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January 10, 23
スライド概要
矯正治療も3Dプリンターの技術の進化に伴いパラダイムシフトが起こりつつある。海外では2019年ころから、クリアアライナーを自分の歯科医院で作成する試みが行われている。この流れをうけて固定式ブラケットを3Dプリンターで作成し患者ごとにカスタマイズを提案するための足掛かりとなる論文をご紹介。
矯正歯科の海外最新論文をPubMedから紹介します。特にマウスピース型矯正(インビザライン)論文中心にお届けします。
Key-words: 3D-printed bracket , In-house bracket Comparative in vitro analysis of the sliding resistance of a modern 3D-printed polymer bracket in combination with different archwire types Lutz Hodecker · Christoph Bourauel · Bert Braumann · Teresa Kruse · Hildegard Christ & Sven Scharf Clinical Oral Investigations (2022) 26:4049–4057 https://doi.org/10.1007/s00784-022-04373-5 紹介者:矯正歯科海外論文紹介サイト https://kyousei-kaigaironbun.com
目次 1 2 3 4 5 6 • Introduction • Materials and Methods • Results • Discussion • Conclusions • References
目次 1 2 3 4 5 6 • Introduction • Materials and Methods • Results • Discussion • Conclusions • References
1. Introduction 3Dプリント技術の進化により、患者に合わせてカスタマイズ されたブラケットシステムの構築が可能となってきており、 この分野においての開発が非常に必要とされている 【本研究の目的】 3Dプリントのポリマーブラケットと様々な種類のアーチ ワイヤーを組み合わせたケースのすべり抵抗を解析し、 一般的に使用されている材料と比較することを目的とする *本研究において、セルフライゲーションシャークSLポリマ ーブラケットを分析したもの (Fig. 1) Hodecker et al. (2022) より
目次 1 2 3 4 5 6 • Introduction • Materials and Methods • Results • Discussion • Conclusions • References
Materials and Methods 【ブラケットのタイプ】 ポリマー Brillant® ブラケット(成形用ポリオキシメチレン,Forestadent Bernhard Förster GmbH, Pforzheim, Germany) 3Dプリント セルフライゲーションShark SL ブラケット(Dentalline GmbH & Co. KG, Birkenfeld, Germany) セラミック Discovery® pearl(Dentaurum GmbH & Co. KG, Ispringen, Germany) Inspire Ice™ bracket(Ormco Europe, BR Amersfoort, The Netherlands) メタル Discovery® bracket(Dentaurum GmbH & Co. KG, Ispringen, Germany) Equilibrium® ti bracket (Dentaurum GmbH & Co. KG, Ispringen, Germany) 【アーチワイヤーの材質のタイプ】それぞれ0.016 inch×0.022 inch,0.017 inch×0.025 inch (すべてDentaurum GmbH & Co. KG, Ispringen, Germany製) remanium®(バネ硬化型ステンレス鋼) rematitan® sl(超弾性ニッケルチタン合金,NiTi) rematitan® SPECIAL(チタンモリブデン合金,TMA)
Materials and methods 【計測方法】 歯列矯正計測シミュレーションシステム (OMSS, Fig. 2)を 用いた OMSSは、歯列矯正力を加えて歯列移動のシミュレーションを 行う装置である ブラケットにかかる力は、フォース/トルクセンサーで 3次元に記録される Hodecker et al. (2022) より
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3. Results Hodecker et al. (2022) より ブラケットタイプの違いにより、force lossの測定値に有意な差が認められた Brilliant®ブラケット(平均23%)の値が最も小さく,次いでShark SLブラケット(平均29%)であった. セラミックブラケット群は平均47%と最も高い値を示し,メタル群は平均31%と37%と両群の中間に位置していた.
3. Results Hodecker et al. (2022) より ステンレスワイヤーにポリマーブラケット (brilliant) を組み合わせた場合、force lossが最も小さくなった ことが示された
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4. Discussion 本研究では、3Dプリントされたポリマーブラケット材料と6種類のアーチワイヤーとの組み合わせによる 生体力学的特性を評価し、従来から一般的に使用されているブラケットとの特性と比較することを目的とした 3Dプリンティング技術は、理想的な矯正用ブラケットに求められる多くの要件を満たすことが出来るため、 製造方法として有望視されている 3D プリンティングブラケットは,歯の形,大きさ,色などの患者固有の特徴を考慮した完全なデジタル ワークフローに統合することができる[8, 12]. 将来的には、3Dプリンティング技術を使って、完全にカスタマイズされた固定アプライアンスが製造される 可能性がある
4. Discussion ブラケットタイプごとのbevel designs 1a: 3DプリントShark SL 1b: ポリマーBrillant ブラケット 2a: セラミックInspire Ice 2b: セラミックdiscovery 3a: メタルdiscovery 3b: Hodecker et al. (2022) より メタルequilibrium ti
4. Discussion 【今後の課題】 ポリマーブラケットの臨床使用には、すべり抵抗やスロットの精度に加え十分なトルク容量と色の安定性 が重要である 今後の研究では、3Dプリントされたブラケット材料のトルク容量を検証する必要がある 色の安定性において、ブラケットに使用される樹脂の種類と組成に大きく依存する 現段階における研究によると、特にワインの染色効果や経年変化による色の変化にはさらなる開発が 必要であることが示されている[38]
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5.Conclusions 本研究は、最新の3Dプリントされたポリマーブラケットがすべり抵抗に関して従来のブラケットと同等 あるいはそれ以上の生体力学的特性を提供できることを示すことが出来た その結果、ポリマーブラケットは、スチールワイヤーとの組み合わせだけでなく、NiTiやTMAアーチ ワイヤーとの組み合わせでも最良のすべり特性を示すことが明らかとなった 今後の課題はあるものの、将来的には矯正医がCAD/CAMを用いて自分自身でカスタマイズした ブラケットシステムを製作できるようになるかもしれない これにより患者ごとにプログラムされたブラケットシステムが実現し、従来のブラケットシステムよりも 治療効率を高め、ストレートワイヤーのコンセプトに沿った矯正治療が可能になると考えられる
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References
References
記事監修 Dr. 堀井和宏 (Kazuhiro Horii) 日本矯正歯科学会 臨床指導医(旧専門医)・ 認定医 日本舌側矯正歯科学会 American Association of Orthodontists 〒520-0832 滋賀県大津市粟津町4-7 https://www.horii-kyousei.com