心理学を広く報せる

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December 22, 22

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日本心理学会第86回大会企画シンポジウム「変化する心理学」

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好きな漫画はおがみ松五郎です。

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関連スライド

各ページのテキスト
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日本心理学会第86回大会企画シンポジウム 「変化する心理学」 心理学を広く報せる 山田祐樹 (九州大学)

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素性 ・日本心理学会 広報委員会 活発なDiscordサーバー ・認知心理学が好き ・再現性問題ちょっとだけ興味ある 活発なSlack

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「一般に流布する心理学」 何をもって一般と呼んでよいか分かりませんが・・・さまざま

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「一般に流布する心理学」 広報委員なので学会・一般間の仲介が重要。でもむずい。 ・役割を掴みきれてない ホムペ

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「一般に流布する心理学」 広報委員なので学会・一般間の仲介が重要。でもむずい。 ・役割を掴みきれてない ・広報的なことをされている委員会が既にたくさんある 公益社団法人日本心理学会 認定心理士の会 オンライン公開講演会 認定⼼理⼠に期待する ∼⼼理学知の伝道者とは∼ 昨年,資格担当常務理事拝命のご挨拶として『⼼理学ワールド』第95号 (https://psych.or.jp/publication/world095/pw26)に「認定⼼理⼠の⽅々には「⼼ 理学知の伝道者」となっていただきたい」と書きました.本講演はそれを解題するも のです.「⼼理学では@@ということがわかっている」とか「⼼理学にもとづく@@ 効果」とかいうものの中には,⼼理学者として是⾮多くの⽅に知っていただきたいも のがある⼀⽅で,まったくといっていいほど科学的実証に基づかなかったり,再現性 検証の結果「これは眉唾物だ」という合意ができているものもあります.⼼理学をき ちんと学んだ⽅にはそういう知識も⾝につけたうえで,それを伝える役割を果たして ほしいと考えています.具体例を挙げながら,何を⼿がかりに「伝道すべき知」を選 び取れば良いのかを,皆さんとともに考えたいと思います. なお,本イベント直前に開催される⽇本⼼理学会第86回⼤会で類似した趣旨のシンポ ジウム「変化する⼼理学」が認定⼼理⼠の会運営委員会企画で開催され,私も登壇し ます.オンデマンドですので,あらかじめご覧いただいておくと理解が深まると思い ます(もちろん,その機会を逸した⽅でもおわかりいただけるように話します). 2022 9.23 (⾦)祝⽇ 13:00∼14:30 開場時間/12:50 オンライン開催 無料/事前予約制 / , ・どこまで出張っていいか悩む , ⽇本⼼理学会常務理事 認定⼼理⼠資格認定委員会委員⻑ 認定⼼理⼠の会運営委員会担当常務理事  , , , /  ⼤阪⼤学⼤学院⼈間科学研究科教授/ 感染症総合教育研究拠点科学情報・公 共政策部⾨副部⾨⻑・⼈間科学ユニッ トユニット⻑/⼤阪⼤学総⻑補佐/放送 ⼤学客員教授 申込み締め切り:2022.9.15(⽊) 【参加⽅法】オンライン開催(zoom)※通信費は参加者負担となります。 【募集⼈数】1,000名先着順 【参加資格】どなたでもお申込みいただけます。 【申込⽅法】⽇本⼼理学会ホームページにてご案内をしております。 下記の申し込みサイトより該当の「イベント名」と「開催⽇」を ご確認の上、必要事項を⼊⼒してお申込みください。 締切⽇以降に折り返し、参加⽅法をご連絡いたします。 例えば「心理学の適切な普及を推進する」場合 URL:https://psych.or.jp/authorization/ninteinokaievent/ [email protected]

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広報の出張り 一般における心理学の何らかの誤解を訂正,はアリかナシか 非常に軽微な誤解の例 ←広報,出張るべき? 山本弘・寺嶋としお「直撃!人類滅亡超真相」 p.110 (2000). 秋田書店 より引用

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広報の出張り 一般における心理学の何らかの誤解を訂正,はアリかナシか 実は単発で終わってなくて,その数カ月後の同誌別漫画でも出現 浜岡賢次「浦安鉄筋家族」25巻 p.166 (2000). 秋田書店 より引用

