した.1967年に建設省中国地建から相談 があり、広島都市圏の将来を考えると高速道路だけでなく鉄軌道計画も検討すべきだということになり、中国地建・広島 県・広島市・周辺 13 町・関係公共団体・学識経験者からなる広島都市交通問題懇談会が組織された. 広島都市圏交通計画の作業では,わが国で最初の本格的なPT 調査に基づき,将来の土地利用のことを考えながら,総合的 な交通計画を立案することとなった、4段階交通量推定に当たっては,各段階ごとに種々の交通需要モデルを比較検討し, 複数の比較計画案について交通網としての適否チェックを行った。 広島でPT調査が着々と進み、かなり実行可能な方法であることが分かってきたため、建設省都市局は、東京都市群につい ては特別にPT調査を行うことになった。1970年代以降,京阪神都市圏,中京都市圏等の大都市圏や,仙台,前橋・高崎な どの地方都市圏において順次 PT調査が実施され、データ解析・将来推計・計画作業が進むにつれて、この分野における研 究は著しく発展するようになった、 交通需要推計方法についても、集計モデルに対して,個人の交通行動単位をベースとして,その交通行動メカニズムを表 す非集計行動モデルの研究が進み、応用されるようになった。さらに、PT調査が主要都市圏に普及し、それぞれ約 10年 ごとに,2度目、3度目の調査も行われ、都市交通計画の基本的な調査として定着していった。 PT調査は、都市の交通計画を総合的かつ戦路的に検討することに役立つはずであったが、道路と鉄道の計画主体が異なる ことから、鉄道計画にその成果が十分反映できず、総合的な計画を実現するという点では問題点を残している。
PT調査: 総合都市交通体系調査の一環として実施 • 総合都市交通体系調 査の一環として実施 – 管轄:国交省都市局 • 調査だけでな取り組 み全体をPT調査と呼 ぶことも多い 総合都市交通体系調査の手引き(平成19年9月) http://www.mlit.go.jp/crd/tosiko/sougou/pdf/01.pdf
熊本における実施例 • 2016年に熊本地震が起 こっても、粛々と計画作り が進む。。。 • 次は2022年度にPT調査を 実施(2023年度に延期) 2018 • 鉄道会社、バス会社は行政 の管轄下にあるわけではな いので、詳細な路線や運行 計画はこの計画に従うわけ ではない
交通計画 誰がど のように決めて る? • 熊本都市圏の例 • パーソントリッ プ調査 • 需要から計画を 作るための、4段 階推定法のよう な学術的な方法 論がある 2012 2013 2014 2015
これまでの歴史 • 約10年に1回パーソ ントリップ調査から 計画を立てている
交通のサービスレベルを捉えよう
交通サービスレベルの可視化・評価 中心地からの到達時間 地域ごとの通える高校数
顧客や社会のニーズに基づいた交通とは? • 交通事業者の内情に合わせたサービス – 交通事業者単独での収支改善 – 運転手不足に合わせた減便 • 移動の課題を解決するサービス – 通勤、通学、通院の足の確保 – 渋滞の解消
熊本における増便シミュレーション →渋滞解消効果を評価 • 幹線8方面で1時間あたり8〜2本、23時頃まで運行を仮定 • 簡易で網羅的な推計により効果推定 – 1日あたり543便増 – 年間532万人利用増、10.7億増収、9.3億円減益 • バス利用が532万人増により、車利用が403万人減り、平日朝夕と 土曜夕方を中心に速度が1km/h前後向上し、市民の走行時間が178 万時間、時間価値換算で47.6億円の便益 • 充分な費用対効果だが渋滞解消のたっめにはさらなる施策が必要
幹線路線 幹線8方面 大きい丸:断面以遠 小さい丸:桜町〜断面 204
現状のサービスレベル一覧(平日・上り) area 1_植木 1_植木 2_合志・菊池 2_合志・菊池 2_合志・菊池 2_合志・菊池 3_菊陽・大津 3_菊陽・大津 3_菊陽・大津 3_菊陽・大津 4_長嶺 4_長嶺 4_長嶺 4_長嶺 5_益城・空港 5_益城・空港 6_嘉島 6_嘉島 6_嘉島 6_嘉島 6_嘉島 7_宇土・宇城 7_宇土・宇城 8_田崎・城山 8_田崎・城山 8_田崎・城山 8_田崎・城山 8_田崎・城山 8_田崎・城山 travel direction terminal_time_min terminal_time_max trip_count c06 c07 c08 c09 c10 c11 c12 c13 c14 c15 c16 c17 c18 c19 c20 c21 c22 c23 人数 収入 _time 1A_徳王 up 6:30 22:19 91 5,652 4 8 9 7 7 7 6 6 6 6 6 5 5 4 3 1 1 0 2,615 579,242 1B_池田三丁目 up 7:28 22:38 23 496 0 2 1 1 2 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 