AIエージェント並列開発の失敗体験と学び

2.3K Views

August 27, 25

スライド概要

profile-image

ITディベロッパー、バイオインフォマティクスエンジニア

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

ダウンロード

関連スライド

各ページのテキスト
1.

AI エージェント並列開発の 失敗体験と学び 駆動開発勉強会 沖縄(第2回) 波平真実(ナミヒラマサミ) AI 2025/08/26

2.

アジェンダ 自己紹介 - AI駆動開発のモチベーション 2. 今回のチャレンジ - 並列 AI 開発への挑戦 3. 期待値と現実のギャップ - 想定外の問題 4. 失敗の内容 - 何が起きたか 5. 改善アプローチ - 現在の取り組み 6. 学び - 得られた知見 1. 2

3.

自己紹介 波平真実(ナミヒラマサミ) 株式会社ZENE 遺伝子検査の会社 テックリード(3〜4人の小規模チーム) ゲノム解析ワークフロー・WEBアプリケーション開発 遺伝子診断システムの構築 Claude Code や Cursor などを普段使いしているが、使いこ なせてはいない AI 駆動開発のモチベーション センシティブな情報を扱うため品質を担保は必須、その上で AI 駆動開発の恩恵を受けて開発速度を上げたい 3

4.

並列開発を行おうと思ったキッカケ Twitter で並列開発のツイートを拝見 を使って複数エージェント同時実行するツイート 16 ペインでエージェントがコミュニケーションをとりながら タスクを並列に処理する様子を見て面白そうと感じた。 実装速度が数倍になるのでは?という淡い期待 → 今回チャレンジしてみることに tmux 4

5.

開発対象プロダクト ToB 向け解析レポート進捗管理アプリケーション 新規開発予定のプロダクトのプロトタイプ Next.js + AWS サーバレス構成 主要機能 ログイン / アカウント管理 進捗管理 レポートファイル管理 監査ログ 5

6.

エージェント構成 エージェント構成 リーダー × 1:オーケストレーション担当 ワーカー × 3:各機能の実装担当 利用ツール:Claude Code + tmux モデル:Claude 4 Sonnet / Claude 4 Opus 6

7.

開発フローのイメージ 今回話す内容は並列実装の部分について 7

8.

期待していたこと きれいに並列で進められる開発 待ち時間もあまりなくスムーズ レビュー中も裏で次の実装が進む 2-3 回のやりとりでタスク完了 8

9.

実際に起きたこと 頻繁にブロッキングが発生 暴走しがちで不要な機能やあきらかに おかしい実装 依存関係を無視した実装 怖いので別タスクは待機させることも レビュー疲れで処理が滞留 大量のPRを同時レビューは困難 結果的に順番に処理 「直列の方が早くね?」 9

10.

失敗の内容:記憶喪失による混乱 コンテキストウィンドウの限界 想定より早くコンテキスト上限に到達 Auto Compact による記憶喪失が頻発 設計と実装にズレが発生 連鎖的なカオス 後続タスクでもエージェントが間違った前提で実装 エラー修正も表面的な対処のみ行われることも プロトタイプなのに負債まみれ 10

11.

失敗の内容:(続き) エージェントの暴走 スコープクリープ(勝手に機能追加) 開発原則を無視(YAGNI、DRY、KISS違反など) 同じような処理を重複して定義 その他の問題 レビュー地獄に陥り気力枯渇 しっかりコードを見れないことがあり実装を忘れがち ビジネスクリティカルな部分では責任が持てないという印象 11

12.

うまくいった部分もある 並列でも成功した領域 やデザインは並列でもうまくいくことが多かった 一部コード重複があるくらい 非コア機能では十分な品質 動くものはなんだかんだ速く完成はする UI 12

13.

反省と改善 反省点 直列で十分な品質を担保するフローの整備が不十分 人間の負荷が高く、そのままではうまくいきそうにない タスクごとの並列ではなく品質向上のための並列化 実装エージェントとレビューエージェントのペアプロ 設計に従って実装 / コーディング規約や整合性をチェック 別コンテキストで記憶喪失を防ぐ ※ その他の施策案 人間の処理能力を基準に並列度を調整 その人の背景に応じたレビュー要約エージェントの追加 など 13

14.

改善アプローチの効果 定性的な結果 体感的にコードの品質が向上 レビューのやりとりやCodeRabbitのコメントが半減 タスクサイズも適切に保たれPRの肥大化も防止 まだ課題多いが方向性は良さそう 人の負担を減らせている 普段の開発業務にも知見が活かせて好影響 14

15.

体験を通した学び エージェント並列開発自体について まずは直列のフローを整備して人間の負荷を下げることが重要 余力を増やして徐々にスケールするとよさそう 並列化で工夫する余地はまだまだありそう 副次的な学び - これが結構大きい エージェントを自律させてチーム開発させる試み 普段のAIの使い方にもまだまだ改善の余地があることに気づいた 普段の開発プロセス改善のきっかけ 少人数チームのため属人的な体制になりがちだったため、 各開発フェーズについてうまく回る仕組みを考える良い機会になった 15

16.

ご清聴ありがとうございました