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その結果?無視できないほどに浸透 参考

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そこそこの誤解の例 カラーバス効果 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 カラーバス効果(カラーバスこうか、color bath)とは心理学用語の一つで ある。カラーバスは「色を浴びる」の意。 意識していることほど関係する情 報が自分のところに舞い込んでくるようになるといったものである。例え ば、「今日のラッキーカラーは赤」といわれると、街でその色ばかりに目が 行くなども、カラーバス効果である。 心理学 モロに心理学用語 と言われてしまうと… 歴史 · 分野 カテゴリ: 心理学 基礎心理学 ならばUTC)。 異常 · 生物 認知 · 発達 比較 · 文化 実験 · 進化 数理 · 人格 社会 利用可能です。追加の条件が適用される場合があります。詳細は利 応用心理学 最終更新 2011年8月19日 (金) 14:57 (日時は個人設定で未設定 テキストはクリエイティブ・コモンズ 表示-継承ライセンスの下で 用規約を参照してください。 http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=カラーバス効果& oldid=38853704」(2014年3月14日) 臨床 · 消費者 教育 · 健康 組織 · 産業 法 · 労働衛生 政治 · 学校 スポーツ · 軍事 一覧 心理療法 ちなみにもう 無いです 2017年2月26日に 削除のもよう

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ちなみにもう 無いです https://startupmind.hackathonpost.com/ saying/ugokidase/10673.html

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使われなくなったのかというと,そういうわけでもない (Googleでも17100件)

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「カラーバス」の引用可能な文献を探してみると ビジネス書の「考具」(加藤, 2003) までは遡れた。 経験則として述べられているだけで「心理学用語」 とは言われていなかった! あと,「カラーバス効果」が紹介される際にこの本が引用されることも ほとんどなかった・・・ このあとのいきさつについては *百冊企画*さんのYouTube動画で詳しく解説 (COIなし)

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随伴性注意捕捉 注意の構えに一致する特徴を持つ対象は,たとえ探そうとして (Folk, Remington, & Johnston, 1992) いなくても見つけてしまう 茶色いねこを探そう あっ に の ⽝な 言ってることはだいたい同じなのでこの用語の方で広まれば正しいって ことかもしれないけど,堅すぎなのも否めない ←広報,出張るべき?

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そもそも「誤り」を「正せる」のか? 厄介なポイント ・心理学内でもどんどん用語が変わる

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そもそも「誤り」を「正せる」のか? 厄介なポイント ・心理学内でもどんどん用語が変わる Representational Momentum (Freyd & Finke, 1984) 実際の消失位置 運動物体の消失位置が先へずれて定位 定位 視覚システムは素朴物理学を内在化していて,慣性を 運動物体に適用させて表象してるんですよ的な話

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そもそも「誤り」を「正せる」のか? 厄介なポイント ・心理学内でもどんどん用語が変わる Forward displacement (前方変位) Kerzel (2000) 数十msの視覚的持続がそのままズレる 追跡眼球運動が前方にズレる 眼球運動が行き過ぎてるというマジの慣性が視覚像の 位置をずらしてるかもしれませんよ的な話

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そもそも「誤り」を「正せる」のか? 厄介なポイント ・心理学内でもどんどん用語が変わる ちょっと前の通説が出回ったりしたら それは「誤り」なのだろうか? Momentum-like effects (Hubbard, 2019) 運動だけじゃなく状態変化一般で起きる (Hafri et al., 2022) 注意や心的操作など諸活動で起きる (Hubbard, 2019) 知覚・認知・行動などは一般的に慣性っぽく継続したり 外挿されたりしますよ的な話