1 0 342 49,894 2A_高平橋 up 6:52 21:05 39 2,335 1 3 4 4 2 2 2 2 2 2 3 3 3 3 2 1 0 0 1,138 228,622 2B_須屋小屋 up 6:42 22:52 24 1,927 2 2 2 2 1 2 1 1 0 1 1 2 1 2 2 1 1 0 827 211,034 2C_城北校前 up 6:32 23:21 31 1,760 2 3 2 3 2 2 1 2 2 2 1 2 2 1 1 1 1 1 897 169,435 2D_立田山 up 6:35 22:56 43 2,460 2 3 4 2 4 4 2 2 2 3 2 3 3 3 2 0 2 0 1,346 246,472 3A_高杉 up 6:48 22:03 41 1,831 1 2 3 4 2 3 2 3 3 3 3 3 3 2 2 1 1 0 1,006 185,372 3B_武蔵陸橋 up 6:58 22:33 36 1,862 1 2 4 2 2 3 2 2 2 3 3 3 2 2 1 1 1 0 957 179,801 3C_塚の本 up 6:33 21:00 29 1,489 1 3 1 3 3 2 2 2 2 2 2 1 2 1 1 1 0 0 833 154,294 3D_江南病院前 up 7:03 21:10 30 1,522 0 3 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 1 0 0 624 118,985 4A_渡鹿四丁目 up 6:50 21:48 61 2,474 1 5 6 5 3 4 4 3 4 4 4 5 5 4 2 2 0 0 1,412 270,900 4B_熊本学園大学入口 up 6:47 22:52 66 3,261 1 4 7 4 5 5 4 5 4 4 4 4 4 4 3 2 2 0 1,509 305,898 4C_帯山小学校入口 up 6:55 22:44 77 3,496 1 7 8 6 5 5 4 4 4 4 6 6 5 3 4 2 3 0 1,660 290,352 4D_京塚 up 6:17 22:56 95 4,381 5 9 10 7 6 5 6 6 6 5 5 6 5 6 3 2 3 0 2,451 417,513 5A_小楠公園前 up 6:40 22:45 73 3,884 2 7 9 5 5 5 5 4 5 5 5 3 3 3 3 2 2 0 2,033 396,261 5B_東野中学校前 up 7:17 20:18 21 1,681 0 2 4 1 1 1 1 2 1 1 1 1 2 2 1 0 0 0 512 115,456 6A_下江津 up 6:54 21:17 17 873 1 5 4 0 1 0 1 0 0 1 0 1 1 0 1 1 0 0 360 73,507 6B_江津三丁目 up 6:43 19:10 12 521 1 1 0 1 2 0 1 0 1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 219 39,683 6C_田井島(浜線バイパス) up 7:54 20:16 20 913 0 1 1 2 1 2 2 1 2 2 1 2 1 1 1 0 0 0 298 48,341 6D_田迎(旧浜線) up 6:09 23:41 94 5,093 7 7 8 6 7 4 7 6 7 6 8 5 5 3 3 1 3 1 1,834 409,502 6E_県立高等技術専門校前 up 6:48 21:08 27 1,083 1 3 2 2 2 2 1 2 1 1 2 2 2 2 1 1 0 0 371 63,821 7A_熊日前(国道) up 6:20 20:45 28 946 2 2 3 1 2 2 2 1 2 3 2 1 2 2 1 0 0 0 362 71,523 7B_熊日前(旧道) up 6:38 22:15 46 1,804 2 4 4 3 3 3 3 3 3 3 3 4 3 1 2 1 1 0 1,002 206,554 8A_新土河原一丁目 up 6:30 22:30 32 966 1 1 0 1 3 3 2 3 2 4 1 3 2 2 1 2 1 0 165 33,049 8B_島団地入口 up 6:37 19:26 16 505 1 2 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 209 45,301 8C_野口町 up 6:36 21:37 44 1,775 2 4 4 3 3 3 3 3 3 3 4 2 3 3 0 1 0 0 704 158,219 8D_野中公民館前 up 6:33 23:21 35 822 4 3 1 2 2 2 3 1 2 3 4 2 2 2 0 0 1 1 267 48,397 8E_稲荷入口 up 6:57 19:57 25 1,074 1 3 1 2 2 1 2 2 1 1 3 2 1 3 0 0 0 0 300 62,678 8F_高橋中間 up 6:26 21:11 31 987 2 4 3 2 2 2 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 0 0 563 108,426 trunk_name 205
