リファインメント含むクリアアライナー治療の精度の評価研究2022

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January 25, 23

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2022年Progress in Orthodonticsに投稿された論文をご紹介します。クリアアライナー治療の精度に関する研究報告はいくつかあるが、リファインメントを含めた治療精度を報告する初めての研究である。

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矯正歯科の海外最新論文をPubMedから紹介します。特にマウスピース型矯正(インビザライン)論文中心にお届けします。

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Keywords: Accuracy, Aligner treatment, Orthodontic forces, Orthodontic tooth movement, Orthodontic predictability assessment, Invisalign Accuracy evaluation of orthodontic movements with aligners: a prospective observational study G. Bilello, M. Fazio, E. Amato, L. Crivello, A. Galvano and G. Curro Progress in Orthodontics (2022) 23:12 https://doi.org/10.1186/s40510-022-00406-7 紹介者:矯正歯科海外論文紹介サイト https://kyousei-kaigaironbun.com

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目次 1 2 3 4 5 6 7 • Background • Materials and Methods • Statistical analysis • Results • Discussion • Conclusions • References

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目次 1 2 3 4 5 6 7 • Background ・クリアアライナーの先行研究と本研究の目的 • Materials and Methods • Statistical analysis • Results • Discussion • Conclusions • References

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クリアアライナーの先行研究と本研究の目的 先行研究 Kravitzら[8] インビザライン®(アライン・テクノロジー)歯牙移動の有効性の評価 平均移動精度は41%を報告した。 最も移動精度が低かったのは挺出29.6%であった。 最も高い移動精度は舌側への狭窄47.1%であった。 Lombardoら[10] F22 ®クリアアライナー 平均移動精度は73.6%であった。 最も予測しにくい動きは下顎犬歯の回転であった。 最も予測しやすい動きは上顎臼歯と下顎前歯の近/遠心傾斜であった 本研究 背景 目的 クリアアライナーの具体的な信頼性を確立するために先行研究とは異なる 指標を用い評価する。 具体的には、リファインメントを評価に含める 帰無仮説 計画した歯列移動の大部分は治療達成後の歯列との間に臨床的な差はない 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献

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目次 1 2 • Background • Materials and Methods ・Trial design 3 4 5 6 7 • Statistical analysis ・Table 1. Criteria for participant’s selection or exclusion • Results ・Table 2. Use of auxiliary features within participants’ treatments ・Digital measurements • Discussion • Figure 1. Figure 2. Figure 3. Conclusions • References

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Trial design 研究デザイン 前向き観察研究 パレルモ大学総合病院(A.O.U. Policlinico Paolo Giaccone;承認番号2/2020)の施設 審査委員会によって承認された。 ドイツ臨床試験登録(DRKS-ID:DRKS00023865)にて登録された。 パレルモ(イタリア)の歯科医院でInvisalign®( Align Technology)治療を行った。 参加者 成人患者10名(男性3名、女性7名)、平均年齢34.8±14歳 サンプル 215歯(上顎105歯、下顎110歯) 評価方法 3つのデジタルモデルを重ね合わせて評価した (pre-treatment (T0)、post-treatment (T1)、planned post-treatment (Tp)) 治療前検査 いくつかの臨床検査を行い、アライナー治療が可能かどうかを評価した。 適応と判断された症例にインビザライン®による治療を行った。 固定措置や一時的な固定装置(TAD)は用いなかった。 背景 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献

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Table 1. Criteria for participant’s selection or exclusion Bilello et al.(2022)より 背景 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献

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Table 2. Use of auxiliary features within participants’ treatments アライナーの装着 1日22時間の装着、7日間ごとの交換を指示した。 補助装置 最適アッタチメントとIPRに加えて、バイトランプ、パワーリッジ、エラスティックが 各症例のニーズに従って用いた(表2)。 リファインメント 最初のアライナーセット完了後のリファインメントは、 患者1アーチにつき平均25枚であった。 Bilello et al.(2022)より 背景 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献

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Digital measurements Figure 1. T0、T1、Tpの3つのデジタルモデルは CEREC Omnicam(Dentsply Sirona,イタリア)を 介してSTLファイルとして取得し、 Meshlabソフトウェア(ISTI-CNR,イタリア,2021.05版)を 介して基準点上に重ね合わせた(図1) Bilello et al.(2022)より 咬合面は、重ね合わせと垂直変位測定の主な基準である。一度、モデルを3Dデカルトグリッドに配置し、 三角法を使って比較した。矯正治療後に変化しない矢状面と咬合面を3次元基準として使用することで、 模型の空間的配置が正しく、再現性があることが確認された。 Huancaら[11]は、口蓋ひだが基準点として機能するのは上顎のみであり、他の歯科構造は何らかの動きの影 響を受ける可能性があるため、信頼性と安定性のある重ね合わせ方法を実現するには咬合平面が最良の選択 肢となると述べている。 背景 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献

10.

