固定装置とクリアアライナー:歯周状態と歯肉退縮の評価(システィマティックレビュー2022))

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September 18, 23

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歯科医師、特に矯正医向けの最新矯正論文情報サイト。日々の診療や臨床、医学研究に役立つ最新海外論文をPubMedから情報を提供します。Evidence-Based Medicine(EBM)、科学的根拠に基づいた海外矯正情報をお届けしています。今回はMed Oral Patol Oral Cir Bucal(2022)に投稿された論文のご紹介。この研究は、クリアアライン、着脱可能な透明プラスチックの矯正装置を使用する治療と固定装置を使用する治療における歯周状態と歯肉退縮についてのシステマティックレビューとメタアナリシスです。研究によると、固定装置は衛生維持が難しいため、歯垢が蓄積されやすく、エナメルの脱灰、歯茎の炎症、そして歯を支える組織の破壊が進行することが示唆されています。この制限を克服するため、クリアアラインが導入されました。クリアアライナーは簡単に取り外すことができ、患者の口腔衛生を維持することができます。一部の臨床医療では、クリアアライナーの方が、より歯周の健康状態を維持できるということが示されていますが、現時点ではその仮説に十分な根拠はありません。歯肉退縮についても比較のレビューはされていないため、今後のさらなる研究が必要とされています。

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各ページのテキスト
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Key words: Clear aligners, removable orthodontic appliances, fixed orthodontic appliances, periodontal health, gingival recession. Assessment of the periodontal health status and gingival recession during orthodontic treatment with clear aligners and fixed appliances: A systematic review and meta-analysis Marina Crego-Ruiz , Adrià Jorba-García Med Oral Patol Oral Cir Bucal 2022 doi:10.4317/medoral.25760 紹介者:矯正海外論文サイト https://kyousei-kaigaironbun.com

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目次 ©kyousei-kaigaironbun.com 1 2 3 4 5 • Introduction • Materials and Methods • Results • Discussion • References

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目次 ©kyousei-kaigaironbun.com 1 2 3 4 5 • Introduction • Materials and Methods • Results • Discussion • References

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1. Introduction ©kyousei-kaigaironbun.com 【背景】 矯正用固定装置(FA)は適切な口腔衛生を保つことが困難なため、歯垢の蓄積を著しく促進させ、エナメル質 の脱灰や歯肉の炎症が進行し、歯を支える組織の破壊につながることが示唆されている[3,4]。 そのようなFAのいくつかの制限を克服するために取り外し可能な透明なプラスティック製のクリアアライナー (CA)が導入された。CAは簡単に取り外すことが出来るため、患者の口腔衛生を最適なレべルに保つことが 出来る[6,7]。FAとCAによる患者の歯周状態を評価する研究が行われている[8-10]。多くの臨床化がFAよりも CAの方が歯周の健康状態を維持しやすいとしているが、この仮説を検証するには十分な根拠がない[1,7,11]。 歯肉退縮についても議論がある。現在では、歯槽骨の外側への歯の移動が歯肉退縮の危険因子とされている [12,14,15]が、FAとCAによる歯肉退縮についての比較のレビューは行われていない。 【目的】 FAとCAによる矯正治療を受けている患者の歯周状態と歯肉退縮の発生の評価を目的としたシステマティック レビューである。

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Materials and Methods ©kyousei-kaigaironbun.com 本研究のシステマティックレビューとメタアナリシスはPRISMA Statement[17]を遵守した。 1)Population: 矯正治療患者 2)Intervention:クリアアライナーによる矯正治療 3)Comparison:固定装置による矯正治療 4)Outcome:歯周の健康状態(プラークインデックス(PI)、歯周ポケットの深さ(PPD)、歯肉炎指数(GI)、 プロービング時の出血(BOP))、歯肉退縮の発生 5)Studies:無作為化臨床試験、対照臨床試験、前向きまたは後ろ向きコホート研究 【除外】 ・横断研究・追跡調査期間が2か月未満の研究・対照群のない研究・症例シリーズや症例報告 ・舌側装置、矯正用リテーナー、顎矯正手術等の研究

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Materials and Methods 文献検索方法 ©kyousei-kaigaironbun.com

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com 145件の論文から最終的に12件{4,5,8-11,20-25] が適格基準を満たした。 ↓ 3つのランダム化臨床研究[4,5,10] 8つの前向きコホート研究[8,11,20-25] 1つの後ろ向き研究[9] ↓ 定量分析は8つの研究[4,5,8-10,21-23] 残りは異なる歯周指標を用いていたため除外

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3. Results 対象となった研究の説明 ©kyousei-kaigaironbun.com

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3. Results 研究内のバイアスのリスク ©kyousei-kaigaironbun.com

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3. Results 研究内のバイアスのリスク ©kyousei-kaigaironbun.com

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com プラークインデックス(PI) 6つの研究[4,5,10,21-23]の定量的分析の 結果 B(中期)フォローアップ :CAが有意に良好な結果が得られた A(短期)とC(長期)フォローアップ :FAとCAで統計的な有意差は見られな かった。

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com 歯肉炎指数(GI) 4つの研究のメタ分析の結果 FAとCAにおいて統計的な有意差は見られ なかった

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com 歯周ポケットの深さ(PPD) 5つの研究[5,8,10,21,23]の定量分析 A(短期)とB(中期)ではFAとCAに有 意な差は見られなかった C(長期)ではCAの方がPPDが統計的 に良好であった

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3. Results ©kyousei-kaigaironbun.com プロービング時出血(BOP) 8つの研究[4,5,8-10,21,24,25]で評価されたが、測定指標が異なるためメタアナリシスは行わなかった。 [21]を除くすべての研究において、CAはFAよりもBOPが統計的に有意に良好であると報告されている。 歯肉退縮 [8]のみの報告によると、FAはベースラインと比較して3か月後に統計的な有意な歯肉の退縮がみられた。 一方、CAは有意な差は見られなかった。

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4. Discussion ©kyousei-kaigaironbun.com FAとCAによる矯正治療中の歯周の健康状態について検討した結果、歯周病指標はCAの方が良好である 傾向をわずかに示した。 しかし、メタアナリシスによると、PIは中期のフォローアップ、PPDは長期のフォローアップのみの 統計的な有意差の報告だけである。 したがって、現在までのところCAが矯正治療中の歯周の健康状態をより良く維持するという仮説を受け入 れるに足る証拠はなく、矯正装置自体が歯周の健康状態に与える影響はほとんどないようである。 定量的分析の結果は統計的に有意であったが、臨床現場において実質的に無視できる差であるため、 その臨床的意義は限定的であった。 本研究のレビュー結果は研究のバイアスリスクが高いため、慎重に解釈する必要がある。

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目次 ©kyousei-kaigaironbun.com 1 2 3 4 5 • Introduction • Materials and Methods • Results • Discussion • References

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References ©kyousei-kaigaironbun.com

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記事監修 ©kyousei-kaigaironbun.com Dr. 堀井和宏 (Kazuhiro Horii) 日本矯正歯科学会 臨床指導医(旧専門医)・ 認定医 日本舌側矯正歯科学会 American Association of Orthodontists 〒520-0832 滋賀県大津市粟津町4-7 https://www.horii-kyousei.com