推計表(平日1日) 運転時間削減 短縮時間 バスレーン 短縮 適用 幹線 [分] 率 Lv 方面 路線(断面) 1_植木 1A_徳王 1B_池田三丁目 2A_高平橋 3 50% 2B_須屋小屋 3 50% 2C_城北校前 3 100% 2D_立田山 3 100% 3A_高杉 3 100% 3B_武蔵陸橋 3 100% 3C_塚の本 3 100% 3D_江南病院前 3 100% 4A_渡鹿四丁目 5 100% 4B_熊本学園大学入口 5 100% 4C_帯山小学校入口 5 50% 4D_京塚 5A_小楠公園前 3 50% 5B_東野中学校前 6A_下江津 6B_江津三丁目 6C_田井島(浜線バイパス) 6D_田迎(旧浜線) 6E_県立高等技術専門校前 7A_熊日前(国道) 7B_熊日前(旧道) 8A_新土河原一丁目 8B_島団地入口 8C_野口町 8D_野中公民館前 8E_稲荷入口 8F_高橋中間 2_合志・ 菊池 3_菊陽・ 大津 4_長嶺 5_益城・ 空港 6_嘉島 7_宇土・ 宇城 8_田崎・ 城山 増便率 8 2 3 3 3 3 3 3 3 3 6 6 8 8 6 2 2 2 2 8 2 2 4 2 2 3 2 2 3 時短感度(4%/分)を乗算 比例 反映 ×増便感度(0.5) 往復数 運転時間[h/日] 経費概算[円/日] 混雑 幹線部 輸送人員 収支概算[円/日] 増便 増加 1便人 増便増 増便増 レーン 増加 収入 収支率 収入 収支率 収支 現行 現行 増加 現行 増加 現行 増加計 後 率 数 加 加率 増加 率計 現行 現行 増加 増後 増減 91 123 177 62 35% 1,247千 439千 29.0 5,273 927 18% 0 927 18% 1,179千 95% 207千 82% -231千 23 34 14 7 48% 100千 48千 15.8 726 174 24% 0 174 24% 106千 106% 25千 89% -23千 38 49 71 18 26% 503千 128千 28.6 2,171 314 14% 149 463 21% 435千 87% 93千 84% -35千 24 49 65 65 100% 456千 457千 35.4 1,698 884 52% 155 1,039 61% 432千 95% 265千 76% -193千 33 49 61 24 40% 426千 172千 28.0 1,846 448 24% 275 723 39% 351千 82% 138千 82% -35千 42 49 77 8 10% 539千 55千 30.3 2,541 212 8% 330 542 21% 465千 86% 99千 95% 44千 41 49 58 6 11% 406千 45千 25.5 2,088 204 10% 275 479 23% 384千 95% 88千 105% 43千 38 49 64 14 21% 454千 97千 25.4 1,931 279 14% 265 545 28% 367千 81% 103千 85% 6千 29 49 50 29 59% 349千 206千 25.4 1,475 509 34% 238 747 51% 283千 81% 143千 77% -63千 28 49 45 29 64% 318千 204千 20.7 1,160 435 38% 191 626 54% 223千 70% 120千 66% -83千 61 93 81 27 33% 568千 189千 22.5 2,739 718 26% 691 1,410 51% 523千 92% 269千 105% 81千 65 93 104 29 28% 733千 206千 22.3 2,905 626 22% 706 1,332 46% 593千 81% 272千 92% 66千 78 123 118 59 50% 831千 416千 20.2 3,125 917 29% 404 1,322 42% 545千 66% 230千 62% -185千 93 123 137 44 32% 964千 311千 25.7 4,776 770 16% 0 770 16% 813千 84% 131千 74% -180千 75 93 130 28 21% 919千 196千 27.6 4,108 510 12% 277 787 19% 811千 88% 155千 87% -40千 21 34 55 34 62% 384千 238千 22.6 951 294 31% 0 294 31% 