Digital measurements Fig 2. Rhinoceros® ソフトウェア(Robert McNeel & Associates, USA)を使用して、 3D Cartesian グリッドにおける各歯の移動距 離および角度を検討した。 唇(頬)舌側傾斜、近遠心傾斜、回転、圧下、 挺出を測定した。 ズレの算出 Tp position ー T0 position T1 position ー T0 position Bilello et al.(2022)より 背景 方法 分析 結果 ×100 精度が100を超える場合、代わりに100%から 超過分を差引100%未満の値にした。 考察 結語 引用文献

11.

Digital measurements Fig 3. ・大臼歯と小臼歯は頬舌側方向で 中心窩を通る面、切歯は近遠心の 辺縁間の中央を通る面、犬歯は尖 頭を通る面に投影し算出した (図3)。 歯の傾斜は 臨床歯冠の顔面軸(FACC)を 咬合平面に投影して算出した。 Bilello et al.(2022)より 背景 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献

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目次 1 2 3 4 5 6 7 • Background • Materials and Methods • Statistical analysis • Results • Discussion • Conclusions • References

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Statistical analysis 統計解析 統計ソフトウェアパッケージSPSS(SPSS Inc.、米国) 臨床的閾値 0.5mm以下の移動距離と2°以下の移動角度とした 検定 Wilcoxon rank-sum test 統計的有意は 背景 方法 分析 p > .05 とした 結果 考察 結語 引用文献

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目次 1 2 3 4 • Background • Materials and Methods • Statistical analysis • Results ・Table 3. 5 • Discussion ・Table 4. 6 7 • Conclusions • References

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Results Table 3. 回転 上顎中切歯96%から下顎第一小臼歯の70.4%まで 全体で86%であった。半数近くの歯が90%以上の精 度で回転し、残りの歯は80~90%(下顎第一小臼歯 70.4%を除く)の精度であった。 圧下 前歯部のみの評価であった。全体平均は92%で、 最も低いのは下顎犬歯86.7%、最も高い結果は下顎 中切歯98%であった。 唇(頬)舌側傾斜 最も精度が高い。全体平均は93.1%である。 最も低いのは上顎中切歯80.7%、最も精度が高いの は下顎中切歯97.5%であった。 Bilello et al.(2022)より 背景 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献

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Results Table 4. Bilello et al.(2022)より 背景 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献

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目次 1 2 3 4 5 • Background • Materials and Methods • Statistical analysis • Results • Discussion ・まとめ 6 7 • Conclusions ・アライナーのバイオメカニクス • References ・本研究の限界

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Discussion:まとめ クリアアライナー治療が導入されて以来、3Dデジタルプランニングの信頼性は常に議論の中心と なってきた。 インビザライン®システムとマルチブラケット治療精度の違いを検討している研究はいくつか ある[12,13]が、本研究はリファインメントを含んだ治療精度の評価を行った。 その結果、すべての移動において高い精度が達成された。 特に前歯の圧下92%、唇(頬)舌側傾斜93.1%と高い精度が示された。 一方、回転86%、下顎第一小臼歯70.4%は著しく低い精度であった。 いくつかの補助的な機能(最適アッタチメント、バイトランプ、パワーリッジ、エラスティック) は高い治療精度の達成に貢献している。 背景 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献

19.

Discussion:本研究の限界 ◆サンプル数が少ないため、臼歯部の評価が出来なかった。 ◆インビザラインの効果の過大評価する危険性がある。 使用したリファインメントが平均21.2枚から、多いものは50枚に至ったケースがあり、 時間的コストがかかった。 (しかし、時間的コストはかかったが、歯根吸収を起こすリスクの増加や経済的コストの増加に はつながらなかった。) ◆ClinCheck ®は結果を予測する普遍的な予測因子ではない。 背景 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献

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目次 1 2 3 4 5 6 7 • Background • Materials and Methods • Statistical analysis • Results • Discussion • Conclusions • References

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Conclusions ◆前庭舌側傾斜は最も予測しやすい動きであり,下顎で95.9%,上顎で94.6%の精度となった。 圧下は下顎で92.2%,上顎で94.3%の精度を示した。回転の精度は平均 86.0%であった。 ◆最も予測しにくい動きは,小臼歯,犬歯,側切歯の回転で,上顎犬歯は平均81.0%, 側切歯80.9%,上顎第二小臼歯80.7%,下顎第一小臼歯70.4%の精度であった。 ◆上下側切歯、犬歯、小臼歯の回転を除き、歯の移動に統計的な有意差は見られなかった。 ◆2mmまでは圧下の予測性が高く、それ以上では動きの予測性が低下した。 背景 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献

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目次 1 2 3 4 5 6 7 • Background • Materials and Methods • Statistical analysis • Results • Discussion • Conclusions • References

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References 背景 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献

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記事監修 Dr. 堀井和宏 (Kazuhiro Horii) 日本矯正歯科学会 臨床指導医(旧専門医)・ 認定医 日本舌側矯正歯科学会 American Association of Orthodontists 〒520-0832 滋賀県大津市粟津町4-7 https://www.horii-kyousei.com 背景 方法 分析 結果 考察 結語 引用文献