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June 19, 23
スライド概要
歯科医師、特に矯正医向けの海外論文サイトが最新情報をお届けしています。PubMedからオープンアクセスの論文をエビデンスベースでご紹介。今回は2022年にAJO-DOに投稿された論文です。インビザライン治療から固定装置への移行率を調査した研究です。本研究では、500名の患者について実施した後ろ向き研究により、インビザラインから固定矯正装置に切り替える必要がある患者の割合について調査を行った。不正咬合のクラスⅠ、Ⅱ、Ⅲに分けた結果、最も多い年齢層は30代以降であった。クラスⅠの患者が最も多く、クラスⅢの患者が最も少なかった。 調査結果をもとに、インビザラインを使用する際の院内効率について検討することができる。
矯正歯科の海外最新論文をPubMedから紹介します。特にマウスピース型矯正(インビザライン)論文中心にお届けします。
Keywords: What percentage of patients switch from Invisalign to braces? A retrospective study evaluating the conversion rate, number of refinement scans, and length of treatment Neal D. Kravitz, Bassel Dalloul, Yara Aba Zaid, Chandani Shah, and Nikhilesh R. Vaid Am J Orthod Dentofacial Orthop 2023;163:526-30 紹介者:矯正海外論文サイト https://kyousei-kaigaironbun.com
目次 ©kyousei-kaigaironbun.com 1 2 3 4 5 6 • Introduction • Materials and Methods • Results • Discussion • Conclusions • References
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1. Introduction ©kyousei-kaigaironbun.com 【背景】 一般的にインビザラインをより多く取り入れると、院内の効率が向上すると考えられている (チェアタイムの短縮、少ない来院回数、予約間隔の拡大)[1,2]。 しかし、単純な不正咬合であっても何度も修正スキャンを行ったり、固定矯正装置へ移行したりするこ ともある。 したがって、実際にインビザラインを使用する際の院内効率はその有効性のみによって実現される。 【目的】 矯正治療の完了のためにインビザラインから固定装置に切り替える必要がある患者の割合を調査すること
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Materials and Methods ©kyousei-kaigaironbun.com 【対象者】 ヨーロッパ大学カレッジのInstitutional Review Board(承認番号:EUC-IDB-20.01.18)によって 承認された後ろ向き研究である。 2011年から2021年に治療を受けた患者500名を選択した。 【包含基準】 ◆14歳以上であること ◆インビザライン・ティーンまたはインビザラインフルで治療を開始し、インビザラインまたは 固定装置で治療を完了した者 【除外基準】 ◆部分的に固定装置をつけてインビザライン治療を開始した者 ◆抜歯や外科手術が必要な者 ◆治療を中断した者
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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com 【平均年齢】33.6歳 【年齢層】最も多い年齢層はC群、次いでA群であった A群:20歳未満、B群:20~30歳、C群:30代~ 【インビザラインタイプ】 インビザライン・フル359名、 インビザライン・ティーン141名 【人種】 白人328名、インド系60名、アジア人55名、 アフリカ系34名、ヒスパニック系23名 【不正咬合】 クラスⅠ:375名、クラスⅡ:98名、クラスⅢ:27名 Kravitz et al. (2023)より
3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com 【移行率】17.2%であり、6人に1人の割合であった 【リファインメント平均】2.5回 【リファインメント回数】 3回→18.0%、4回→10.4%、5回→8.4% 0回→6.0%、0回リファインメントの平均枚数22枚 【平均治療期間】22.8ヶ月、 カウンセリング提示期間より5.1ヶ月長い 【アライナー総使用枚数】平均64.1枚、 固定装置へ移行した患者のアライナーは平均80.6枚、平均 6.9ヶ月の追加矯正であった Kravitz et al. (2023)より
3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com Kravitz et al. (2023)より 性別、年齢と固定装置への移行との関連は統計的な有意差なし C群はA群と比較してリファインメントの回数が有意に多かった リファインメントの回数と固定装置への移行との間には関連がみられなかった。
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4. Discussion ©kyousei-kaigaironbun.com 本研究で明らかになった固定装置への移行率は17.2%であった。 つまり、6人に1人がインビザラインから固定装置へ移行して治療を終了している。 この高い移行率は、インビザラインが特定の歯の動きの予測実現性が低く[5]、一般的な不正咬合の矯 正にも苦労することを考えると理解できる[12,13]。 インビザライン治療を受ける患者は固定装置も必要になるかもしれないと予想すべきであることを 示す。
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5.Conclusions ©kyousei-kaigaironbun.com [1] 6人に一人が(17.2%)が、インビザラインから固定装置へ移行し治療を終了する必要があった。 [2] インビザライン治療では、平均2.5回のリファインメントスキャンが必要であった。一度も リファインメントスキャンを行わずにインビザライン治療を完了した患者は全体の6.0%に とどまった。 [3] インビザライン治療の平均期間は22.8ヶ月で、カウンセリング時に提示された予定期間より 5.1ヶ月長くなった、平均的なアライナーの総枚数は64.1枚であった。 [4] 30歳以上の患者は、リファインメントスキャンの回数が有意に多かったが、若い年齢層より も固定装置への移行する確率は高くはなかった。 [5] まとめると、インビザラインを使用した院内の効率を過大評価している可能性がある。 平均してインビザラインの患者は約2~3回のリファインメントスキャンと2年間の治療 を必要とし、短期間の固定装置が必要になる可能性があると合理的に予想されるはずである。
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References ©kyousei-kaigaironbun.com
記事監修 ©kyousei-kaigaironbun.com Dr. 堀井和宏 (Kazuhiro Horii) 日本矯正歯科学会 臨床指導医(旧専門医)・ 認定医 日本舌側矯正歯科学会 American Association of Orthodontists 〒520-0832 滋賀県大津市粟津町4-7 https://www.horii-kyousei.com