219千 57% 68千 46% -170千 18 34 31 29 94% 215千 203千 21.2 741 349 47% 0 349 47% 149千 69% 70千 52% -133千 12 34 17 33 196% 118千 232千 17.0 390 382 98% 0 382 98% 71千 60% 70千 40% -162千 21 34 30 19 62% 213千 132千 14.6 613 190 31% 0 190 31% 101千 47% 31千 38% -101千 93 123 171 56 33% 1,201千 396千 19.8 3,668 605 16% 0 605 16% 815千 68% 134千 59% -262千 26 34 34 10 31% 237千 73千 13.1 683 105 15% 0 105 15% 118千 50% 18千 44% -55千 28 34 32 7 24% 223千 53千 13.2 726 86 12% 0 86 12% 144千 65% 17千 59% -36千 46 63 61 24 38% 432千 166千 21.8 1,984 382 19% 0 382 19% 403千 93% 77千 80% -89千 32 34 31 2 8% 216千 17千 6.4 405 16 4% 0 16 4% 83千 39% 3千 37% -14千 16 34 16 19 113% 116千 130千 12.7 407 229 56% 0 229 56% 88千 76% 49千 56% -81千 44 49 57 7 11% 405千 46千 15.7 1,382 79 6% 0 79 6% 309千 76% 18千 72% -28千 36 34 27 -2 -6% 193千 -11千 7.3 522 -15 -3% 0 -15 -3% 93千 48% -3千 50% 8千 23 34 33 17 51% 233千 119千 13.4 601 154 26% 0 154 26% 125千 54% 32千 45% -87千 31 49 33 19 58% 230千 134千 17.7 1,096 318 29% 0 318 29% 209千 91% 61千 74% -73千 1日集計 全幹線 1,202 1,698 terminal桜町路線2,998 3,495 all 全路線 4,596 5,093 41%・496便増 1,878 2,571 3,818 723 723 723 39% 13,232千 5,098千 28% 18,115千 5,098千 19% 26,901千 5,098千 39%・510万円経費増 52,731 11,100 65,527 11,100 81,442 11,100 21% 17% 14% 3,958 3,958 3,958 15,058 15,058 15,058 29% 10,436千 23% 12,494千 18% 15,374千 29%・1.5万人利用増 79% 2,986千 69% 2,986千 57% 2,986千 73% -2,112千 67% -2,112千 57% -2,112千 206 299万増収 211万減益
道路予算の壁?
モビリティと日本社会 モビリティの実現は巨大インフラを基盤としており、技術開発だけでなく 国家規模で制度・組織・人材などを整備する必要がある • 自動車産業は日本の基幹産業 – 巨大なサプライチェーンが国内にも大きく広がっている – 系列でのすり合わせからグローバル化へ • 道路・鉄道などの高度なインフラ技術・産業 – トンネル・橋梁などの土木工事技術が国策による国土整備を背景に発達 – かつての道路特定財源により道路整備が全国で大規模な公共事業として成立 – MaaS (Mobility as a Service) などIT対応への遅れ • 交通政策の不在 – 道路交通政策と公共交通政策の分離 – 民間公共交通事業者のサービス競争が中心であり政策の関与は薄かった – 近年において地方・過疎地の交通アクセス確保が大きな課題に
昭和から平成を支えた社会システムの綻び • 交通網の整備・交通関連技術の発展を強力に推進する仕組み – 系列・特定財源、全国総合開発計画、私鉄経営モデル… • 日本の成功と停滞がモビリティに凝縮している
交通DX: 顧客や社会のニーズに基づいた交通に向けて • 交通DXの半分は交通行政のDX。行政の役割は大きい • 都市交通はデータで課題を把握し改善を進める余地が大きい – 10万〜300万人程度規模の都市圏か • ITが答えを出すのではなく、何を評価するかで結論が変わる。 事業者単独の収支ではなく都市交通の全体を評価するべき • サービスレベルの目標を設定したい。データを用いれば達成状 況の精密な算出が可能 • 公金の投入で技術開発への投資が可能なように – かつては都市新バスシステム、オムニバスタウンなどで技術開発が進んだ