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そもそも「誤り」を「正せる」のか? 厄介なポイント ・再現性が低いものがある (三浦先生が触れられていると思うので詳細は省略) 再現性の危機 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 再現性の危機(さいげんせいのきき、英: replication crisis, replicability crisis)とは、多く の科学実験の結果が他の研究者やその実験を行った研究者自身による後続の調査において 再現することが難しい、もしくはできないという科学における方法論的な危機のことであ る[1]。この危機には長い歴史があるが、「再現性の危機」というフレーズそのものは2010 年代初頭に注意を集める問題の一部として名づけられた。 実験の再現性は科学的方法論において欠かせない部分であるため、有意な理論が再現でき ない実験研究に基づいている科学の多くの領域において、研究の再現ができないことは潜在 的に破滅的な結果をもたらす。 再現性の危機は特に心理学(社会心理学)と医学の領域で広く議論されてきた。これらの 領域においては古典的な結果の再調査やその結果の妥当性の評価、そしてもし妥当でないな らばなぜ実験の再現が失敗するかの理由について多くの努力が行われてきた[2][3]。 科学一般 https://ja.wikipedia.org/wiki/再現性の危機 1500人の科学者を対象にした2016年の調査によれば、70%の研究者が他者の実験の再現に 失敗した(50%の研究者は自身の研究の再現にも失敗している)。この数字は分野によって 異なる[4]。 再現性が低い場合に自信を持って「正しい」といいにくい・・・ 凡例: 他者が行った実験に失敗したことがある人の割合 (自身が行った実験に失敗した ことがある人の割合)

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そもそも「誤り」を「正せる」のか? 厄介なポイント ・それは文脈依存だから・・・(一般化可能性の低さ) →実験場面と異なる現実場面では使えない ・実験者が下手くそだから・・・(一般化可能性の低さ) →オリジナル著者並みに実験できる人じゃないと使えない ・実験心理学の多くは予測精度や介入効果の向上を狙ってない 「使えない」ことを主張して訂正していくのがいいの・・・?

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例えばコロナ禍では,今こそ心理学で!みたいな話が多くの国々 でたくさん出ました。 広報委員会もAPAの記事等を翻訳したりしましたし 編集委員会もコロナ特集号を組んだりしました。

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﹁ ⼼ 理 学 研 究 ﹂ 特 集 号 投稿締切 特集号詳細については 右記QRコードより ご確認いただけます。 ●投稿先: https://jpa.bunken.org/jpa/user_logins/jp/ ※特集号への投稿の際には,特集号への投稿 論文であることを必ず明記してください。 ※投稿に際しては,日本心理学会「執筆・投稿 の手びき」を必ずご参照ください。 ●pre-submission inquiryが可能です。 新 型 コ ロ ナ ウ イ ル ス 感 染 症 と 心 理 学 投稿論文 募集 特集号編集者 ⼭⽥ 祐樹 (九州⼤学) 2021年2⽉28⽇(⽇) 発⾏予定 2021年12⽉ (第92巻 第5号) 公益社団法人 日本心理学会 超大事 超大事

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しかしその半年後には,ちょっと待とうよ的な論文も出来 例えばコロナ禍におけるPrebunking(事前デマ晒し)研究について (山田が勝手に)調べてみると,小さくて短期間の効果が多数 「使える」ことを主張していきたい・・・!

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そもそも「誤り」を「正せる」のか? 厄介なポイント ・スピンによって本来の結果が誇張される スピン:プロパガンダ,印象操作。広報におけるバイアス。 結果:変数Aと変数Bの正の相関が有意であった。 考察:本研究は変数Aが変数Bを増加させることを明らかにした。この結果 の応用的意義を踏まえると,変数Aを促進する政策が策定され,その活動 や関係者の支援に潤沢な資金が投じられることは急務であろう。 スピンは累積していく ・結果から考察に至る際のスピン ・知見をプレスリリースする際のスピン ・宣伝された知見をピックアップして引用または紹介する際のスピン

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そもそも「誤り」を「正せる」のか? 厄介なポイント ・スピン後さらに別分野の用語にされる https://www.takei-si.co.jp/productinfo/detail/121.html https://ferret-plus.com/10129

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そもそも「誤り」を「正せる」のか? 厄介なポイント ・聞き慣れない「効果」を心理学用語にされる ↑カラーバス効果とか もはや広報が出張ってどうにかなるのかわかりません!

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どうすれば ・正誤判定だけを行うのではなく,より多くの人がより多く の信頼性の高い最新情報を簡単に得られるようにしたい ・疑問に思ったときに参照できる情報があると便利 ・その情報はアップデートされている必要がある ・その情報は検証されている必要がある ・広報は一旦置いといて,個々人で柔軟に動く 草の根検証ホームページをご用意

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認定心理士の皆様にも積極的に ご利用いただきたいです! 研究の方もがんばります…